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43 王宮にレッツゴー (小枝)
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◆王宮にレッツゴー (小枝)
はぁああ、本当にゆううつです。
今日は、とうとうジョシュアと遊ぶ日です。
ぼくは、あの王子がツンツン王子だと知っているので。もう、ゆううつでしかありませんよ。しごとじゃなきゃぁあ、やってられませぇん。
あの子ねぇ、メイが一生懸命話しかけても、笑いかけても。ずっと口をへの字にしていたんだよ? まだ殿下の方が可愛げがあるのです。
殿下とジョシュアは兄弟かもしれませんけど、殿下はぼくの弟ですから。殿下の方が圧倒的に可愛いですぅ。
パパはあげませんけどね。
しかしながら、ぼくがジョシュアに会わないと、パパが叱られちゃうでしょ?
ぼくは、パパがすみませんとかごめんなさいとかするのは嫌いなのです。だから、ぼくのせいでそうならないようにしたいんだ。
だから、ゆうううううつだけど。外出の支度をしましょう。
朝食の後にグチュグチュぺ、したら。鏡をみつめてにっこり、笑顔の練習をします。
パパがね。
『笑顔が可愛ければ、誰かが必ず愛してくれる。もちろんパパは、小枝を一番愛しているけど』
って言うの。
ぼくはパパに愛されていれば充分だけど。
もっと、もっと、パパに愛してもらいたいからね、笑顔の練習を欠かさないんだ。
パパが、小枝の笑顔可愛い。もう大好きっ。って思うようにね。
ぼくの眉毛は下がってて、パパはション垂れ眉毛って言うの。でもそのおかげで、笑っていなくても笑っているように見えるんだ。ちょっと笑ったら満面の笑みみたいになる。
ぼくの顔って、お得だよね。
パパはぼくの、ちょっとゆるふわな顔も、ふわふわの薄焼き卵色の髪の毛も大好きなんだって。
だからね。前世のぼくはまぁまぁ美人だったけど。
今の顔の方が好きかな?
だって、パパが好きな顔の方がいいもんね。
それで、今日もイケてるスマイルを確認して、洗面所から居間に戻ったら。パパがいつものとは少し違う、キラキラした衣装を用意してたよ。
いつもの紫色の衣装、プラス金銀刺繍付きキラキラバージョンみたいなやつを着せてくれた。
微妙に重いけど。
パパもレギも可愛いって褒めてくれるから。ま、いっか。
それで、パパはいつもの黒い服で。レギは騎士の服で。殿下は騎士の中でもえらい人みたいな、濃い青地の騎士服を着ていて。それでみんなで馬車に乗って。
王宮にレッツゴー。
ぼくねぇ、王宮ははじめてじゃないよ。
聖女のときに招かれて。聖女が現れた記念のパーティーとか、してくれたんだよね。
最初はね、悪い気がたまって魔獣に変化した動物さんを浄化したりして。
そうしたら、みんなすごいすごいって褒めてくれたのに。
いつの間にか悪女認定されて、処刑されちゃうなんて。どゆこと?
ま、いいよ。前世のことは終わったことだしぃ。
それを踏まえてぇ、ここではパパとどうやって生きていくべきかってことでしょ? はいはい。
簡単なのは、諸悪の根源であるジョシュアと関わらないことだけど。
もう。遊び相手をしなきゃならないのは、仕方がないよね?
なのでぇ、穏便にぃ、パパが怒られないようにぃ、ぼくが遊び相手には不向きだということをわかってもらいたいのです。
そういうふうにする、けいかくですっ。
前世のジョシュアは、騎士を目指していて。んん、殿下の金髪バージョンみたいだった。
でも殿下も大概無愛想だけど、ジョシュアはニコリともしないからね。
殿下はパパにはよく微笑みかけるけど。
そういう甘いの、ジョシュアはなし。塩だよ塩っ。
あ、メイにだけだったかもしれないけど。
とにかく、ぼくが覚えているジョシュアはそんな感じで。剣術馬鹿というか。いつも訓練していて。邪魔すると怒るの。
ちょっと話しかけただけなのにぃ。
だから、なにが言いたいのかというと。ジョシュアは剣が大好きなアウトドア派だからね。
ぼくは、お家で勉強したいインドア派になるの。
そうしたら、面白くなーいってなるじゃん?
