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2-10 ぼく、異世界人ですよぉ?
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◆ぼく、異世界人ですよぉ?
お誕生日会のあとの話し合いで、パパの失言によりなんだかワチャワチャになってしまいましたが。
ぼくと王子の電池が切れちゃった。
お眠になったので。
その日は解散になりまして。
改めて北の館でお話し合いをすることになりました。
主に、聖女のことです。
聖女は、王家や国の存続の危機に現れるということが、ほんのり王家には伝わっているようで。
王様は。
「聖女が前王妃を廃妃するために降臨したということは、私の差配が未熟だったゆえに女神の手を煩わせてしまったということだ」
と言い。寝込んでしまいました。
これからは若い者たちに国の行く末を託す。ということで。今日の集まりは王様抜きなのですけど。
それ、丸投げって言うんですよね? ぼく、知ってるぅ。
ってことで、北の館にはエルアンリ様とオズワルド、そしてジョシュア王子が来ました。
ふと、思うと。七人の王子が、今は四人しかいないのですね…。しょぼりんぬ。
「で、神の手さま。今日は洗いざらい吐いてもらいますよ。スタインベルン王家にとって、女神の話も聖女の話も、一番重要視される事柄です。新たに神の手という項目も入りそうですがねぇぇ??」
サロンに通されたみなさまは、椅子に腰かけますが。
そうそうに緑髪のエルアンリ様に迫られ、パパはタジタジです。
「よしてください、神の手さまとか。今まで通りタイジュと呼んでくださいよ。で、殿下と小枝とも話しまして。ここは女神への信仰心厚き王家の方々にはすべてを話した方がいいということになりました。その方が、処刑のリスクも薄まるみたいなぁぁ…」
「は? 処刑ってなんですか?」
エルアンリ様が首をかしげますが。
まぁ、いろいろあったのですぅ。
「そこはおいおいお話いたします。順を追って説明しますね。俺らがここへ来たところから」
そうしてパパは。
こことは違う日本という異世界から来たところから、ぼくが前世をループしていることなどを話して。
以前は聖女だったために酷い目に合ったから、今世では内緒にしておくことにしたのだと言いました。
「女神の話によると、前回聖女としての役目を果たせずに死んだ小枝は、女神の救済を受ける間もなく輪廻の中に入ってしまって。聖女の魂を持ったまま小枝として生まれ変わったということです。聖女の魂は、俺らの住んでいたあちらの世界で生まれて、五歳頃にこちらの世界に召喚される。そこで聖女の能力を発揮して、スタインベルンを救う使命があると。そういう決まりだそうで。そういうわけで、前回使命を失敗した小枝は、もう一度同じ時間をやり直ししているということです」
「使命を失敗…やり直し…」
エルアンリ様は復唱しながらパパの話をメモしていますが。
ぼくの失敗を復唱しないでください。
いえ、メイの失敗です。ぼくは失敗していませんので。
パパのお話は、ぼくの知らないことも混ざっていました。
生まれ変わったぼくが、またこの時間をやり直している理由とか、聖女は五歳で召喚される決まりだとか?
パパはこの前、聖女の役目は終わったから処刑はないと言いました。
その役目が、前王妃をこの国から追い出すことだったのなら。
やはりメイは、ミッションコンプリート出来なかったということですね?
それで、もう一度ここに来たけど。
メイのミッションはほぼほぼパパがなんとかしちゃいました。
聖女じゃないのに、パパったらスゴーイ。さすがパパです。
「タイジュは? 神の手として召喚されたのだろう?」
オズワルドの言葉に、パパは首を横に振ります。
あ、エルアンリ様は書記に徹するようですよ?
ツッコミ役をオズワルドに一任しました。
「いいえ、俺はイレギュラーだと女神が言っていた。小枝のおまけです。一緒にくっついてきちゃった、みたいな?」
「さらりと女神に会ったって言うが。行方知れずのあのときに、女神と話をしていたってことなのか?」
「えぇ、いろいろ聞きましたよ。小枝の件では理不尽なことが多いので。ほぼほぼ俺が説教していましたけど。俺については、おまけの俺が異世界で寿命を迎えずに死ぬのは、女神的に不都合らしくて。あのときは死亡回避のために引き上げたということらしい。だけど俺は、普通の日本人なんですよ」
「女神に説教とか、考えられない…」
オズワルドもエルアンリ様も、顔を青くしていますよ。
スタインベルンの神様を説教ってことは、パパはスタインベルン最強でいいですね?
