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2-14 ドラゴン、知らないんですか?
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◆ドラゴン、知らないんですか?
登校初日、一回目の授業。
午前中は、魔法とはなんぞや、みたいな。基礎的な、座学の授業を受けた。
陛下や、ベルナルド、カッツェたちは。こんなことは、子供のときに知っている、みたいな? 基本のき。のようなものなので。付き合わせてしまって、すみません。
でも、ぼくは初めて聞くようなことばかりで、新鮮でした。
魔法を使ったことは、もう、あるものの。感覚的にやっていたので。基本は大事ですよね?
簡単に言うと、体の中に流れる魔力の具現化、みたいです。
やっぱり、魔法はイメージなのですよね?
なんで、魔力が体の中から湧いてくるのか、というのは。
なぜ、心臓は勝手に動くのか、みたいなことと同じらしいので。深く追求しなくても良さそうです。
それで、ランチタイムをはさんで。午後は魔法の実技の時間です。
ちなみに、ランチタイム時に猫の姿だったシオンは、陛下の私室をお借りして、問題なく人型に戻ったそうです。陛下、うちの弟が、お手数をおかけしました。
「イアン様、クロウ様。魔法を実施するにあたって、気掛かりな点や、困っている点はありますか?」
教師の方たちは。基本、生徒を家名で呼ぶのだが。
いくら生徒といえど、現国王であり、最高権力者である陛下や、次期王妃のぼくを、呼び捨てにできないということで。名前に様をつけることになったらしい。
まぁ、ぼくも。エイデンの家名が長く、バジリスクさんは聞き慣れないし。
陛下なんか、カザレニアさん、になるからな。
ちょっとおかしいね、やっぱり。
で、魔法の実技をするのに。ぼくたちは、今、グラウンドにいる。
いわゆる、外の、広い空間だ。
魔法科の生徒が実技をするのに、専用の施設がある。そこには、魔法の影響が外に及ばないよう、強力なバリアが成されているみたいなのだが。
陛下は、国内最高の魔力の持ち主だし。
ぼくも、魔力が多いと、前評判が高いものだから。
バリアが破壊される恐れがあるため、一応、外で様子を見ることにしたらしい。
そんなぁ、いくらなんでも。ぼくはバリアを破壊したりしませんよ?
でも、陛下の炎魔法は…壊しちゃうかもね?
「我は、自分で出した炎を消せなくて、困っている。できれば、己の魔法を、己で制御したいのだ。咄嗟のときに、そばにクロウが、いつもいるとは限らないのでな」
陛下の悩みに、魔法科の教師が深くうなずく。
「それは、カザレニア王家の、最大の難問でございますね? カザレニア建国以来、何千年と。王家の、一番魔力の強い者は、対の者の力を借りなければ、強烈な火炎を鎮火させることができなかった。王族の魔力は特殊で、純粋ゆえに、その炎はいつまでも燃え続けるのでしょう。今まで、その難問を解いた先達は、おりませぬ」
つまり、陛下の悩みは、一教師が解決できるものではないということだね。
確かに、ぼくのコップ一杯分の魔力の水と、シオンのドバドバの水の量。それで陛下の炎は、鎮火できたけれど。物理的な水の量で消えるわけではないみたいだからね?
