有毒ツインズ

霧江サネヒサ

文字の大きさ
上 下
3 / 27

スイート・トキシック

しおりを挟む
「大好きだよ、慧くん」と、甘ったるい声で女が言った。

「オレも大好きだよ~。お仕事がんばってね!」
「うん。いってきます」
「いってらっしゃい」

 愛坂慧三は、笑顔で女を見送る。

「さーて、どうすっかなぁ」

 煙草、ハイライトを吸いながら、スマホを触った。
 他の女からきたメッセージに返信し、煙草を灰皿に押し付ける。
 伸びをしてから、スウェットから、チャイナ服に着替え、アパートの外へ出た。
 そして、パチンコ屋へ向かう。数時間後、女からもらった金を見事に溶かし、慧三はイライラしながら店を出た。
 コンビニ前に設置された灰皿の側で煙草を吸い、「ふー」と煙を吐く。
 慧三は、密かにコンビニから出てくる客を観察している。
 しばらくして、独身らしいくたびれたスーツの男が出てきた。その男を尾行する。
 そうして、人のいない小道で、慧三は男に声をかけた。

「オニーサン、なんか落としたよ」
「はい?」
「ほらほら、これ」

 慧三は、立ち止まって振り返った男に近付き、ナイフで心臓を一突きする。

「ぐっ……あ…………」
「ごめーん。今から落とすんだった」

 その命を。

「さよなら、オニーサン」

 返り血を浴びないようにナイフを抜き、男の財布から金を盗んで、慧三は女の家に帰った。
 少ししてから、カノジョが帰宅する。

「おかえり!」
「ただいま、慧くん」

 玄関まで行き、女を抱き締める慧三。

「すぐ、ご飯にするね」
「うん、ありがとう!」

 男は、ニコニコしながら、晩ごはんを待つ。
 カノジョが用意したのは、カルボナーラだった。

「オレ、これ好き~。いただきまーす」

 食後、ふたりでソファーに腰かけて、キスを交わす。

「慧くん、好き…………」
「ありがと。俺もだよ」

 そのまま、彼らはセックスをした。
 その後、ふたりで風呂に入る。

「慧くん、ずっと側にいてね」
「もちろん!」

 女を後ろから抱き締めて浴槽に浸かっている慧三は、カノジョが望む返事をした。
 風呂から出てから、ふたりで晩酌をする。アルコール度数9%の缶チューハイを飲んだ。
 夜更け。ふたりでセミダブルベッドで眠りにつく。
 翌朝。先に起きたカノジョが作った朝食を食べ、出勤するのを見送り、昨夜得た金を持って、競馬場へ向かう慧三。
 少し金を増やして、機嫌よく治安の悪い街へ歩き出す。
 そして、ヤクの売人からMDMAを買って帰った。
 部屋の中でヤクをキメて、幸せな夢を見る。
 愛坂慧三は、どこまでも自堕落に生きていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

よんよんまる

如月芳美
キャラ文芸
東のプリンス・大路詩音。西のウルフ・大神響。 音楽界に燦然と輝く若きピアニストと作曲家。 見た目爽やか王子様(実は負けず嫌い)と、 クールなヴィジュアルの一匹狼(実は超弱気)、 イメージ正反対(中身も正反対)の二人で構成するユニット『よんよんまる』。 だが、これからという時に、二人の前にある男が現われる。 お互いやっと見つけた『欠けたピース』を手放さなければならないのか。 ※作中に登場する団体、ホール、店、コンペなどは、全て架空のものです。 ※音楽モノではありますが、音楽はただのスパイスでしかないので音楽知らない人でも大丈夫です! (医者でもないのに医療モノのドラマを見て理解するのと同じ感覚です)

羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜

長月京子
キャラ文芸
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。 幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。 時は明治。 異形が跋扈する帝都。 洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。 侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。 「私の花嫁は彼女だ」と。 幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。 その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。 文明開化により、華やかに変化した帝都。 頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には? 人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。 (※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております) 第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞をいただきました。 ありがとうございました!

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

後宮の才筆女官 

たちばな立花
キャラ文芸
後宮の女官である紅花(フォンファ)は、仕事の傍ら小説を書いている。 最近世間を賑わせている『帝子雲嵐伝』の作者だ。 それが皇帝と第六皇子雲嵐(うんらん)にバレてしまう。 執筆活動を許す代わりに命ぜられたのは、後宮妃に扮し第六皇子の手伝いをすることだった!! 第六皇子は後宮内の事件を調査しているところで――!?

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...