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65 円卓会議っ、ですっ
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◆円卓会議っ、ですっ
今日の空模様はなんとなくどんよりとしていましたが。午前の授業中に雨が降り出してしまいました。
いつもはお日様燦燦の中で、学園の敷地内にある丘の上とかで昼食をいただく。というのが、定番なのですけれど。
今日は雨なので。仕方がなく。食堂で昼食をいただくことになります。
とはいえ、メニューはエリンの持ってきたお弁当でございますが。
これは毒物混入予防、いわゆる警護の一環なのです。
ということで。お昼休みになりまして。
ぼくはアリスティアとマルチェロを引き連れて、学園の食堂の王族専用サロンへと向かいます。
「ねぇ、サリー。私には先に教えてくれないかなぁ? アリスティア嬢とどういう関係なのか? とか?」
マルチェロが、好奇心に負けて聞いてきます。
もう、朝からみなさん。そのことばかり聞いてくるのですからぁ。
「昼食のときにお話ししますと、言っているでしょ? マルチェロぉ。あとちょっとですよ。あと、五分」
「待ちきれないし、気になるじゃないかぁ」
「サリーちゃんがそう言うのだから、待つしかない、マルチェロっ」
途中の廊下で合流してきたファウストが、ぼくを援護してくれました。
「ファウストは優しいですねぇ? 好きぃ」
はぅあっと、ファウストがまたもや謎の発作を起こしていますが。
それをアリスティアが、ジト目で見ている。
主人公が、そんな目で攻略対象を見てはいけません。
そうしてサロンに入ると。そこには大きな円卓が用意されていました。
ぼくが一年生のときは、ぼくとマルチェロとファウストだけだったから。
雨の日は、普通サイズの四角いテーブルでお昼を食べていたのだけど。
人数が増えたので、円卓になったようだ。
すでにエリンが来ていて、昼食のセッティングを始めています。さすがです。
ぼくの警護的な意味合いで、普段ならぼくの横にファウストとマルチェロが並ぶのだけど。
今日はアリスティアがいるので。
ファウスト、ぼく、アリスティア、マルチェロの順で並びます。
さらにそこに一年生組がやってきて。マルチェロの隣に、マリーベル。そしてシュナイツ、エドガーときて。ファウスト、という順に円形に並びました。
この感じは、子供会のときのお茶会仕様ですね?
子供会ではぼくらのお茶会のことを、他の子供たちが『円卓会議』って呼んでいたんだって。
マリーベルが教えてくれました。
仲のいい御令嬢が、そう言ってたらしいよ?
それはともかく。
円卓でみなさんがこちらを見てくるこの感じは、なんとなく懐かしいですねぇ?
「では、みなさん揃ったので。お昼をいただきましょう」
にこやかに告げると、マリーベルが否の声をあげた。
「ねぇ、パンちゃん。早くその御令嬢のことを教えてくださらない? 気になって食事がのどを通らないわぁ?」
マリーベルの言葉に、みんながうなずくので。
そうですかぁ?
ぼくは食事のあと、お茶を飲みながらゆっくり話そうと思っていたのですが。
確かにマルチェロも、落ち着かない様子でしたしね?
「わかりました。では食べながら、ご説明いたします。円卓会議っ、ですっ」
ババーンと高らかに宣言した。
いえ、会議と言うほどの難しげな議題ではありませんが。
せっかく思い出したので、なんとなく言ってみたかっただけです。
ぼくは隣の彼女を手で示し、紹介いたしました。
「彼女はアリスティア・フランチェスカ侯爵令嬢です」
アリスティアは優雅に立ち上がり、淑女の礼を取って挨拶した。
「アリスティアです。どうぞ、アリスとお呼びください」
そうして、しゃなりと椅子に腰かけ。食事を開始する。
「それで、サリー? 彼女はどういう知り合いなんだい? 彼女は子供会でも見かけたことがなかったが…」
水を向けてきたマルチェロに、ぼくはうむとうなずく。
いい質問ですね?