「あの、箱の中に入れるのはどうですか? 火は真空の中では燃えないと聞いたことがあります。陛下は、火炎系の魔法だけですか?」
「魔法属性は、ひとりひとつだと思うが?」
この世界では、それが当たり前みたい。教師もうなずいている。
前世の『剣と魔法の世界』を書いた、俺ツエー系の小説は。全属性網羅する強者が、うじゃうじゃいたが。
アイキンは、乙女ゲームだからな。魔法に特化していないんだな、きっと。知らんけど。
そこに、ベルナルドが手を上げた。
「私は土属性なので、密閉の箱を作れます」
「そうか。では、試してみよう。クロウ以外の者が我の炎を消せるなら、それは大変有益なことだ」
陛下に、期待の目でみつめられた、ベルナルドは。地に手をついて、小さな箱を作った。蓋がないやつ。
そこに、陛下が炎の玉をひとつ落とし。
ベルナルドが蓋をして、密封した。
箱の中の酸素が尽きて、陛下の炎が消せたら、成功である。
「授業が終わるまでに、消えていたら。世紀の大発見ですな? では、クロウ様のお悩みは?」
とりあえず、一時間ほど、このまま様子を見るようだったので。
ぼくは先生に、悩みを告げた。
「実は、先日。ぼく、すっごく怒っちゃって。無意識にドラゴン、出しちゃったのです」
教師は、ちょっと小首を傾げ。
ぼくに聞いた。
「どんなものか、それを今、意識的に出すことはできますか?」
ぼくも、ちょっと小首を傾げて。背後の空間に指をさしてみた。
ドラゴン、ドラゴンって思っていたら。
空気中の水分が集合して、氷の粒になり。どんどん大きくなって。
うん。あのときと同じようなやつができたよっ。
「こんなやつです」
得意満面で、先生に示すと。背後のドラゴンが、ぎゃおーんと鳴いた。
すると、その場にいる人たちは、軒並み驚いて。何歩か後退っていた。
いつも冷静な陛下も、珍しく目をみはっています。レアですね。
「な、なんだ? この生き物はっ」
教師の驚愕の声に、ぼくは説明を加える。
「だから、ドラゴンです。龍。伝説の生き物で、よく絵本とかにあるやつですよ?」
もちろんご存知ですよね? とばかりにたずねると。
後ろのドラゴンも、ギョ? って鳴いた。
「そんな本は、見たことがありませんよ、クロウ様」
「嘘ぉ? ドラゴン、知らないんですか?」
再び聞くと、後ろのドラゴンも、アンギョー? って鳴いている。
ちょっと、うるさいんですけど?
みなさんの顔を見ても、小さく首を横に振っている。
えぇ? どうして? シオンはドラゴン知っていたのに。
そこで、ぼくは。思い出した。
ぼくはシオンに、王家の英雄伝説を馬鹿みたいに読み聞かせまくっていたのだが。
さすがに、シオンが飽きたと言い始め。
一字一句、そらんじられますと言われてしまって。
それで、シオンが楽しめるような絵本を、自作で作ったのだった。
まぁ、前世のお話を頼りに作った、勇者が森の奥に住み着くドラゴンをやっつけるという、冒険活劇なので。自分で考えたわけではありませんよ?
前世ではよくある、定番のやつです。
つまり、ドラゴンは。この世界では流通していないものだったのだ。
まぁ、ドラゴンは。前世でも、伝説の生き物だから。実際には、いないわけだけど。
でも、たぶん、ドラゴンって言えば、誰もが想像できる生き物であると思うんだ?
だとすると、誰も見たことがないドラゴンを、みんなが思い起こせるほどに浸透させた人って、すごいと思わない? 誰かは知らないけど。
つまり、ぼくが作った絵本を読んで、育ったシオンは。ドラゴンを知っていたけど。
父上もたぶん、ぼくが作った絵本を、母経由で仕入れて、知っていたのだろうけど。
この世界の人は、ドラゴンを知らない、という…。
ヤバい。超、ドラゴン知ってる前提で話しちゃったよ。
「あの、これはドラゴンという、ぼくの想像上の生物でした」
架空の生き物を出しちゃって、先生もさぞ困惑したでしょう。すみませんでした。
「なんか、この、ドラゴン? ってやつ。クロウと同じように、首を曲げたり、驚いたりしているぞ?」
陛下がそう言うと。
教師も。ぼくの作ったドラゴンが無害だとわかって、平静を取り戻した。
「お、おそらく。クロウ様がお作りになったものなので、クロウ様の思考と同じように動いているのでしょう」
陛下は、そうなのか、と言って。ドラゴンを見上げ。
空気中の水分を凍らせて作られた、薄水色のブルーホワイトうんちゃらドラゴンみたいな…いや、どちらかというとティラノサウルスみたいなコレが。陛下と目を合わせた。
「ギャオーーーン」
ドラゴンは、大きな声で鳴いて。
大きな太ももの足を、ドスドス踏み鳴らすと。すごい勢いで陛下に顔を近づけた。
あ、危ないっ。
ぼくは咄嗟に、ドラゴンを消そうと思ったけど。ま、間に合わなーい。
と思ったら。
このドラゴン。陛下の唇に、優しくチュウした。
いやぁーーっ…。
ぼくの心のままに動くドラゴンが、陛下にチュウしたら。ぼ、ぼ、ぼくが陛下とキスしたいみたいじゃーん?
