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2-31 ブランカの正体
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◆ブランカの正体
ついさっきまで焚火を囲んで談笑していたのに。
今はなんでか、ブランカに押し倒されて。
シャツもビリビリで、ぼくのテーソーの大ピンチぃ。
と思ったけど。
瞬きしたら、ジョシュアがブランカの首元に剣を当てていて。
ノアとオズワルドとラウルとアゼルが剣を抜いて周りを囲んでいた。
「なんのつもりだ、ブランカ。第一王子を害そうとするなど。一族郎党処刑されても文句は言えないぞ」
もう、本当に。
怖いんで。
前世を思い出しちゃうんで。
ジョシュア、怖い顔はやめてくださぁい。
ブランカは両手をあげて、ぼくの上から退いたけど。
スカーフタイを止めていたぼくのブローチは、彼の手の中だった。
ブランカをオズワルドたちに任せて、ジョシュアがぼくを助け起こしてくれた。
胸にギュッと抱き締められて。
ちょっと。
ちょっとだけ、ビビっちゃったから。
彼のぬくもりにホッとして。身を寄せてしまう。
するとジョシュアの胸板の厚さとか、たくましさとか感じて。
子供のとき。
パパが帰ってきて、嬉しさを分かち合って抱き合ったときは。
背も体格も同じくらいだったのに。
今はなんか。頼もしくて。
ジョシュアの匂いがして。
ドッキリしちゃいました。ははは、恥ずかしくなってきちゃいました。
そうしたらジョシュアが、ぼくのマントの前を合わせてボタンを留めてくれた。
「シャツは破けたけど。男同士だから大丈夫なのに」
なんか。軽口とか強がりとか言っていないと。
ははは、恥ずかしくなっちゃうんですけどっ。
「その男に襲われたくせに、なに言ってんだ。つか、白い胸とかピンクのち…いろいろ無理」
怖い顔のまま、ジョシュアが言うが。
しっかり見てんじゃん。
ぼくは。恥ずかしさがシュンとなくなって。
スンとして。えっちなジョシュアを肘でどついた。
するとブランカが。フハハハって。悪の組織の大幹部みたいな笑い方をした。
「この男がどうなろうと、私には関係ない。私は、この心臓の欠片さえあれば生き返ることができるのだ」
そう言って、ブランカが手をあげて宝石を天にかざし。体から白いモヤのようなものが立ち上って。
ブローチにそれが吸収されて。
ぼくのブローチが、彼の手の中で小さなナマズになっちゃった??
ブランカの正体は、ぼくが浄化したナマズぅぅ?
ビチョンとブランカの手から跳ねて、地に落ちたナマズは。そのままピョンピョン跳ねて湖に向かおうとするが。
ジョシュアが水魔法を使って、そのナマズを囲い込み。
自分の手元に持ってきた。
ジョシュアの手の中に、金魚鉢に入っているような感じでナマズが泳いでいる。
つか、ジョシュア。水魔法使えたんだね?
「おい、ナマズ。なにも答えずにバックレようなど、許さぬがぁぁぁ??」
ジョシュアは険しいお顔にシワをビシバシ入れて。
なんか。父上を超えて魔王さながらの恐怖なのですが?
「な、なにをするのだぁ? 私を湖に帰せぇ。もう少しなのにぃ」
「うるせぇ。このままおまえを私の手の中でグチャリしてもいいのだぞっ」
「ひえぇぇ、それだけはご勘弁をぉ。十年かけて、やっとここまで来たのですぅ」
なんか。そう言われちゃうと。ちょっと可哀想な気もしますねぇ。
「ちょっと。いったいなにを騒いでいるの?」
騒ぎを聞きつけて、ルリアとミカエラもテントから出てきてしまいました。
そうしたらミカエラが。放心状態で地に膝をついているブランカをみつけて。駆け寄った。
「ブランカ? どうしたのですか? いったいなにが…」
「ミカエラ。ぼくはもうダメだ。ナマズに操られ、王子に危害を加えてしまったようなのだ。一族郎党皆殺しにされてしまうぅぅ」
ブランカは大粒の涙をこぼしてミカエラにすがりついた。
えぇぇ? クールで自信たっぷりで、堂々と伴侶候補に志願したブランカはいずこへ??