「アリスティアは、実は。謎の文通相手だったのです」
ぼくが言うと、アリスティアだけがプッと笑いを吹き出した。
まぁね、突拍子もないけどぉ。
ずっと、インナーのことをどう説明したらいいかと悩んでいたのだけど。
インナーがいなくなって、ぼくが泣いたとき。
兄上が、ぼくのお友達は文通相手か? と勘違いして。
そのようなものです、と。そのときは答えたのだけど。
この案はなかなか良いと思いまして。兄上に乗っからせていただきました。
たぶんマルチェロ辺りから、兄上の耳にも入るでしょう? 兄上も納得しやすいかと思って。
「ある日、手紙を拾いまして。届けられていませんと差出人に知らせたのがきっかけで、彼女との文通が始まりました。子供のときより、良き相談相手でありましたが。先日ぱったり、文が途絶えてしまいまして。ぼくは彼女に嫌われてしまったのかと思っていたのですが。どうやらロンディウヌス学園に入る準備の為だったみたいです。それで昨日再会してぇ…」
「でも、サリーは。はじめましてっぽかったと思うけど? キュウショクノオバチャンって言われるまで、アリスティア嬢のこと気づいていなかったみたいだった」
ウヌヌ、マルチェロぉ、よく見ていますね?
しかしここで文通ワードが生きてくるのです。
「文通だから、アリスティアの姿を見たことがなかったのです。住所も簡易な領留めで、名前もアリスというペンネームでしたから。キュウショクノオバチャンは、ぼくたちの秘密の暗号だったので、それを言われてアッとなったというわけなのですぅ」
決まった! なんとかインナーのことを言わずに、いい感じに、ほころびなく、言い切りましたよっ。
領留めというのは。フランチェスカ侯爵がおさめている領の大きな郵便局に手紙を留めておき、定期的に屋敷の使用人が取りに行く形式です。
この世界では、家まで配達に来る方が稀なのです。
インナーの世界的に言ったら、局留め、私書箱、みたいな感じですかねぇ?
「とにかく、そんなわけで。彼女とは昔からのお友達だったのです。みなさん、どうか彼女のお友達になってくださいませぇ?」
ぼくが、みなさんに言うと。
マリーベルも。他のみなさんも、まだ難しい顔をしている。
ダメ、ですかぁ?
今日の空模様はなんとなくどんよりとしていましたが。午前の授業中に雨が降り出してしまいました。
いつもはお日様燦燦の中で、学園の敷地内にある丘の上とかで昼食をいただく。というのが、定番なのですけれど。
今日は雨なので。仕方がなく。食堂で昼食をいただくことになります。
とはいえ、メニューはエリンの持ってきたお弁当でございますが。
これは毒物混入予防、いわゆる警護の一環なのです。
ということで。お昼休みになりまして。
ぼくはアリスティアとマルチェロを引き連れて、学園の食堂の王族専用サロンへと向かいます。
「ねぇ、サリー。私には先に教えてくれないかなぁ? アリスティア嬢とどういう関係なのか? とか?」
マルチェロが、好奇心に負けて聞いてきます。
もう、朝からみなさん。そのことばかり聞いてくるのですからぁ。
「昼食のときにお話ししますと、言っているでしょ? マルチェロぉ。あとちょっとですよ。あと、五分」
「待ちきれないし、気になるじゃないかぁ」
「サリーちゃんがそう言うのだから、待つしかない、マルチェロっ」
途中の廊下で合流してきたファウストが、ぼくを援護してくれました。
「ファウストは優しいですねぇ? 好きぃ」
はぅあっと、ファウストがまたもや謎の発作を起こしていますが。
それをアリスティアが、ジト目で見ている。
主人公が、そんな目で攻略対象を見てはいけません。
そうしてサロンに入ると。そこには大きな円卓が用意されていました。
ぼくが一年生のときは、ぼくとマルチェロとファウストだけだったから。
雨の日は、普通サイズの四角いテーブルでお昼を食べていたのだけど。
人数が増えたので、円卓になったようだ。
すでにエリンが来ていて、昼食のセッティングを始めています。さすがです。
ぼくの警護的な意味合いで、普段ならぼくの横にファウストとマルチェロが並ぶのだけど。
今日はアリスティアがいるので。
ファウスト、ぼく、アリスティア、マルチェロの順で並びます。
さらにそこに一年生組がやってきて。マルチェロの隣に、マリーベル。そしてシュナイツ、エドガーときて。ファウスト、という順に円形に並びました。
この感じは、子供会のときのお茶会仕様ですね?