したいけど。
呆気にとられたぼくが、ワタワタしている横で。ドラゴンは、なにやらモジモジし始めて。短い手を伸ばして、陛下を抱っこしてしまった。
そして頬を染めて、笑顔で、ブンブン揺さぶっている。
「やーめーてーっ」
ぼくはドラゴンを指差し、ちょっ早で消した。跡形もなく消し去ったぜ。
ちょっと宙に浮いていた陛下は、ストンと華麗に着地し。フッと笑う。
「クロウ…我は、チュウも抱っこも、いつでも大歓迎だぞ?」
ぼくは、恥ずかしすぎて、沸騰した頬に両手を当てて、顔を隠した。
「イアン様、クロウ様。私から学べることは、ないかもしれませんね? 魔法の実技は、しばらく、このグラウンドで行いましょう。大きなドラゴンが、バリアを突き破るかもしれませんので」
青い顔で、教師はそう言い。
ぼくは、羞恥で顔があげられずにいて。
陛下だけが、すごく満足した顔をしていた。
ちなみに、陛下の炎は、密封の箱の中で一時間以上も燃え続け。結局、ぼくの水魔法で鎮火したのだった。
つまり、酸素がなくなれば火が消える、という物理的な作用では、陛下の炎は消せないってことみたい。
世紀の大発見とはならなくて。みんながっかり、だったけど。
これからも、いろいろ模索していこう、ということになりました。
海に落した陛下の炎が、いつかは消えるみたいに。きっと、なにか方法はありますよ。
千年以上みつけられなかった方策なのです。気長にやりましょうね?
登校初日、一回目の授業。
午前中は、魔法とはなんぞや、みたいな。基礎的な、座学の授業を受けた。
陛下や、ベルナルド、カッツェたちは。こんなことは、子供のときに知っている、みたいな? 基本のき。のようなものなので。付き合わせてしまって、すみません。
でも、ぼくは初めて聞くようなことばかりで、新鮮でした。
魔法を使ったことは、もう、あるものの。感覚的にやっていたので。基本は大事ですよね?
簡単に言うと、体の中に流れる魔力の具現化、みたいです。
やっぱり、魔法はイメージなのですよね?
なんで、魔力が体の中から湧いてくるのか、というのは。
なぜ、心臓は勝手に動くのか、みたいなことと同じらしいので。深く追求しなくても良さそうです。
それで、ランチタイムをはさんで。午後は魔法の実技の時間です。
ちなみに、ランチタイム時に猫の姿だったシオンは、陛下の私室をお借りして、問題なく人型に戻ったそうです。陛下、うちの弟が、お手数をおかけしました。
「イアン様、クロウ様。魔法を実施するにあたって、気掛かりな点や、困っている点はありますか?」
教師の方たちは。基本、生徒を家名で呼ぶのだが。
いくら生徒といえど、現国王であり、最高権力者である陛下や、次期王妃のぼくを、呼び捨てにできないということで。名前に様をつけることになったらしい。
まぁ、ぼくも。エイデンの家名が長く、バジリスクさんは聞き慣れないし。
陛下なんか、カザレニアさん、になるからな。
ちょっとおかしいね、やっぱり。
で、魔法の実技をするのに。ぼくたちは、今、グラウンドにいる。
いわゆる、外の、広い空間だ。
魔法科の生徒が実技をするのに、専用の施設がある。そこには、魔法の影響が外に及ばないよう、強力なバリアが成されているみたいなのだが。
陛下は、国内最高の魔力の持ち主だし。
ぼくも、魔力が多いと、前評判が高いものだから。
バリアが破壊される恐れがあるため、一応、外で様子を見ることにしたらしい。
そんなぁ、いくらなんでも。ぼくはバリアを破壊したりしませんよ?