ぼくのけいかくはかんぺきだっ。
それで、馬車の窓から王宮が見えてきて。
王宮は、白い壁や柱のふちに金色が塗り込まれていて、横広ですっごくでっかいキラキラな建物。殿下のお化け屋敷の十倍以上のでっかさなの。
ぼくは、前世では。正面玄関から入って、謁見の間で王様にご挨拶して、舞踏会会場でダンスを踊ったんだけど。
今日は馬車が玄関前を通り過ぎていって、王宮の裏の方に向かっていく。
そちらにジョシュアが住む後宮があるわけですね。
そこは初体験です。未知です。
それで、北の離宮の玄関のような扉を、騎士が守っていて。レギと殿下が馬車を降りると、警護の騎士さんがビシッと敬礼した。
カッコイイぃ。こう、かかとをバシッと合わせて、ギャッと胸に拳を当てるの。素敵ですぅ。ぼくもやりたい。
あ、でもジョシュアとかぶるから、騎士はなしです。
あぁあ、でも、さっそうとパパを守るぼくというのも、捨てがたいです。
むむ、保留で。
そして、殿下が手を差し伸べて、パパを馬車から降ろす。
ぼく。殿下のこと全然認めていないけど。こうしてパパをエスコートする殿下はとってもカッコいい。
あぁ、ぼくも早く殿下くらいに大きくなって、パパをエスコートしたいですぅ。
前世はエスコートされる側だったけど。
もう、パパをエスコートしたい欲が高まっています。
よし、いつかパパをエスコートできる、騎士のようなたけだけしい男になってやろう。そしてパパがぐらりとしたら、すかさずお姫様抱っこをして。笑顔でありがとうって言ってもらうのぉぉぉ。
これは、よいではないかよいではないか?
「小枝、おいで。馬車から降りようね」
パパは、ぼくの妄想とおんなじ笑顔で、ぼくに両手を差し伸べる。
そう、ぼくはまだ。馬車を降りるときパパに高い高いしてもらって、お空を飛んでいるところなので。
エスコートは夢のまた夢なのです。
でも、馬車を降りるときにふわぁ、とするのが楽しくて。ウキャキャとなってしまう。
大人のメイは子供っぽくて恥ずかしいとか思うけど。
子供のぼくはまだまだ遊びたいのです。その心のせめぎあいです。
大丈夫、大きくなるまでまだまだ時間がかかります。
ゆっくり、殿下のような、ぶつかっても微動だにしない大人になりまっす。
で、ぼくはパタパタっと手を羽ばたかせるのだが。
王宮の前だからか、滞空時間が短いです、パパッ。
それで、ぼくはパパと手をつないで。殿下とレギが歩く後ろについていきます。
屋敷の中に入って、玄関ホールを右手に行くと。お客様が一番初めに通されるサロンというお部屋に通される。
執事さんが案内してくれて。
サロンは全面ガラス張りで、とっても明るくて、日がビカビカでした。
「ほぁあ、やはりお化け屋敷のサロンよりも明るいですねぇ」
「小枝。ディスらないで」
パパが口元を引きつらせているので。お口チャックしましょう。
そしてそのサロンには、絵本から飛び出したような、お姫様がいた。
フリルビラビラの赤いドレスを着て、豊かな金髪が波打ち、胸元の宝石よりも髪が輝いていた。
その横にちょこんといるのが、ジョシュア。
濃紺の衣装を身につけた、金髪碧眼の、ザ・王子様。
前世のでっかいジョシュアがそのままちっさくなった感じぃ。
だからこそ…怖い。
「あら? あらあらあら? これは…シャルフィじゃないのぉ?」
お姫様はぼくを目にすると小走りで駆け寄ってきて。
両手でぼくのほっぺに手を当てた。
「あぁあ、懐かしいわぁ? あの子、紫の衣装をいつも着ていたものね? ほっぺがちょっと物足りないけど。愛らしいわぁ?」
そしてぼくのほっぺをモミモミしてくるのだった。
な、なにをするのぉぉぉ??
あぁあ、あぁあ、やめてぇ、パパ、助けてぇ。
「マリアンヌ、挨拶もなしにコエダで遊ぶんじゃない」
お姫様の攻撃から助けてくれたのは、パパではなく、殿下だった。
グッジョブ、殿下。
しかしながら、このお姫様はいったいなんなのでしょう?
