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37 買い物ついでに、後日談。
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◆買い物ついでに、後日談。
今日はまた、マルチェロに誘われて町に買い物に来ています。
付き添いは侍女のエリンと。マルチェロの従者の人です。
ちなみに町に行くには、いかにも貴族っぽい服装は無粋なので。
ぼくの今日の装いは、濃い緑の簡素な背広に白シャツを合わせ、襟首に赤いブローチをつけています。
マルチェロは、薄い茶色のジャケットをおしゃれに着こなしていますよ?
いいですね、マルチェロは茶色を着てもコカトリスと言われないから…。むぅ。
町に着くまで、馬車に揺られながら先日の子供会の話になりました。
「魔王様にサリーが呼びつけられたときは、ひやりとしたけど。何事もなくてよかったよ」
「直前までディエンヌが煽っていましたからねぇ。その節は、誠にご心配をおかけいたしました。あのあとディエンヌとダンスして、足ダンされませんでしたか?」
「ルーフェン家の者に足ダンできるほど、彼女は強者ではない。いかにも権威に弱い、小物だね。捨て置いてもよかったが、サリーへの追撃を阻止したくて。足止めついでに、ちょっとダンスに付き合ってやっただけさ」
いつも微笑んでいる、優しい顔ながら。マルチェロは結構毒舌なのだった。
あのディエンヌを、小物と言えるなんて。
マルチェロの器の大きさには感心してしまいます。
「ぼくを守ってくれたのですね? ありがとう、マルチェロ」
あのとき、シュナイツが魔王様の元へ同行してくれたときに。
みんなに目配せをしていたけれど。
どうやら、ディエンヌの足止め要請だったらしい。
言葉に出さずに、阿吽の呼吸でそれをできてしまうなんて。ぼくのお友達はすごい人ばかりです。
ぼくが目配せされたとき、果たして真意を受け止められるのかっ? 心配ではあります。
「マリーもエドガーも頑張ったんだよ? 私の横でダンスして、ダンスのステップを間違えて足を踏むのはエレガントではありませんわぁ? 令嬢失格! ですわぁ? って。あからさまにディエンヌを挑発したりしてね?」
「ははは、マリーベルはさすがですねぇ」
そんな話をしながら、ぼくはあの日のことを考える。
結局ディエンヌが言っていたことは、母上が城を退く以外のことは、すべて憶測でした。
マリーベルが、ディエンヌをたしなめたときに言ったように。
レオンハルト兄上の婚約者であるぼくを兄上の許可なく追い出すことは、たとえ魔王でもできない…と、兄上もあのあと申しておりました。
それを聞き、ホッといたしましたよ。
ぼくには、兄上が用意してくれた居場所がある。
心配してくれる友達もいる。
それってどんな高価な物よりも、大事で尊い、ピッカピカの、ぼくの宝物なのだ。
まぁ、魔王様も。ぼくを追い出すつもりじゃなくて。
一般的に、子供は母親についていくという風潮があるから、ぼくの意見を聞きたかっただけだったみたい。
ぼくの場合は一歳のときから、およそ一般的なことには当てはまらないけどね。
「赤子のサリュを私が抱き上げたとき。サリュは、うちの子になったのだ。この年になるまで、私が大事に育てたのだから。親権は私にある。誰がなんと言おうとな? だからもう、居候とか御厄介とか思わなくてもいい。サリュはうちの子。私の家族なのだから」
法律では、未成年に親権は与えられない。
なんて。そんな建前的なことは、どうでもいいのです。
あの日、屋敷に戻ったあと。兄上がそう言ってくれて、嬉しかった。
だから、ぼくは胸を張って兄上の屋敷にいていいのだ。
ぼくは、兄上も、ミケージャも、エリンも執事も。
兄上のお屋敷にいる人たちを、ぼくの家族だって。思ってはいたのだけど。
やはり拾ってもらったという恩義があって。どこか遠慮しちゃって。
そんな気持ちが、兄上にも伝わってしまったかもしれません。
まだまだ先の話だけど。
もしも兄上と本当に結婚したら。お屋敷の人たちがみんな。本当に。真に。ぼくの家族になるのだなぁ。
そうなったら、なんて幸せだろう。
唯一、血のつながった母上に捨てられてしまった、ぼくにとっては。
家族というものが。遠い。遠いところにある。幸福の形だ。
兄上は、もうぼくにその宝物を差し出してくれているけれど。
いつか、その輝く未来を。自分の手でつかみたいものです。
愛する人と築く、家族の形というものを。
十一歳のぼくには。まだピンとこない話ではあるのですけどねぇ?
