【完結】異世界転移パパは不眠症王子の抱き枕と化す~愛する息子のために底辺脱出を望みます!~

北川晶

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2-17 十歳のお誕生日会 ①

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     ◆十歳のお誕生日会

 ぼく、コエダ・スタインベルンは十歳になりました。
 新年会を開いたばかりなのですが、ぼくのために、一月七日のお誕生日会を開いてくれるのだって。
 十歳の誕生日会は、なにやら特別なお話があるのだそうです。どきどき。
 なんて。ぼくは内容を知っていますけどね。

 まぁその前に。
 ちょっと時が経って、その間になにがあったのか。思い出してみましょう。
 まずはねぇ。
 内股が直りましたっ。やったね。
 それにね、十歳になったからね、短い丈のおズボンを卒業したのです。
 いつまでも膝を出していたら恥ずかしいしぃ…。
 え? どうでもいい?
 いいえ、大事なことです。王子が内股だったら格好がつかないでしょ?

 そうだ。ぼくは第一王子になったのです。
 つまり、父上が王様に即位して。パパが王妃様になったということですね。
 これも大事でした。

 あとねぇ、エルアンリ様もご結婚して、女の子を筆頭に、王子、王子と年子で産んで。ジュリアは安産ですごいのです。
 それからジュリアリスペクトのルリア王女…今は王妹と呼ばれていますが。ルリアは学園を卒業して、女性だけで結成する騎士団を設立したんだ。
 姫騎士というあだ名がついて、髪もバッサリ切って、騎士服をビシッと身につける男装の麗人という様相です。
 兄のオズワルドと並ぶとね、赤髪の騎士がババーンっで。すごーい。カッコいいいぃ。
 あ、オズワルドはね。父上がぼくと出会ったときにしていた総司令官っていうのをしているんだって。騎士団長の上だよ? オズワルドもスゴーイね。

 ぼくも、彼らのようにビシィィとした剣士になりたかったのですが。
 父上もいろいろ教えてくれたのですが。
 ぼくには運動が向いていないみたい。
 パパもそうだから。運動無理ぃって言ってるから。
 ぼくはパパの子だから、仕方がありません。

「小枝は大樹に似てとても頭が良いのだから。将来はその頭脳を活かして私を支えてほしいな。剣は刃物だから危ないからな。な?」
 そう、父上に言われてしまい。騎士の道はあきらめました。
 まだ十歳だから、あきらめなくてもいいのだけど。
 ジョシュア王子…今は王弟と呼ばれていますけど。ジョシュアがノアと切磋琢磨して剣術を極めているので。あちらは父上の弟ですから、やはり剣の才能が有るのでね。
 騎士の道はジョシュアに任せることにしましたよ。むぅ。

 それに他にもいろいろ忙しいのです。
 王妃権限で、パパが精力的にいろいろやるので。そのお手伝いであちこち行って大変なのです。

 パパは最初に、戦災孤児の受け入れ施設を作り、食事の提供や養子先のあっせんなどをしました。
 子供が飢えるのは見たくないと、パパは言います。
 ぼくがパパに保護されたときにギスギスだったのがトラウマなのでしょうね。

 なので炊き出しをして、まずは子供たちをお腹いっぱいにしました。
 さらに孤児院での教育を充実させたり。働き手としての人材づくりや、独り立ちできるように指導したり、いろいろしました。
 戦災孤児を救済することは、両親を亡くした子たちが恨みを募らせないようにするのに重要です。それは治安を保つことにもつながるのだと、パパは教えてくれました。
 なるほど。なんでも、つながっているのですねぇ。

 その流れで、庶民が通う義務教育の学校も作り始めまして。
 地方の領にも必ずひとつ学校を作りなさいって、パパは指示したのです。
 まだ、どの学校も建設途中ですけど。
 子供は身分に関係なく学校に通うという仕組みが出来上がりつつあります。