でも、陛下の炎魔法は…壊しちゃうかもね?
「我は、自分で出した炎を消せなくて、困っている。できれば、己の魔法を、己で制御したいのだ。咄嗟のときに、そばにクロウが、いつもいるとは限らないのでな」
陛下の悩みに、魔法科の教師が深くうなずく。
「それは、カザレニア王家の、最大の難問でございますね? カザレニア建国以来、何千年と。王家の、一番魔力の強い者は、対の者の力を借りなければ、強烈な火炎を鎮火させることができなかった。王族の魔力は特殊で、純粋ゆえに、その炎はいつまでも燃え続けるのでしょう。今まで、その難問を解いた先達は、おりませぬ」
つまり、陛下の悩みは、一教師が解決できるものではないということだね。
確かに、ぼくのコップ一杯分の魔力の水と、シオンのドバドバの水の量。それで陛下の炎は、鎮火できたけれど。物理的な水の量で消えるわけではないみたいだからね?
「あの、箱の中に入れるのはどうですか? 火は真空の中では燃えないと聞いたことがあります。陛下は、火炎系の魔法だけですか?」
「魔法属性は、ひとりひとつだと思うが?」
この世界では、それが当たり前みたい。教師もうなずいている。
前世の『剣と魔法の世界』を書いた、俺ツエー系の小説は。全属性網羅する強者が、うじゃうじゃいたが。
アイキンは、乙女ゲームだからな。魔法に特化していないんだな、きっと。知らんけど。
そこに、ベルナルドが手を上げた。
「私は土属性なので、密閉の箱を作れます」
「そうか。では、試してみよう。クロウ以外の者が我の炎を消せるなら、それは大変有益なことだ」
陛下に、期待の目でみつめられた、ベルナルドは。地に手をついて、小さな箱を作った。蓋がないやつ。
そこに、陛下が炎の玉をひとつ落とし。
ベルナルドが蓋をして、密封した。
箱の中の酸素が尽きて、陛下の炎が消せたら、成功である。
「授業が終わるまでに、消えていたら。世紀の大発見ですな? では、クロウ様のお悩みは?」
とりあえず、一時間ほど、このまま様子を見るようだったので。
ぼくは先生に、悩みを告げた。
「実は、先日。ぼく、すっごく怒っちゃって。無意識にドラゴン、出しちゃったのです」
教師は、ちょっと小首を傾げ。
ぼくに聞いた。
「どんなものか、それを今、意識的に出すことはできますか?」
ぼくも、ちょっと小首を傾げて。背後の空間に指をさしてみた。
ドラゴン、ドラゴンって思っていたら。
空気中の水分が集合して、氷の粒になり。どんどん大きくなって。
うん。あのときと同じようなやつができたよっ。
「こんなやつです」
得意満面で、先生に示すと。背後のドラゴンが、ぎゃおーんと鳴いた。
すると、その場にいる人たちは、軒並み驚いて。何歩か後退っていた。
いつも冷静な陛下も、珍しく目をみはっています。レアですね。
「な、なんだ? この生き物はっ」
教師の驚愕の声に、ぼくは説明を加える。
「だから、ドラゴンです。龍。伝説の生き物で、よく絵本とかにあるやつですよ?」
もちろんご存知ですよね? とばかりにたずねると。
後ろのドラゴンも、ギョ? って鳴いた。
「そんな本は、見たことがありませんよ、クロウ様」
「嘘ぉ? ドラゴン、知らないんですか?」
再び聞くと、後ろのドラゴンも、アンギョー? って鳴いている。
ちょっと、うるさいんですけど?
みなさんの顔を見ても、小さく首を横に振っている。
えぇ? どうして? シオンはドラゴン知っていたのに。
そこで、ぼくは。思い出した。
ぼくはシオンに、王家の英雄伝説を馬鹿みたいに読み聞かせまくっていたのだが。
さすがに、シオンが飽きたと言い始め。
一字一句、そらんじられますと言われてしまって。
それで、シオンが楽しめるような絵本を、自作で作ったのだった。
まぁ、前世のお話を頼りに作った、勇者が森の奥に住み着くドラゴンをやっつけるという、冒険活劇なので。自分で考えたわけではありませんよ?
