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115 死体なき殺人事件
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◆死体なき殺人事件
なんか、よくわからないけど。ぼくの出生の秘密は、勇者が明らかにしてくれました。
母上はぼくの父親が誰か、ちっとも教えてくれなかったけれど。
たぶん教えなかったのではなく、知らなかったのでしょうね?
気絶している間に卵を植え付けられてしまったので…どうやったのかは、聞きませんけどぉ。
「あーーっ、あんた、どっかで見たような気がしていたけど。トモキって、芸能人の相沢友樹じゃね?! 急に行方不明になって、死体なき殺人事件だって、当時話題になったのよねぇ??」
そしたらアリスが、なんかよくわからないことを言い出した。
もう、今それ言うことぉ? 空気を読んで、アリスっ。
「えっ、君も召喚されたの? でもこの国の顔をしているから、まさかの転生者?」
「そうなのっ。私、野口こずえですぅ。一般人だから知らないでしょうがぁ」
「つか、死体なき殺人って、なにぃ? 俺、殺されたことになってんのぉ?」
「ワイドショーではそんな感じでしたよ? 薬の売人と揉めたとか? ヤバいファンが死体を後生大事に持っているんじゃないかとか? 実は某国のスパイで政府に秘密裏に屠られたとかぁ?」
「なにそれぇ、ウケるぅ。みんな漫画の見過ぎだって。ま、勇者召喚されてっから、事実は小説より奇なりってかぁ?」
ゲラゲラっと、笑い合って。なんだかアリスと勇者の話が弾んでいます。
「ちょっと、勇者さん。今はその話じゃなくてぇ!」
ぼくが、話を戻そうとしたら。
勇者は、首をかしげたが。話を戻した。
「なんだっけ? あぁ、そうだ。俺がここに来た理由を言わないとな?」
それです。もう、しっかりしてくださいっ。
「ここ最近、人間の干からび事件が森で五件ほどあって、騒ぎになってな? でも先週、森に接していた村がとうとう壊滅した。百人ほどが干からびていたんだ。聞き込みによると、魔国でも同様の事件が起きているらしいじゃん? さらにそれが、魔族の仕業ではないかって噂が、エクバランで瞬く間に広がったんだ。それで王様が、また魔王を退治しろなんて言い出してな?」
勇者は、心底面倒くさそうな顔で鼻に筋を立てた。
「別に魔王がやったわけじゃなくね? でもあの王様は。魔族イコール魔王って感じで。話、聞かねぇんだわ。で、魔国はどうなってんのかと思って。魔王に話を聞きに来たわけなんだ。まぁ若干名、出世欲に支配された剣士が先走って迷惑をかけたが。そこは、すんませんでしたぁ…」
相変わらずの軽いテイストで。気が抜けます。
でも、勇者は。魔王を討伐しに来たわけではないみたい。
そこはホッとしました。
ディエンヌは、ぼくを勇者に殺してもらいたかったみたいだけど。
この勇者には殺意がなさそうです。
話の通じる人のようで、良かったですぅ。
「俺は勇者だが、有無を言わせず魔族を皆殺しにする気はない。ただ、人に危害を及ぼす者は捨て置けないので。容疑者がいるのなら引き渡してもらいたい。犯人を連れ帰れば、エクバランの王様も気が済むだろう」
今までの軽薄さを引き締めて。勇者が、真面目な顔でそう言うので。
ぼくは兄上に、こっそりと報告をします。
「兄上、先ほどディエンヌは。クレスタの干からびの件を白状しました。魔王城の職員も生気を吸われて、動けない状態みたいですし。彼女は五百人の生気を取り込んでいると、豪語していまして…。現在も魔王様の生気を取り込んだディエンヌが、母上と一緒にサキュバスの催眠を魔王様にかけているらしいのです。干からびの件は、ふたりの仕業で…確定のようです」
ぼくが、天使の卵だったことで。
母上ともディエンヌとも、血のつながりはないようだが。
それでも、家族だと思っていた人たちの悪事を告げるのは。胸が苦しい気持ちになります。
だけど、もうそんなことは言っていられません。
少なくとも、五百人の犠牲者がいるようですからね?
