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番外 レオンハルトの胸中 ③
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そのとき、風に舞い上げられながらもミケージャがサリエルの周りを風魔法で覆い、プロテクトしてくれた。
しかしホッとしたのも束の間、先にミケージャの方が地面に落ちる。
サリエルのために魔法を発動していたから、ミケージャは受け身が取れず、そのままベシャッと地面に叩きつけられてしまった。
その反動で魔法も途切れてしまい、サリエルを覆っていた風魔法が途中で霧散してしまう。
そこからは、スローモーションのように私の目に映った。
一度は風魔法で、サリエルの体はクッションに当たったように跳ねたが。
魔法の効果が切れたあと、再びサリエルは、今度は無防備のまま地面に背中から落ちて。
もう一度跳ねて、今度はうつ伏せに倒れた。
「さ、サリュ…」
ミケージャのおかげで少しは衝撃が和らいだだろうが、完全に助けることは出来なかった。
サリエルは地面に突っ伏し、ピクリとも動かない。
馬から飛び降りた私は、地面に倒れ伏すサリエルとミケージャに駆け寄ったが。
その光景があまりにも衝撃的で、ただ立ちすくむしかなかった。
サリュ? ミケージャ?
なぜ動かないのだ?
答えを導き出すのが怖くて、我知らず唇がわなないた。
あぁ、私のサリエルが…。
私の大切な者たちに、手を出すとは。
許せない。
許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。
「あらぁ? サリエルったら死んじゃったぁ? よわいわねぇ。ホントに魔族なのかしらぁ?」
元より、許せないという気持ちでいっぱいだったが。
ディエンヌの非情な言葉を耳にして、なにかがブチ切れた。
私の体にマグマのように熱い怒りの奔流が渦巻いて、なにも聞こえなくなる。
なんの予兆もないまま、雷が足元に落ちた。
真上から落ちる雷は、ゴロゴロとも、バリバリとも言わず。高音でいきなりパァァァッンと鳴るのだ。
私の怒りが引き起こした、私の雷だった。
雷魔法は、私が一番得意とする魔法。
発動する意識もなかったのに。無意識に、ただ感情の発露のごとく、ゴロゴロバリバリと雷鳴があちらこちらに轟き渡り、赤や黄、黒い稲妻がガンガンと落ち始めた。
激しく鳴る雷の音は、そのまま私の激烈な怒りの唸り声でもあった。
この女を殺してしまいたい。八つ裂きにしても、足りぬっ。
五歳の幼児だから? 女の子相手に? 大人げない?
知らぬっ。人族のモラルなどクソくらえだっ。
ディエンヌというこの物体が、私から私の大事なものを取り上げたのだ。
到底許せぬっ。
その気持ちの表れか、ディエンヌのそばに雷が落ちて。
彼女は尻餅をつき、驚いて、泣き始めた。
女児が、子供の姿で憐れに泣いたとて。怒りの気持ちはおさまらない。
私は雷の魔法の片鱗を体にまとわせ、周囲に電気がバチバチと火花を飛ばす中でディエンヌを見下ろし、聞いた。
「なぜ、脅えるのだ? ディエンヌ。おまえはサリュに同じことをしたのだ。サリュは泣いて脅える猶予も与えられなかったというのに…」
そして、またディエンヌのそばに雷を落とした。
彼女はヒィィッと悲鳴を上げるが、それで私の怒りがおさまるはずもない。
憤怒から、逆に口から出る言葉のトーンが低く、静かになっていく。
手のひらの上に、電撃の塊が溜まっていった。
もう一度口を開いたら、私はこの玉をディエンヌに投げつけていただろう。
「レ…レオンハルト、さまっ」
そこに、ミケージャの声がかかった。