これからどうなるのかは。ぼくにも全く、わからない。
でもでも、あぁ、そういえばぁ。
ぼく、兄上に、チュウって。この前、自分からしてしまったのですよねぇ。
十一歳だから、わからなぁい。なんて、カマトトぶってはいけません。
だって、ぼくはっ。大人の階段を上ってしまったのですからねぇぇ?
そうは言っても、恋愛のチュウではなかったのですよ? 親愛の、チュウです。
兄上がとってもぼくのことを親身に考えてくださるからぁ。お礼のチュウ、だったのですけどぉ。
『あじゃこじゃあじゃこじゃ、うるせぇ。婚約者が婚約者にチュウしたんだからっ、それは、そういうチュウなのっ! 言い訳を並べてんじゃねぇ。いい加減、腹をくくれっ!』
インナーがぼくに怒ります。
『そう言われたら、そうかもしれませんけどぉ…』
インナーは兄上大好き派だから。兄上ともっとイチャイチャしたいみたいなんだよね?
ぼくも、兄上に体をピタッ、みちっ、とくっつけるのは好きなのですけどぉ。
き、ききき、キスも、特別感情ではあるのですけどぉ。
つか、丸いニワトリが唇突き出して、ちゅうとか。キモくなかったですかねぇ?
あの、いつも冷静で。表情をあまり崩さない兄上が。
目を真ん丸にして。頬もカカッと紅潮させていました。
キモがられてはいないと思うけどぉ。
兄上のそんな顔を見たら、ぼくも恥ずかしくなってしまった。
へへ、兄上にも。お可愛らしいところがあるのですね?
だから。ピンとこないながらも。
もちろん、ぼくの家族トップオブトップは、兄上です。間違いないことです。
「サリーが気に掛けることはないのだけど。一応、報告しておくと。ディエンヌは、母が退いた後もあの屋敷で暮らすようだよ?」
マルチェロの言葉に、ぼくは彼に目を向ける。
買い物ついでに、後日談。ですね?
マルチェロはディエンヌの婚約者だから、情報が入ってくるのだろう。
実の兄のところには、情報は全く来ないけど。
別にいいですけどっ。
「そうなのですか? って、あの大きなお屋敷にディエンヌがひとりで暮らすのですかぁ? 使用人では、ディエンヌを制することはできないでしょうね?」
屋敷でひとりになったディエンヌが。やらかし放題し放題になるのかと思うと。
なにやら、とっても恐ろしいのですがぁ?
まぁ、母上がいたとしても。娘に甘々な母上だから。ディエンヌを制することなどなかっただろうけど。
「あぁ。だから、公爵子息の婚約者を指導する名目で、住み込み家庭教師をつけることにしたよ。花嫁修業的な表向きだが、実質はディエンヌのお目付け役、監視役だね」
「そ、そそそ、それは。兄のぼくがやらねばならないことでは? い、いいい、嫌ですけどぉ」
ぼくの尻拭い的責任感が、マルチェロにそこまでさせて良いのかっ、と訴えている。
でも。もしも兄上の屋敷を出て、ディエンヌとふたりで暮らす尻拭い生活をしなければならないとしたら…嫌じゃーーっ。
「サリーは嫌なことをしなくてもいいんだよ? レオンハルトの婚約者であるサリーに、このような雑事を押し付けてしまったら。私がレオに殺されてしまうよ。それにこれは。いずれディエンヌが公爵家に輿入れする、そのための教育的指導なんだ。私と婚約したのなら、これくらいのことはこなしてもらわなければね?」
人の良い顔で、にっこりするマルチェロ。
でも容赦なさそう。
だけど貴族の婚約では、これが普通のことなのだろうな?