「こここ、コエダ様に危害? というかナマズってなに?」
ミカエラは冷静です。さすが、ミカエラ。
ブランカは指を差します。ジョシュアが持っている金魚鉢モドキの水魔法の中にいるナマズを。
みなさんが注目する中で、ぼくはナマズにたずねました。
つか、真剣にナマズと会話するぼくたち、ウケるぅ。
「どういうことなのですか? あなたはあのときの大きなナマズなのですか?」
「そうだ。私は十年前、おまえに浄化されたナマズである。私は数百年もこの湖に住み、湖の主としてあがめられてきたのだ。しかしここ数年、湖の底に魔素がたまり出して。私は魔獣と化してしまった」
とうとうと語るナマズ。
シュールな絵面です。
「おまえに浄化され、私の心臓は魔石となっておまえの手に渡った。しかし私の自我は、対岸にいたこやつの元へ飛んだのだ。こののちは、こやつと死ぬまで同化するのかと思ったが。私はみつけた。私の核である、私の魔石を。それさえあれば、私は元の姿に戻れる。だから私は、こやつに力を、魔力を分け与え。優秀な人物になって、王子に近づこうと思ったのだ。そして望みは果たされたっ」
拳はないけど、ナマズは拳を握って力説した。
まぁね、これは確かにナマズの魔石だけど。
おかしいと思ったんだよね。
ブランカには言っていなかったのに、このブローチが魔石だって知っていたし。
魔石の波動なんか、普通は手に触れないと感じ取れないもん。
でもまさか、ブランカがナマズだとは思わなかったけど。
正確には。ナマズに憑依されていたのかな?
「私はもう一度この湖に戻って。主としてあがめられたいのだ。私を湖に帰すのだ」
手のひらサイズのナマズが主になれるのかわからないが。
「おまえを湖に戻したら、魔獣となって、また湖が濁るじゃないか」
ジョシュアがそう言って。ぼくも、ふぅむとなる。
「バカを言え、私が湖を濁したわけではないわ。魔素が湧いた場所に数年ものゴミの蓄積があって変質しただけだ。そして私はもう魔獣ではない。聖女が毎日身につけていた魔石は、しっかり浄化されている。それにこの湖も聖女が浄化したのだろう? 魔素さえなければ魔獣にはなりえないのだっ」
ナマズはアセアセして言い募る。必死か?
「確かに、ナマズの言い分は正しいかな。魔素が食料の魔獣は。魔素がなければ魔獣にはならない」
「であろうぅ?」
ドヤッて、胸を張るナマズ。
ちょっとイラっとするね?
「それに私が湖にいれば、逆に湖をきれいに保てるのだ。発光虫も数が増えれば害しかないが。私が適度に食べることで適正な量でいられる。それは虫たちにも良いことなのだ」
「あぁあ、ブランカに発光虫がひっついていたのは?」
「そうだ、私に食べられたい虫たちなのだ。主に食われるのは虫にとっても喜びなのだぁ。人間の姿では虫は食えぬが…」
良かった、ブランカが虫を食べていなくて。
「なんだと? では三日で死んだ私のレッドソルジャーオオカブトも、このナマズに食われたい願望だったということか?」
「寿命で死ぬ前に私に食べてもらいたかったのであろう…」
しみじみと言って、うなずくナマズ。
なんか、イラッとするね?