「しかし、普通などと言うが。王妃を眠らせて国に突っ返したって、兄上から聞いている。そのようなすごい魔法があるのに?」
「異世界人がこちらに入るときに、魔法をひとつもらえるのだそうで。無意識に自分が欲する能力だそうです。俺、一番はじめにローディ子爵を治療したときに、勝手に治る…治癒魔法みたいなのを思い浮かべたのに。ふたを開けたらスリーパーで。その話を女神に聞いたとき、俺、自分で治療がしたかったんだなって。それで麻酔の能力だったんだなって。思っちゃいました」
てへっ、とパパは笑う。
無意識に、医者の技術を役立たせたいって思ったんでしょ?
スゴーイです、パパッ。
「あと、文字や言葉も自動翻訳されていて、そちらも標準装備だそうです」
「そうなのか?」
そこは父上も知らなかったようで。
「えぇ、文字などは。俺、自国の文字を書いていますけど、こちらの言葉に勝手に直されていますね」
パパの話にうなずいています。
「すごい神秘だ。勝手に翻訳されているなんて…まさに神の御業ですね」
エルアンリ様がメモしながら、つぶやいていて怖いです。
「で、これは俺の想像なのですけど。俺が女神と話していたのは、体感十分くらいのことだったのですよ。なのに、戻されたときは三ヶ月後だったでしょう? あれって、殿下たちがハウリム国を制圧するのを見計らってのことだったんじゃないかなって」
「どういう意味だ? 大樹」
父上がハテナ顔で聞きます。
「俺がいなくなったことで、国民が憤り、ハウリム殲滅の流れになったのでしょう? 俺がすぐに戻ったら、そういう空気にはならなかった。女神は、時間の流れがあちらとこちらは違うのよぉ、とか。女神はこちらの世界に干渉できないのよぉ、なんて言っていましたが。スタインベルンや女神に反目する者への制裁の流れをスルーして、すべて終わってから俺をこちらに戻したんじゃないかと邪推します。それが計算通りなら、怖い女神ですよ…」
パパは肩をすくめてそう言いますが。
エルアンリ様とオズワルドは、なにやら目をキラキラさせていますよぉ?
「…いいえ、女神はスタインベルン国や王家を我が子のように見守っているということです。コエダの危機にはタイジュも目くじら立てるでしょう? それと同じです。王族として、私は女神の深い愛を感じ取りましたぁ」
エルアンリ様は怒涛の勢いでペンを動かしながらも、恍惚という表情でそう言いました。
女神への目の曇り加減が半端ないです。
「つか、聖女なのに男の子に転生しちゃうなんて、コエダはおバカさんだなぁ」
ははは、とオズワルドは笑いますけど。
失礼ですね。
大体、選んで生まれ直せるわけじゃないんですからね、ぷんぷん。
「女神が言うには、男性体の聖女も過去にいたらしいですよ。その場合は、主に勇者として魔獣退治や世直しなどをしたらしく。王家の姫を娶って王族の一員になったとか。聖女は女神の因子を持っているので、王家に女神の遺伝子が入ることで血脈の強化を…」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て。え? 聖女が女神の因子を持っている?」
ツッコミ役のオズワルドが、オドオドしています。
「はい。聖女は女神のクローン…魂の一部で。王家の者と婚姻することで、女神の因子が王家に取り込まれ。魔法力を強めて国民の支持を得られ。王家は安泰。女神の子孫も安泰。みたいな? それを定期的に繰り返しているそうです」
「ヤッベぇ、新説ばかりで、頭が追いつかねぇ」
オズワルドは、椅子の背もたれにがっくりしましたが。
エルアンリ様が、今度はずいと身を乗り出した。
「では、コエダは女神の因子を持っているってことですよね? でしたら兄上。コエダが王位継承者でも良いのでは?」
「コエダが王家の者と婚姻するのなら、それもありだな。しかし王家以外の者との結婚では、スタインベルンの血脈が残らないので不可だ」
なにやら真剣に、王位のお話をしていますが。
ぼくはパパのおまけで、父上の血脈じゃないのですから。
王位は無理ですよ?
メイはそう思っていましたけどぉ? ぼくも同感でしたけどぉ?
それにね、ぼく、異世界人ですよぉ?