子供会ではぼくらのお茶会のことを、他の子供たちが『円卓会議』って呼んでいたんだって。
マリーベルが教えてくれました。
仲のいい御令嬢が、そう言ってたらしいよ?
それはともかく。
円卓でみなさんがこちらを見てくるこの感じは、なんとなく懐かしいですねぇ?
「では、みなさん揃ったので。お昼をいただきましょう」
にこやかに告げると、マリーベルが否の声をあげた。
「ねぇ、パンちゃん。早くその御令嬢のことを教えてくださらない? 気になって食事がのどを通らないわぁ?」
マリーベルの言葉に、みんながうなずくので。
そうですかぁ?
ぼくは食事のあと、お茶を飲みながらゆっくり話そうと思っていたのですが。
確かにマルチェロも、落ち着かない様子でしたしね?
「わかりました。では食べながら、ご説明いたします。円卓会議っ、ですっ」
ババーンと高らかに宣言した。
いえ、会議と言うほどの難しげな議題ではありませんが。
せっかく思い出したので、なんとなく言ってみたかっただけです。
ぼくは隣の彼女を手で示し、紹介いたしました。
「彼女はアリスティア・フランチェスカ侯爵令嬢です」
アリスティアは優雅に立ち上がり、淑女の礼を取って挨拶した。
「アリスティアです。どうぞ、アリスとお呼びください」
そうして、しゃなりと椅子に腰かけ。食事を開始する。
「それで、サリー? 彼女はどういう知り合いなんだい? 彼女は子供会でも見かけたことがなかったが…」
水を向けてきたマルチェロに、ぼくはうむとうなずく。
いい質問ですね?
「アリスティアは、実は。謎の文通相手だったのです」
ぼくが言うと、アリスティアだけがプッと笑いを吹き出した。
まぁね、突拍子もないけどぉ。
ずっと、インナーのことをどう説明したらいいかと悩んでいたのだけど。
インナーがいなくなって、ぼくが泣いたとき。
兄上が、ぼくのお友達は文通相手か? と勘違いして。
そのようなものです、と。そのときは答えたのだけど。
この案はなかなか良いと思いまして。兄上に乗っからせていただきました。
たぶんマルチェロ辺りから、兄上の耳にも入るでしょう? 兄上も納得しやすいかと思って。
「ある日、手紙を拾いまして。届けられていませんと差出人に知らせたのがきっかけで、彼女との文通が始まりました。子供のときより、良き相談相手でありましたが。先日ぱったり、文が途絶えてしまいまして。ぼくは彼女に嫌われてしまったのかと思っていたのですが。どうやらロンディウヌス学園に入る準備の為だったみたいです。それで昨日再会してぇ…」
「でも、サリーは。はじめましてっぽかったと思うけど? キュウショクノオバチャンって言われるまで、アリスティア嬢のこと気づいていなかったみたいだった」
ウヌヌ、マルチェロぉ、よく見ていますね?
しかしここで文通ワードが生きてくるのです。
「文通だから、アリスティアの姿を見たことがなかったのです。住所も簡易な領留めで、名前もアリスというペンネームでしたから。キュウショクノオバチャンは、ぼくたちの秘密の暗号だったので、それを言われてアッとなったというわけなのですぅ」
決まった! なんとかインナーのことを言わずに、いい感じに、ほころびなく、言い切りましたよっ。
領留めというのは。フランチェスカ侯爵がおさめている領の大きな郵便局に手紙を留めておき、定期的に屋敷の使用人が取りに行く形式です。
この世界では、家まで配達に来る方が稀なのです。
インナーの世界的に言ったら、局留め、私書箱、みたいな感じですかねぇ?
「とにかく、そんなわけで。彼女とは昔からのお友達だったのです。みなさん、どうか彼女のお友達になってくださいませぇ?」
ぼくが、みなさんに言うと。
マリーベルも。他のみなさんも、まだ難しい顔をしている。
ダメ、ですかぁ?
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