有毒ツインズ

霧江サネヒサ

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晴れ

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 大切な人を殺した奴がいる。
 私は、自分の手で犯人を殺すつもりでいた。このままでは、あの殺人犯は死刑にならないから。
 しかし。

「はじめまして。私、矢代協会の営業部の者です」

 街中で、にこやかに声をかけてきた女性に名刺を渡された。

矢代協会 営業部
品川結女

 彼女の話を聞いてみると、プロの殺し屋に復讐を依頼しないかと言われる。私の身に降りかかった不幸を知っているようだった。

「殺し屋というのは、どんな人ですか?」
「皆さん、しっかり殺してくださいますよ」

 どうやら、殺し屋は複数いるらしい。

「一番腕がいい人に頼みたいです」
「それですと、指名料金がかかりますが」
「構いません」
「かしこまりました」
「苦しむように殺してください」
「そちらを指定されますと、追加料金がかかります」

 私は、大金を払い、殺し屋を雇うことにした。
 数日後。
 犯人は、ナイフで肺を刺されて殺された。
 刺された痛みと呼吸困難で、それはそれは、死ぬまで苦しかったことだろう。

「ご利用ありがとうございました。また、何かありましたら、お気軽にご相談ください」
「はい。ありがとうございました」

 お気軽に相談していいのだろうか?
 一礼し、協会の受付から去る。
 あなたが、復讐を望んでいたかどうかは分からない。でも、私の欠けた世界を少しでも元に戻すには、必要なことだった。
 その後。
 墓前に手を合わせて、犯人が死んだことを報告した。
 憎らしい犯人は、地獄へ逝った。
 あなたには、天国で安らかに過ごしていてほしい。
 私が死んだ後、再会出来るかは分からないけれど。
 それでも、私に後悔はない。
 どこのどなたか知りませんが、殺してくださり、ありがとうございました。
 おかげで、私は明日も生きていけます。
 それにしても、殺し屋という職業の者が日本にいるとは。組織まであるし。
 世界には、まだ私の知らないことがたくさんあるのだろう。
 そうだ。世界を旅してみようか。
 もし、またあなたと会えたら、いっぱい土産話が出来るように。
 帰宅してから私は、バックパッカーになることを真剣に考え始めた。
 人殺しの依頼だって出来たんだから、やってやれないことはないだろう。
 新年の清々しさと共に、私は旅立つことにした。
 まずは、あなたが行ってみたいと言っていた国へ行こうか。
 私は、澄み渡る空を見上げて、希望を胸に一歩踏み出した。
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