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2-幕間 兄弟のこそこそ話 ①

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     ◆兄弟のこそこそ話 ①

 家族団らんの夕食は、わちゃわちゃしてしまったが。
 母上が一言。
「公爵家当主である父上のお言葉は、無下にしてはならないものです。けれど、クロウもシオンも大事な我が子。どちらも当主になれるよう、育ててきたつもりです。クロード様、私もえこひいきは嫌いです」
 それで、無意識でドラゴン出したぼくに大興奮だった父も。いったん言葉をのみ込んだのだ。
 母は笑顔ながら、ぼくのドラゴンよりも冷ややかな空気感で、恐ろしかった。

「とはいえ、後継問題は家の大事ですから。誰もが納得いく形になるよう、もう少し話を積み重ねていきましょう。ねぇ、クロード様? まずはクロウと、ゆっくりお話をしたいと、申しておりましたよね?」
 やんわりとした言い方で、母は父に振り。
 父は、ガクガクとうなずく。

「そうだ、クロウ。目覚めてすぐに、息子が話す間もなく、輿入れしてしまうなんて。悲しいではないか? 嫁いでいくとしても、短い間でもいいから、父として、クロウと思い出を作りたいのだ」
 シオンと同じ顔で、情けない様子で懇願されると。弱い。
 つか、兄上ぇ、というシオンの声が聞こえるようだ。
 まさしく、ぼくが一番弱いやつぅ。

 ため息をつき、ぼくは父に謝った。
「父上。当主である父上に、いきなり怒っちゃって、すみません。けど僕は。十歳しか離れていなくて、弟のシオンと同じ顔立ちをしている父上を、なんだか、父上として見られないのです。どちらかというと、兄上、的な?」
 ずっと。父を助けた日から、違和感があったのだ。

 いわゆる、こんな若い人、父上とか、無理無理ぃ、みたいな? 

 前世の父親だって、彼よりは年上だった。
 なんというか、大樹を思わせるどっしり感というのか。決して追いつけない時間の重みというのか。父親には、そういうものがあるではないか?

 もちろん、父上も、公爵家の当主となって長い年月があるのだから。威厳や経験値は、ぼくよりいっぱいあるけれど。
 友達認定したセドリックやアルフレドと、年がマジで近いんだもん。
 だからどうしても、友達とか兄弟感覚になってしまうわけだ。
 親子間で年齢差って、大事なものなのだな、としみじみ思ったよ。

「兄上? それでも良いぞ」
 だが、戸惑うぼくを見て。父はあっさり、兄的地位を受け入れたのだった。

「私も、いきなり成人した息子ができて、戸惑っているところもある。クロウには兄弟の立場で、私を支えてもらいたい。まぁ、公では、父上と呼んでもらわなければならないが。忌憚きたんなく助言してくれたら嬉しい」
 公爵家の当主が、ここまで譲歩してくれるのだ。ぼくは、それに応えなければならないな。
 だ、け、ど。
 陛下との結婚は、外せないので。
 ぼくはお言葉に甘えて、ひとつ父に提案することにした。

「では、さっそく。父上はまだお若い。十歳しか年の離れていないぼくが、後継者というのは良くないです。せめて、一回り以上離れているのが、代替わりには相応しい。ぼくはシオンが最適だと思いますが。後継者がひとりでは心もとないということでしたら、もうひとり、御子を作ってみてはどうですか?」

 ぼくの言葉に、母は頬を染め、父はワタワタと手を振り回した。
「一提案です。こればかりは授かりものですしね?」
 そう言って、ぼくは席を立ち。シオンとふたりで食堂を出たのだった。
 あとは、お若い者同士で…なんちゃって。


 それで、ぼくは自室に戻ったわけなのだが。
 なんでかシオンも入ってきた。
 とはいえ、慣れ親しんだ兄弟水入らずな感じが、なんだか、懐かしくて。ホッとした気分になる。

 それにつけても、喧嘩からの気まずい食卓、は母の言葉で回避したものの。まだ、問題が解決したわけではなく。後継問題については、もう一波乱くらいはありそうだな?
 王宮から公爵家に、ぼくが帰る。それは、このことを話すためだったのかと思うと。陛下との結婚式まで、気が重い日々が続きそうだ。

 堅苦しい、重い衣装を脱ぐと。背後から、シオンが受け取ってくれて。クローゼットに戻してくれる。
 ちらりと見た感じ、なんか、上等な衣装が十着以上ありそうで。引く。
 大叔母様が用意したのだろうか?