今まで、心のままに振舞って。善悪の区別がつかない生活をしてきたディエンヌが、異常なのだ。
「では。公爵家に丸投げするのは心苦しいことではありますが。妹が普通の御令嬢になるよう、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
「はは、承りました」
ふたりで頭を下げ合って。ニパッと笑い合う。
あぁ、この気の良い友達の、婚約者が。悪夢のような妹であるのが。本当に申し訳ない気になるけれど。
少しでもディエンヌの悪辣が薄らいで。やらかしがなくなるように。
ただただ、お祈りしております。
「ディエンヌの母は、辺境にある魔王様所有の古城に移られた。手入れの行き届いた美しい城だが、管理していた者はやはり魔力が高くてね。使用人は現地で一新しなければならず。もちろん魔王様も、あの城に近づくことはできない。実質、古城は彼女に譲渡された」
「そうなのですね」
母上はもう、魔王城にはいないようだ。
当たり前、なのかな。ぼくには母上が退く日時の連絡はなかったのだけど。
でも。
あぁ、もう。あの金切り声を聞かなくていい。
あぁ、もう。悲しくなる暴言を聞かなくていい。
ただ、そんなことが思い浮かんで。
ホッとしたような。胸がシクシクするような。変な感じになった。
「まぁ、とにもかくにも。サリーが今まで通り私たちのそばにいられるようになって、良かった、良かった。湿っぽい話はおしまいにして。町に着いたよぉ? ショッピングを楽しもうね? サリー」
「あぁ、この前、美味しかったから。ビッグイカキングの串焼きを兄上にテイクアウトしたいですぅ」
「え、あの、サリーの腕の丸焼きみたいなグロテスクなやつ? それはお土産としてどうかなぁ…」
お友達とお話ししながら、ショッピング。
ネガティブはなしで。思いっきり楽しもう。そうしよう。
今日はまた、マルチェロに誘われて町に買い物に来ています。
付き添いは侍女のエリンと。マルチェロの従者の人です。
ちなみに町に行くには、いかにも貴族っぽい服装は無粋なので。
ぼくの今日の装いは、濃い緑の簡素な背広に白シャツを合わせ、襟首に赤いブローチをつけています。
マルチェロは、薄い茶色のジャケットをおしゃれに着こなしていますよ?
いいですね、マルチェロは茶色を着てもコカトリスと言われないから…。むぅ。
町に着くまで、馬車に揺られながら先日の子供会の話になりました。
「魔王様にサリーが呼びつけられたときは、ひやりとしたけど。何事もなくてよかったよ」
「直前までディエンヌが煽っていましたからねぇ。その節は、誠にご心配をおかけいたしました。あのあとディエンヌとダンスして、足ダンされませんでしたか?」
「ルーフェン家の者に足ダンできるほど、彼女は強者ではない。いかにも権威に弱い、小物だね。捨て置いてもよかったが、サリーへの追撃を阻止したくて。足止めついでに、ちょっとダンスに付き合ってやっただけさ」
いつも微笑んでいる、優しい顔ながら。マルチェロは結構毒舌なのだった。
あのディエンヌを、小物と言えるなんて。
マルチェロの器の大きさには感心してしまいます。
「ぼくを守ってくれたのですね? ありがとう、マルチェロ」
あのとき、シュナイツが魔王様の元へ同行してくれたときに。
みんなに目配せをしていたけれど。
どうやら、ディエンヌの足止め要請だったらしい。
言葉に出さずに、阿吽の呼吸でそれをできてしまうなんて。ぼくのお友達はすごい人ばかりです。
ぼくが目配せされたとき、果たして真意を受け止められるのかっ? 心配ではあります。
「マリーもエドガーも頑張ったんだよ? 私の横でダンスして、ダンスのステップを間違えて足を踏むのはエレガントではありませんわぁ? 令嬢失格! ですわぁ? って。あからさまにディエンヌを挑発したりしてね?」
