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番外 レオンハルトの胸中 ⑨
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◆レオンハルトの胸中 ⑨
学園から帰宅途中、という時間に。
マルチェロが魔王城の私の執務室を訪ねてきた。
サリエルからは報告してもらえなかったが、新しいお友達がサリエルにできたことは、ファウストからもマルチェロからも報告を受けていた。
私に内緒のお友達なのかな? サリュ。だけど私に内緒は、不可能なのだよ?
「サリーの新しいお友達は、アリスティア・フランチェスカ侯爵令嬢。フランチェスカ侯爵自体は、自領の経営に重きを置く優良領主で、特に政治的な思惑などはなさそうです。彼女はすこぶる麗しい美少女ですが。サリーは色仕掛けに引っかかるような、おバカではありませんし。言葉のやり取りから見ても。どちらかと言うと、さばさばした悪友的な印象を受けました。しかし初対面に近い割に、あの打ち解け様は、謎です」
サリエルに近づく輩は、もれなくマルチェロとファウストの監査が入る。
家柄、素行、親の思惑、すべてがクリアでないと。
サリエルの婚約破棄虎視眈々勢、略してコシタンによってガッチガチに固められたお友達の輪には、入れないのだ。
魔王の三男は落ちこぼれ、という噂のせいで。サリエル自身と本当に友達になりたいという者は、少ない。
しかし、私の婚約者であるから。
次期魔王候補に近づく手段として、寄ってくる愚か者は後を絶たない。
そういう輩の排除を、マルチェロとファウストがやってくれているわけだ。
今のところ実に素晴らしい働きぶりで、満足しているが。
お友達候補の排除が、婚約破棄虎視眈々勢の、これ以上のコシタンを増やさないようにしたいという雑念によるものでないことを、せつに祈っている。
「サリーは彼女と文通をしていた、というようなことを言いまして。でも…レオンハルトの監視下で、それは不可能ですよね? サリーはうまく誤魔化せたとばかりに、ドヤ顔になっておりましたが。まぁ…誰ひとり、誤魔化せてはいません」
マルチェロは報告を続けた。
そうだ。不可能である。
ミケージャもエリンも、屋敷の働き手も介さぬ状態で。
ひとりで外に出たことのないサリエルが、誰かと秘密の文通をするなどということは不可能なのである。
たとえ、郵便配達の者と直接やり取りしたとしても。
屋敷の主である私に報告がないなどということは、あり得ないので。
普通の家ならともかく。
魔王の嫡男が住む屋敷のことだからな。
なにか異変があれば、すぐにも報告されることになっている。
「調べによると、アリスティアは。つい最近まで屋敷の奥で、誰とも接することなく隠すようにして育てられたのだとか。つまり彼女は。この学園に来るまで、自領から出たことはなかったのです。サリーも王都から出たことはないでしょう? しかし初対面にしては、サリーと親密すぎます。彼女はいったい何者なのでしょう?」
「短時間でよくここまで調べ上げたな? 素晴らしいよ、マルチェロ」
彼を手放しで褒めると。
彼はいつもの作り笑いを、ほんの少し華やかにした。
「外ならぬ、サリーのことですから。アリスティアのこと、いかがいたしますか?」
そこで私は。ふむ、と。考え込んだ。
学園から帰宅途中、という時間に。
マルチェロが魔王城の私の執務室を訪ねてきた。
サリエルからは報告してもらえなかったが、新しいお友達がサリエルにできたことは、ファウストからもマルチェロからも報告を受けていた。
私に内緒のお友達なのかな? サリュ。だけど私に内緒は、不可能なのだよ?
「サリーの新しいお友達は、アリスティア・フランチェスカ侯爵令嬢。フランチェスカ侯爵自体は、自領の経営に重きを置く優良領主で、特に政治的な思惑などはなさそうです。彼女はすこぶる麗しい美少女ですが。サリーは色仕掛けに引っかかるような、おバカではありませんし。言葉のやり取りから見ても。どちらかと言うと、さばさばした悪友的な印象を受けました。しかし初対面に近い割に、あの打ち解け様は、謎です」
サリエルに近づく輩は、もれなくマルチェロとファウストの監査が入る。
家柄、素行、親の思惑、すべてがクリアでないと。
サリエルの婚約破棄虎視眈々勢、略してコシタンによってガッチガチに固められたお友達の輪には、入れないのだ。
魔王の三男は落ちこぼれ、という噂のせいで。サリエル自身と本当に友達になりたいという者は、少ない。
しかし、私の婚約者であるから。
次期魔王候補に近づく手段として、寄ってくる愚か者は後を絶たない。
そういう輩の排除を、マルチェロとファウストがやってくれているわけだ。
今のところ実に素晴らしい働きぶりで、満足しているが。
お友達候補の排除が、婚約破棄虎視眈々勢の、これ以上のコシタンを増やさないようにしたいという雑念によるものでないことを、せつに祈っている。
「サリーは彼女と文通をしていた、というようなことを言いまして。でも…レオンハルトの監視下で、それは不可能ですよね? サリーはうまく誤魔化せたとばかりに、ドヤ顔になっておりましたが。まぁ…誰ひとり、誤魔化せてはいません」
マルチェロは報告を続けた。
そうだ。不可能である。
ミケージャもエリンも、屋敷の働き手も介さぬ状態で。
ひとりで外に出たことのないサリエルが、誰かと秘密の文通をするなどということは不可能なのである。
たとえ、郵便配達の者と直接やり取りしたとしても。
屋敷の主である私に報告がないなどということは、あり得ないので。
普通の家ならともかく。
魔王の嫡男が住む屋敷のことだからな。
なにか異変があれば、すぐにも報告されることになっている。
「調べによると、アリスティアは。つい最近まで屋敷の奥で、誰とも接することなく隠すようにして育てられたのだとか。つまり彼女は。この学園に来るまで、自領から出たことはなかったのです。サリーも王都から出たことはないでしょう? しかし初対面にしては、サリーと親密すぎます。彼女はいったい何者なのでしょう?」
「短時間でよくここまで調べ上げたな? 素晴らしいよ、マルチェロ」
彼を手放しで褒めると。
彼はいつもの作り笑いを、ほんの少し華やかにした。
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そこで私は。ふむ、と。考え込んだ。
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