 安定の黒色の、シャツとズボンになった、ぼく。
 その首元に、シオンが頭を預けてきた。

「甘えんぼ、坊ちゃん」
「からかわないでください。兄上と一週間も離れるのは、久しぶりで。寂しかったのですよ」
 シオンはスゥと、息を吸い込むが。
 なんか、吸われているような。匂いを嗅ぐという軽い感じではなくて、血を吸われているみたいな。体からなにかが抜け出て行くみたいな、感じだ。

「なにか、吸ってる?」
「魔力。兄上から漏れ出る魔力が、とても心地よくて。あぁ、癖になるな、この感じ」
「他人の魔力は、受け付けないものが多いと聞くが。兄弟だから、心地いいのかな?」

 魔力は、前世で言うところの輸血みたいに。人によって、受け入れるものと受け入れられないものがある。それは感覚的にわかる。
 相性の悪い魔力を取り込むと、気持ち悪くなったり、ヘタしたら、死ぬこともあるらしい。
 同じ属性でも、波長が違えば、好まない。

 でも、会話や軽いスキンシップくらいでは、影響はないんだって。
 ちなみに、陛下の魔力は。
 さすがに、対を成す者なので。非常に甘くて心地よいのです。ふふ。

「つい最近まで、魔力のこととか、考えたことがなかったのですが。ぼくは結構、好き嫌いが激しそうです。魔力の好き嫌いは、人の好き嫌いにも関わるので、学園でうまく立ち回れるのか、今から心配ですよ」
 はぁ、と。シオンは重いため息をついて、つぶやいた。

 シオンも。シャーロット殿下同様、四月十日から学園に通うことになっている。
「学園出身のセドリックに、ちょっと聞いたけど。魔法属性を気にしないで、まんべんなく付き合う方が、良いらしい。一見、魔力的に相性が悪そうでも、付き合ってみたら気さくで良いやつってパターンは多いんだって。ベタベタしなければ、魔力の影響は受けないし。やっぱり、友達は中身が大切だってことだな?」

「そうですね。清浄な魔力に飢えたら、兄上の魔力を吸えば良いのですし」
 いやいや、兄を吸いに来る弟の図は、いかがなものか。
 陛下にも、怒られちゃいそうだ。

「ま、ほどほどにな」
 ぼくは、シオンの頭をパフパフはたいて、体を離すと。ふたりでベッドに腰かけ、兄弟こそこそ話の体勢を取った。
 ま、もうこそこそ話さなくてもいいんだけど。

「それよりも、後継のことだ。ぼくは、そのことは全然頭になかった。一足飛びに、陛下と結婚、って思っていたから。公爵家の跡取りは、当然シオンがなるものだと、思い込んでいたよ」
「兄上は、そういう人ですよね。ぼくは、公爵家の跡取りには、兄上が一番相応しいと思っていますけど」
「おまえまで、そんなことを言うなんて…」

 シオンは気だるげな感じで上着を脱いで、スカーフタイをゆるめる。
 その仕草が、セクシーワイルドなのですけど?

「そりゃ、兄上は。魔力も潤沢で、王家の魔法を抑止する対の者の、資格も充分ですし。聡明で、人柄も申し分なく、領地経営も、すぐに任せられる才覚がおありですから。でも、ぼくは。兄上の幸せを一番に望みます。兄上が、陛下と結婚するのが、一番幸せなのだというのなら。公爵家はぼくが引き受けますよ。そして、兄上を、生涯サポートします」
「シオンんんん」

 ぼくは、感激して。瞳をウルウルさせた。
「でも、陛下と結婚して不幸せになるのなら、速攻で帰ってきてくださいね? ぼくが兄上を一生養いますから」
「一言、余計だっつうの」
 ぼくは、口をとがらせる。すぐ、そういうことを言う。

