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39 殿下の照れポイント
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◆殿下の照れポイント
エルアンリ王子が住む西の離宮へ行く道すがら、俺たちは馬車の中でディオン殿下以外の王子についての話を聞いた。
ディオン殿下のみならず、他の王子も放置のようで。
王様、なんなん? って思うが。
とにもかくにも。俺の診察でエルアンリ王子の体調が少しでも良くなればいいと思う。
そして、馬車から窓の外を見ると、エルアンリ邸が見えてくるのだが。
「うわぁ、お菓子のお城みたいぃ」
小枝が感動したような夢見るような声でつぶやく。
赤やピンクや白のファンシーカラーで彩られた西の離宮は。おとぎ話に出てくる、お菓子で作られたお家のような外観だった。煉瓦の色が、そのような色合いなのだ。
前世が女の子だったから、可愛いものが好きなのだろうか?
小枝がドレスを着たいって言い出したら、どうしよう? こういうのは止めない方がいいのかな?
まぁでも。小枝は戦隊ものヒーローが好きだから、たぶん大丈夫だろう。うん。
なんて、まだ起きてもいないことを心配しているうちに。馬車が玄関前につき。
いつものようにレギが一番に降りて、殿下が二番目。
そして俺が降りるとき、扉を支えてくれていた騎士が手を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
なんの気なしにその手を取って、普通に馬車を降りる。
車の乗り降りよりも、若干車高が高いから、ちょっと怖いよね。
「こちらこそ、いつも差し入れをくださり、ありがとうございます」
「そんなふうに言われると、余りものなので申し訳ないですぅ」
恐縮して頭を下げると、殿下が俺の額を指で弾いた。
いてぇっ、で、デコピンっっ??
「神の手は簡単に頭を下げてはならぬ。それに、私以外の男の手を取るな」
そう言って、殿下は護衛騎士のことも睨むのだった。
えぇぇぇ? 今までそんなこと言わなかったのにぃ。
「そのような、親切でしてくださったのに。俺たちを守ってくださる騎士の方にはいつだって感謝をしなければ、ね?」
騎士に同意をうながすと、彼は苦笑していた。
まぁ、雇い主の殿下には逆らえませんよね。よくわからないことを言う殿下は放っておきましょう。
「はい、小枝の番だぞぉ? パタパタしてぇ?」
俺は小枝を抱っこすると、高く高く掲げた。小枝は空を飛ぶように手をパタパタするのだった。
あぁ、なんて、天使ちゃんっ。プリティーマイエンジェルっ。
そして小枝が地に足をつけると。
玄関からエルアンリ付きの騎士さんが出てきた。
昨日、ご挨拶した方です。えんじ色の短髪がキリリとした細身の騎士。ジュリアさん、でしたっけ。
ん? ジュリア?
「ディオン殿下、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
声は男性のものに聞こえるけど、もしや、その線の細さと名前は、女性ですか?
でも、もしかしたらジュリアンと聞き間違えたかな?
騎士服をパリッと着こなす青年騎士にしか見えないし。うーん。
それはともかく。ジュリアさんに案内されたのは、エルアンリ王子の寝室だった。
落ち着いた色の緑の壁に、素敵な調度品。天蓋付きの大きなベッドというのは。王子様の部屋という豪奢な感じだが。
なんとなく、薬の匂いがします。病人がいるからなのでしょうが。
俺、消毒薬や漢方の匂いは割と好きなのだけど。この匂いはちょっと嫌いだな。
王子は寝台に横たわったまま、殿下に挨拶した。
「ディオン兄上、このような情けない姿をお見せするのはお恥ずかしいですが。よくいらっしゃいました」
「あぁ、やはり昨夜の夜会で疲れが出たのだろう。無理をするなと言ったのに。臥せっているところ、押しかけて悪かったが。今日は医者を連れてきたのだ。タイジュ、コエダ、こちらに」
殿下にうながされ、小枝とともに寝台の横に立つ。
「エルアンリ、ジュリア、紹介する。タイジュとコエダは戦場で、重傷を負った私や多くの騎士たちの命を救った名医なのだ。今は私の従者に取り立てている」
「それはもしや、騎士団で噂になっている神の手ですか?」
俺と小枝がぺこりと頭を下げると、騎士のジュリアが殿下にたずねた。
「聞き及んだか? ジュリア。その通り、彼らが女神フォスティーヌの使者だ」
俺は。殿下の賛辞がこそばゆくて痒くなってきました。
それに、なんで殿下がドヤ顔なのですか?
