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番外 熾天使サリエルって、なんですかぁ?
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◆熾天使サリエルって、なんですかぁ?
ぼくは、熾天使サリエル。
天使というのは、神の手足となって働くもののことを言う。
その中でも、神様と直接お話するのを許されているのが、熾天使という階級なのです。
それで、神様って、なに?
と言われると。ぼくにも、よくわからないのですがぁ。
まぁ、大きな力を持つ存在ってことに、しておきましょう。
神様はなんでもできるので。
あちらこちらに、遊び場を作るのですが。
地球という星も、神様の遊び場のひとつでございました。
地球は、人の言葉を借りるのなら、温室のようなものです。
とても繊細な温度管理をして。大気成分や重力バランスも微調整しているので。
神様のお気に入りの、植物や動物や人間を、そこで育てられたのです。
遊び場の中でも、地球は神様にとって、なかなかにうまくいった。良い感じの遊び場でした。
たまに人間が暴走し。貴重な植物や動物が、絶滅しちゃって。
神様がムッキィとなったり、しましたが。
人間という知的生命体は、未熟だったり愚かだったりする生物ですから。
まぁ、誤差の範囲です。
地球を見守る天使は、主にミカエルやラファエルで。
だから、地球の人々の間では、天使といったらその名前が出てくるのですけど。
一応ぼくの方が上司ですからねぇ。ドヤァ。
まぁ、それで。
たまにはぼくが、地球の見守りをしたりもしまして。
ぼくはミカエルたちの上司ですから。結構、重要な場面ではぼくが立ち会うこともあったのです。
たとえば。はじめて人間を配置したときとか?
でも、原初のふたりに。
リンゴ、美味いから食べてみてって。すすめたりぃ。
エロ知識、授けちゃったりしてぇ。
あとで神様に、こっぴどく怒られちゃったりもしたんだけどぉ。
いやいや、リンゴは美味しいのに食べちゃダメとか。可哀想だしぃ。
いやいや、エロがないと人間が増えないじゃないですかぁ?
そんな潔癖で、清純思考じゃ駄目なのに。
神様ったら変なところで、初心なのですよぉ。かわい子ぶっちゃってぇ。
あとね、天使たちが贔屓にしてたモーゼっていう人間がいたんだけど。
寿命を過ぎても、死にたくねぇって言うからさ。
ぼくがお迎えしてやったの。
みんなが嫌がる仕事をしてあげたんだよぉ?
なのに、あのジジイ。ぼくを杖で殴るし。むむぅ。
天使、殴るとか。ばかぁ?
タンコブが二百年くらい、治らなかったんだからねぇ? ムカつく。
まぁ、そんな逸話から。
死神の役目をする天使『死神天使』なんて、異名がついちゃったりしてぇ?
いいよねぇ、ミカエルたちは。誰かをやっつけても、人間の味方みたいに崇められちゃってさぁ?
ぼくの方が、階級上なのにぃ。死神扱いとかぁ。ムッキィィ。
それで、ぼくは。邪眼とかも持っているからさ。
強い力や死神とかの不吉なものを、人間は怖がるもんで。
地球で、ぼくは。堕天して悪魔になったサマエルとか、悪魔の長であるサタンとか? そんな名で表されたこともあったりしてぇ?
地球人は想像力旺盛なの。そして対立構造も好きでね?
天使がいたら、その敵の悪魔も作りたいみたい。
だけどね、天使に対立できるものはない。悪魔という存在はありえないのですよ。
だってね? 神も天使も、高エネルギー体なのです。
たとえば、神と同等の悪魔という高エネルギー体が、対立しちゃうとぉ?
新星爆発やブラックホール爆誕くらいの大被害が、宇宙規模で起きちゃうんだよ? 怖いねぇ。
だから地球人が想像した、神率いる軍団と悪魔の軍団が大戦争。なんてことは、なかったし。
宇宙が消滅しちゃうので、ありえないということなのです。
神も天使も、基本のほほん暮らしでございます。
まぁ、そんなわけで。人間を怖がらせないよう、しばらくは遠い空の上で、ただ見守るだけにしていたよ。
でもね。ぼくの見守り当番のときにさぁ。
地球の、日本という国で流行っていたカルチャーが。なかなか面白かったのですよねぇ?
