上 下
3 / 3
1章:黒い赤

Lionの黒い恋

しおりを挟む
私の両思いの人は同じ後期四年の、違うクラスJote・Agapi(ジョセ・アガーピ)という人で、私が初めてその人を見た時、『優しそうな人だな』と思ったのを覚えている。その人はその見た目通りの優しい人で、私の風邪を心配してくれる様な人だ。


 ちょっとだけ寂しがり屋だったりするけれど、そんな所すらも私は好きで堪らない。


 見た目は、高身長で色白。金色がかった白い髪は透けていないのに透明感を感じさせ、色の違う両目は宝石の様な奥深い魅力を感じさせる程濃く、淡い緑色と、炎の様な明るさと温かさを感じる赤色をしている。


 そしていつも私の手と繋いでくれるその手は私の手をすっぽりと包む事が出来る程大きく、何だか少し冷たい。


 そんなジョセは、頻繁に風邪をひく事は無いためエラステも三人もいるそうなのだけれども、彼は私の事を好きだと言ってくれる。


 今までに何度か好きな人がいて、その度に振られてきた私にはとても勿体ないくらい、今の私は安定し、幸せなんじゃないかと私は思う。


 彼とは殆ど毎日、一緒に下校する。他の人には『仲のいい友達』として。バレてしまえば私とジョセ、更にジェニスも罪に問われ、ジェニスの好きな人もバレ、私と彼は牢屋か死、ジェニスもタダでは済まないだろう。政府もわかっている通り、『人の心はその人自身が変えなければ変えることは出来ない』のだから……。



 そんなことを考えながら歩いているといつの間にか学校の校門の目の前に来ていた。


 考え事をしていると時間は早く過ぎるというのはこういうことなんだと今更になって気付く。と、近くに私の恋愛事情についてよく知っている友達がいた(私の恋愛が政府にバレればこの子も多分タダでは済まないだろう……。)。勿論、私の親友だ。


 彼女の名前はEnoia・Kako(エノーイア・カコー)なのだけれども、ちょっと長めだから私はエナと呼ばせてもらっている。本人もその呼び名でいいらしいし……(私のネーミングセンスの無さには何も言わないで欲しい…)。


「エナおはよー」


 まだ私に気付いていなかったエナは私からの突然の挨拶に驚いて、空の様に深く、透き通るように綺麗なまるい蒼い目を少し大きく開き、目よりも薄い青の髪とお揃いの色の長い睫毛を震わせた。


「リオンおはよ…びっくりさせないでよ」


 エナはそう言って美しい髪を冬の冷たい風に靡かせ困ったような笑みを浮かべた。毎日のように思うことだけれど、学校の寒そうな白い壁の前、早朝の薄花色の空の下で笑う美少女というのは中々絵になると思った。


 すると、冷たい突風が制服である裾に赤い二本の線が入った黒のスカートを捲りそうになる。手で押さえて捲れるのを阻止する。


 これが何回か来るのは具合が悪くなったとしても流石に寒いし嫌なので怠く面倒で平和な学校生活へ、エナと一緒に入っていった。

しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

最近、夫の様子がちょっとおかしい

野地マルテ
ミステリー
シーラは、探偵事務所でパートタイマーとして働くごくごく普通の兼業主婦。一人息子が寄宿学校に入り、時間に余裕ができたシーラは夫と二人きりの生活を楽しもうと考えていたが、最近夫の様子がおかしいのだ。話しかけても上の空。休みの日は「チェスをしに行く」と言い、いそいそと出かけていく。 シーラは夫が浮気をしているのではないかと疑いはじめる。

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

処理中です...