「そんな大層なものではありません。ハードルをあげないでください」
「ハードルとはなんだ? 美味いのか?」
「食べ物じゃありません」
もう、余計なことしか言わない殿下を横にどかして、俺はエルアンリ王子の診察を始めた。
「エルアンリ王子、初めての診察なので、普段の生活や今までかかられた病気のことを聞きますね? まず普段はどちらのお医者様に診ていただいていますか?」
そうして問診をしたところ。
医者は、王宮勤めの医師が派遣されてくる。同じ医者ではない、とのこと。かかりつけ医やお抱え医師はいないということだ。
治癒魔法師の治療も受けたが、原因が特定されていないので、あまり効果はない。
物心ついた頃から、風邪をひきやすい体質で。食事を吐いてしまったり、うずくまるほどの咳が出たりは日常的だという。
服用している薬は、王宮の医者が出す滋養強壮に効く薬。嫌な臭いはこれかな? 怪しい。
「うーん、聴診器がないのは痛いな。戦場でもらって来ればよかった。レギ様、手配していただけますか?」
「あぁ、すぐにも用意させる」
俺がレギに言うと、彼はうなずいた。
まぁ、今日は。アナログで失礼。
「エルアンリ王子、胸の音を聞かせてください」
そうして衣服の前を開いて、王子の胸に耳を押し当てた。
「タイジュ、おまえはどうしてそういう…」
ディオン殿下が文句を言いかけるが。
「し、静かに。診察中です」
俺は医者の顔で、注意する。文句はあとでお聞きしますから。
「ゆっくり深呼吸してください。吸ってぇ、吐いてぇ」
吸うと大きく胸が開き、吐くとしぼむ。そのときの呼吸音や肺の音を、聞く。右胸の下から上に、三段階くらいに分けて。左も同じくする。
咳き込むというから、肺の疾患も考えたが。若干の雑音があるものの、深刻な音ではないな。
「いいですよ。痛いところがあったら言ってください」
そして、お腹を三本指で押していく。内臓のある位置を、じっくり触診するが。エルアンリ王子は特に痛みは訴えなかった。首回りのリンパの腫れや、顔のむくみ、目の黄ばみなどがないのを確かめて。最後に。
「少し、チクッとしますよ」
そう言って、王子の腕を強めに引っ掻いた。血が出ない程度。
すると、一分ほどでミミズ腫れ様の赤い線が浮いてくる。なるほどなるほど。
採血をして数値化出来たら、診断は容易なのだが。機械がないため、この世界では採血をしてもあまり意味がない。
血液はいろいろなことを教えてくれるのだ。血沈とか貧血は、機械を通さなくても診断できそうだけど。
俺は機械を使用しない検査法をしたことがないからなぁ。
いかに、現代日本が機械頼りか。実感させられる。
内科系の診断は、ほとんどが臨床検査によって判断されるから。機械のないこの世界で内科系の診断治療は難しいな。風邪や流行り病のようなものならわかりやすいけどね。
レントゲンやMRIなどの画像診断も重要度が高いが。夢のまた夢です。
「エルアンリ王子、私が使用していた機材がこちらにはないため、詳しい検査などはできませんが。触診した限りでは、重篤な疾患などはなさそうです」
「タイジュにも、エルアンリの病はわからないというのか?」
殿下が神妙な顔でこちらを見るが。
見くびらないでくださいよ。
「いえ、なにもわからないわけではありません、殿下。エルアンリ王子の症状が出る候補は、三つ。いや、ふたつ…またはその複合といったところでしょうか。ひとつ目は、殿下も悩まされている毒です。王子が疲れやすい様子なのは、肝臓の炎症が原因でしょう。おそらく少量の毒を蓄積させられている。その過程で、肝臓は解毒をするので、常に働く状態でオーバーヒートしているのです。しかし黄疸などの兆候はないので、まだ深刻ではなさそうですね。ですが疲労感というのはとてもつらいものなので。毒の排除は急務です。とりあえず、この部屋をクリーンしましょう」
小枝に目をやると、わかりやすく手を広げてクリーンした。
すると、蝋燭と、缶に入ったなにかと、机の引き出しから煙が上がった。
つか、えぇ? 蝋燭か。部屋に毒素が蔓延してそうだな?