漫画とか、アニメとか? 異世界や、魔獣、魔族? いろいろ考えるものですねぇ?
それに、なんといっても平和じゃない?
そういうクリエイティブが受け入れられるのは、平和な証拠なんだよ。
戦争とか飢えとかあると、そういう創造性は発達しないからね? 素敵なことです。
あとねぇ、日本は食事が最高。
お忍びで、相性のいい人間に乗り移って、ご飯を食べちゃった。神様には内緒だよ?
シジミの味噌汁、美味しかったぁ。
それにねぇ、自然が豊かで、いろいろな動物が生息していた。
緑が生き生きしていて。四季があって、風景が刻々と変わって。
ぼくは、美しいものや可愛いものや、美味しいものや、面白いものが好きだから。
地球の、中でも日本という地域が、とっても大好きだったんだぁ。
まぁ、地球の話はそんな感じで。
他にも、神様はいろんな星を使って、実験だの遊びだのしていたのだけど。
地球が、良い感じだったからさぁ。
同じようなものを、もう一個作ってみたんだって。
地球と同じように温度管理をして。重力のバランス整えたり? 土の配合だったり? 水や空気や? そういう、細かいことを。地球よりももっと緻密に、繊細に作り上げていったらしいんだよね。
で、良い感じになってきたから、それをぼくに自慢したかったみたいでさ。
『早く、こっち来い』って、急かすからさぁ。
慌てて走っていったら。月に、つまずいちゃってぇ。
そしたら、神様。激オコだよ。
「てめぇ、まぁたやりやがったなぁ? おまえさぁ、地球作ったときも、これ、やったじゃん? おかげで重力バランス崩れて、地球も三百六十五日と四分の一日になって。キモいんだよ。キリが悪いんだよ。あぁあ。この星もまた、おんなじ感じになったじゃーん」
「ごめぇん、神様。でもさ、ちょっと神経質すぎじゃね? つか、キリ悪いって。三百六十五日が、もうキリ悪いしぃ。四百? いや、五百日にすれば良かったじゃん?」
ぼくが、言うと。神様は、ケッと鼻で笑った。
つか、言葉遣いと態度が悪いと思います。
「はぁ、おまえ、マジわかってねぇなっ。三百六十五が良いバランスなんだよ。長いと、寒暖差激しくなったり、今度は生態系が狂うんだよ。つか、おまえはいつもいつも迂闊なんだよ。このおっちょこちょいめっ。あぁ、もう堕天だ、堕天。しばらくこの星で反省してろぉ!!」
そうして、ぼくは。
ドーンと突き飛ばされて。
この星に、落とされたのだった。
神様は、ちょっと短気なのです。
いい感じに、うまくいかないと。すぐキレるし。
たまに、人のせいにするのです。
つか、まぁ月につまずいたのは、ぼくも悪かったけど。
でもそれで、マジで堕とすぅ??
ってことで。この星に落っこちた、ぼく。
だけど高位生命体というのは、とっても膨大なエネルギーを内包しているものなのです。
特に、配慮もしないで…たとえば、人の姿を借りたり。映像音声のみの配信、とかしないで。
そのままの状態で星の中に入っていくと。
燃えたり、渦巻いたり、荒れ狂ったりしてしまうのです。
それは、星が生まれるときに。山が隆起したり、海が荒れたり、溶岩が流れたり。そんな光景と、似ています。
隕石が落ちても、そういう感じになりますけど。
この星には。創世神話や創世記というものが、言い伝えられていますが。
この世界に、天使が落ちてきた。
なんて話は、誰も信じないでしょう?
だから、言い伝えられたのちのちの人々は。
たぶん隕石の飛来によって、焼け野原と化した。ってことにしたのでしょう。
えぇ、その方が真実味がありますものね?
でも、真実は。星全体が燃焼するような状態でしたから。規模が違います。
隕石では。ほこりや煙で大気が分厚くなって、気温の上げ下げくらいの現象は起きますけど。
星全体に火事を引き起こすのは、隕石では難しいですねぇ?
