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94 悪意の結末
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◆悪意の結末
結婚式に引き続いて、大聖堂の中で立太子の儀も行われた。
荘厳な感じの音楽が流れる大聖堂、その真ん中に伸びる赤い絨毯が敷かれた道。
そこに、ディオンが身につけたマントが、長く伸びて。裾が美しく整えられている。
俺と小枝は、ディオンから少し離れた位置で儀式を見守った。
立太子の儀は、なんかスタインベルンの特別なしきたりがあるみたいで。
中央の祭壇に大司教がいて、その祭壇に、黄金でできた小さな食器のティーセットとか皿とかいろいろ乗っているトレーを、ディオンが納めるんだ。
お供えみたいな感じかな?
なんかままごとセットみたいやつ。黄金でゴージャスなままごとセット。
食べ物は乗っていないから、まんまそんな感じなんだ。
で、ディオンが祈りを捧げている間、大司教が祝詞みたいなものをむにゃむにゃ言って。
つか、祈りを捧げるディオンの横顔がイケメーン。ハンサーム。鼻が高ーい。
『女神フォスティーヌの導きにより、ディオン・スタインベルンを次期王位継承者と定める』
という大司教の締めの言葉のあと。
立太子に同意する署名を殿下がして。
ディオンは正式に王太子となり。伴侶の俺は王太子妃となったのだ。
客席からは、大きな拍手が上がり。俺と小枝はディオンの元へ向かう。
いっぱいの祝福の笑顔を受け、俺らは笑い合った。
大聖堂の外には、すでに大勢の民衆が集まっているようで。さざ波のような歓声が聞こえていた。
俺と殿下は、国民のみなさまに挨拶をするべく、ディオンの誘導で大聖堂の赤いカーペットの敷かれた道を歩いていった。
俺たちの長い裾のその後ろで、小枝とジョシュア王子が籠に入った花を一生懸命まいている。可愛いね。
そして両開きの扉が大きく開け放たれると。
王太子と王太子妃になった俺たちをひと目見ようと集まった民衆が、歓喜の声をあげた。
明るい日の光の中、大聖堂の階段の一番上にいる俺たちは、国民に向かって晴れやかな笑顔で手を振ったのだ。
そこまでは。とにかく幸せな構図だった。
でも。みんなが笑顔の中。俺は斜め後方の、ほんの目の端に。醜悪な人相の者をみつけたんだ。
その者は民族衣装のようなアイボリーのフードを頭にかぶり。
目を血走らせ、鼻に筋を立てて、歯を食いしばる。濃茶の髪。
ニジェールだった。
俺らにそっと近づいて、もうすぐそこにナイフが見えていたから。
避けられない。
「なにが神の手だ、おまえさえいなければっ」
悪意を隠すこともなく、ニジェールは俺に怨嗟を吐く。
俺がいなければなんだ? 王になれたとでも?
俺がいなくても、ディオンは立派な王になれるのだ。
おまえの出る幕などない。
そう言ってやりたかったけど。本当に刹那の時間だったから。
ただディオンをかばって後ろに突き飛ばすことしかできなかった。
スリーパーをする頭も働かなかった。
すると、俺の足元に魔法陣が展開し。俺を中心にして白い光がバリアのように周囲を包んだ。
そして、それに突っ込んできたニジェールは。
白い光に触れた途端に、炎に包まれたのだ。
「ぎゃああああっっ!!」
ニジェールの断末魔を耳にし。俺は。
彼が、神の業火に焼かれるのを見た。
これが、彼の悪意の結末だった。
「大樹ッ」
「パパぁぁぁっ!!」
ニジェールが炎に焼かれたというのに、ディオンと小枝は俺を包む光に手を伸ばす。
ダメです、危ないでしょ?
そう思ったとき。
俺は上に引き上げられたのだ。
結婚式に引き続いて、大聖堂の中で立太子の儀も行われた。
荘厳な感じの音楽が流れる大聖堂、その真ん中に伸びる赤い絨毯が敷かれた道。
そこに、ディオンが身につけたマントが、長く伸びて。裾が美しく整えられている。
俺と小枝は、ディオンから少し離れた位置で儀式を見守った。
立太子の儀は、なんかスタインベルンの特別なしきたりがあるみたいで。
中央の祭壇に大司教がいて、その祭壇に、黄金でできた小さな食器のティーセットとか皿とかいろいろ乗っているトレーを、ディオンが納めるんだ。
お供えみたいな感じかな?
なんかままごとセットみたいやつ。黄金でゴージャスなままごとセット。
食べ物は乗っていないから、まんまそんな感じなんだ。
で、ディオンが祈りを捧げている間、大司教が祝詞みたいなものをむにゃむにゃ言って。
つか、祈りを捧げるディオンの横顔がイケメーン。ハンサーム。鼻が高ーい。
『女神フォスティーヌの導きにより、ディオン・スタインベルンを次期王位継承者と定める』
という大司教の締めの言葉のあと。
立太子に同意する署名を殿下がして。
ディオンは正式に王太子となり。伴侶の俺は王太子妃となったのだ。
客席からは、大きな拍手が上がり。俺と小枝はディオンの元へ向かう。
いっぱいの祝福の笑顔を受け、俺らは笑い合った。
大聖堂の外には、すでに大勢の民衆が集まっているようで。さざ波のような歓声が聞こえていた。
俺と殿下は、国民のみなさまに挨拶をするべく、ディオンの誘導で大聖堂の赤いカーペットの敷かれた道を歩いていった。
俺たちの長い裾のその後ろで、小枝とジョシュア王子が籠に入った花を一生懸命まいている。可愛いね。
そして両開きの扉が大きく開け放たれると。
王太子と王太子妃になった俺たちをひと目見ようと集まった民衆が、歓喜の声をあげた。
明るい日の光の中、大聖堂の階段の一番上にいる俺たちは、国民に向かって晴れやかな笑顔で手を振ったのだ。
そこまでは。とにかく幸せな構図だった。
でも。みんなが笑顔の中。俺は斜め後方の、ほんの目の端に。醜悪な人相の者をみつけたんだ。
その者は民族衣装のようなアイボリーのフードを頭にかぶり。
目を血走らせ、鼻に筋を立てて、歯を食いしばる。濃茶の髪。
ニジェールだった。
俺らにそっと近づいて、もうすぐそこにナイフが見えていたから。
避けられない。
「なにが神の手だ、おまえさえいなければっ」
悪意を隠すこともなく、ニジェールは俺に怨嗟を吐く。
俺がいなければなんだ? 王になれたとでも?
俺がいなくても、ディオンは立派な王になれるのだ。
おまえの出る幕などない。
そう言ってやりたかったけど。本当に刹那の時間だったから。
ただディオンをかばって後ろに突き飛ばすことしかできなかった。
スリーパーをする頭も働かなかった。
すると、俺の足元に魔法陣が展開し。俺を中心にして白い光がバリアのように周囲を包んだ。
そして、それに突っ込んできたニジェールは。
白い光に触れた途端に、炎に包まれたのだ。
「ぎゃああああっっ!!」
ニジェールの断末魔を耳にし。俺は。
彼が、神の業火に焼かれるのを見た。
これが、彼の悪意の結末だった。
「大樹ッ」
「パパぁぁぁっ!!」
ニジェールが炎に焼かれたというのに、ディオンと小枝は俺を包む光に手を伸ばす。
ダメです、危ないでしょ?
そう思ったとき。
俺は上に引き上げられたのだ。
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