俺は許可をもらって、部屋の窓をすべて開け放した。
「今回は、いわゆる人体に悪影響のあるものを小枝に排除してもらいました。蝋燭には毒素が練り込まれていて、火をつけるたびにゆっくり室内に毒が気化する仕組みなのでしょう。えげつなっ…こちらの缶は?」
巧妙な仕掛けにげんなりとする。
暗殺の仕方が、小賢しくて怖いんですけどっ。
で、そちらはなんなのですか? と思い。話を他に振り向ける。
「茶葉ですね。王宮の医師が、精神を落ち着けるお茶だから毎日飲むようにと…」
ジュリアは、医師に渡されたものに毒があることに、顔を青くして戦慄した。
「服用している滋養強壮の薬はどうですか?」
「あの引き出しに…」
どちらも煙が上がっていて。俺らは眉間にしわを作る。
「殿下、王宮の医師は全滅ですかね?」
「王宮の医者も治癒魔法師も、買収されたか、第三王子派なのだろう」
「ひどいです、命綱である医者を抱き込むだけでなく。命を救うべき医者に毒を仕込む片棒を担がせるなんてっ」
あまりにむごい実態に、俺は悲嘆した。
殿下が戦場に治癒魔法師を帯同できなかったという件で、薄々感じていたが。
王宮の医療従事者は、王妃の手駒になり果てているようだ。
悪事に手を貸してしまった医者は、その時点で医者ではなくなる。
医者とは本来、体制におもねってはならず。己の意思を持って命を救うべき生き物である。
たとえば戦場で敵味方なく治療をしたり。貧困地域でボランティア医療をしたり。飛行機の中で突発的に出た病人が、どのような人物でも治療したり。
みんながそうすべきというのではなく。
医者とは、苦しむ人々を治療したいと思う者であるということだ。
もちろん職業として金銭を得ながら医療行為をする者が大多数で。己の知識や技術を最大限に発揮して人を救うことは、それだけで尊い行いだ。
しかし、そのどれもこれも。大前提は命を救うことである。
多額の金銭を積まれたとしても。国のトップから指示されたとしても。
人を故意で殺したら、それはもう医者ではない。
医者は、使い道を誤れば、人を殺せるものを手にしている。
メスも、血管を一本切れば死に至るし。麻酔も、薬剤も、過剰投与で死に至る。
そういう危険なものを取り扱う医者だからこそ、人を害することに知識や技術や薬剤を使用してはいけないし。それをしないことで信用を得ているのだ。
信用があるから、人は大事な己の体を医者に委ねてくれるのだ。
しかし王宮の医者には。もう、その信用がない。
「王子の殺害未遂で医者を捕らえ、第三王子派を一網打尽に出来ないのですか?」
俺は怒りのあまり、殿下にそのように提案するが。
殿下は重いため息をついて、渋い顔だ。
「医者を捕らえることはできるが、第三王子派まではつながらないだろう。逆に、こちらの動きに反応して暗殺攻勢が強まる恐れがある。今は医者の毒でエルアンリを弱らせていると思わせた方が、彼の身を守れると思う」
歯痒いぃ、と思いつつ。敵の裏をかくしかないのですね。むぅ…診断を続けます。
「というわけで、医者からもらったものはすべて排除してください。毒素を体に入れないことが、健康への近道です。元々頑健な体質ではないということもあって、じわじわ毒に侵されていることに気づかなかったのだと思いますが。クリーンで解毒をして、新鮮な食べ物を食べ、適度に運動することで、容態は良くなっていくと思います。ただ…」
俺が言い淀むと。殿下は俺を覗き込む。
「なんだ? 毒以外になにか病気が?」
「王子は軽いアレルギー体質があると思うのです。特定の食べ物を食べて、吐いたり。アクセサリーでかぶれたり。動物と触れ合って咳き込んだりしませんか?」
俺がたずねると、王子はハッとした顔をして。ジュリアと目を合わせる。
「…全部、あります。果物が苦手で、喉がイガイガしたり、たまに吐きますし。指輪は赤く痒くなるので、つけないようにしています。そう言われれば、乗馬をしようと思うたび、厩舎に行くと咳き込んで、馬に乗れないことが近頃多いですね」
典型的なアレルギー症状だと思います。うん。
「アレルギーというのは、異物と判断して体から追い出そうとする仕組みなのです。それに触れなければ普段は大丈夫なので、病気ではないのですけど。ひどいアレルギー症状が出ると、息ができなくなったりして死に至る場合もある恐ろしいものです。なので、果物はもう食べない方がいいでしょう。特定するのは大変ですし。ジュースやドレッシング、ケーキなども、フルーツを使わないよう気を配ってください。あと乗馬も禁止ですね」
バッサリ言うと、エルアンリ王子は眉根を下げて悲しそうな顔をした。
「そんなぁ、馬は大丈夫なのでは? 乗馬は子供のときからしていたのですよ?」
まぁ、気持ちはわかります。
猫アレルギーの御子さんとかが同じ顔をしましたからね。でも。
「アレルギーは蓄積していき、ある日突然起こると言われているので。以前大丈夫だったとしても、急に駄目になったりします。でも、厩舎には糞尿やブラッシングによる抜け毛など、アレルギーを顕著に起こす物質があるので、それに反応している可能性もあります。馬車につながれた馬などで試しつつ、自分がどのくらいのアレルギー状態か試すのも、まぁいいでしょう」
「つまり、どういうことなのだ? タイジュ」
殿下が心配そうな様子でたずねる。弟王子のことが気になるのですね?