だけど、ぼく。その火事を、どうにも止められなかった。
そんな災いでしかない、ぼくを。受け止めてくれたのが。
この星の大地の精霊、ノムレーシでした。
精霊は、大地を焼き尽くす、荒れ狂ったぼくのエネルギーを。
地上を治す方向に、転換してくれたのだ。
厳しく隆起する山を押しとどめ。憤怒の炎を上げる火山は、水で冷やしておさめ。そこに肥沃な大地が生まれ。恵み豊かな植物が自生し。浄化の水があふれた。
そして、ノムレーシは。星の再生を促進するべく。
まずは精霊の手足となって働く、妖精を作り出した。
これは、ぼくの中にあった知識。
地球で仕入れた、漫画やアニメやゲームの記憶だった。
ノムレーシは、あまり賢くはなかったが。
ぼくの知っているものを、ぼくのエネルギーを使って生み出すことができたのだ。
だから、水の中に魚を棲まわせ。
多種類の植物に、実を結実させ。
空を鳥が飛んで。
いろいろな動植物が生存できる大地になると。そこに、人間や、魔族や、魔獣や、獣人や、エルフという。多種多様な知的生命体を作り出したのだった。
ってことで、この星は。
すべての生物が、快適に生活できる土地に生まれ変わった。
そして。その地に、人族や魔族は国を作り。文明を築いていくのだった。
あ、天使の敵、悪魔という存在は、ありえないと言ったけど。
この星の魔族や悪魔は、天使に敵対する者、ではないんだよね?
地球の創作物を参考にして出来た、生命だから。
神の介入がないということは。
ぼくとノムレーシが生み出したものは、すべて神の許容範囲内ということ。
なので人間と同じく、魔族も、神の子供ということですね?
はぁ、良かった。一時はどうなることかと思いましたが。
なんとか舞台は整い直せましたね?
つか、神様。自分で作って、うまくできないからってそれを壊そうとするの。
幼児ですか!?
中途半端で放り出すの。禁止。
どんな生き物も、最後まで面倒を見なければいけないのですからねっ!
まぁ、でも。ようやく落ち着いたこの星も。どうやら、誰かが見守っているようだから。
これ以上悪くはならないでしょう。
あ、創世神話はね。ノムレーシが、妖精に伝えた話だから。
まぁ、真実ではあるんだけど。
ちょっと盛っているよね?
綺麗に表現したり、大袈裟にしたり。そんな感じだよね?
もう、なんで。ぼくのこと創世神とか言っちゃうのぉ? そんなんじゃないのにぃ。
というわけで。ぼくは、創世神なんて大それたものではありません。
むしろ、災いの者です。
だから、ぼくは。ぼくの失態で失われた地が、回復したのを見届けて。
眠りにつくつもりだった。
だって、もう。
あんなに、大きかったのに。
人の指先くらいに、小さくなってしまったんだ。
ぼくの中にあった神気も、この大地にすべて出し尽くしましたよ?
「そんな、悲しいことを言わないで? 千年以上もかけて、一緒にこの地を作り上げた、お友達ではないか?」
ノムレーシが、そう言ったような気がした。
「でも、ぼくは。ぼくが落ちたことで。それまで、この地に息づいていたものたちの。命を奪ってしまったから。償いをしなければ」
「償いは、充分果たしているでしょう? この地は、とても立派に輝いている。だから。もう罪滅ぼしは終わりにしよう。力を使い果たして死ぬなんて。そこまでしなくていい」
熾天使サリエル、としての記憶は。ここで終了です。
ぼくはそのあと卵になって。ノムレーシがそれを、妖精族に託したみたい。
天使の卵とは、言わなかったみたいだけど。
ノムレーシは口数が少ないからね?
まぁ、そんなこんなで。ぼくの知識の中に、地球の創作物の記憶まであったから。
この星は、地球そのままじゃなくて。
地球には存在しなかった、魔族や、魔法や、ユニコーンみたいなファンタジー生物まで。ごちゃまぜな世界に、なっちゃったみたいだね?
以前、インナーが。魔獣と聖獣が一緒で、なんでもアリな世界だね? って言ったけど。
すみません。ぼくのせいだったみたいですぅ。
っんももや、サクラーを作れたのも。ノムレーシが、まだぼくを友達認定しているからみたい。
ありがとう、ノムレーシ。
でもさ。スズメガズス?
あれは。ぼくのせいじゃないよね?