「なるほど。勇者よ、この件の犯人は。先ほど勇者が卵を植え付けたという、サキュバスのエレオノラとその娘のディエンヌである。ふたりをそちらに引き渡すのは、構わない。彼女たちは、今このときも、魔王城で悪事を働いているらしい。これから捕縛しに行ってくるので、しばし待たれよ」
「それには、及ばない」
レオンハルト兄上が勇者に告げたとき。
謁見の間に、凛とした声が響いた。
それは、最高にドヤ顔している魔王様だった。
玉座の方に歩いてきた魔王様は。
特に生気を吸われて、げっそりしている…なんて様子もなく。
いつものように尊大に、どっかりと玉座に腰かけ。長い足を組んだ。
あぁ、玉座には、兄上からいただいた宝玉を置いていたのですが。
お尻に敷かれてしまっていないかなぁ?
しかし、空気を読んで。今は黙っていましょう。
そして、階段の下に衛兵が連行してきたのは。
罪人にかけられる魔力制御の手錠をつけられた、ディエンヌとエレオノラ母上です。
動きづらそうにしているのは、魔王様がさらに魔力で彼女たちをおさえ込んでいるかららしい。
「話は聞いたぞ? 勇者よ。その者らを引き渡そう。今このときから。ドラベチカ家は、エレオノラとディエンヌとの縁を切る。この者らは魔王家とは一切関わりはない。勇者よ、そちらの国の法で裁きをくだすがよい」
「そんなっ、魔王様ぁ」
エレオノラ母上は、魔王の慈悲にすがるが。
魔王は、もうにべもない、という感じです。
「はぁ? 魔王の俺に小賢しい魔法なんぞをかけやがって。おままごとの間は許してやれるが。ディエンヌ、エレオノラ、おまえたちはいささかやり過ぎたようだな?」
母上が魔王城を去るとき。魔王様は憐憫の情を垣間見せていたけれど。
もう虫けらを見るような冷たい目で、母上と妹を見やるのだった。
「というか、魔王よ。あなたが見た目優先で彼女たちを野放しにしていたから、このような大事になったのだが?」
「可愛い悪事は、子猫がじゃれているみたいで可愛いが。シャレにならん悪事は、腐ったミカンのごとくシャレにならんというだけだ。簡単だろが?」
兄上の苦言に、魔王はシレッと答えた。
つか、ミカンは魔国でも木箱で運ばれているので。腐ったミカンは他のミカンも腐らせる理論は、魔国でも通じるのですっ。
いえ、話の肝はそこではなくて。
魔王様が、母と妹を腐ったミカンのごとく見限ったということです。
自業自得なところはありますが。
魔王様は、やはり冷酷非情な魔王様。
一度、懐に入れた人物も。益にならねば、すっぱり切り離せるのですね?
「ま、魔王様? サキュバスの催眠をかけられ、さらにディエンヌに生気を吸われて、深く昏倒していると聞いていましたが。お体は大丈夫なのですか?」
ぼくは心配になって、父上にたずねます。
だって、どこか干からびていたら大変ですぅ。
ディエンヌは魔王の生気を取り込んで、力を得。魔王に魔法をかけたと言っていた。
眠っている魔王なんか簡単に殺せる、みたいなことを言っていたから。
ぼくは魔王が人質に取られてしまったと思って。彼女に従ったのに。
すると魔王様は、鼻で笑った。
「ふふん、あのような小娘に少し生気を吸われたからといって、どうってことはない。俺の美貌に、一筋のシワを入れることすらできはしないさ。深く昏倒などしていない。良い夢を見せてもらって、まぁまぁ楽しかったぞ? しかし。小娘に殺意が見え隠れし始めたから。普通に起きて押さえ込んでやった。魔王に殺意を向けたら、いかんだろ?」
生気を取り込んで魔力に変換できる。いわゆる無尽蔵に魔力を作り出せるディエンヌを。小娘呼ばわりして。魔王様は、簡単に制圧できるのだ。
彼女が生気をたくさん吸ったつもりでも。
それは魔王にとって。ほんのひと雫ほどのものなのだろう。
魔国一の強者で、魔力量も甚大である魔王様は。やはり、最強なのだった。
「つか、この可愛い子ちゃんは誰だ? 俺の嫁にしてやろう。早速、寝所へ参ろうか?」
インナーがエロイと騒いでいた、魅惑の流し目で。
魔王様が、ぼくを口説いてきましたぁ??