なので俺は安心させるように笑顔で告げた。
「つまり、重篤な疾病はありません。毒を排除して、健康的な生活を送ることで、次第に容態は良くなります。しかし、長年患ってきたことなので、急激に改善したりはしないですよ? 日々の生活が重要なのです。あと、死に直結する病はないですが、アレルギーには注意すること。という感じです」
そうして、俺は小枝を殿下の寝台に登らせて。もう一度彼の胸の前を開いて、エルアンリ王子の右胸の下辺りを小枝に触らせる。
「小枝、ここに肝臓がある。どうかな? なにかを感じるか?」
「はい。んん、黒いですぅ。なんか、モヤモヤです」
聖女的には毒で汚染されたものは黒いモヤモヤだと感じるみたいだね。
「少しだけ、綺麗にできる?」
「全部綺麗にしてはいけないのですか?」
不思議そうに、目をきゅるんとさせて、俺に聞く小枝。はい、可愛い。
「人体というのは、繊細でね。急に綺麗になっちゃうと、反対に拒否反応が出ることもあるんだよ。だから、週一で綺麗にしていき。一ヶ月で全部綺麗にします」
小枝に説明していたのに。エルアンリ王子はじめ、みんなが、ふーんという顔をする。
「わかりました。少し、綺麗にしますね。クリーン」
小枝が、そう言って。聖なる光を発動させる。
つか、聖女の力だって思われたくないのだろうけど。
今までクリーンとか言わなかったのに、わざとらしく聞こえるかもよ?
「わ、なんか、疲れがマシになった。起き上がるのも億劫だったのに」
「ひどいと、頭をあげるのもつらいと聞いたことがあります」
「そうなんですよ。でも、みんなまた寝込んでいるくらいにしか思っていなくて。ニジェールに会うとよく、怠けているとか、同情を引きたいだけだろって言われます」
「肝臓の病気は、なかなか理解を得られなくてつらい思いをする方もいるのです。でも、毒を口に入れなければ、そのうち良くなっていきますからね?」
患者さんは、病気が治らないうちは不安なものだ。
一緒に頑張りましょう、という気持ちで医者は寄り添うしかないのだけど。
エルアンリ王子は、俺の手を握って、感謝の涙を流すのだった。
「ありがとうございます、タイジュ先生。いつも、なんの病気かわからなくて。治癒魔法師も治せなくて。だけど体はどんどん弱っていくし。本当に怖かったんです」
「病名が特定されないのも、不安でしたね? 毒も遅効性のもので。蝋燭に混ぜ込むような姑息なやり方もありましたから。あ、蝋燭は全部取り換えてくださいね。レギ様、殿下のお屋敷の蝋燭を分けてあげたらどうですか? 小枝のクリーンで反応がないから大丈夫だと思いますよ?」
「えぇ、手配しましょう」
レギに告げると、すぐに彼は請け負ってくれた。
「アレルギー症状も体に強く影響するので、乗馬が大丈夫か調べるのは、体調が整ってからにいたしましょう。とにかく毒素とアレルギー物質の排除を心がけてください。では一週間後に再び診察させていただきますね?」
診察を終えて、小枝もベッドから降ろして、挨拶すると。
エルアンリはベッドから体を起こして、頭をペコペコ下げるのだった。
「ありがとうございました、タイジュ先生。このあともよろしくお願いします」
しっかり治ったわけではないので、ジュリアはまだ顔を固くしているが。エルアンリ王子には喜んでもらえたので、良かったです。
★★★★★
診察を終え、玄関口に向かうのに屋敷の廊下をみんなで歩いていく。
その間、俺は殿下に言った。
「ディオン殿下、ありがとうございました。医者の職務を果たせて、なんか久々に仕事したなぁという気分です」
すると殿下は、驚いた表情をこちらに向ける。
「は? 仕事してありがとうと言うのもおかしいが。おまえはいつもなにかしら働いているではないか? 食事の準備にコエダの世話や私の世話も」
「それは、日常生活の一部のような? 仕事のイメージではないのです」
そう言うと。殿下が俺の耳元にこっそりつぶやいた。
「というか、私はあんなに丁寧に診察されたことないのだが? エルアンリの胸に耳を当て、体もベタベタ触るなど…」
「不敬でしたか? でも診察なので」
「あんなことをする医者は見たことがない。不敬、ではないがっ。私にはそんなことしなかったではないかっ」
「そうですね。殿下は傷口周辺の診察でしたから」
患部以外のところに触れたら、問題があるでしょう? と思い。彼を見やると。
「ズルい」
と一言ブスリと言うのだ。
ズルいって、なにが? 触られたいの? でもぉ…。
「恐れながら、殿下。俺は貴方の腹の中までもじっくりと診察し、こねくり回しております。腹の中まで拝見した御仁は貴方様だけなので、ズルいというのは心外ですがぁぁ?」
と言ってやると。殿下は頬をポッと赤くして。
「なら、いい」
と言い。腹の傷の辺りを上機嫌で撫でるのだった。
殿下の照れポイントは、いまだによくわかりません。
エルアンリ王子が住む西の離宮へ行く道すがら、俺たちは馬車の中でディオン殿下以外の王子についての話を聞いた。
ディオン殿下のみならず、他の王子も放置のようで。
王様、なんなん? って思うが。
とにもかくにも。俺の診察でエルアンリ王子の体調が少しでも良くなればいいと思う。
そして、馬車から窓の外を見ると、エルアンリ邸が見えてくるのだが。
「うわぁ、お菓子のお城みたいぃ」
小枝が感動したような夢見るような声でつぶやく。
赤やピンクや白のファンシーカラーで彩られた西の離宮は。おとぎ話に出てくる、お菓子で作られたお家のような外観だった。煉瓦の色が、そのような色合いなのだ。
前世が女の子だったから、可愛いものが好きなのだろうか?