「ははは、マリーベルはさすがですねぇ」
そんな話をしながら、ぼくはあの日のことを考える。
結局ディエンヌが言っていたことは、母上が城を退く以外のことは、すべて憶測でした。
マリーベルが、ディエンヌをたしなめたときに言ったように。
レオンハルト兄上の婚約者であるぼくを兄上の許可なく追い出すことは、たとえ魔王でもできない…と、兄上もあのあと申しておりました。
それを聞き、ホッといたしましたよ。
ぼくには、兄上が用意してくれた居場所がある。
心配してくれる友達もいる。
それってどんな高価な物よりも、大事で尊い、ピッカピカの、ぼくの宝物なのだ。
まぁ、魔王様も。ぼくを追い出すつもりじゃなくて。
一般的に、子供は母親についていくという風潮があるから、ぼくの意見を聞きたかっただけだったみたい。
ぼくの場合は一歳のときから、およそ一般的なことには当てはまらないけどね。
「赤子のサリュを私が抱き上げたとき。サリュは、うちの子になったのだ。この年になるまで、私が大事に育てたのだから。親権は私にある。誰がなんと言おうとな? だからもう、居候とか御厄介とか思わなくてもいい。サリュはうちの子。私の家族なのだから」
法律では、未成年に親権は与えられない。
なんて。そんな建前的なことは、どうでもいいのです。
あの日、屋敷に戻ったあと。兄上がそう言ってくれて、嬉しかった。
だから、ぼくは胸を張って兄上の屋敷にいていいのだ。
ぼくは、兄上も、ミケージャも、エリンも執事も。
兄上のお屋敷にいる人たちを、ぼくの家族だって。思ってはいたのだけど。
やはり拾ってもらったという恩義があって。どこか遠慮しちゃって。
そんな気持ちが、兄上にも伝わってしまったかもしれません。
まだまだ先の話だけど。
もしも兄上と本当に結婚したら。お屋敷の人たちがみんな。本当に。真に。ぼくの家族になるのだなぁ。
そうなったら、なんて幸せだろう。
唯一、血のつながった母上に捨てられてしまった、ぼくにとっては。
家族というものが。遠い。遠いところにある。幸福の形だ。
兄上は、もうぼくにその宝物を差し出してくれているけれど。
いつか、その輝く未来を。自分の手でつかみたいものです。
愛する人と築く、家族の形というものを。
十一歳のぼくには。まだピンとこない話ではあるのですけどねぇ?
これからどうなるのかは。ぼくにも全く、わからない。
でもでも、あぁ、そういえばぁ。
ぼく、兄上に、チュウって。この前、自分からしてしまったのですよねぇ。
十一歳だから、わからなぁい。なんて、カマトトぶってはいけません。
だって、ぼくはっ。大人の階段を上ってしまったのですからねぇぇ?
そうは言っても、恋愛のチュウではなかったのですよ? 親愛の、チュウです。
兄上がとってもぼくのことを親身に考えてくださるからぁ。お礼のチュウ、だったのですけどぉ。
『あじゃこじゃあじゃこじゃ、うるせぇ。婚約者が婚約者にチュウしたんだからっ、それは、そういうチュウなのっ! 言い訳を並べてんじゃねぇ。いい加減、腹をくくれっ!』
インナーがぼくに怒ります。
『そう言われたら、そうかもしれませんけどぉ…』
インナーは兄上大好き派だから。兄上ともっとイチャイチャしたいみたいなんだよね?
ぼくも、兄上に体をピタッ、みちっ、とくっつけるのは好きなのですけどぉ。
き、ききき、キスも、特別感情ではあるのですけどぉ。
つか、丸いニワトリが唇突き出して、ちゅうとか。キモくなかったですかねぇ?
あの、いつも冷静で。表情をあまり崩さない兄上が。
目を真ん丸にして。頬もカカッと紅潮させていました。
キモがられてはいないと思うけどぉ。
兄上のそんな顔を見たら、ぼくも恥ずかしくなってしまった。
へへ、兄上にも。お可愛らしいところがあるのですね?
