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88 虎視眈々っ気が薄れてしまいますわぁ?
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◆虎視眈々っ気が薄れてしまいますわぁ?
朝からスズメと邂逅したぼくは。ちょっとぐったりしたけれど。まぁ、良いでしょう。
何事もなかったかのように、朝食をみなさんで囲んで。
そのあと、気を取り直して。バッキャスの防衛について学びます。
要塞の長い廊下をファウストの案内で歩いていくと。立派な闘技場のようなところに出て、そこでは兵士のみなさんが剣を交わして訓練しています。
「剣闘技場です。優秀な腕前を持ちながら年かさになり引退した騎士に、指導をお願いしています。たまには父も訓練に参加いたします。三大公爵に名を連ねていますが。貴族とのやり取りよりも、体を動かしている方が性に合っているようで」
「強力な魔力を持っていても、政治に長けているとは限りませんものね? 魔王様も、失礼ながらそのタイプでございます。でも、あの圧倒的な魔力量で、人々を支配しているのですから。大事な方ではあるのですよ」
ぼくが言うと。シュナイツもマルチェロも、心当たりがあるように重々しくうなずいて。
魔王家もバッキャスもルーフェンもベルフェレスも。魔力量は潤沢でも、性格が自由人な方が多いのでしょう。
苦労しているようですね?
この世界には、インナーの世界的、強力な機械式武器は存在していないが。
バッキャスの武器庫には。石を遠くに投げて威嚇する武器や。ダイナマイトのような爆弾も置いてあった。
「でも、バッキャスの力は。ひとりひとりの研鑽された武術によるところが大きい。結局は人の力が一番戦力になるのですよ」
魔国に攻め入ってくる敵と相対するのは。やはり人なのだと。ファウストに教えられたような気がした。
人々が争うことのないように。隣国との対話や、戦争を回避する工作は、必要で大事なことだと。思い知らされました。
しかし、そうなると。朝のスズメの言葉がじわじわと効いてきます。
魔族が、人族を襲っているかもしれないって…。
旅程は半分を過ぎました。早く帰って。兄上に報告したいですね?
それに、ずっとホームシックで。兄上に早く会いたいしぃ。
旅自体は、とても楽しいし。学ぶことも多いですが。それとこれとは別、みたいな?
あと、もうちょっとの我慢です。
昼間はエーデルリンクのいろいろなところを視察して。そして、夜は。また夜会です。
魔国の最北端にあるバッキャスの夜会は、大盛況です。
辺境ゆえに、王都になかなか来られない貴族の方たちが大勢いまして。ぼくもひっきりなしに挨拶をしなければならず、大変でございました。
さらに、今回は。ダンスパーティも開催されまして。
きらびやかな御令嬢が。やはり、シュナイツ、マルチェロ、ファウスト、エドガーの元に殺到して、ダンスを誘うのだった。
アリスも深窓の侯爵令嬢でしたから。はじめてお目にかかる人も多くて。
彼女の美しさに誘われて、男性陣がダンスのお伺いを立てに来ていますよ?
婚約者が帯同しているシュナイツとマリーベルは、お断りしてもいいのです。
あと。兄上の婚約者であるぼくもね?
つか。ぼくにはダンスを誘う御令嬢はいませんけどぉ。
「パンちゃん、私とダンスをしてくださいませ?」
ピンクのドレスを身につけたマリーベルが、可愛らしく手を差し出してくる。
わぁ、ぼくをダンスを誘う御令嬢がいましたよぉ?
すでに身内感満載ですけど。
「申し訳ありません、マリーベル。兄上に、公の場でのダンスは丁重にお断りしなさいと申し付けられておりますので」
「まぁ。公爵令嬢である私の誘いを断るなんて。パンちゃんたら、無粋ですこと」
本当に怒っているのではなくて、マリーはからかうように言うのですが。
ぼくは。困ってしまいます。
「でもね。みなさまの前でダンスをするときは。やはり、兄上とが良いのです」
もう少し身長が大きくなったら。兄上と大きなホールで、ダンスを踊りたい。それが夢なのですぅぅぅ。
「もう、仕方がないわねぇ? みなさんの前でパンちゃんと踊って、既成事実で囲い込んで、外堀を埋められると思いましたのにぃ。そのようにレオンハルトお兄様をお慕いしているところを見せつけられてしまっては、虎視眈々っ気が薄れてしまいますわぁ?」
怖っわ。
あらぁ、サリエルはレオンハルト様と婚約しているのに、マリーと踊るなんて、本命はそちらなのかしらぁ?
なんて、みなさまに思わせる作戦だったのですね? 怖っわ。
つか、虎視眈々っ気って、なんですか? そのような言葉はありませんからぁ。
まぁ、それはともかく。
マリーと一緒に、立食形式の御馳走を給仕の人に取ってもらっていたら。
いつの間にか後ろにアリスが立っていて。耳元にこっそり言われた。
「サリエル、サリエル。バルコニーに出ましょう。早く。急いでっ」
そんなに焦ってどうしたのですか? なにかあったのですかぁ?