スズメは、知ってるけど。
あんなの創造した覚え、ないんですけどぉ?
ぼくは、熾天使サリエル。
天使というのは、神の手足となって働くもののことを言う。
その中でも、神様と直接お話するのを許されているのが、熾天使という階級なのです。
それで、神様って、なに?
と言われると。ぼくにも、よくわからないのですがぁ。
まぁ、大きな力を持つ存在ってことに、しておきましょう。
神様はなんでもできるので。
あちらこちらに、遊び場を作るのですが。
地球という星も、神様の遊び場のひとつでございました。
地球は、人の言葉を借りるのなら、温室のようなものです。
とても繊細な温度管理をして。大気成分や重力バランスも微調整しているので。
神様のお気に入りの、植物や動物や人間を、そこで育てられたのです。
遊び場の中でも、地球は神様にとって、なかなかにうまくいった。良い感じの遊び場でした。
たまに人間が暴走し。貴重な植物や動物が、絶滅しちゃって。
神様がムッキィとなったり、しましたが。
人間という知的生命体は、未熟だったり愚かだったりする生物ですから。
まぁ、誤差の範囲です。
地球を見守る天使は、主にミカエルやラファエルで。
だから、地球の人々の間では、天使といったらその名前が出てくるのですけど。
一応ぼくの方が上司ですからねぇ。ドヤァ。
まぁ、それで。
たまにはぼくが、地球の見守りをしたりもしまして。
ぼくはミカエルたちの上司ですから。結構、重要な場面ではぼくが立ち会うこともあったのです。
たとえば。はじめて人間を配置したときとか?
でも、原初のふたりに。
リンゴ、美味いから食べてみてって。すすめたりぃ。
エロ知識、授けちゃったりしてぇ。
あとで神様に、こっぴどく怒られちゃったりもしたんだけどぉ。
いやいや、リンゴは美味しいのに食べちゃダメとか。可哀想だしぃ。
いやいや、エロがないと人間が増えないじゃないですかぁ?
そんな潔癖で、清純思考じゃ駄目なのに。
神様ったら変なところで、初心なのですよぉ。かわい子ぶっちゃってぇ。
あとね、天使たちが贔屓にしてたモーゼっていう人間がいたんだけど。
寿命を過ぎても、死にたくねぇって言うからさ。
ぼくがお迎えしてやったの。
みんなが嫌がる仕事をしてあげたんだよぉ?
なのに、あのジジイ。ぼくを杖で殴るし。むむぅ。
天使、殴るとか。ばかぁ?
タンコブが二百年くらい、治らなかったんだからねぇ? ムカつく。
まぁ、そんな逸話から。
死神の役目をする天使『死神天使』なんて、異名がついちゃったりしてぇ?
いいよねぇ、ミカエルたちは。誰かをやっつけても、人間の味方みたいに崇められちゃってさぁ?
ぼくの方が、階級上なのにぃ。死神扱いとかぁ。ムッキィィ。
それで、ぼくは。邪眼とかも持っているからさ。
強い力や死神とかの不吉なものを、人間は怖がるもんで。
地球で、ぼくは。堕天して悪魔になったサマエルとか、悪魔の長であるサタンとか? そんな名で表されたこともあったりしてぇ?
地球人は想像力旺盛なの。そして対立構造も好きでね?
天使がいたら、その敵の悪魔も作りたいみたい。
だけどね、天使に対立できるものはない。悪魔という存在はありえないのですよ。
だってね? 神も天使も、高エネルギー体なのです。
たとえば、神と同等の悪魔という高エネルギー体が、対立しちゃうとぉ?
新星爆発やブラックホール爆誕くらいの大被害が、宇宙規模で起きちゃうんだよ? 怖いねぇ。
だから地球人が想像した、神率いる軍団と悪魔の軍団が大戦争。なんてことは、なかったし。
宇宙が消滅しちゃうので、ありえないということなのです。
神も天使も、基本のほほん暮らしでございます。
まぁ、そんなわけで。人間を怖がらせないよう、しばらくは遠い空の上で、ただ見守るだけにしていたよ。
でもね。ぼくの見守り当番のときにさぁ。
地球の、日本という国で流行っていたカルチャーが。なかなか面白かったのですよねぇ?