「だけどなぁ? この森に魔獣が発生しているからなぁ? その魔素がナマズの口に入ったら魔獣になっちゃうかもなぁ?」
そう言って、ぼくはちらりとナマズを見やる。
「私とて、好きで魔獣になったわけではないのだぁ。私はもう一度ここの主に戻りたいだけなのだぁ。魔素など、またおまえが浄化すれば良かろう。ほれ、この先の廃屋に枯れ井戸があるからな。そこに魔素がたまっているのだぁ」
意外にあっさり。ナマズは暴露した。
どうやら、本当に魔獣になる気はなさそうだ。
「ぼく、その場所わかります」
ブランカ(ナマズ抜き)が憔悴しながらも、震える声を出した。
「祖母がいた保養地の近くに枯れ井戸があるのです。危ないから子供は行ったらダメだと言われて、見たことはないのですが場所はわかります。教えますから、なのでどうか、ぼくは処刑でも一族郎党皆殺しだけはご勘弁をぉ」
ブランカは土下座の勢いでそう言います。
こちらもなんだか可哀想になりました。
「操られていたのでしょうから、それはもういいですよ。ぼくは処刑はしません」
前世の記憶は、実はもうあまり残ってはいない。
子供の頃に鮮明だったメイのことは、昔に読んだ絵本のように外殻だけが残っているような感じ。
思い出そうとすれば思い出せるけど、普段は忘れている、みたいな。
こえだのよげんしょを今見れば、こんなこと書いたっけ? みたいな内容も多々あるよ。
それでも処刑のショッキングさは、胸をえぐる古傷のように残っている。
だからぼくは、それを誰にもしないのだ。
「ジョシュアも、そのナマズ放してあげて」
「いいのか? コエダ」
「もうナマズになってしまったのだから、放すしかないでしょう。王都に持って行くのもなんですし。それにこの子が主になるには、また数百年かかるのでしょう。ぼくはそれまで生きていないので。悪さをするようになったら、時の聖女がなんとかしてくれるよ」
「コエダは優しいな」
そう言って、ジョシュアは水魔法をまとわせたまま湖にボールを投げ入れるようにして放った。
乱暴ですね。
「そうですよ。勇者で聖女は、無益な殺生をしないのです」
ついさっきまで焚火を囲んで談笑していたのに。
今はなんでか、ブランカに押し倒されて。
シャツもビリビリで、ぼくのテーソーの大ピンチぃ。
と思ったけど。
瞬きしたら、ジョシュアがブランカの首元に剣を当てていて。
ノアとオズワルドとラウルとアゼルが剣を抜いて周りを囲んでいた。
「なんのつもりだ、ブランカ。第一王子を害そうとするなど。一族郎党処刑されても文句は言えないぞ」
もう、本当に。
怖いんで。
前世を思い出しちゃうんで。
ジョシュア、怖い顔はやめてくださぁい。
ブランカは両手をあげて、ぼくの上から退いたけど。
スカーフタイを止めていたぼくのブローチは、彼の手の中だった。
ブランカをオズワルドたちに任せて、ジョシュアがぼくを助け起こしてくれた。
胸にギュッと抱き締められて。
ちょっと。
ちょっとだけ、ビビっちゃったから。
彼のぬくもりにホッとして。身を寄せてしまう。
するとジョシュアの胸板の厚さとか、たくましさとか感じて。
子供のとき。
パパが帰ってきて、嬉しさを分かち合って抱き合ったときは。
背も体格も同じくらいだったのに。
今はなんか。頼もしくて。
ジョシュアの匂いがして。
ドッキリしちゃいました。ははは、恥ずかしくなってきちゃいました。
そうしたらジョシュアが、ぼくのマントの前を合わせてボタンを留めてくれた。
「シャツは破けたけど。男同士だから大丈夫なのに」
なんか。軽口とか強がりとか言っていないと。
ははは、恥ずかしくなっちゃうんですけどっ。
「その男に襲われたくせに、なに言ってんだ。つか、白い胸とかピンクのち…いろいろ無理」
怖い顔のまま、ジョシュアが言うが。
しっかり見てんじゃん。
ぼくは。恥ずかしさがシュンとなくなって。
スンとして。えっちなジョシュアを肘でどついた。
するとブランカが。フハハハって。悪の組織の大幹部みたいな笑い方をした。
「この男がどうなろうと、私には関係ない。私は、この心臓の欠片さえあれば生き返ることができるのだ」
そう言って、ブランカが手をあげて宝石を天にかざし。体から白いモヤのようなものが立ち上って。
ブローチにそれが吸収されて。
ぼくのブローチが、彼の手の中で小さなナマズになっちゃった??