 あと適正価格の病院も作りました。
 基本はお医者さんと看護師さんで、診察と治療を行いますが。
 難しい病気などは治癒魔法士に治してもらうんだって。治癒魔法士は必ずひとり以上病院に常駐するという約束みたいだよ。
 それなら安心だね。

 あとね、奴隷制度は廃止になったの。スタインベルンで人身売買したら、極刑なんだって。
 これは父上が施行したのだけど。
 奴隷制度廃止にしたらパパの好感度が爆上がりだって、張り切っていましたよ。
 でも確かに、これで。
 万が一にもぼくとパパが奴隷になることはなくなりました。
 まぁ、パパも王妃ですから。もう、そんなことにはならないのですけどねぇ?
 でも。ぼくの処刑が油断ならないように。
 人生なにがあるかわかりませんからねぇ。不安の芽は摘んでおいた方がいいのですよ。うむ。

 それから水道も。うがい手洗いなどの普及で風邪や流行り病を予防できるというので。この世界でできうる限りの形で整備していっています。
 水は健康の源。元のところでぼくがお水を浄化すると、清らかなお水を飲んだ民が健康になって、税収がアップ。
 国も民もみんな幸せでウィンウィンなのです。

 でもね。六歳のときにアムランゼで、はじめて聖女の力で浄化して。それから同じような案件がちらほらありましてね。
 森の中の洞穴が黒もやぁで。魔獣がそこから湧いてくるとか?
 温泉みたいに、黒もやぁが地面から吹き出しているとか?
 年に一回ほどそういうことがあって浄化の旅をするのでね。まだまだ流行り病も油断ならないのですよ。
 ぼくが覚えていた十二歳のパンデミックまで。要注意ですっ。

 でね。いろいろ浄化するうちに、領民がぼくを聖女だって言い出して。
 内緒にしていたのに、ジワジワ口伝くちづてで広がって。
 第一王子は聖女だって。王都の人まで言い出しちゃって、隠せなくなっちゃいましたぁ。
 あぁ、でも。
 聖女だからって威張ったり、えらそうにしたり、荒稼ぎしなければ。
 たぶん、処刑はないと思います。
 父上やパパの言うようにしていれば、国のために聖女の力を使うことになるから。
 正しい使い道で、悪い子だから処刑っ、ってことにはならないでしょう。大丈夫、大丈夫。

「コエダ、お誕生日おめでとう」
 王族の控室で、みなさんがお誕生日会の会場に入る前にくつろいでいるところに。
 ジョシュアが入ってきて。
 ぼくに紫色の花束を差し出しました。
 全部紫色のお花だけど、種類がいろいろあって。花弁が肉厚で、みずみずしくて、みんなピカピカの新しいお花です。
「うわぁ、今年もとってもきれいですねぇ。ありがとう、ジョシュア」
 ぼくはそれを受け取って、ありがとう笑みをジョシュアに贈りました。
 彼はやんわりと微笑んでうなずきます。

 ジョシュアは王子ではなくなったので。王子と呼べなくなりました。ちょっとがっかり。
 前世でも王子と呼んでいたのでねぇ。慣れませんが。
 はじめて呼び捨てで名前を呼んだとき、ジョシュアはなんでか嬉しそうに、口元をむにゅむにゅしていましたから。
 まぁ、いいのですけど。

 それで、ジョシュアは。誕生日には毎年、紫色の花を集めた花束をくれるようになったのです。
 この世界では冬に花を咲かせるのは大変なのです。
 温室なども、温度管理が難しいですからね。
 だけど、ぼくの誕生日は冬でしょう? だからジョシュアは自分の温室を作って。ぼくの誕生日に合わせて紫の花を栽培しているのです。すごーい。
 ぼくのために長い時間をかけてお花を育ててくれるなんて、本当にありがたいし、嬉しいです。えへぇぇ。