漫画とか、アニメとか? 異世界や、魔獣、魔族? いろいろ考えるものですねぇ?
それに、なんといっても平和じゃない?
そういうクリエイティブが受け入れられるのは、平和な証拠なんだよ。
戦争とか飢えとかあると、そういう創造性は発達しないからね? 素敵なことです。
あとねぇ、日本は食事が最高。
お忍びで、相性のいい人間に乗り移って、ご飯を食べちゃった。神様には内緒だよ?
シジミの味噌汁、美味しかったぁ。
それにねぇ、自然が豊かで、いろいろな動物が生息していた。
緑が生き生きしていて。四季があって、風景が刻々と変わって。
ぼくは、美しいものや可愛いものや、美味しいものや、面白いものが好きだから。
地球の、中でも日本という地域が、とっても大好きだったんだぁ。
まぁ、地球の話はそんな感じで。
他にも、神様はいろんな星を使って、実験だの遊びだのしていたのだけど。
地球が、良い感じだったからさぁ。
同じようなものを、もう一個作ってみたんだって。
地球と同じように温度管理をして。重力のバランス整えたり? 土の配合だったり? 水や空気や? そういう、細かいことを。地球よりももっと緻密に、繊細に作り上げていったらしいんだよね。
で、良い感じになってきたから、それをぼくに自慢したかったみたいでさ。
『早く、こっち来い』って、急かすからさぁ。
慌てて走っていったら。月に、つまずいちゃってぇ。
そしたら、神様。激オコだよ。
「てめぇ、まぁたやりやがったなぁ? おまえさぁ、地球作ったときも、これ、やったじゃん? おかげで重力バランス崩れて、地球も三百六十五日と四分の一日になって。キモいんだよ。キリが悪いんだよ。あぁあ。この星もまた、おんなじ感じになったじゃーん」
「ごめぇん、神様。でもさ、ちょっと神経質すぎじゃね? つか、キリ悪いって。三百六十五日が、もうキリ悪いしぃ。四百? いや、五百日にすれば良かったじゃん?」
ぼくが、言うと。神様は、ケッと鼻で笑った。
つか、言葉遣いと態度が悪いと思います。
「はぁ、おまえ、マジわかってねぇなっ。三百六十五が良いバランスなんだよ。長いと、寒暖差激しくなったり、今度は生態系が狂うんだよ。つか、おまえはいつもいつも迂闊なんだよ。このおっちょこちょいめっ。あぁ、もう堕天だ、堕天。しばらくこの星で反省してろぉ!!」
そうして、ぼくは。
ドーンと突き飛ばされて。
この星に、落とされたのだった。
神様は、ちょっと短気なのです。
いい感じに、うまくいかないと。すぐキレるし。
たまに、人のせいにするのです。
つか、まぁ月につまずいたのは、ぼくも悪かったけど。
でもそれで、マジで堕とすぅ??
ってことで。この星に落っこちた、ぼく。
だけど高位生命体というのは、とっても膨大なエネルギーを内包しているものなのです。
特に、配慮もしないで…たとえば、人の姿を借りたり。映像音声のみの配信、とかしないで。
そのままの状態で星の中に入っていくと。
燃えたり、渦巻いたり、荒れ狂ったりしてしまうのです。
それは、星が生まれるときに。山が隆起したり、海が荒れたり、溶岩が流れたり。そんな光景と、似ています。
隕石が落ちても、そういう感じになりますけど。
この星には。創世神話や創世記というものが、言い伝えられていますが。
この世界に、天使が落ちてきた。
なんて話は、誰も信じないでしょう?
だから、言い伝えられたのちのちの人々は。
たぶん隕石の飛来によって、焼け野原と化した。ってことにしたのでしょう。
えぇ、その方が真実味がありますものね?
でも、真実は。星全体が燃焼するような状態でしたから。規模が違います。
隕石では。ほこりや煙で大気が分厚くなって、気温の上げ下げくらいの現象は起きますけど。
星全体に火事を引き起こすのは、隕石では難しいですねぇ?