ブランカの正体は、ぼくが浄化したナマズぅぅ?
ビチョンとブランカの手から跳ねて、地に落ちたナマズは。そのままピョンピョン跳ねて湖に向かおうとするが。
ジョシュアが水魔法を使って、そのナマズを囲い込み。
自分の手元に持ってきた。
ジョシュアの手の中に、金魚鉢に入っているような感じでナマズが泳いでいる。
つか、ジョシュア。水魔法使えたんだね?
「おい、ナマズ。なにも答えずにバックレようなど、許さぬがぁぁぁ??」
ジョシュアは険しいお顔にシワをビシバシ入れて。
なんか。父上を超えて魔王さながらの恐怖なのですが?
「な、なにをするのだぁ? 私を湖に帰せぇ。もう少しなのにぃ」
「うるせぇ。このままおまえを私の手の中でグチャリしてもいいのだぞっ」
「ひえぇぇ、それだけはご勘弁をぉ。十年かけて、やっとここまで来たのですぅ」
なんか。そう言われちゃうと。ちょっと可哀想な気もしますねぇ。
「ちょっと。いったいなにを騒いでいるの?」
騒ぎを聞きつけて、ルリアとミカエラもテントから出てきてしまいました。
そうしたらミカエラが。放心状態で地に膝をついているブランカをみつけて。駆け寄った。
「ブランカ? どうしたのですか? いったいなにが…」
「ミカエラ。ぼくはもうダメだ。ナマズに操られ、王子に危害を加えてしまったようなのだ。一族郎党皆殺しにされてしまうぅぅ」
ブランカは大粒の涙をこぼしてミカエラにすがりついた。
えぇぇ? クールで自信たっぷりで、堂々と伴侶候補に志願したブランカはいずこへ??
「こここ、コエダ様に危害? というかナマズってなに?」
ミカエラは冷静です。さすが、ミカエラ。
ブランカは指を差します。ジョシュアが持っている金魚鉢モドキの水魔法の中にいるナマズを。
みなさんが注目する中で、ぼくはナマズにたずねました。
つか、真剣にナマズと会話するぼくたち、ウケるぅ。
「どういうことなのですか? あなたはあのときの大きなナマズなのですか?」
「そうだ。私は十年前、おまえに浄化されたナマズである。私は数百年もこの湖に住み、湖の主としてあがめられてきたのだ。しかしここ数年、湖の底に魔素がたまり出して。私は魔獣と化してしまった」
とうとうと語るナマズ。
シュールな絵面です。
「おまえに浄化され、私の心臓は魔石となっておまえの手に渡った。しかし私の自我は、対岸にいたこやつの元へ飛んだのだ。こののちは、こやつと死ぬまで同化するのかと思ったが。私はみつけた。私の核である、私の魔石を。それさえあれば、私は元の姿に戻れる。だから私は、こやつに力を、魔力を分け与え。優秀な人物になって、王子に近づこうと思ったのだ。そして望みは果たされたっ」
拳はないけど、ナマズは拳を握って力説した。
まぁね、これは確かにナマズの魔石だけど。
おかしいと思ったんだよね。
ブランカには言っていなかったのに、このブローチが魔石だって知っていたし。
魔石の波動なんか、普通は手に触れないと感じ取れないもん。
でもまさか、ブランカがナマズだとは思わなかったけど。
正確には。ナマズに憑依されていたのかな?