「う…サリエル様の、救護を…お早くぅ…」
ミケージャの言葉で、怒りや憎しみという邪悪な感情から、我に返った。
私はディエンヌを引き裂いても足りないくらいの憤りを持て余したが。
サリエルの命が、なにより優先である。
騒ぎを聞きつけた魔王城の者や護衛たちが、こちらに駆けてくるのが見えたので。
私はそっとサリエルを抱き上げ…ようとしたのだが。
雷で発電した火花がまだ体の周りにまとわりついていた。無意識に発動していた魔法を、ようやく解除して。それからようやくサリエルを抱き上げることができた。
ぽよんとした小さな体が全く動かなくて、ぐったりとしていて、口が小さく三角に開いている。
息は、している。
しかし、背筋にゾワリと悪寒が走った。
魔力もツノもないサリエルが、魔族と同じように体が頑丈だとは限らない。
命が失われてしまうのではないかと、私は改めて危機感と焦燥に襲われた。
「腕の良い医師を屋敷に呼んでくれ。あと、ミケージャの治療も頼む」
護衛たちに命じ。私はさらに告げる。
「ディエンヌを地下の部屋に捕えておけ。もしもサリュが…命を落としたら。その命、ないと思えよっ!」
小さな妹、いや、悪意の塊である娘を、冷たく見下ろしたあと。背を向けた。
早く手当てをしなければ。
運ぶときに振動させたくなくて、普段は体内にしまい入れている翼を出した。
コウモリ様の骨ばった箇所に引き裂かれ、服が破けるが。どうでもいい。
バサリとひとつ羽ばたくと、ふわりと浮いて。私は屋敷に急いで戻った。
あぁ…もう少し早く空を飛べたなら、サリエルを空中でキャッチ出来たのに。
時、すでに遅しだが。
もっと早く、スピーディーに空を自在に飛べるようになっておくべきだ。
まだまだ自分は未熟だったのだと痛感した。
屋敷で出迎えたエリンが、ぐったりするサリエルを見て驚愕している中。
部屋へ大股で向かう、その間に。
怒りはいったん鎮まり。
今はサリエルの安否がただただ心配だった。
しかし。どうにも。あの女に言ってやりたかった言葉がある。
ディエンヌ、おまえが兄をいらないと言うのなら私がもらい受ける。
いや、もうサリエルは私のものなのだ。
決して、おまえの兄などではないっ。
私のものに手を出す者は、消し炭と化す。二度はないぞ、ディエンヌ。
心の中で、私はディエンヌに憤怒のままにそう告げたのだった。
ミケージャの風魔法のおかげで、サリエルは一命を取り留めた。
しかし、なかなか目覚めないので。
サリエルが意識を取り戻すまでは、安堵の息などつけない。
ミケージャは、サリュを完全に助けられなかったことを悔いていた。
ひどい打ち身に、手の骨折など、かなりの重傷だったが。
サリエル様のお許しをもらうまでは、と。頑なに治癒魔法を拒んだ。
サリエルは、人が苦しんで良しとするような子ではない。
むしろ。ミケージャが痛い思いをしていたと聞けば、泣いてしまうと思うのだが。
ミケージャには、従者のけじめというか。己への戒めというか。そういうものがあるのだろうと思い、彼の望むままにさせておいた。
それよりも私は、己にサリエルを助ける力がなかったことに愕然としていた。
今回の憤怒により、魔国全土に雷が何本も落ちたらしい。
意識して雷を落としたわけではないのだが。
私には、天変地異並みのものを起こせる驚異的な魔力があったのだ。
なのに、サリエルのことは助けられなかった。
いざというときに愛する者を救えないなんて。そのような力は、ゴミ以下だ。
私は、自分の能力に慢心していたのだということに、このとき気づかされたのだった。
次期魔王と誉めそやされ。人を圧倒する魔力や攻撃魔法を極めて。それで、満足していたのだな。
だが、真に強いということは。自分の大事なものを守れてこそだろう?