「だめぇ。コエダは私と婚約するのですからっ」
父上とエルアンリ様のお話に、ついていけていないながらもジョシュア王子が突っ込んだっ。
「ジョシュアは王族だが、女神の因子を取り込むのならコエダは女性と結婚して子孫を残してもらわなくては。王家の姫が対象だ」
しかし、まっすぐにエルアンリ様に言われ、王子はえへぇぇぇん、と眉毛を下げます。
「まぁ、お待ちください。女神は、小枝は男の子だから今回は因子を取り込めなくてもいいって言っておりました。それに、私は小枝には。ちゃんと小枝が好きになった人と結婚してもらいたい。女神の因子を王家に取り込みたいという理由で小枝が好きでもない人と結婚するというのは反対です」
パパが、きっぱりと申してくれました。良かったです。
ぼく、よくわからないけど。
好きな人と結婚するのが幸せだというのは。
パパと父上を見ていればわかります。
ぼくも、パパと父上のような結婚がしたいです。
「じゃあ、コエダが私を好きになったら、結婚してもいい?」
王子の、小首かしげあざとい可愛い攻撃を受け。
パパは苦笑ですが。
「はい。小枝が王子を愛しているになったら、いいですよ」
やったぁぁ、と。
王子は婚約の資格を勝ち取った勢いですが。
ぼくが愛しているになるかどうかは、わかりませんからねぇぇ?
「しかし、女神の因子を持っているとわかっていて、スルーはできません。コエダの結婚相手は、王家の直系三親等までと制限するべきでは?」
「制限は良くない。市井の者でも、小枝が好きになった相手ならば俺は受け入れたいです」
エルアンリ様とパパのバチバチ対決に。
ディオン父上は待ったをかける。
「小枝の結婚話はまだ早い。エルアンリも先走らないでくれ。しかしこの件は、しばし考えさせてもらいたい。大樹、悪いようには決してしないから。私に預けてくれるな?」
パパは父上にうなずきを返しました。
「エルアンリ兄上に一歩も引かねぇタイジュ、おっかねぇ」
肩をすくめてオズワルドはそうつぶやき。
「当然だ、私が唯一頭の上がらぬ神の手だからな」
口をへの字にした父上がそう返す。
「スタインベルン最強の騎士である兄上を尻に敷くとは。ヤッベぇな、タイジュ」
なんて、オズワルドは笑いますが。
そうです、パパは父上より強いのですからっ。んん、最高のスパダリなのです。
というわけで。ぼくの結婚の話は、ひとまず置いておいてになりました。
お誕生日会のあとの話し合いで、パパの失言によりなんだかワチャワチャになってしまいましたが。
ぼくと王子の電池が切れちゃった。
お眠になったので。
その日は解散になりまして。
改めて北の館でお話し合いをすることになりました。
主に、聖女のことです。
聖女は、王家や国の存続の危機に現れるということが、ほんのり王家には伝わっているようで。
王様は。
「聖女が前王妃を廃妃するために降臨したということは、私の差配が未熟だったゆえに女神の手を煩わせてしまったということだ」
と言い。寝込んでしまいました。
これからは若い者たちに国の行く末を託す。ということで。今日の集まりは王様抜きなのですけど。
それ、丸投げって言うんですよね? ぼく、知ってるぅ。
ってことで、北の館にはエルアンリ様とオズワルド、そしてジョシュア王子が来ました。
ふと、思うと。七人の王子が、今は四人しかいないのですね…。しょぼりんぬ。
「で、神の手さま。今日は洗いざらい吐いてもらいますよ。スタインベルン王家にとって、女神の話も聖女の話も、一番重要視される事柄です。新たに神の手という項目も入りそうですがねぇぇ??」
サロンに通されたみなさまは、椅子に腰かけますが。
そうそうに緑髪のエルアンリ様に迫られ、パパはタジタジです。
「よしてください、神の手さまとか。今まで通りタイジュと呼んでくださいよ。で、殿下と小枝とも話しまして。ここは女神への信仰心厚き王家の方々にはすべてを話した方がいいということになりました。その方が、処刑のリスクも薄まるみたいなぁぁ…」
「は? 処刑ってなんですか?」
エルアンリ様が首をかしげますが。
まぁ、いろいろあったのですぅ。
「そこはおいおいお話いたします。順を追って説明しますね。俺らがここへ来たところから」
そうしてパパは。
こことは違う日本という異世界から来たところから、ぼくが前世をループしていることなどを話して。
以前は聖女だったために酷い目に合ったから、今世では内緒にしておくことにしたのだと言いました。
「女神の話によると、前回聖女としての役目を果たせずに死んだ小枝は、女神の救済を受ける間もなく輪廻の中に入ってしまって。聖女の魂を持ったまま小枝として生まれ変わったということです。聖女の魂は、俺らの住んでいたあちらの世界で生まれて、五歳頃にこちらの世界に召喚される。そこで聖女の能力を発揮して、スタインベルンを救う使命があると。そういう決まりだそうで。そういうわけで、前回使命を失敗した小枝は、もう一度同じ時間をやり直ししているということです」
「使命を失敗…やり直し…」
エルアンリ様は復唱しながらパパの話をメモしていますが。
ぼくの失敗を復唱しないでください。
いえ、メイの失敗です。ぼくは失敗していませんので。
パパのお話は、ぼくの知らないことも混ざっていました。
生まれ変わったぼくが、またこの時間をやり直している理由とか、聖女は五歳で召喚される決まりだとか?