ぼくのほっぺから手を離したお姫様は、立ち上がって殿下に言った。
「まぁ、ごめんあそばせ、ディオン。この度はこちらの我が儘を聞いてくださり、ありがとう。さっそく、そちらの可愛らしい子を紹介してくださらない?」
お姫様はジョシュアをそばに寄せながら、殿下に挨拶をし。
「あぁ。彼女はジョシュアの母のマリアンヌだ」
殿下が彼女をぼくらに紹介すると、お姫様は淑女の礼を取った。
スカートを指先で持ってお辞儀するやつ。メイのときに習ったから、ぼく知ってる。
結構難しいんだもんね。
つか、ジョシュアのママだったんだね? 若いからお姉ちゃんかと思ったよ。
「こちらはタイジュ。私の従者だ。そしてこの子はタイジュの息子のコエダ。シャルフィではないぞ」
殿下の紹介とも思えない紹介を受け。ぼくはぺこりと頭を下げた。
「御厨小枝、五歳です。先日はご挨拶が出来ず、誠に失礼いたしました」
おそるおそるジョシュアと目を合わせ、挨拶と謝罪をする。
うわぁん、やっぱり怖いよぉ。いきなり牢にはぶち込まれないと思うけどぉ。
ぼくは。彼のことを知っている。
顔も、声も、性格も。
知っているのだから、対処はできるはず。
だけど、どうしても恐怖が湧き起こってきた。前世の記憶が、ぼくをおびやかす。
オドオドと、ぼくが彼を見やると。
ジョシュアがぼくを食い入るように見ていて…なんですか? 怒ってんの?
「っお、俺は。第七王子のジョシュア・スタインベルンだっ」
はい、知ってますけど。という気持ちで、きょとんとみつめる。
というか、はじめてぼくに話しかけてきた感じ? メイ期も含めて。
前世では、馬鹿みたいにぼくの方から話しかけて、ウザがられていたもんな。
「お、おまえっ……よく来たな」
ジョシュアはサラサラの前髪を手で直しながら、そう言う。
えぇ、仕事ですから。
そうだ、仕事なんだから、ちょっとはサービスしなくちゃね。
ぼくはとびっきりの笑みを浮かべて、ジョシュアに告げた。
「おまえではなく、コエダとお呼びくださいませ、ジョシュア王子?」
そうしたらジョシュアは。なにやら胸をおさえて、プルプル震えた。
発作? トイレ? 大丈夫?
はぁああ、本当にゆううつです。
今日は、とうとうジョシュアと遊ぶ日です。
ぼくは、あの王子がツンツン王子だと知っているので。もう、ゆううつでしかありませんよ。しごとじゃなきゃぁあ、やってられませぇん。
あの子ねぇ、メイが一生懸命話しかけても、笑いかけても。ずっと口をへの字にしていたんだよ? まだ殿下の方が可愛げがあるのです。
殿下とジョシュアは兄弟かもしれませんけど、殿下はぼくの弟ですから。殿下の方が圧倒的に可愛いですぅ。
パパはあげませんけどね。
しかしながら、ぼくがジョシュアに会わないと、パパが叱られちゃうでしょ?
ぼくは、パパがすみませんとかごめんなさいとかするのは嫌いなのです。だから、ぼくのせいでそうならないようにしたいんだ。
だから、ゆうううううつだけど。外出の支度をしましょう。
朝食の後にグチュグチュぺ、したら。鏡をみつめてにっこり、笑顔の練習をします。
パパがね。
『笑顔が可愛ければ、誰かが必ず愛してくれる。もちろんパパは、小枝を一番愛しているけど』
って言うの。
ぼくはパパに愛されていれば充分だけど。
もっと、もっと、パパに愛してもらいたいからね、笑顔の練習を欠かさないんだ。
パパが、小枝の笑顔可愛い。もう大好きっ。って思うようにね。
ぼくの眉毛は下がってて、パパはション垂れ眉毛って言うの。でもそのおかげで、笑っていなくても笑っているように見えるんだ。ちょっと笑ったら満面の笑みみたいになる。
ぼくの顔って、お得だよね。
パパはぼくの、ちょっとゆるふわな顔も、ふわふわの薄焼き卵色の髪の毛も大好きなんだって。
だからね。前世のぼくはまぁまぁ美人だったけど。
今の顔の方が好きかな?
