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83 なにやら脇腹がこそばゆい
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◆なにやら脇腹がこそばゆい
シュナイツやシルビア義母上から、ぼくの話を聞いていたのか。ベルフェレス公爵はとても友好的に、ぼくに接してくださったので、良かったです。
まぁ、はく製うんぬん話には、少し顔を青くしてしまいましたけれどね?
きっと高位貴族ジョークだったのでしょう。あはは。
最初の訪問先ということもあり、少し緊張しましたが。特に何事もなく、ご挨拶は済み。
ぼくら一行は、笑顔でドッテルベンを後にしたのでございました。
そしてふたたび。町を出てから少しした後に、馬車が止まり。今度はエドガーがぼくの馬車に乗り込んできたのです。
「サリエル様、次のフラフワムの町まではぼくがご一緒させていただきます。宰相である父から、宿題という名の質問状を預かっていまして。では早速、第一問! ババン。フラフワムは穀倉地帯ですが。近年害虫の被害に悩まされています。サリエル様はどのような対処をいたしますか?」
急に始まった、クイズというか政治問題というか、そのようなことを聞かれ。
ぼくは困惑しつつも、短い首をひねる。
「うーーん。これは、まだ魔国では実施されていないものですが。ドクダミなどの匂いの強烈なものを煎じて畑にまくと、虫が寄らなくなり。かつ、作物にも影響が出ない。と南の国の書物に載っていました。試す価値はあるかと思いますが?」
「なるほど。では、第二問。デデン…」
そうして、ぼくは。宰相の質問を次々とクリアしていき。
クイズに夢中になっていたら、あっという間にフラフワム侯爵領についたのだった。
勉強とか、頭を動かしていると。時間がすごいスピードで過ぎていくような気がいたしますね?
「いやぁ、なかなかに有意義な時間でございました。時間が空いた折は、まだ質問は残っておりますから。それに答えていただけると幸いです」
エドガーはそう言うけど。いえ。しばらくはご遠慮願います。
だって、旅先で勉強するのは野暮だしぃ。フラフワムの景色もあまり見られなかったのです。せっかくの旅行なのに、もったいないでしょう?
フラフワム領をおさめるパーキン侯爵は、レオンハルト兄上と親しいようで。
ぼくのことも優しく気さくに迎え入れてくださいました。
この道中、どの領、どの貴族の屋敷に寄るのか、というのは。兄上が吟味して計画を立てたものだから。
いわゆる、兄上の息がかかっている貴族の方たちが多いのです。
ゆえに、魔王様と血脈ではないぼくにも、みなさんおおむね友好的なのだった。
兄上はぼくが傷つくことのないよう、ちゃんと手配をしているようです。
不肖な弟で、お世話をおかけいたします。
「サリエル様、ようやくお目にかかれましたな? レオンハルト様が屋敷の奥の奥に隠している、聡明なご婚約者様だとうかがっておりますよ? 目に入れても痛くないそうですなぁ? はっはっは」
「そのような…それは、大袈裟でございますが。兄上の力になれるよう精進している途中でございますので。なにとぞお力添えをいただけると、ありがたく思います」
挨拶を済ませると、エドガーが侯爵に話しかけた。
「メイベル宰相が息子、エドガーでございます。道中フラフワムの害虫被害について、サリエル様とお話させていただきまして。有意義な提案があったのですが…」
「なに? それはぜひ聞かせていただきたい」
エドガーがぼくを立ててくれて。先ほどの殺虫液のことについて話し始めた。
「なんと、そのような方法が? 遠い国の畑事情にまで詳しいとは。聞きしに勝る聡明さですな? 感服いたしましたぞ? サリエル様」
侯爵はすぐにも試させていただきますと、とても喜んでくれた。
いっぱい褒められてしまって。なにやら脇腹がこそばゆいですが。喜んでいただけて良かったです。
殺虫薬の効果や、使用後の結果など。兄上に知らせてくださいませと。侯爵にお願いしておきました。
そうして、二日目のご挨拶と夜会も、平穏無事に済ませることができたのでした。
「今回フラフワムでの訪問がうまくいったのは、エドガーのお手柄ですね?」
と言って、エドガーを褒めたら。
エドガーは眼鏡のツルを指で押し上げ、押し上げ、押し上げて。
「はぁぁ? べべべ、別に、サリエル様の為にやったわけじゃありませんからぁ? 害虫に悩まされる民たちを放っておけなかっただけですからぁ? つか、これはサリエル様が言い出すべきことだったんですからねぇ?」
と、ツンとダメ出しが出た。ふぇぇ。すみませぇん。
シュナイツやシルビア義母上から、ぼくの話を聞いていたのか。ベルフェレス公爵はとても友好的に、ぼくに接してくださったので、良かったです。
まぁ、はく製うんぬん話には、少し顔を青くしてしまいましたけれどね?