 そうだ。実はジョシュアは北の館に住んでいるのです。
 前の王様と王妃。ジョシュアの両親と、サーシャと四人で暮らしているんだ。
 いえ、使用人はいっぱいいますけどね。
 その北の館のお庭に、ガラス張りのしっかりした温室を建てたんだって。
 ぼくもたまに館に遊びに行くけど。
 装飾や家具が入れ替わり、なんだか華やかになって、ぼくらが住んでいた頃の面影はないんだぁ。
 ちょっと寂しい。

 で、ぼくらはね。レギが以前言ったように、父上が王様に即位されたあと、王宮の居住区域にお引越ししたの。
 レギもグレイもハッカクも一緒だよ。バラもね。
 後宮は、父上には用がないって。今は閉鎖されています。
 次の王様が使うかもしれないね? しらんけど。

 エルアンリ様はジュリアとお子様たちと一緒に、西の館に。
 オズワルドとルリアは東の館に…って言っても。学園を卒業して騎士団に入ったふたりは、ほとんど騎士団に入り浸っていて、おうちにはあまり帰っていないみたいだけどね。
 そんな感じで、王族のみなさまは王宮の敷地内で仲良く暮らしているのです。

 それでね、目の前のジョシュアですけど。
 体格も立派になって。んん、中学生のお兄さんくらいに大きいの。
 同じ十歳なのに、なんでかぼくよりすでに頭ひとつ分高いんですけどぉ。どっゆことっ??

 パパのごとき優しい笑みを、しっかり身につけまして。普段は穏やかな微笑みをたたえ。
 だけど剣を振るっているときは、目元をキリリとした鋭さがあって。
 ぼくとパパと一緒にお勉強しているからね、今すぐ学園に行っても通じるくらいに成績優秀でね。
 頭脳明晰、威風堂々、質実剛健、文武両道。四字熟語のオンパレードです。
 父上が学生のときに言われていたのと同じことを言われているって。
 父上のご学友であったアンドリューさんが言っていました。
 おぉ、賢王子並ですか? まだ学校にも行っていないのになぁ、スゴーイ。

 つい最近まで、虫ばかり追いかけていて、剣術の稽古をさぼったり。
 勉強してもノートに落書きするような王子だったというのに。
 その変わりようはスゴーイです。えらいえらい。

 剣術は、まだノアには劣るし。
 勉学は、ぼくに劣るから。
 日々精進だって、ジョシュアは言っていて。
 天才が努力したらヤバイを地でいっています。

 なので、ジョシュアは白馬に乗った王子様一歩手前のところまで来ているのです。
 そう、あとは白馬に乗るだけ。
 しかし、ジョシュアの愛馬はなんでか黒。なんでか…。
 どうして白馬を選ばないんですかっ?
 だけど、ジョシュアはクロちゃんにひと目惚れだった。
 おかしいな。前世は白馬に乗っていたのにぃ。
 そしてネーミングセンスがひどい。黒馬にクロちゃんって。ないわぁぁぁ。
 で、クロちゃんにひと目惚れだったから、他の馬は考えられないんだって。

 うーん、その気持ちはわからなくもなくもない。
 ぼくもハルマキ以外のお馬は考えられません。
 あ、ハルマキはお馬の名前です。
 茶色でパリッとしているから。
 ハルマキは父上がぼくにプレゼントしてくれたお馬なのですがぁ。
 ぼくがハルマキって名前をつけたら。パパは眉を八の字にして。

「コエダ、春巻きは作れない。ごめんよぉ」

 と言ったのです。
 わかっておりますよ、パパ。
 パパはなんでもできるけど。
 出来ないこともあるのですよね?
 薄い皮を作るのは本当に難しいのですから。仕方がないのです…。

 なんの話だっけ?

 あぁ、だから。
 前世の冷血漢な部分がない。
 お友達のお誕生日に丹精込めて育てたお花をプレゼントする、優しくて完璧な。
 白馬に乗った…黒だけど。
 金髪碧眼ちょーイケメンの麗しの王子。
 スパダリジョシュアに仕上がりつつあるということです。
 ぼくが育てましたよ。どやぁぁ。

 あ、誕生会までいけなかったぁ。そこが本題なのにぃ。

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