だって、パパが好きな顔の方がいいもんね。
それで、今日もイケてるスマイルを確認して、洗面所から居間に戻ったら。パパがいつものとは少し違う、キラキラした衣装を用意してたよ。
いつもの紫色の衣装、プラス金銀刺繍付きキラキラバージョンみたいなやつを着せてくれた。
微妙に重いけど。
パパもレギも可愛いって褒めてくれるから。ま、いっか。
それで、パパはいつもの黒い服で。レギは騎士の服で。殿下は騎士の中でもえらい人みたいな、濃い青地の騎士服を着ていて。それでみんなで馬車に乗って。
王宮にレッツゴー。
ぼくねぇ、王宮ははじめてじゃないよ。
聖女のときに招かれて。聖女が現れた記念のパーティーとか、してくれたんだよね。
最初はね、悪い気がたまって魔獣に変化した動物さんを浄化したりして。
そうしたら、みんなすごいすごいって褒めてくれたのに。
いつの間にか悪女認定されて、処刑されちゃうなんて。どゆこと?
ま、いいよ。前世のことは終わったことだしぃ。
それを踏まえてぇ、ここではパパとどうやって生きていくべきかってことでしょ? はいはい。
簡単なのは、諸悪の根源であるジョシュアと関わらないことだけど。
もう。遊び相手をしなきゃならないのは、仕方がないよね?
なのでぇ、穏便にぃ、パパが怒られないようにぃ、ぼくが遊び相手には不向きだということをわかってもらいたいのです。
そういうふうにする、けいかくですっ。
前世のジョシュアは、騎士を目指していて。んん、殿下の金髪バージョンみたいだった。
でも殿下も大概無愛想だけど、ジョシュアはニコリともしないからね。
殿下はパパにはよく微笑みかけるけど。
そういう甘いの、ジョシュアはなし。塩だよ塩っ。
あ、メイにだけだったかもしれないけど。
とにかく、ぼくが覚えているジョシュアはそんな感じで。剣術馬鹿というか。いつも訓練していて。邪魔すると怒るの。
ちょっと話しかけただけなのにぃ。
だから、なにが言いたいのかというと。ジョシュアは剣が大好きなアウトドア派だからね。
ぼくは、お家で勉強したいインドア派になるの。
そうしたら、面白くなーいってなるじゃん?
ぼくのけいかくはかんぺきだっ。
それで、馬車の窓から王宮が見えてきて。
王宮は、白い壁や柱のふちに金色が塗り込まれていて、横広ですっごくでっかいキラキラな建物。殿下のお化け屋敷の十倍以上のでっかさなの。
ぼくは、前世では。正面玄関から入って、謁見の間で王様にご挨拶して、舞踏会会場でダンスを踊ったんだけど。
今日は馬車が玄関前を通り過ぎていって、王宮の裏の方に向かっていく。
そちらにジョシュアが住む後宮があるわけですね。
そこは初体験です。未知です。
それで、北の離宮の玄関のような扉を、騎士が守っていて。レギと殿下が馬車を降りると、警護の騎士さんがビシッと敬礼した。
カッコイイぃ。こう、かかとをバシッと合わせて、ギャッと胸に拳を当てるの。素敵ですぅ。ぼくもやりたい。
あ、でもジョシュアとかぶるから、騎士はなしです。
あぁあ、でも、さっそうとパパを守るぼくというのも、捨てがたいです。
むむ、保留で。
そして、殿下が手を差し伸べて、パパを馬車から降ろす。
ぼく。殿下のこと全然認めていないけど。こうしてパパをエスコートする殿下はとってもカッコいい。
あぁ、ぼくも早く殿下くらいに大きくなって、パパをエスコートしたいですぅ。
前世はエスコートされる側だったけど。
もう、パパをエスコートしたい欲が高まっています。
よし、いつかパパをエスコートできる、騎士のようなたけだけしい男になってやろう。そしてパパがぐらりとしたら、すかさずお姫様抱っこをして。笑顔でありがとうって言ってもらうのぉぉぉ。
これは、よいではないかよいではないか?