「ぼくも、シオンの幸せが大事だよ? シオンの意見も聞かないまま、後継に推してしまって、すまなかった。でも、引き受けると言ってくれて、ぼくのことを考えてくれて、嬉しいよ」
 本当に、よくできた弟である。
 ぼくの弟にはもったいないくらいだ。

「しかし、父上をどう説得するべきか。父上がどういう人か、イマイチよくわからなくて。どう接していいのかも、そこから、もうわからないんだ。さっきは、兄でいいなんて言ったけど。本音かどうか…」
 ぼくが、父の対応についてつぶやくと。
 シオンは訳知り顔で、うなずいた。

「あぁ、本音だと思いますよ。父上は…非常に言いにくく。自分で言うのも、嫌な感じなのですが。一週間そばで見て、感じたのは。父上は、厄介なぼくです」
「厄介な、シオン?」

 意味がわからず。首を傾げると。
 シオンは、んんっと喉に咳をこじらせた。
 この頃、陛下もよくそれをやるんですが、風邪が流行っているのですか?

「…兄上大好きな、ぼく。兄上のそばにいたい、ぼく。そこにさらに、国を動かせるくらいに、地位と権威がある、ぼく。はたまた、ぼくは兄上とずっと一緒にいましたが…十年分の兄上を堪能できなかった、兄上に飢えた、ぼく。ですっ」
「なんだとっ! 激重ブラコンのシオンが×2とか? いやいや、父上は母上が一番好きだろ? だったら、ちょっとは、重みが減るんじゃないか?」

 そんなわけないと、否定したいが。シオンは、さらりと言う。
「そうですね。確かに、父は母が一番だ。だったら。厄介な、ぼく。三分の一、くらいですかね?」

 ぼくは。眉間のシワが取れなかった。
 シオンの激重ブラコンは、たとえ三分の一でも、激重に変わりはない。

「そうか…それは厄介だな」
「なんか、しみじみ言われると、ぼくにもダメージが来るのですが」
 シオンの眉間にも、シワができた。

「しかし、ほぼほぼ会ったことがないのに。なんで父上は、ぼくにそんなに執着するんだろう?」
 十年以上前、ぼくが子供の頃。父上はたびたび、別邸に顔を見せに来た。けれど。
 その程度しか、関りがなかったのだ。
 ぼくとシオンは、第二夫人の子で、別邸に住んでいた。
 今いる公爵邸、いわゆる本邸には、第一夫人と父上が生活していたわけなのだが。
 元々体の弱かった第一夫人が、病で亡くなるまで…つか、結局はずっと、離れて暮らしていたわけだ。

 父には。公爵家の跡取りとして勉学に励めよ、とか。父親なら言うだろう、当たり前なことを声掛けされた、という記憶しかない。

「幼少の頃。家庭教師から、兄上が神童だと報告を受け。後継に据える日を楽しみにしていたらしいよ? さらに、一週間前に一目惚れ、というか。出会った頃の母上にそっくりで。惚れ直したとか、なんとか」
「いやいや、それは。母上に惚れ直したんでしょ?」
「もちろん、母上も好きだが。子爵令嬢だった母上に猛烈アタックした、あのときの気持ちがよみがえって。そんな兄上を、手放したくないって思っちゃったみたいなんだよね?」

 うわぁ、激重な好意で押し潰されるような気分です。
 ウザッ、とか。キモッ、とか。言ったらダメですよね? 一応、父ですし。
 息子が好き、という気持ちを無下にはできません。

 これは、アレですか? ファザコン?
 ファザコンは、子供が父を好きなやつか。
 じゃあ、息子ラブ? ムスコン? ウケるぅ。とか言ってる場合ではない。

「なーにー? どうすればいいのぉ? どうやったら父上は、ぼくを円満に嫁がせてくれるのぉ?」
「ま、しばらく? 学園通う間くらいは、父孝行して? 思い出作りに付き合ってやればぁ? ぼくはぼくで、学園生活中は、じっくり兄上を堪能するから」

 シオンの語尾に、ハートマークが見えた。
 まぁ、それはいつものことだからいいのだが。

 はぁ。父に関しては、どうやらシオンの言うとおりにするしかなさそうだな?
 もうっ、アイキンⅡが始まるかもしれなくて、こっちもハラハラだっていうのに。

 そこで、ぼくは。アイリスの言葉を唐突に思い出した。
 攻略対象者には、漏れなく婚約者がいるって、言ってたけど?