きっと高位貴族ジョークだったのでしょう。あはは。
最初の訪問先ということもあり、少し緊張しましたが。特に何事もなく、ご挨拶は済み。
ぼくら一行は、笑顔でドッテルベンを後にしたのでございました。
そしてふたたび。町を出てから少しした後に、馬車が止まり。今度はエドガーがぼくの馬車に乗り込んできたのです。
「サリエル様、次のフラフワムの町まではぼくがご一緒させていただきます。宰相である父から、宿題という名の質問状を預かっていまして。では早速、第一問! ババン。フラフワムは穀倉地帯ですが。近年害虫の被害に悩まされています。サリエル様はどのような対処をいたしますか?」
急に始まった、クイズというか政治問題というか、そのようなことを聞かれ。
ぼくは困惑しつつも、短い首をひねる。
「うーーん。これは、まだ魔国では実施されていないものですが。ドクダミなどの匂いの強烈なものを煎じて畑にまくと、虫が寄らなくなり。かつ、作物にも影響が出ない。と南の国の書物に載っていました。試す価値はあるかと思いますが?」
「なるほど。では、第二問。デデン…」
そうして、ぼくは。宰相の質問を次々とクリアしていき。
クイズに夢中になっていたら、あっという間にフラフワム侯爵領についたのだった。
勉強とか、頭を動かしていると。時間がすごいスピードで過ぎていくような気がいたしますね?
「いやぁ、なかなかに有意義な時間でございました。時間が空いた折は、まだ質問は残っておりますから。それに答えていただけると幸いです」
エドガーはそう言うけど。いえ。しばらくはご遠慮願います。
だって、旅先で勉強するのは野暮だしぃ。フラフワムの景色もあまり見られなかったのです。せっかくの旅行なのに、もったいないでしょう?
フラフワム領をおさめるパーキン侯爵は、レオンハルト兄上と親しいようで。
ぼくのことも優しく気さくに迎え入れてくださいました。
この道中、どの領、どの貴族の屋敷に寄るのか、というのは。兄上が吟味して計画を立てたものだから。
いわゆる、兄上の息がかかっている貴族の方たちが多いのです。
ゆえに、魔王様と血脈ではないぼくにも、みなさんおおむね友好的なのだった。
兄上はぼくが傷つくことのないよう、ちゃんと手配をしているようです。
不肖な弟で、お世話をおかけいたします。
「サリエル様、ようやくお目にかかれましたな? レオンハルト様が屋敷の奥の奥に隠している、聡明なご婚約者様だとうかがっておりますよ? 目に入れても痛くないそうですなぁ? はっはっは」
「そのような…それは、大袈裟でございますが。兄上の力になれるよう精進している途中でございますので。なにとぞお力添えをいただけると、ありがたく思います」
挨拶を済ませると、エドガーが侯爵に話しかけた。
「メイベル宰相が息子、エドガーでございます。道中フラフワムの害虫被害について、サリエル様とお話させていただきまして。有意義な提案があったのですが…」
「なに? それはぜひ聞かせていただきたい」
エドガーがぼくを立ててくれて。先ほどの殺虫液のことについて話し始めた。
「なんと、そのような方法が? 遠い国の畑事情にまで詳しいとは。聞きしに勝る聡明さですな? 感服いたしましたぞ? サリエル様」
侯爵はすぐにも試させていただきますと、とても喜んでくれた。
いっぱい褒められてしまって。なにやら脇腹がこそばゆいですが。喜んでいただけて良かったです。
殺虫薬の効果や、使用後の結果など。兄上に知らせてくださいませと。侯爵にお願いしておきました。
そうして、二日目のご挨拶と夜会も、平穏無事に済ませることができたのでした。
「今回フラフワムでの訪問がうまくいったのは、エドガーのお手柄ですね?」
と言って、エドガーを褒めたら。
エドガーは眼鏡のツルを指で押し上げ、押し上げ、押し上げて。
「はぁぁ? べべべ、別に、サリエル様の為にやったわけじゃありませんからぁ? 害虫に悩まされる民たちを放っておけなかっただけですからぁ? つか、これはサリエル様が言い出すべきことだったんですからねぇ?」
と、ツンとダメ出しが出た。ふぇぇ。すみませぇん。
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