小枝がドレスを着たいって言い出したら、どうしよう? こういうのは止めない方がいいのかな?
まぁでも。小枝は戦隊ものヒーローが好きだから、たぶん大丈夫だろう。うん。
なんて、まだ起きてもいないことを心配しているうちに。馬車が玄関前につき。
いつものようにレギが一番に降りて、殿下が二番目。
そして俺が降りるとき、扉を支えてくれていた騎士が手を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
なんの気なしにその手を取って、普通に馬車を降りる。
車の乗り降りよりも、若干車高が高いから、ちょっと怖いよね。
「こちらこそ、いつも差し入れをくださり、ありがとうございます」
「そんなふうに言われると、余りものなので申し訳ないですぅ」
恐縮して頭を下げると、殿下が俺の額を指で弾いた。
いてぇっ、で、デコピンっっ??
「神の手は簡単に頭を下げてはならぬ。それに、私以外の男の手を取るな」
そう言って、殿下は護衛騎士のことも睨むのだった。
えぇぇぇ? 今までそんなこと言わなかったのにぃ。
「そのような、親切でしてくださったのに。俺たちを守ってくださる騎士の方にはいつだって感謝をしなければ、ね?」
騎士に同意をうながすと、彼は苦笑していた。
まぁ、雇い主の殿下には逆らえませんよね。よくわからないことを言う殿下は放っておきましょう。
「はい、小枝の番だぞぉ? パタパタしてぇ?」
俺は小枝を抱っこすると、高く高く掲げた。小枝は空を飛ぶように手をパタパタするのだった。
あぁ、なんて、天使ちゃんっ。プリティーマイエンジェルっ。
そして小枝が地に足をつけると。
玄関からエルアンリ付きの騎士さんが出てきた。
昨日、ご挨拶した方です。えんじ色の短髪がキリリとした細身の騎士。ジュリアさん、でしたっけ。
ん? ジュリア?
「ディオン殿下、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
声は男性のものに聞こえるけど、もしや、その線の細さと名前は、女性ですか?
でも、もしかしたらジュリアンと聞き間違えたかな?
騎士服をパリッと着こなす青年騎士にしか見えないし。うーん。
それはともかく。ジュリアさんに案内されたのは、エルアンリ王子の寝室だった。
落ち着いた色の緑の壁に、素敵な調度品。天蓋付きの大きなベッドというのは。王子様の部屋という豪奢な感じだが。
なんとなく、薬の匂いがします。病人がいるからなのでしょうが。
俺、消毒薬や漢方の匂いは割と好きなのだけど。この匂いはちょっと嫌いだな。
王子は寝台に横たわったまま、殿下に挨拶した。
「ディオン兄上、このような情けない姿をお見せするのはお恥ずかしいですが。よくいらっしゃいました」
「あぁ、やはり昨夜の夜会で疲れが出たのだろう。無理をするなと言ったのに。臥せっているところ、押しかけて悪かったが。今日は医者を連れてきたのだ。タイジュ、コエダ、こちらに」
殿下にうながされ、小枝とともに寝台の横に立つ。
「エルアンリ、ジュリア、紹介する。タイジュとコエダは戦場で、重傷を負った私や多くの騎士たちの命を救った名医なのだ。今は私の従者に取り立てている」
「それはもしや、騎士団で噂になっている神の手ですか?」
俺と小枝がぺこりと頭を下げると、騎士のジュリアが殿下にたずねた。
「聞き及んだか? ジュリア。その通り、彼らが女神フォスティーヌの使者だ」
俺は。殿下の賛辞がこそばゆくて痒くなってきました。
それに、なんで殿下がドヤ顔なのですか?