「シオン。ちょっと、薄っすら、聞いたんだけど。違っているかもしれないけど。シオンに婚約者って、いるのか?」
「…いませんよ」
 なんか間があったけど、一応、シオンは否定した。

「つか、婚約者じゃなくて、婚約者候補になら、なっていますけど。シャーロット殿下の」
「えっ、殿下の、婚約者?」
 これまた、公爵家から王族への結婚話?
 そうかぁ、シャーロットはシオンのことを意識していたから。ラブの予感がします。

 でもそうなってくると、有力貴族の勢力図とか…アワアワ。
 バジリスク公爵家一強の気配が…アワアワ。
 小説とかで、権力が偏ると、不満が出て、内乱勃発とか…アワアワ。

「婚約者じゃなくて、婚約者候補だよ、兄上。ぼくの他に、宰相の孫とか、オフロ公爵家の三男とか、いるから。兄上と陛下が、結婚となると。御世継問題が出てくるだろ? それで、王族の血脈で、男系を保つ、殿下の年齢に近しい有力貴族に、婚約話が来ているんだ。とはいえ、陛下も妹に政略的な結婚をさせたくないから。何人かの候補の中で、恋愛するようなら、いいなぁ、くらいな? だから正式な打診ではないんだ」

 ってことは? アイキンⅡで言うと? まずぼくが、陛下の婚約者で、第一悪役令嬢。
 そして、公爵令息のシオンと宰相の孫が婚約者候補であるシャーロットが、第二悪役令嬢?

 つか、第一悪役令嬢って、なんだよ?

「へー、シオンが殿下の婚約者候補かぁ、ほー」
 しかししかし、大きなナリをしていても、まだ十四歳のシオンが。婚約者の話が来る年になるとは。お兄ちゃん、感激です。
 でも、見た目はエロエロビーストですから。
 結婚話がわんさか来るのは、時間の問題だとは思っていましたけど。

 でも、たとえばぁ。シオンとシャーロットが恋に落ちて。
 その、お子様をひとり、養子にお迎えできれば。ぼくも陛下も、己の血族の子供を育てられるかもしれませんね? 
 そうしたら、バジリスク公爵家は。王家の血脈を男系でつないでいるので、王家の存続に貢献できます。

 いえいえ、これは夢のお話です。

 親戚といえど、本当の両親から子供を引き離してしまうのは、可哀想なことですから。
 実は、王家の御世継問題について、陛下としっかり話していないのです。

 つか、怖くて…聞けないよぉ。
 普通に、側室を迎えるから大丈夫だ、なんて、言われるかもしれないじゃん?
 そんなの、嫌じゃー。ぼくにだって、それなりに独占欲とかあるんですから。

 でも、王族と結婚するなら。王家の血族を絶やさないようにしなければならない、というか。
 だから、側室嫌じゃーなんて言っていられない、というか。

 男同士で結婚するなら、当然、側室を迎えるのは覚悟しとけよ…みたいな。

 脈々と、男系直系でつないできた、由緒ある王家一族。
 その血筋を、ぼくらの代で途絶えさせる。それは…。
 王家の英雄伝説や自伝を愛読してきた、ぼくとしても。背筋が凍る、由々しき事態なのです。

 わ、わ、わ、無理無理。
 ぼくの頭だけでは、考えられない。

 だから、結婚する前に、ここはちゃんと、陛下と話しておかなければいけないところなのです。
 陛下が、どのようにお考えなのか。
 陛下の後継者問題は、国の一大事なのですから。

 男のぼくでは、陛下の御子を産んで差し上げられないのですからね。

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