幸いというか、なんというか。
今回、魔力を大放出したことによって、私は新鮮な魔力を体にみなぎらせることが出来。その副産物で新たな魔法の種類を習得出来てしまった。
感覚としては、リノベーション(改善)ではなく、リニューアル(一新)という感じか。
別の自分に生まれ変わったような感覚だった。
実際、そうなのだろう。新たなツノが生えかけている。
二本ツノの自分はいなくなり。四本ツノの自分が誕生したのだ。
ツノが増えた私は、サリエルを守れる私だ。
もう二度と、サリエルを危険な目には合わせない。
そのためにも、四本ツノだと慢心することなく日々鍛錬し続ける、その心情こそが重要だ。
しばらくしてサリエルは目を覚まし、私は心底安堵した。
しかしディエンヌは、三日も地下に閉じ込めたというのに全く反省していない。
口先だけで、もうしませぇん、なんてうそぶいていたが。
あぁ、あのとき殺しておけばよかったと、本気で思ってしまった。
しかし心優しい私の弟サリエルは、自分を殺しかけた妹にも慈悲の心を持ち。
彼女を庇い、あまつさえ解放してやってくれと頼むほどの清らかさだ。
そのような子の目の前でディエンヌを殺したら。
私がサリエルに嫌われてしまうではないかっ。
ディエンヌを手にかけないのは、そこ、一点のみの理由からであった。
魔王の息子である私には、魔族の血が色濃く流れているので。
己の邪魔になるものを排除するのに、なんの心も痛まない。
結果、人を殺すこともあり得ると思う。
ただサリエルに嫌われるのだけは、心が痛む。
だから殺らない。それだけだ。
魔族は基本、力に従うものである。
あの、悪辣で善意を持たない妹をおさえ込むには更なる大きな力が必要だ。
ディエンヌを殺すことは造作もないことだが、それが出来ないとなれば、自分が魔力や権力を高め、あの妹よりも強者となって抑え込むしかない。
高みから睥睨し。ディエンヌが歯向かう気も起きないくらいに。
強く、圧倒的な、脅威となるのだ。
自分がそういう存在になることで、あの妹から、私はサリュを守れる。
手始めに、レッドドラゴンの骸から取り出した赤い魔石に。魔法無効、物理攻撃無効、敵意探知、位置探知の防御魔法をブチ込んで。サリエルの身につけさせようと思う。
あ、位置探知は。兄である私がサリエルの居場所を把握するためだ。
しかし私以外の者に場所が知られることはないから、安心だな?
しかしホッとしたのも束の間、先にミケージャの方が地面に落ちる。
サリエルのために魔法を発動していたから、ミケージャは受け身が取れず、そのままベシャッと地面に叩きつけられてしまった。
その反動で魔法も途切れてしまい、サリエルを覆っていた風魔法が途中で霧散してしまう。
そこからは、スローモーションのように私の目に映った。
一度は風魔法で、サリエルの体はクッションに当たったように跳ねたが。
魔法の効果が切れたあと、再びサリエルは、今度は無防備のまま地面に背中から落ちて。
もう一度跳ねて、今度はうつ伏せに倒れた。
「さ、サリュ…」
ミケージャのおかげで少しは衝撃が和らいだだろうが、完全に助けることは出来なかった。
サリエルは地面に突っ伏し、ピクリとも動かない。
馬から飛び降りた私は、地面に倒れ伏すサリエルとミケージャに駆け寄ったが。
その光景があまりにも衝撃的で、ただ立ちすくむしかなかった。
サリュ? ミケージャ?
なぜ動かないのだ?
答えを導き出すのが怖くて、我知らず唇がわなないた。
あぁ、私のサリエルが…。
私の大切な者たちに、手を出すとは。
許せない。
許せない。許せない。許せない。許せない。許せない。
「あらぁ? サリエルったら死んじゃったぁ? よわいわねぇ。ホントに魔族なのかしらぁ?」
元より、許せないという気持ちでいっぱいだったが。
ディエンヌの非情な言葉を耳にして、なにかがブチ切れた。
私の体にマグマのように熱い怒りの奔流が渦巻いて、なにも聞こえなくなる。
なんの予兆もないまま、雷が足元に落ちた。
真上から落ちる雷は、ゴロゴロとも、バリバリとも言わず。高音でいきなりパァァァッンと鳴るのだ。
私の怒りが引き起こした、私の雷だった。
雷魔法は、私が一番得意とする魔法。
発動する意識もなかったのに。無意識に、ただ感情の発露のごとく、ゴロゴロバリバリと雷鳴があちらこちらに轟き渡り、赤や黄、黒い稲妻がガンガンと落ち始めた。
激しく鳴る雷の音は、そのまま私の激烈な怒りの唸り声でもあった。
この女を殺してしまいたい。八つ裂きにしても、足りぬっ。
五歳の幼児だから? 女の子相手に? 大人げない?