前世ではよくある、定番のやつです。
つまり、ドラゴンは。この世界では流通していないものだったのだ。
まぁ、ドラゴンは。前世でも、伝説の生き物だから。実際には、いないわけだけど。
でも、たぶん、ドラゴンって言えば、誰もが想像できる生き物であると思うんだ?
だとすると、誰も見たことがないドラゴンを、みんなが思い起こせるほどに浸透させた人って、すごいと思わない? 誰かは知らないけど。
つまり、ぼくが作った絵本を読んで、育ったシオンは。ドラゴンを知っていたけど。
父上もたぶん、ぼくが作った絵本を、母経由で仕入れて、知っていたのだろうけど。
この世界の人は、ドラゴンを知らない、という…。
ヤバい。超、ドラゴン知ってる前提で話しちゃったよ。
「あの、これはドラゴンという、ぼくの想像上の生物でした」
架空の生き物を出しちゃって、先生もさぞ困惑したでしょう。すみませんでした。
「なんか、この、ドラゴン? ってやつ。クロウと同じように、首を曲げたり、驚いたりしているぞ?」
陛下がそう言うと。
教師も。ぼくの作ったドラゴンが無害だとわかって、平静を取り戻した。
「お、おそらく。クロウ様がお作りになったものなので、クロウ様の思考と同じように動いているのでしょう」
陛下は、そうなのか、と言って。ドラゴンを見上げ。
空気中の水分を凍らせて作られた、薄水色のブルーホワイトうんちゃらドラゴンみたいな…いや、どちらかというとティラノサウルスみたいなコレが。陛下と目を合わせた。
「ギャオーーーン」
ドラゴンは、大きな声で鳴いて。
大きな太ももの足を、ドスドス踏み鳴らすと。すごい勢いで陛下に顔を近づけた。
あ、危ないっ。
ぼくは咄嗟に、ドラゴンを消そうと思ったけど。ま、間に合わなーい。
と思ったら。
このドラゴン。陛下の唇に、優しくチュウした。
いやぁーーっ…。
ぼくの心のままに動くドラゴンが、陛下にチュウしたら。ぼ、ぼ、ぼくが陛下とキスしたいみたいじゃーん?
したいけど。
呆気にとられたぼくが、ワタワタしている横で。ドラゴンは、なにやらモジモジし始めて。短い手を伸ばして、陛下を抱っこしてしまった。
そして頬を染めて、笑顔で、ブンブン揺さぶっている。
「やーめーてーっ」
ぼくはドラゴンを指差し、ちょっ早で消した。跡形もなく消し去ったぜ。
ちょっと宙に浮いていた陛下は、ストンと華麗に着地し。フッと笑う。
「クロウ…我は、チュウも抱っこも、いつでも大歓迎だぞ?」
ぼくは、恥ずかしすぎて、沸騰した頬に両手を当てて、顔を隠した。
「イアン様、クロウ様。私から学べることは、ないかもしれませんね? 魔法の実技は、しばらく、このグラウンドで行いましょう。大きなドラゴンが、バリアを突き破るかもしれませんので」
青い顔で、教師はそう言い。
ぼくは、羞恥で顔があげられずにいて。
陛下だけが、すごく満足した顔をしていた。
ちなみに、陛下の炎は、密封の箱の中で一時間以上も燃え続け。結局、ぼくの水魔法で鎮火したのだった。
つまり、酸素がなくなれば火が消える、という物理的な作用では、陛下の炎は消せないってことみたい。
世紀の大発見とはならなくて。みんながっかり、だったけど。
これからも、いろいろ模索していこう、ということになりました。
海に落した陛下の炎が、いつかは消えるみたいに。きっと、なにか方法はありますよ。
千年以上みつけられなかった方策なのです。気長にやりましょうね?
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