朝からスズメと邂逅したぼくは。ちょっとぐったりしたけれど。まぁ、良いでしょう。
何事もなかったかのように、朝食をみなさんで囲んで。
そのあと、気を取り直して。バッキャスの防衛について学びます。
要塞の長い廊下をファウストの案内で歩いていくと。立派な闘技場のようなところに出て、そこでは兵士のみなさんが剣を交わして訓練しています。
「剣闘技場です。優秀な腕前を持ちながら年かさになり引退した騎士に、指導をお願いしています。たまには父も訓練に参加いたします。三大公爵に名を連ねていますが。貴族とのやり取りよりも、体を動かしている方が性に合っているようで」
「強力な魔力を持っていても、政治に長けているとは限りませんものね? 魔王様も、失礼ながらそのタイプでございます。でも、あの圧倒的な魔力量で、人々を支配しているのですから。大事な方ではあるのですよ」
ぼくが言うと。シュナイツもマルチェロも、心当たりがあるように重々しくうなずいて。
魔王家もバッキャスもルーフェンもベルフェレスも。魔力量は潤沢でも、性格が自由人な方が多いのでしょう。
苦労しているようですね?
この世界には、インナーの世界的、強力な機械式武器は存在していないが。
バッキャスの武器庫には。石を遠くに投げて威嚇する武器や。ダイナマイトのような爆弾も置いてあった。
「でも、バッキャスの力は。ひとりひとりの研鑽された武術によるところが大きい。結局は人の力が一番戦力になるのですよ」
魔国に攻め入ってくる敵と相対するのは。やはり人なのだと。ファウストに教えられたような気がした。
人々が争うことのないように。隣国との対話や、戦争を回避する工作は、必要で大事なことだと。思い知らされました。
しかし、そうなると。朝のスズメの言葉がじわじわと効いてきます。
魔族が、人族を襲っているかもしれないって…。
旅程は半分を過ぎました。早く帰って。兄上に報告したいですね?
それに、ずっとホームシックで。兄上に早く会いたいしぃ。
旅自体は、とても楽しいし。学ぶことも多いですが。それとこれとは別、みたいな?
あと、もうちょっとの我慢です。
昼間はエーデルリンクのいろいろなところを視察して。そして、夜は。また夜会です。
魔国の最北端にあるバッキャスの夜会は、大盛況です。
辺境ゆえに、王都になかなか来られない貴族の方たちが大勢いまして。ぼくもひっきりなしに挨拶をしなければならず、大変でございました。
さらに、今回は。ダンスパーティも開催されまして。
きらびやかな御令嬢が。やはり、シュナイツ、マルチェロ、ファウスト、エドガーの元に殺到して、ダンスを誘うのだった。
アリスも深窓の侯爵令嬢でしたから。はじめてお目にかかる人も多くて。
彼女の美しさに誘われて、男性陣がダンスのお伺いを立てに来ていますよ?
婚約者が帯同しているシュナイツとマリーベルは、お断りしてもいいのです。
あと。兄上の婚約者であるぼくもね?
つか。ぼくにはダンスを誘う御令嬢はいませんけどぉ。
「パンちゃん、私とダンスをしてくださいませ?」
ピンクのドレスを身につけたマリーベルが、可愛らしく手を差し出してくる。
わぁ、ぼくをダンスを誘う御令嬢がいましたよぉ?
すでに身内感満載ですけど。
「申し訳ありません、マリーベル。兄上に、公の場でのダンスは丁重にお断りしなさいと申し付けられておりますので」
「まぁ。公爵令嬢である私の誘いを断るなんて。パンちゃんたら、無粋ですこと」
本当に怒っているのではなくて、マリーはからかうように言うのですが。
ぼくは。困ってしまいます。
「でもね。みなさまの前でダンスをするときは。やはり、兄上とが良いのです」
もう少し身長が大きくなったら。兄上と大きなホールで、ダンスを踊りたい。それが夢なのですぅぅぅ。
「もう、仕方がないわねぇ? みなさんの前でパンちゃんと踊って、既成事実で囲い込んで、外堀を埋められると思いましたのにぃ。そのようにレオンハルトお兄様をお慕いしているところを見せつけられてしまっては、虎視眈々っ気が薄れてしまいますわぁ?」
怖っわ。
あらぁ、サリエルはレオンハルト様と婚約しているのに、マリーと踊るなんて、本命はそちらなのかしらぁ?
なんて、みなさまに思わせる作戦だったのですね? 怖っわ。
つか、虎視眈々っ気って、なんですか? そのような言葉はありませんからぁ。
まぁ、それはともかく。
マリーと一緒に、立食形式の御馳走を給仕の人に取ってもらっていたら。
いつの間にか後ろにアリスが立っていて。耳元にこっそり言われた。
「サリエル、サリエル。バルコニーに出ましょう。早く。急いでっ」
そんなに焦ってどうしたのですか? なにかあったのですかぁ?
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第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
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