知らぬっ。人族のモラルなどクソくらえだっ。
ディエンヌというこの物体が、私から私の大事なものを取り上げたのだ。
到底許せぬっ。
その気持ちの表れか、ディエンヌのそばに雷が落ちて。
彼女は尻餅をつき、驚いて、泣き始めた。
女児が、子供の姿で憐れに泣いたとて。怒りの気持ちはおさまらない。
私は雷の魔法の片鱗を体にまとわせ、周囲に電気がバチバチと火花を飛ばす中でディエンヌを見下ろし、聞いた。
「なぜ、脅えるのだ? ディエンヌ。おまえはサリュに同じことをしたのだ。サリュは泣いて脅える猶予も与えられなかったというのに…」
そして、またディエンヌのそばに雷を落とした。
彼女はヒィィッと悲鳴を上げるが、それで私の怒りがおさまるはずもない。
憤怒から、逆に口から出る言葉のトーンが低く、静かになっていく。
手のひらの上に、電撃の塊が溜まっていった。
もう一度口を開いたら、私はこの玉をディエンヌに投げつけていただろう。
「レ…レオンハルト、さまっ」
そこに、ミケージャの声がかかった。
「う…サリエル様の、救護を…お早くぅ…」
ミケージャの言葉で、怒りや憎しみという邪悪な感情から、我に返った。
私はディエンヌを引き裂いても足りないくらいの憤りを持て余したが。
サリエルの命が、なにより優先である。
騒ぎを聞きつけた魔王城の者や護衛たちが、こちらに駆けてくるのが見えたので。
私はそっとサリエルを抱き上げ…ようとしたのだが。
雷で発電した火花がまだ体の周りにまとわりついていた。無意識に発動していた魔法を、ようやく解除して。それからようやくサリエルを抱き上げることができた。
ぽよんとした小さな体が全く動かなくて、ぐったりとしていて、口が小さく三角に開いている。
息は、している。
しかし、背筋にゾワリと悪寒が走った。
魔力もツノもないサリエルが、魔族と同じように体が頑丈だとは限らない。
命が失われてしまうのではないかと、私は改めて危機感と焦燥に襲われた。
「腕の良い医師を屋敷に呼んでくれ。あと、ミケージャの治療も頼む」
護衛たちに命じ。私はさらに告げる。
「ディエンヌを地下の部屋に捕えておけ。もしもサリュが…命を落としたら。その命、ないと思えよっ!」
小さな妹、いや、悪意の塊である娘を、冷たく見下ろしたあと。背を向けた。
早く手当てをしなければ。
運ぶときに振動させたくなくて、普段は体内にしまい入れている翼を出した。
コウモリ様の骨ばった箇所に引き裂かれ、服が破けるが。どうでもいい。
バサリとひとつ羽ばたくと、ふわりと浮いて。私は屋敷に急いで戻った。
あぁ…もう少し早く空を飛べたなら、サリエルを空中でキャッチ出来たのに。
時、すでに遅しだが。
もっと早く、スピーディーに空を自在に飛べるようになっておくべきだ。
まだまだ自分は未熟だったのだと痛感した。
屋敷で出迎えたエリンが、ぐったりするサリエルを見て驚愕している中。
部屋へ大股で向かう、その間に。
怒りはいったん鎮まり。
今はサリエルの安否がただただ心配だった。
しかし。どうにも。あの女に言ってやりたかった言葉がある。
ディエンヌ、おまえが兄をいらないと言うのなら私がもらい受ける。
いや、もうサリエルは私のものなのだ。
決して、おまえの兄などではないっ。
私のものに手を出す者は、消し炭と化す。二度はないぞ、ディエンヌ。
心の中で、私はディエンヌに憤怒のままにそう告げたのだった。
ミケージャの風魔法のおかげで、サリエルは一命を取り留めた。
しかし、なかなか目覚めないので。
サリエルが意識を取り戻すまでは、安堵の息などつけない。
ミケージャは、サリュを完全に助けられなかったことを悔いていた。