「そんな大層なものではありません。ハードルをあげないでください」
「ハードルとはなんだ? 美味いのか?」
「食べ物じゃありません」
もう、余計なことしか言わない殿下を横にどかして、俺はエルアンリ王子の診察を始めた。
「エルアンリ王子、初めての診察なので、普段の生活や今までかかられた病気のことを聞きますね? まず普段はどちらのお医者様に診ていただいていますか?」
そうして問診をしたところ。
医者は、王宮勤めの医師が派遣されてくる。同じ医者ではない、とのこと。かかりつけ医やお抱え医師はいないということだ。
治癒魔法師の治療も受けたが、原因が特定されていないので、あまり効果はない。
物心ついた頃から、風邪をひきやすい体質で。食事を吐いてしまったり、うずくまるほどの咳が出たりは日常的だという。
服用している薬は、王宮の医者が出す滋養強壮に効く薬。嫌な臭いはこれかな? 怪しい。
「うーん、聴診器がないのは痛いな。戦場でもらって来ればよかった。レギ様、手配していただけますか?」
「あぁ、すぐにも用意させる」
俺がレギに言うと、彼はうなずいた。
まぁ、今日は。アナログで失礼。
「エルアンリ王子、胸の音を聞かせてください」
そうして衣服の前を開いて、王子の胸に耳を押し当てた。
「タイジュ、おまえはどうしてそういう…」
ディオン殿下が文句を言いかけるが。
「し、静かに。診察中です」
俺は医者の顔で、注意する。文句はあとでお聞きしますから。
「ゆっくり深呼吸してください。吸ってぇ、吐いてぇ」
吸うと大きく胸が開き、吐くとしぼむ。そのときの呼吸音や肺の音を、聞く。右胸の下から上に、三段階くらいに分けて。左も同じくする。
咳き込むというから、肺の疾患も考えたが。若干の雑音があるものの、深刻な音ではないな。
「いいですよ。痛いところがあったら言ってください」
そして、お腹を三本指で押していく。内臓のある位置を、じっくり触診するが。エルアンリ王子は特に痛みは訴えなかった。首回りのリンパの腫れや、顔のむくみ、目の黄ばみなどがないのを確かめて。最後に。
「少し、チクッとしますよ」
そう言って、王子の腕を強めに引っ掻いた。血が出ない程度。
すると、一分ほどでミミズ腫れ様の赤い線が浮いてくる。なるほどなるほど。
採血をして数値化出来たら、診断は容易なのだが。機械がないため、この世界では採血をしてもあまり意味がない。
血液はいろいろなことを教えてくれるのだ。血沈とか貧血は、機械を通さなくても診断できそうだけど。
俺は機械を使用しない検査法をしたことがないからなぁ。
いかに、現代日本が機械頼りか。実感させられる。
内科系の診断は、ほとんどが臨床検査によって判断されるから。機械のないこの世界で内科系の診断治療は難しいな。風邪や流行り病のようなものならわかりやすいけどね。
レントゲンやMRIなどの画像診断も重要度が高いが。夢のまた夢です。
「エルアンリ王子、私が使用していた機材がこちらにはないため、詳しい検査などはできませんが。触診した限りでは、重篤な疾患などはなさそうです」
「タイジュにも、エルアンリの病はわからないというのか?」
殿下が神妙な顔でこちらを見るが。
見くびらないでくださいよ。
「いえ、なにもわからないわけではありません、殿下。エルアンリ王子の症状が出る候補は、三つ。いや、ふたつ…またはその複合といったところでしょうか。ひとつ目は、殿下も悩まされている毒です。王子が疲れやすい様子なのは、肝臓の炎症が原因でしょう。おそらく少量の毒を蓄積させられている。その過程で、肝臓は解毒をするので、常に働く状態でオーバーヒートしているのです。しかし黄疸などの兆候はないので、まだ深刻ではなさそうですね。ですが疲労感というのはとてもつらいものなので。毒の排除は急務です。とりあえず、この部屋をクリーンしましょう」
小枝に目をやると、わかりやすく手を広げてクリーンした。
すると、蝋燭と、缶に入ったなにかと、机の引き出しから煙が上がった。
つか、えぇ? 蝋燭か。部屋に毒素が蔓延してそうだな?