だから。ピンとこないながらも。
もちろん、ぼくの家族トップオブトップは、兄上です。間違いないことです。
「サリーが気に掛けることはないのだけど。一応、報告しておくと。ディエンヌは、母が退いた後もあの屋敷で暮らすようだよ?」
マルチェロの言葉に、ぼくは彼に目を向ける。
買い物ついでに、後日談。ですね?
マルチェロはディエンヌの婚約者だから、情報が入ってくるのだろう。
実の兄のところには、情報は全く来ないけど。
別にいいですけどっ。
「そうなのですか? って、あの大きなお屋敷にディエンヌがひとりで暮らすのですかぁ? 使用人では、ディエンヌを制することはできないでしょうね?」
屋敷でひとりになったディエンヌが。やらかし放題し放題になるのかと思うと。
なにやら、とっても恐ろしいのですがぁ?
まぁ、母上がいたとしても。娘に甘々な母上だから。ディエンヌを制することなどなかっただろうけど。
「あぁ。だから、公爵子息の婚約者を指導する名目で、住み込み家庭教師をつけることにしたよ。花嫁修業的な表向きだが、実質はディエンヌのお目付け役、監視役だね」
「そ、そそそ、それは。兄のぼくがやらねばならないことでは? い、いいい、嫌ですけどぉ」
ぼくの尻拭い的責任感が、マルチェロにそこまでさせて良いのかっ、と訴えている。
でも。もしも兄上の屋敷を出て、ディエンヌとふたりで暮らす尻拭い生活をしなければならないとしたら…嫌じゃーーっ。
「サリーは嫌なことをしなくてもいいんだよ? レオンハルトの婚約者であるサリーに、このような雑事を押し付けてしまったら。私がレオに殺されてしまうよ。それにこれは。いずれディエンヌが公爵家に輿入れする、そのための教育的指導なんだ。私と婚約したのなら、これくらいのことはこなしてもらわなければね?」
人の良い顔で、にっこりするマルチェロ。
でも容赦なさそう。
だけど貴族の婚約では、これが普通のことなのだろうな?
今まで、心のままに振舞って。善悪の区別がつかない生活をしてきたディエンヌが、異常なのだ。
「では。公爵家に丸投げするのは心苦しいことではありますが。妹が普通の御令嬢になるよう、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」
「はは、承りました」
ふたりで頭を下げ合って。ニパッと笑い合う。
あぁ、この気の良い友達の、婚約者が。悪夢のような妹であるのが。本当に申し訳ない気になるけれど。
少しでもディエンヌの悪辣が薄らいで。やらかしがなくなるように。
ただただ、お祈りしております。
「ディエンヌの母は、辺境にある魔王様所有の古城に移られた。手入れの行き届いた美しい城だが、管理していた者はやはり魔力が高くてね。使用人は現地で一新しなければならず。もちろん魔王様も、あの城に近づくことはできない。実質、古城は彼女に譲渡された」
「そうなのですね」
母上はもう、魔王城にはいないようだ。
当たり前、なのかな。ぼくには母上が退く日時の連絡はなかったのだけど。
でも。
あぁ、もう。あの金切り声を聞かなくていい。
あぁ、もう。悲しくなる暴言を聞かなくていい。
ただ、そんなことが思い浮かんで。
ホッとしたような。胸がシクシクするような。変な感じになった。
「まぁ、とにもかくにも。サリーが今まで通り私たちのそばにいられるようになって、良かった、良かった。湿っぽい話はおしまいにして。町に着いたよぉ? ショッピングを楽しもうね? サリー」
「あぁ、この前、美味しかったから。ビッグイカキングの串焼きを兄上にテイクアウトしたいですぅ」
「え、あの、サリーの腕の丸焼きみたいなグロテスクなやつ? それはお土産としてどうかなぁ…」
お友達とお話ししながら、ショッピング。
ネガティブはなしで。思いっきり楽しもう。そうしよう。
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