「私はもう一度この湖に戻って。主としてあがめられたいのだ。私を湖に帰すのだ」
手のひらサイズのナマズが主になれるのかわからないが。
「おまえを湖に戻したら、魔獣となって、また湖が濁るじゃないか」
ジョシュアがそう言って。ぼくも、ふぅむとなる。
「バカを言え、私が湖を濁したわけではないわ。魔素が湧いた場所に数年ものゴミの蓄積があって変質しただけだ。そして私はもう魔獣ではない。聖女が毎日身につけていた魔石は、しっかり浄化されている。それにこの湖も聖女が浄化したのだろう? 魔素さえなければ魔獣にはなりえないのだっ」
ナマズはアセアセして言い募る。必死か?
「確かに、ナマズの言い分は正しいかな。魔素が食料の魔獣は。魔素がなければ魔獣にはならない」
「であろうぅ?」
ドヤッて、胸を張るナマズ。
ちょっとイラっとするね?
「それに私が湖にいれば、逆に湖をきれいに保てるのだ。発光虫も数が増えれば害しかないが。私が適度に食べることで適正な量でいられる。それは虫たちにも良いことなのだ」
「あぁあ、ブランカに発光虫がひっついていたのは?」
「そうだ、私に食べられたい虫たちなのだ。主に食われるのは虫にとっても喜びなのだぁ。人間の姿では虫は食えぬが…」
良かった、ブランカが虫を食べていなくて。
「なんだと? では三日で死んだ私のレッドソルジャーオオカブトも、このナマズに食われたい願望だったということか?」
「寿命で死ぬ前に私に食べてもらいたかったのであろう…」
しみじみと言って、うなずくナマズ。
なんか、イラッとするね?
「だけどなぁ? この森に魔獣が発生しているからなぁ? その魔素がナマズの口に入ったら魔獣になっちゃうかもなぁ?」
そう言って、ぼくはちらりとナマズを見やる。
「私とて、好きで魔獣になったわけではないのだぁ。私はもう一度ここの主に戻りたいだけなのだぁ。魔素など、またおまえが浄化すれば良かろう。ほれ、この先の廃屋に枯れ井戸があるからな。そこに魔素がたまっているのだぁ」
意外にあっさり。ナマズは暴露した。
どうやら、本当に魔獣になる気はなさそうだ。
「ぼく、その場所わかります」
ブランカ(ナマズ抜き)が憔悴しながらも、震える声を出した。
「祖母がいた保養地の近くに枯れ井戸があるのです。危ないから子供は行ったらダメだと言われて、見たことはないのですが場所はわかります。教えますから、なのでどうか、ぼくは処刑でも一族郎党皆殺しだけはご勘弁をぉ」
ブランカは土下座の勢いでそう言います。
こちらもなんだか可哀想になりました。
「操られていたのでしょうから、それはもういいですよ。ぼくは処刑はしません」
前世の記憶は、実はもうあまり残ってはいない。
子供の頃に鮮明だったメイのことは、昔に読んだ絵本のように外殻だけが残っているような感じ。
思い出そうとすれば思い出せるけど、普段は忘れている、みたいな。
こえだのよげんしょを今見れば、こんなこと書いたっけ? みたいな内容も多々あるよ。
それでも処刑のショッキングさは、胸をえぐる古傷のように残っている。
だからぼくは、それを誰にもしないのだ。
「ジョシュアも、そのナマズ放してあげて」
「いいのか? コエダ」
「もうナマズになってしまったのだから、放すしかないでしょう。王都に持って行くのもなんですし。それにこの子が主になるには、また数百年かかるのでしょう。ぼくはそれまで生きていないので。悪さをするようになったら、時の聖女がなんとかしてくれるよ」
「コエダは優しいな」
そう言って、ジョシュアは水魔法をまとわせたまま湖にボールを投げ入れるようにして放った。
乱暴ですね。
「そうですよ。勇者で聖女は、無益な殺生をしないのです」
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