俺は許可をもらって、部屋の窓をすべて開け放した。
「今回は、いわゆる人体に悪影響のあるものを小枝に排除してもらいました。蝋燭には毒素が練り込まれていて、火をつけるたびにゆっくり室内に毒が気化する仕組みなのでしょう。えげつなっ…こちらの缶は?」
巧妙な仕掛けにげんなりとする。
暗殺の仕方が、小賢しくて怖いんですけどっ。
で、そちらはなんなのですか? と思い。話を他に振り向ける。
「茶葉ですね。王宮の医師が、精神を落ち着けるお茶だから毎日飲むようにと…」
ジュリアは、医師に渡されたものに毒があることに、顔を青くして戦慄した。
「服用している滋養強壮の薬はどうですか?」
「あの引き出しに…」
どちらも煙が上がっていて。俺らは眉間にしわを作る。
「殿下、王宮の医師は全滅ですかね?」
「王宮の医者も治癒魔法師も、買収されたか、第三王子派なのだろう」
「ひどいです、命綱である医者を抱き込むだけでなく。命を救うべき医者に毒を仕込む片棒を担がせるなんてっ」
あまりにむごい実態に、俺は悲嘆した。
殿下が戦場に治癒魔法師を帯同できなかったという件で、薄々感じていたが。
王宮の医療従事者は、王妃の手駒になり果てているようだ。
悪事に手を貸してしまった医者は、その時点で医者ではなくなる。
医者とは本来、体制におもねってはならず。己の意思を持って命を救うべき生き物である。
たとえば戦場で敵味方なく治療をしたり。貧困地域でボランティア医療をしたり。飛行機の中で突発的に出た病人が、どのような人物でも治療したり。
みんながそうすべきというのではなく。
医者とは、苦しむ人々を治療したいと思う者であるということだ。
もちろん職業として金銭を得ながら医療行為をする者が大多数で。己の知識や技術を最大限に発揮して人を救うことは、それだけで尊い行いだ。
しかし、そのどれもこれも。大前提は命を救うことである。
多額の金銭を積まれたとしても。国のトップから指示されたとしても。
人を故意で殺したら、それはもう医者ではない。
医者は、使い道を誤れば、人を殺せるものを手にしている。
メスも、血管を一本切れば死に至るし。麻酔も、薬剤も、過剰投与で死に至る。
そういう危険なものを取り扱う医者だからこそ、人を害することに知識や技術や薬剤を使用してはいけないし。それをしないことで信用を得ているのだ。
信用があるから、人は大事な己の体を医者に委ねてくれるのだ。
しかし王宮の医者には。もう、その信用がない。
「王子の殺害未遂で医者を捕らえ、第三王子派を一網打尽に出来ないのですか?」
俺は怒りのあまり、殿下にそのように提案するが。
殿下は重いため息をついて、渋い顔だ。
「医者を捕らえることはできるが、第三王子派まではつながらないだろう。逆に、こちらの動きに反応して暗殺攻勢が強まる恐れがある。今は医者の毒でエルアンリを弱らせていると思わせた方が、彼の身を守れると思う」
歯痒いぃ、と思いつつ。敵の裏をかくしかないのですね。むぅ…診断を続けます。
「というわけで、医者からもらったものはすべて排除してください。毒素を体に入れないことが、健康への近道です。元々頑健な体質ではないということもあって、じわじわ毒に侵されていることに気づかなかったのだと思いますが。クリーンで解毒をして、新鮮な食べ物を食べ、適度に運動することで、容態は良くなっていくと思います。ただ…」
俺が言い淀むと。殿下は俺を覗き込む。
「なんだ? 毒以外になにか病気が?」
「王子は軽いアレルギー体質があると思うのです。特定の食べ物を食べて、吐いたり。アクセサリーでかぶれたり。動物と触れ合って咳き込んだりしませんか?」
俺がたずねると、王子はハッとした顔をして。ジュリアと目を合わせる。
「…全部、あります。果物が苦手で、喉がイガイガしたり、たまに吐きますし。指輪は赤く痒くなるので、つけないようにしています。そう言われれば、乗馬をしようと思うたび、厩舎に行くと咳き込んで、馬に乗れないことが近頃多いですね」
典型的なアレルギー症状だと思います。うん。
「アレルギーというのは、異物と判断して体から追い出そうとする仕組みなのです。それに触れなければ普段は大丈夫なので、病気ではないのですけど。ひどいアレルギー症状が出ると、息ができなくなったりして死に至る場合もある恐ろしいものです。なので、果物はもう食べない方がいいでしょう。特定するのは大変ですし。ジュースやドレッシング、ケーキなども、フルーツを使わないよう気を配ってください。あと乗馬も禁止ですね」
バッサリ言うと、エルアンリ王子は眉根を下げて悲しそうな顔をした。
「そんなぁ、馬は大丈夫なのでは? 乗馬は子供のときからしていたのですよ?」
まぁ、気持ちはわかります。
猫アレルギーの御子さんとかが同じ顔をしましたからね。でも。
「アレルギーは蓄積していき、ある日突然起こると言われているので。以前大丈夫だったとしても、急に駄目になったりします。でも、厩舎には糞尿やブラッシングによる抜け毛など、アレルギーを顕著に起こす物質があるので、それに反応している可能性もあります。馬車につながれた馬などで試しつつ、自分がどのくらいのアレルギー状態か試すのも、まぁいいでしょう」
「つまり、どういうことなのだ? タイジュ」
殿下が心配そうな様子でたずねる。弟王子のことが気になるのですね?