パパはこの前、聖女の役目は終わったから処刑はないと言いました。
その役目が、前王妃をこの国から追い出すことだったのなら。
やはりメイは、ミッションコンプリート出来なかったということですね?
それで、もう一度ここに来たけど。
メイのミッションはほぼほぼパパがなんとかしちゃいました。
聖女じゃないのに、パパったらスゴーイ。さすがパパです。
「タイジュは? 神の手として召喚されたのだろう?」
オズワルドの言葉に、パパは首を横に振ります。
あ、エルアンリ様は書記に徹するようですよ?
ツッコミ役をオズワルドに一任しました。
「いいえ、俺はイレギュラーだと女神が言っていた。小枝のおまけです。一緒にくっついてきちゃった、みたいな?」
「さらりと女神に会ったって言うが。行方知れずのあのときに、女神と話をしていたってことなのか?」
「えぇ、いろいろ聞きましたよ。小枝の件では理不尽なことが多いので。ほぼほぼ俺が説教していましたけど。俺については、おまけの俺が異世界で寿命を迎えずに死ぬのは、女神的に不都合らしくて。あのときは死亡回避のために引き上げたということらしい。だけど俺は、普通の日本人なんですよ」
「女神に説教とか、考えられない…」
オズワルドもエルアンリ様も、顔を青くしていますよ。
スタインベルンの神様を説教ってことは、パパはスタインベルン最強でいいですね?
「しかし、普通などと言うが。王妃を眠らせて国に突っ返したって、兄上から聞いている。そのようなすごい魔法があるのに?」
「異世界人がこちらに入るときに、魔法をひとつもらえるのだそうで。無意識に自分が欲する能力だそうです。俺、一番はじめにローディ子爵を治療したときに、勝手に治る…治癒魔法みたいなのを思い浮かべたのに。ふたを開けたらスリーパーで。その話を女神に聞いたとき、俺、自分で治療がしたかったんだなって。それで麻酔の能力だったんだなって。思っちゃいました」
てへっ、とパパは笑う。
無意識に、医者の技術を役立たせたいって思ったんでしょ?
スゴーイです、パパッ。
「あと、文字や言葉も自動翻訳されていて、そちらも標準装備だそうです」
「そうなのか?」
そこは父上も知らなかったようで。
「えぇ、文字などは。俺、自国の文字を書いていますけど、こちらの言葉に勝手に直されていますね」
パパの話にうなずいています。
「すごい神秘だ。勝手に翻訳されているなんて…まさに神の御業ですね」
エルアンリ様がメモしながら、つぶやいていて怖いです。
「で、これは俺の想像なのですけど。俺が女神と話していたのは、体感十分くらいのことだったのですよ。なのに、戻されたときは三ヶ月後だったでしょう? あれって、殿下たちがハウリム国を制圧するのを見計らってのことだったんじゃないかなって」
「どういう意味だ? 大樹」
父上がハテナ顔で聞きます。
「俺がいなくなったことで、国民が憤り、ハウリム殲滅の流れになったのでしょう? 俺がすぐに戻ったら、そういう空気にはならなかった。女神は、時間の流れがあちらとこちらは違うのよぉ、とか。女神はこちらの世界に干渉できないのよぉ、なんて言っていましたが。スタインベルンや女神に反目する者への制裁の流れをスルーして、すべて終わってから俺をこちらに戻したんじゃないかと邪推します。それが計算通りなら、怖い女神ですよ…」
パパは肩をすくめてそう言いますが。
エルアンリ様とオズワルドは、なにやら目をキラキラさせていますよぉ?