いけません。
兄上の眉間に、ビシリと深いしわが刻まれましたっ。
次期魔王がバリバリドッカーンする前に。とっとと種明かししましょう。
「サリエルです」
「は?」
今のぼくを見て。ぽっちゃりのぼくを想像できなかったようで。
魔王様の顔に、大きな疑問符が浮かぶ。
なので、ぼくは。ラーディン兄上を指差します。
「ビフォー」
ラーディンは、ビロリンとした皮をつなげ合わせて、ぼくを表す。
ぼくの皮は、律儀に、真っ二つになった白い制服にまだ袖を通しております。
「そして、ぼくがアフターでございます。父上」
父上は、ぼくの顔と皮を交互に見比べて。
いやいや、まさかまさか。とつぶやくのだった。
「魔王よ、私の婚約者のサリエルを本気で嫁に望むのなら。全面対決も辞さないがぁ??」
赤いツノを出した兄上に、怒られて。
「いや、さ? サリエルかぁ? ちょっと見ない間に、お、大きくなったなぁ。ははは」
魔王様は、そう言って誤魔化し。身を縮めます。
さすがに、兄上と争ってまでとは思わなかったようで。それは良かったのですが。
もうっ。今は母と妹の処遇を巡る、シリアスな場面でもあるのに。
元嫁の前で、他人を口説くとか。好色も極まれりで。呆れてしまいます。
それに、備考欄の通り、息子の嫁に手を出そうとするとは…。
よもや、元ぽっちゃりのぼくにまで、手を伸ばすとは…。
嫁…まだ、嫁ではないですがぁ。照れ照れ。
ですが。魔王様は、やはり要注意でございますねっ?
なんか、よくわからないけど。ぼくの出生の秘密は、勇者が明らかにしてくれました。
母上はぼくの父親が誰か、ちっとも教えてくれなかったけれど。
たぶん教えなかったのではなく、知らなかったのでしょうね?
気絶している間に卵を植え付けられてしまったので…どうやったのかは、聞きませんけどぉ。
「あーーっ、あんた、どっかで見たような気がしていたけど。トモキって、芸能人の相沢友樹じゃね?! 急に行方不明になって、死体なき殺人事件だって、当時話題になったのよねぇ??」
そしたらアリスが、なんかよくわからないことを言い出した。
もう、今それ言うことぉ? 空気を読んで、アリスっ。
「えっ、君も召喚されたの? でもこの国の顔をしているから、まさかの転生者?」
「そうなのっ。私、野口こずえですぅ。一般人だから知らないでしょうがぁ」
「つか、死体なき殺人って、なにぃ? 俺、殺されたことになってんのぉ?」
「ワイドショーではそんな感じでしたよ? 薬の売人と揉めたとか? ヤバいファンが死体を後生大事に持っているんじゃないかとか? 実は某国のスパイで政府に秘密裏に屠られたとかぁ?」
「なにそれぇ、ウケるぅ。みんな漫画の見過ぎだって。ま、勇者召喚されてっから、事実は小説より奇なりってかぁ?」
ゲラゲラっと、笑い合って。なんだかアリスと勇者の話が弾んでいます。
「ちょっと、勇者さん。今はその話じゃなくてぇ!」
ぼくが、話を戻そうとしたら。
勇者は、首をかしげたが。話を戻した。
「なんだっけ? あぁ、そうだ。俺がここに来た理由を言わないとな?」
それです。もう、しっかりしてくださいっ。
「ここ最近、人間の干からび事件が森で五件ほどあって、騒ぎになってな? でも先週、森に接していた村がとうとう壊滅した。百人ほどが干からびていたんだ。聞き込みによると、魔国でも同様の事件が起きているらしいじゃん? さらにそれが、魔族の仕業ではないかって噂が、エクバランで瞬く間に広がったんだ。それで王様が、また魔王を退治しろなんて言い出してな?」
勇者は、心底面倒くさそうな顔で鼻に筋を立てた。
「別に魔王がやったわけじゃなくね? でもあの王様は。魔族イコール魔王って感じで。話、聞かねぇんだわ。で、魔国はどうなってんのかと思って。魔王に話を聞きに来たわけなんだ。まぁ若干名、出世欲に支配された剣士が先走って迷惑をかけたが。そこは、すんませんでしたぁ…」