なので俺は安心させるように笑顔で告げた。
「つまり、重篤な疾病はありません。毒を排除して、健康的な生活を送ることで、次第に容態は良くなります。しかし、長年患ってきたことなので、急激に改善したりはしないですよ? 日々の生活が重要なのです。あと、死に直結する病はないですが、アレルギーには注意すること。という感じです」
そうして、俺は小枝を殿下の寝台に登らせて。もう一度彼の胸の前を開いて、エルアンリ王子の右胸の下辺りを小枝に触らせる。
「小枝、ここに肝臓がある。どうかな? なにかを感じるか?」
「はい。んん、黒いですぅ。なんか、モヤモヤです」
聖女的には毒で汚染されたものは黒いモヤモヤだと感じるみたいだね。
「少しだけ、綺麗にできる?」
「全部綺麗にしてはいけないのですか?」
不思議そうに、目をきゅるんとさせて、俺に聞く小枝。はい、可愛い。
「人体というのは、繊細でね。急に綺麗になっちゃうと、反対に拒否反応が出ることもあるんだよ。だから、週一で綺麗にしていき。一ヶ月で全部綺麗にします」
小枝に説明していたのに。エルアンリ王子はじめ、みんなが、ふーんという顔をする。
「わかりました。少し、綺麗にしますね。クリーン」
小枝が、そう言って。聖なる光を発動させる。
つか、聖女の力だって思われたくないのだろうけど。
今までクリーンとか言わなかったのに、わざとらしく聞こえるかもよ?
「わ、なんか、疲れがマシになった。起き上がるのも億劫だったのに」
「ひどいと、頭をあげるのもつらいと聞いたことがあります」
「そうなんですよ。でも、みんなまた寝込んでいるくらいにしか思っていなくて。ニジェールに会うとよく、怠けているとか、同情を引きたいだけだろって言われます」
「肝臓の病気は、なかなか理解を得られなくてつらい思いをする方もいるのです。でも、毒を口に入れなければ、そのうち良くなっていきますからね?」
患者さんは、病気が治らないうちは不安なものだ。
一緒に頑張りましょう、という気持ちで医者は寄り添うしかないのだけど。
エルアンリ王子は、俺の手を握って、感謝の涙を流すのだった。
「ありがとうございます、タイジュ先生。いつも、なんの病気かわからなくて。治癒魔法師も治せなくて。だけど体はどんどん弱っていくし。本当に怖かったんです」
「病名が特定されないのも、不安でしたね? 毒も遅効性のもので。蝋燭に混ぜ込むような姑息なやり方もありましたから。あ、蝋燭は全部取り換えてくださいね。レギ様、殿下のお屋敷の蝋燭を分けてあげたらどうですか? 小枝のクリーンで反応がないから大丈夫だと思いますよ?」
「えぇ、手配しましょう」
レギに告げると、すぐに彼は請け負ってくれた。
「アレルギー症状も体に強く影響するので、乗馬が大丈夫か調べるのは、体調が整ってからにいたしましょう。とにかく毒素とアレルギー物質の排除を心がけてください。では一週間後に再び診察させていただきますね?」
診察を終えて、小枝もベッドから降ろして、挨拶すると。
エルアンリはベッドから体を起こして、頭をペコペコ下げるのだった。
「ありがとうございました、タイジュ先生。このあともよろしくお願いします」
しっかり治ったわけではないので、ジュリアはまだ顔を固くしているが。エルアンリ王子には喜んでもらえたので、良かったです。
★★★★★
診察を終え、玄関口に向かうのに屋敷の廊下をみんなで歩いていく。
その間、俺は殿下に言った。
「ディオン殿下、ありがとうございました。医者の職務を果たせて、なんか久々に仕事したなぁという気分です」
すると殿下は、驚いた表情をこちらに向ける。
「は? 仕事してありがとうと言うのもおかしいが。おまえはいつもなにかしら働いているではないか? 食事の準備にコエダの世話や私の世話も」
「それは、日常生活の一部のような? 仕事のイメージではないのです」
そう言うと。殿下が俺の耳元にこっそりつぶやいた。
「というか、私はあんなに丁寧に診察されたことないのだが? エルアンリの胸に耳を当て、体もベタベタ触るなど…」
「不敬でしたか? でも診察なので」
「あんなことをする医者は見たことがない。不敬、ではないがっ。私にはそんなことしなかったではないかっ」
「そうですね。殿下は傷口周辺の診察でしたから」
患部以外のところに触れたら、問題があるでしょう? と思い。彼を見やると。
「ズルい」
と一言ブスリと言うのだ。
ズルいって、なにが? 触られたいの? でもぉ…。
「恐れながら、殿下。俺は貴方の腹の中までもじっくりと診察し、こねくり回しております。腹の中まで拝見した御仁は貴方様だけなので、ズルいというのは心外ですがぁぁ?」
と言ってやると。殿下は頬をポッと赤くして。
「なら、いい」
と言い。腹の傷の辺りを上機嫌で撫でるのだった。
殿下の照れポイントは、いまだによくわかりません。
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