「…いいえ、女神はスタインベルン国や王家を我が子のように見守っているということです。コエダの危機にはタイジュも目くじら立てるでしょう? それと同じです。王族として、私は女神の深い愛を感じ取りましたぁ」
エルアンリ様は怒涛の勢いでペンを動かしながらも、恍惚という表情でそう言いました。
女神への目の曇り加減が半端ないです。
「つか、聖女なのに男の子に転生しちゃうなんて、コエダはおバカさんだなぁ」
ははは、とオズワルドは笑いますけど。
失礼ですね。
大体、選んで生まれ直せるわけじゃないんですからね、ぷんぷん。
「女神が言うには、男性体の聖女も過去にいたらしいですよ。その場合は、主に勇者として魔獣退治や世直しなどをしたらしく。王家の姫を娶って王族の一員になったとか。聖女は女神の因子を持っているので、王家に女神の遺伝子が入ることで血脈の強化を…」
「ちょっ、ちょっ、ちょっと待て。え? 聖女が女神の因子を持っている?」
ツッコミ役のオズワルドが、オドオドしています。
「はい。聖女は女神のクローン…魂の一部で。王家の者と婚姻することで、女神の因子が王家に取り込まれ。魔法力を強めて国民の支持を得られ。王家は安泰。女神の子孫も安泰。みたいな? それを定期的に繰り返しているそうです」
「ヤッベぇ、新説ばかりで、頭が追いつかねぇ」
オズワルドは、椅子の背もたれにがっくりしましたが。
エルアンリ様が、今度はずいと身を乗り出した。
「では、コエダは女神の因子を持っているってことですよね? でしたら兄上。コエダが王位継承者でも良いのでは?」
「コエダが王家の者と婚姻するのなら、それもありだな。しかし王家以外の者との結婚では、スタインベルンの血脈が残らないので不可だ」
なにやら真剣に、王位のお話をしていますが。
ぼくはパパのおまけで、父上の血脈じゃないのですから。
王位は無理ですよ?
メイはそう思っていましたけどぉ? ぼくも同感でしたけどぉ?
それにね、ぼく、異世界人ですよぉ?
「だめぇ。コエダは私と婚約するのですからっ」
父上とエルアンリ様のお話に、ついていけていないながらもジョシュア王子が突っ込んだっ。
「ジョシュアは王族だが、女神の因子を取り込むのならコエダは女性と結婚して子孫を残してもらわなくては。王家の姫が対象だ」
しかし、まっすぐにエルアンリ様に言われ、王子はえへぇぇぇん、と眉毛を下げます。
「まぁ、お待ちください。女神は、小枝は男の子だから今回は因子を取り込めなくてもいいって言っておりました。それに、私は小枝には。ちゃんと小枝が好きになった人と結婚してもらいたい。女神の因子を王家に取り込みたいという理由で小枝が好きでもない人と結婚するというのは反対です」
パパが、きっぱりと申してくれました。良かったです。
ぼく、よくわからないけど。
好きな人と結婚するのが幸せだというのは。
パパと父上を見ていればわかります。
ぼくも、パパと父上のような結婚がしたいです。
「じゃあ、コエダが私を好きになったら、結婚してもいい?」
王子の、小首かしげあざとい可愛い攻撃を受け。
パパは苦笑ですが。
「はい。小枝が王子を愛しているになったら、いいですよ」
やったぁぁ、と。
王子は婚約の資格を勝ち取った勢いですが。
ぼくが愛しているになるかどうかは、わかりませんからねぇぇ?
「しかし、女神の因子を持っているとわかっていて、スルーはできません。コエダの結婚相手は、王家の直系三親等までと制限するべきでは?」
「制限は良くない。市井の者でも、小枝が好きになった相手ならば俺は受け入れたいです」
エルアンリ様とパパのバチバチ対決に。
ディオン父上は待ったをかける。
「小枝の結婚話はまだ早い。エルアンリも先走らないでくれ。しかしこの件は、しばし考えさせてもらいたい。大樹、悪いようには決してしないから。私に預けてくれるな?」
パパは父上にうなずきを返しました。
「エルアンリ兄上に一歩も引かねぇタイジュ、おっかねぇ」
肩をすくめてオズワルドはそうつぶやき。
「当然だ、私が唯一頭の上がらぬ神の手だからな」
口をへの字にした父上がそう返す。
「スタインベルン最強の騎士である兄上を尻に敷くとは。ヤッベぇな、タイジュ」
なんて、オズワルドは笑いますが。
そうです、パパは父上より強いのですからっ。んん、最高のスパダリなのです。
というわけで。ぼくの結婚の話は、ひとまず置いておいてになりました。
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