相変わらずの軽いテイストで。気が抜けます。
でも、勇者は。魔王を討伐しに来たわけではないみたい。
そこはホッとしました。
ディエンヌは、ぼくを勇者に殺してもらいたかったみたいだけど。
この勇者には殺意がなさそうです。
話の通じる人のようで、良かったですぅ。
「俺は勇者だが、有無を言わせず魔族を皆殺しにする気はない。ただ、人に危害を及ぼす者は捨て置けないので。容疑者がいるのなら引き渡してもらいたい。犯人を連れ帰れば、エクバランの王様も気が済むだろう」
今までの軽薄さを引き締めて。勇者が、真面目な顔でそう言うので。
ぼくは兄上に、こっそりと報告をします。
「兄上、先ほどディエンヌは。クレスタの干からびの件を白状しました。魔王城の職員も生気を吸われて、動けない状態みたいですし。彼女は五百人の生気を取り込んでいると、豪語していまして…。現在も魔王様の生気を取り込んだディエンヌが、母上と一緒にサキュバスの催眠を魔王様にかけているらしいのです。干からびの件は、ふたりの仕業で…確定のようです」
ぼくが、天使の卵だったことで。
母上ともディエンヌとも、血のつながりはないようだが。
それでも、家族だと思っていた人たちの悪事を告げるのは。胸が苦しい気持ちになります。
だけど、もうそんなことは言っていられません。
少なくとも、五百人の犠牲者がいるようですからね?
「なるほど。勇者よ、この件の犯人は。先ほど勇者が卵を植え付けたという、サキュバスのエレオノラとその娘のディエンヌである。ふたりをそちらに引き渡すのは、構わない。彼女たちは、今このときも、魔王城で悪事を働いているらしい。これから捕縛しに行ってくるので、しばし待たれよ」
「それには、及ばない」
レオンハルト兄上が勇者に告げたとき。
謁見の間に、凛とした声が響いた。
それは、最高にドヤ顔している魔王様だった。
玉座の方に歩いてきた魔王様は。
特に生気を吸われて、げっそりしている…なんて様子もなく。
いつものように尊大に、どっかりと玉座に腰かけ。長い足を組んだ。
あぁ、玉座には、兄上からいただいた宝玉を置いていたのですが。
お尻に敷かれてしまっていないかなぁ?
しかし、空気を読んで。今は黙っていましょう。
そして、階段の下に衛兵が連行してきたのは。
罪人にかけられる魔力制御の手錠をつけられた、ディエンヌとエレオノラ母上です。
動きづらそうにしているのは、魔王様がさらに魔力で彼女たちをおさえ込んでいるかららしい。
「話は聞いたぞ? 勇者よ。その者らを引き渡そう。今このときから。ドラベチカ家は、エレオノラとディエンヌとの縁を切る。この者らは魔王家とは一切関わりはない。勇者よ、そちらの国の法で裁きをくだすがよい」
「そんなっ、魔王様ぁ」
エレオノラ母上は、魔王の慈悲にすがるが。
魔王は、もうにべもない、という感じです。
「はぁ? 魔王の俺に小賢しい魔法なんぞをかけやがって。おままごとの間は許してやれるが。ディエンヌ、エレオノラ、おまえたちはいささかやり過ぎたようだな?」
母上が魔王城を去るとき。魔王様は憐憫の情を垣間見せていたけれど。
もう虫けらを見るような冷たい目で、母上と妹を見やるのだった。
「というか、魔王よ。あなたが見た目優先で彼女たちを野放しにしていたから、このような大事になったのだが?」
「可愛い悪事は、子猫がじゃれているみたいで可愛いが。シャレにならん悪事は、腐ったミカンのごとくシャレにならんというだけだ。簡単だろが?」
兄上の苦言に、魔王はシレッと答えた。
つか、ミカンは魔国でも木箱で運ばれているので。腐ったミカンは他のミカンも腐らせる理論は、魔国でも通じるのですっ。
いえ、話の肝はそこではなくて。
魔王様が、母と妹を腐ったミカンのごとく見限ったということです。
自業自得なところはありますが。
魔王様は、やはり冷酷非情な魔王様。
一度、懐に入れた人物も。益にならねば、すっぱり切り離せるのですね?