ひどい打ち身に、手の骨折など、かなりの重傷だったが。
サリエル様のお許しをもらうまでは、と。頑なに治癒魔法を拒んだ。
サリエルは、人が苦しんで良しとするような子ではない。
むしろ。ミケージャが痛い思いをしていたと聞けば、泣いてしまうと思うのだが。
ミケージャには、従者のけじめというか。己への戒めというか。そういうものがあるのだろうと思い、彼の望むままにさせておいた。
それよりも私は、己にサリエルを助ける力がなかったことに愕然としていた。
今回の憤怒により、魔国全土に雷が何本も落ちたらしい。
意識して雷を落としたわけではないのだが。
私には、天変地異並みのものを起こせる驚異的な魔力があったのだ。
なのに、サリエルのことは助けられなかった。
いざというときに愛する者を救えないなんて。そのような力は、ゴミ以下だ。
私は、自分の能力に慢心していたのだということに、このとき気づかされたのだった。
次期魔王と誉めそやされ。人を圧倒する魔力や攻撃魔法を極めて。それで、満足していたのだな。
だが、真に強いということは。自分の大事なものを守れてこそだろう?
幸いというか、なんというか。
今回、魔力を大放出したことによって、私は新鮮な魔力を体にみなぎらせることが出来。その副産物で新たな魔法の種類を習得出来てしまった。
感覚としては、リノベーション(改善)ではなく、リニューアル(一新)という感じか。
別の自分に生まれ変わったような感覚だった。
実際、そうなのだろう。新たなツノが生えかけている。
二本ツノの自分はいなくなり。四本ツノの自分が誕生したのだ。
ツノが増えた私は、サリエルを守れる私だ。
もう二度と、サリエルを危険な目には合わせない。
そのためにも、四本ツノだと慢心することなく日々鍛錬し続ける、その心情こそが重要だ。
しばらくしてサリエルは目を覚まし、私は心底安堵した。
しかしディエンヌは、三日も地下に閉じ込めたというのに全く反省していない。
口先だけで、もうしませぇん、なんてうそぶいていたが。
あぁ、あのとき殺しておけばよかったと、本気で思ってしまった。
しかし心優しい私の弟サリエルは、自分を殺しかけた妹にも慈悲の心を持ち。
彼女を庇い、あまつさえ解放してやってくれと頼むほどの清らかさだ。
そのような子の目の前でディエンヌを殺したら。
私がサリエルに嫌われてしまうではないかっ。
ディエンヌを手にかけないのは、そこ、一点のみの理由からであった。
魔王の息子である私には、魔族の血が色濃く流れているので。
己の邪魔になるものを排除するのに、なんの心も痛まない。
結果、人を殺すこともあり得ると思う。
ただサリエルに嫌われるのだけは、心が痛む。
だから殺らない。それだけだ。
魔族は基本、力に従うものである。
あの、悪辣で善意を持たない妹をおさえ込むには更なる大きな力が必要だ。
ディエンヌを殺すことは造作もないことだが、それが出来ないとなれば、自分が魔力や権力を高め、あの妹よりも強者となって抑え込むしかない。
高みから睥睨し。ディエンヌが歯向かう気も起きないくらいに。
強く、圧倒的な、脅威となるのだ。
自分がそういう存在になることで、あの妹から、私はサリュを守れる。
手始めに、レッドドラゴンの骸から取り出した赤い魔石に。魔法無効、物理攻撃無効、敵意探知、位置探知の防御魔法をブチ込んで。サリエルの身につけさせようと思う。
あ、位置探知は。兄である私がサリエルの居場所を把握するためだ。
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