だけど、ぼく。その火事を、どうにも止められなかった。
そんな災いでしかない、ぼくを。受け止めてくれたのが。
この星の大地の精霊、ノムレーシでした。
精霊は、大地を焼き尽くす、荒れ狂ったぼくのエネルギーを。
地上を治す方向に、転換してくれたのだ。
厳しく隆起する山を押しとどめ。憤怒の炎を上げる火山は、水で冷やしておさめ。そこに肥沃な大地が生まれ。恵み豊かな植物が自生し。浄化の水があふれた。
そして、ノムレーシは。星の再生を促進するべく。
まずは精霊の手足となって働く、妖精を作り出した。
これは、ぼくの中にあった知識。
地球で仕入れた、漫画やアニメやゲームの記憶だった。
ノムレーシは、あまり賢くはなかったが。
ぼくの知っているものを、ぼくのエネルギーを使って生み出すことができたのだ。
だから、水の中に魚を棲まわせ。
多種類の植物に、実を結実させ。
空を鳥が飛んで。
いろいろな動植物が生存できる大地になると。そこに、人間や、魔族や、魔獣や、獣人や、エルフという。多種多様な知的生命体を作り出したのだった。
ってことで、この星は。
すべての生物が、快適に生活できる土地に生まれ変わった。
そして。その地に、人族や魔族は国を作り。文明を築いていくのだった。
あ、天使の敵、悪魔という存在は、ありえないと言ったけど。
この星の魔族や悪魔は、天使に敵対する者、ではないんだよね?
地球の創作物を参考にして出来た、生命だから。
神の介入がないということは。
ぼくとノムレーシが生み出したものは、すべて神の許容範囲内ということ。
なので人間と同じく、魔族も、神の子供ということですね?
はぁ、良かった。一時はどうなることかと思いましたが。
なんとか舞台は整い直せましたね?
つか、神様。自分で作って、うまくできないからってそれを壊そうとするの。
幼児ですか!?
中途半端で放り出すの。禁止。
どんな生き物も、最後まで面倒を見なければいけないのですからねっ!
まぁ、でも。ようやく落ち着いたこの星も。どうやら、誰かが見守っているようだから。
これ以上悪くはならないでしょう。
あ、創世神話はね。ノムレーシが、妖精に伝えた話だから。
まぁ、真実ではあるんだけど。
ちょっと盛っているよね?
綺麗に表現したり、大袈裟にしたり。そんな感じだよね?
もう、なんで。ぼくのこと創世神とか言っちゃうのぉ? そんなんじゃないのにぃ。
というわけで。ぼくは、創世神なんて大それたものではありません。
むしろ、災いの者です。
だから、ぼくは。ぼくの失態で失われた地が、回復したのを見届けて。
眠りにつくつもりだった。
だって、もう。
あんなに、大きかったのに。
人の指先くらいに、小さくなってしまったんだ。
ぼくの中にあった神気も、この大地にすべて出し尽くしましたよ?
「そんな、悲しいことを言わないで? 千年以上もかけて、一緒にこの地を作り上げた、お友達ではないか?」
ノムレーシが、そう言ったような気がした。
「でも、ぼくは。ぼくが落ちたことで。それまで、この地に息づいていたものたちの。命を奪ってしまったから。償いをしなければ」
「償いは、充分果たしているでしょう? この地は、とても立派に輝いている。だから。もう罪滅ぼしは終わりにしよう。力を使い果たして死ぬなんて。そこまでしなくていい」
熾天使サリエル、としての記憶は。ここで終了です。
ぼくはそのあと卵になって。ノムレーシがそれを、妖精族に託したみたい。
天使の卵とは、言わなかったみたいだけど。
ノムレーシは口数が少ないからね?
まぁ、そんなこんなで。ぼくの知識の中に、地球の創作物の記憶まであったから。
この星は、地球そのままじゃなくて。
地球には存在しなかった、魔族や、魔法や、ユニコーンみたいなファンタジー生物まで。ごちゃまぜな世界に、なっちゃったみたいだね?
以前、インナーが。魔獣と聖獣が一緒で、なんでもアリな世界だね? って言ったけど。
すみません。ぼくのせいだったみたいですぅ。
っんももや、サクラーを作れたのも。ノムレーシが、まだぼくを友達認定しているからみたい。
ありがとう、ノムレーシ。
でもさ。スズメガズス?
あれは。ぼくのせいじゃないよね?
スズメは、知ってるけど。
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