「ま、魔王様? サキュバスの催眠をかけられ、さらにディエンヌに生気を吸われて、深く昏倒していると聞いていましたが。お体は大丈夫なのですか?」
ぼくは心配になって、父上にたずねます。
だって、どこか干からびていたら大変ですぅ。
ディエンヌは魔王の生気を取り込んで、力を得。魔王に魔法をかけたと言っていた。
眠っている魔王なんか簡単に殺せる、みたいなことを言っていたから。
ぼくは魔王が人質に取られてしまったと思って。彼女に従ったのに。
すると魔王様は、鼻で笑った。
「ふふん、あのような小娘に少し生気を吸われたからといって、どうってことはない。俺の美貌に、一筋のシワを入れることすらできはしないさ。深く昏倒などしていない。良い夢を見せてもらって、まぁまぁ楽しかったぞ? しかし。小娘に殺意が見え隠れし始めたから。普通に起きて押さえ込んでやった。魔王に殺意を向けたら、いかんだろ?」
生気を取り込んで魔力に変換できる。いわゆる無尽蔵に魔力を作り出せるディエンヌを。小娘呼ばわりして。魔王様は、簡単に制圧できるのだ。
彼女が生気をたくさん吸ったつもりでも。
それは魔王にとって。ほんのひと雫ほどのものなのだろう。
魔国一の強者で、魔力量も甚大である魔王様は。やはり、最強なのだった。
「つか、この可愛い子ちゃんは誰だ? 俺の嫁にしてやろう。早速、寝所へ参ろうか?」
インナーがエロイと騒いでいた、魅惑の流し目で。
魔王様が、ぼくを口説いてきましたぁ??
いけません。
兄上の眉間に、ビシリと深いしわが刻まれましたっ。
次期魔王がバリバリドッカーンする前に。とっとと種明かししましょう。
「サリエルです」
「は?」
今のぼくを見て。ぽっちゃりのぼくを想像できなかったようで。
魔王様の顔に、大きな疑問符が浮かぶ。
なので、ぼくは。ラーディン兄上を指差します。
「ビフォー」
ラーディンは、ビロリンとした皮をつなげ合わせて、ぼくを表す。
ぼくの皮は、律儀に、真っ二つになった白い制服にまだ袖を通しております。
「そして、ぼくがアフターでございます。父上」
父上は、ぼくの顔と皮を交互に見比べて。
いやいや、まさかまさか。とつぶやくのだった。
「魔王よ、私の婚約者のサリエルを本気で嫁に望むのなら。全面対決も辞さないがぁ??」
赤いツノを出した兄上に、怒られて。
「いや、さ? サリエルかぁ? ちょっと見ない間に、お、大きくなったなぁ。ははは」
魔王様は、そう言って誤魔化し。身を縮めます。
さすがに、兄上と争ってまでとは思わなかったようで。それは良かったのですが。
もうっ。今は母と妹の処遇を巡る、シリアスな場面でもあるのに。
元嫁の前で、他人を口説くとか。好色も極まれりで。呆れてしまいます。
それに、備考欄の通り、息子の嫁に手を出そうとするとは…。
よもや、元ぽっちゃりのぼくにまで、手を伸ばすとは…。
嫁…まだ、嫁ではないですがぁ。照れ照れ。
ですが。魔王様は、やはり要注意でございますねっ?
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