「小枝、おいで。馬車から降りようね」
パパは、ぼくの妄想とおんなじ笑顔で、ぼくに両手を差し伸べる。
そう、ぼくはまだ。馬車を降りるときパパに高い高いしてもらって、お空を飛んでいるところなので。
エスコートは夢のまた夢なのです。
でも、馬車を降りるときにふわぁ、とするのが楽しくて。ウキャキャとなってしまう。
大人のメイは子供っぽくて恥ずかしいとか思うけど。
子供のぼくはまだまだ遊びたいのです。その心のせめぎあいです。
大丈夫、大きくなるまでまだまだ時間がかかります。
ゆっくり、殿下のような、ぶつかっても微動だにしない大人になりまっす。
で、ぼくはパタパタっと手を羽ばたかせるのだが。
王宮の前だからか、滞空時間が短いです、パパッ。
それで、ぼくはパパと手をつないで。殿下とレギが歩く後ろについていきます。
屋敷の中に入って、玄関ホールを右手に行くと。お客様が一番初めに通されるサロンというお部屋に通される。
執事さんが案内してくれて。
サロンは全面ガラス張りで、とっても明るくて、日がビカビカでした。
「ほぁあ、やはりお化け屋敷のサロンよりも明るいですねぇ」
「小枝。ディスらないで」
パパが口元を引きつらせているので。お口チャックしましょう。
そしてそのサロンには、絵本から飛び出したような、お姫様がいた。
フリルビラビラの赤いドレスを着て、豊かな金髪が波打ち、胸元の宝石よりも髪が輝いていた。
その横にちょこんといるのが、ジョシュア。
濃紺の衣装を身につけた、金髪碧眼の、ザ・王子様。
前世のでっかいジョシュアがそのままちっさくなった感じぃ。
だからこそ…怖い。
「あら? あらあらあら? これは…シャルフィじゃないのぉ?」
お姫様はぼくを目にすると小走りで駆け寄ってきて。
両手でぼくのほっぺに手を当てた。
「あぁあ、懐かしいわぁ? あの子、紫の衣装をいつも着ていたものね? ほっぺがちょっと物足りないけど。愛らしいわぁ?」
そしてぼくのほっぺをモミモミしてくるのだった。
な、なにをするのぉぉぉ??
あぁあ、あぁあ、やめてぇ、パパ、助けてぇ。
「マリアンヌ、挨拶もなしにコエダで遊ぶんじゃない」
お姫様の攻撃から助けてくれたのは、パパではなく、殿下だった。
グッジョブ、殿下。
しかしながら、このお姫様はいったいなんなのでしょう?
ぼくのほっぺから手を離したお姫様は、立ち上がって殿下に言った。
「まぁ、ごめんあそばせ、ディオン。この度はこちらの我が儘を聞いてくださり、ありがとう。さっそく、そちらの可愛らしい子を紹介してくださらない?」
お姫様はジョシュアをそばに寄せながら、殿下に挨拶をし。
「あぁ。彼女はジョシュアの母のマリアンヌだ」
殿下が彼女をぼくらに紹介すると、お姫様は淑女の礼を取った。
スカートを指先で持ってお辞儀するやつ。メイのときに習ったから、ぼく知ってる。
結構難しいんだもんね。
つか、ジョシュアのママだったんだね? 若いからお姉ちゃんかと思ったよ。
「こちらはタイジュ。私の従者だ。そしてこの子はタイジュの息子のコエダ。シャルフィではないぞ」
殿下の紹介とも思えない紹介を受け。ぼくはぺこりと頭を下げた。
「御厨小枝、五歳です。先日はご挨拶が出来ず、誠に失礼いたしました」
おそるおそるジョシュアと目を合わせ、挨拶と謝罪をする。
うわぁん、やっぱり怖いよぉ。いきなり牢にはぶち込まれないと思うけどぉ。
ぼくは。彼のことを知っている。
顔も、声も、性格も。
知っているのだから、対処はできるはず。
だけど、どうしても恐怖が湧き起こってきた。前世の記憶が、ぼくをおびやかす。
オドオドと、ぼくが彼を見やると。
ジョシュアがぼくを食い入るように見ていて…なんですか? 怒ってんの?
「っお、俺は。第七王子のジョシュア・スタインベルンだっ」
はい、知ってますけど。という気持ちで、きょとんとみつめる。
というか、はじめてぼくに話しかけてきた感じ? メイ期も含めて。
前世では、馬鹿みたいにぼくの方から話しかけて、ウザがられていたもんな。
「お、おまえっ……よく来たな」
ジョシュアはサラサラの前髪を手で直しながら、そう言う。
えぇ、仕事ですから。
そうだ、仕事なんだから、ちょっとはサービスしなくちゃね。
ぼくはとびっきりの笑みを浮かべて、ジョシュアに告げた。
「おまえではなく、コエダとお呼びくださいませ、ジョシュア王子?」
そうしたらジョシュアは。なにやら胸をおさえて、プルプル震えた。
発作? トイレ? 大丈夫?
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