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2-2 続編は悪役令嬢ポジ?
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◆続編は悪役令嬢ポジ?
ぼくが、サロンからシャーロット殿下の居室に戻ると。殿下はすでに、白布を丸い輪っかにはめて、刺繍を始めていた。
外の日差しが差し込む窓際で、丸い机の前に腰かけて。シャーロットとアイリス、ふたりの淑女が刺繍をしている姿は、とても清楚な御令嬢っぽいけれど。
刺繍の出来が、ふふ、笑える作品なのです。
「ふたりとも、なぜ、ドレスのチョイスは最高なのに、刺繍糸の色選びが地味なのですか? 黒や茶色ばかりでなく、黄色やオレンジなど、若い女性らしい、華やかなお色を選んでください?」
アイリスの隣の椅子に腰かけて、助言をすると。
アイリスが、パッと笑顔を浮かべた。
「クロウ様? お帰りなさいませ。でも、バラの茎は茶色でしょう?」
「茶色か緑か。選択するなら、明るい緑でいいでしょう? でも、バラの茎には棘があるので、刺繍で表現するには、葉っぱまでが良いのですよ。ハンカチにどのような絵柄を添えるのか、考えるのもセンスです。アイリスは、バラの側面をイメージしているのでしょうが。花を正面からとらえて、主人公にする方が、映えるでしょう?」
アイリスは、うーんと唸り。
シャーロットは、きゅるんとした丸くて大きな瞳を、こちらに向けた。
「でも、それでは個性がないわ? 花のモチーフは、ありきたりですもの。みんなとは違う構図にしたいじゃない?」
「個性と奇抜は違うのです。殿下のそれは、なんですか?」
「見てわからない? アジサイとカタツムリよ」
アジサイは、まだ着手していないようだが。
茶色い糸で縫われた、渦巻の物体は。言葉にしてはいけないやつにしか見えない。それに…。
「カタツムリがその大きさでしたら、アジサイはハンカチいっぱいに刺繍するようになりますが?」
シャーロットは、そのことに今、気づいたようで。ガーンという擬音を、背中に背負っていた。
「わ、わかっていたわよ? クロウが戻ってくるまで、ちょっと、試し縫いしていただけよ」
強がりを言いながら、涙目で糸をほぐしていくシャーロットが、可愛い。
「そのことですが、殿下、アイリス。ぼくは今夜、公爵家に戻ることになりました。ご指導が途中になってしまうこと、申し訳ありません」
そう言って。ぼくと陛下が、学園に入学することになったことも話した。
「まぁ、お兄様とクロウも学園に行くの? すごーい。楽しみだわぁ?」
シャーロットは学園で、知り合いがアイリスしかいないことを、少し心細く思っていたみたいだ。
ぼくと陛下も一緒と知って、とてもご機嫌さんになった。
鼻歌交じりに、失敗した刺繍の糸をほどき始める。
「そうですかぁ…クロウ様も学園に。ということは、やはりアレですわね?」
アイリスが神妙な顔つきで言うのに、ぼくはたずねる。
「アレって、なんですか?」
「クロウ様は、ご存じないですか? アイキンⅡがあるのですよ?」
そのアイリスの言葉に、ぼくの脳天に雷が落ちた…ような気になった。
バリバリドッカーン、である。
「あ、あ、あ、アイキン、ツー? シーズン、ツー?」
あまりのことに、ぼくは涙目になった。
だって、せっかく、せっかく、すっごく大変な思いをして、陛下をお救いし。なんとか、ハッピーエンドに持ち込んだというのに。
続きがあるとか、聞いてないんですけどぉ?
信じられない思いで、ぼくはアイリスを見やる。
「そうですわよねぇ? クロウ様には、ショックですよねぇ? 私も、ツーの話にはならないかなぁ、と思っていたのですが。どうやらその方向に流れているみたいですわ? ツーは、学園が舞台の王道乙女ゲームですの。陛下も、クロウ様も学園に入るとなれば、これはもう確実ですわぁ?」
「嘘でしょー? ど、ど、どんな話なの? でも、主人公はアイリスだよね? ぼくと陛下に、試練はないよね?」
アイリスは、眉を下げる、困った顔で。でも、主人公顔のキラキラ目で、ぼくを見た。
「クロウ様…私ぃ、クロウルートをもう一度やりたくて、旧作を周回するのに忙しかったと…以前、申しましたっけ? そんなわけで、ツーは後回しにしていて、手付かずなのです」
「嘘でしょー!!!」
ぼくの断末魔の叫びが、王宮に響き渡った。
詰んだ。
ぼく、アイキンⅠもよくわからないながら、登場人物とか、話の背景とかは知っていて、なんとかハッピーエンドまでたどり着けたけれど。
アイキンⅡは、全然、なにも、わからないんですけどぉ?
む、ムリゲーですぅ。
「ゲームの詳細は、わからないのですが。でも、ガイドブックはちらりと読みましたよ?」
このときぼくは、アイリスが天使に見えました。
やった。お慈悲を。ぼくを導いてくださいませぇ。
胸の前で手を組んで、ウルウル目で、ぼくはアイリスにすがったのだった。
そうしたら、アイリスがアイキンⅡのあらすじを説明してくれる。
「舞台は、主人公のアイリスが、アルフレドルートを攻略した世界線」
「え、それって、アイリスがアルフレド攻略しなきゃ、ツーは起きなかったんじゃね? アイリス、ツーも視野に入れて、アルフレドを攻略したんじゃね?」
思わず、ツッコむと。アイリスは片頬をヒクリと引きつらせて、つぶやく。
「いいえっ、私は純粋に、アルフレド様を、あ、愛しているのですよ? 攻略とかぁ? そういうゲーム感覚ではないのですよ? つか、説明しているのですから、おとなしく聞いていてくださいっ」
怒られたので。ぼくはおとなしく、解説を聞くことにした。
「島から、無事に脱出した陛下が。世俗を勉強するために、学園に入るの。でも、バミネに命を脅かされていた陛下は、人間不信の気があり、誰にも心を開けない。そこに現れるのが、身分を偽って入学している、隣国の姫よ。主人公は、王の頑なな心を解きほぐし、恋に落ちるのかぁ? 落ちないのかぁっ?」
「え? アイリスが主人公じゃないの? そんなぁ? やっぱり陛下が、第一攻略対象者なのですか?」
「まぁ、題名が、愛の力で王を救えっ! なわけだから。どうしても陛下が対象にはなるわよねぇ? でも、前作同様に、攻略対象は五名いるわけだから。必ずしも、主人公が王を選ぶとは限らないわ? それに、陛下とクロウ様はラブラブの結婚間近なわけだしね? 陛下が目移りするとか、考えられないわ?」
「そうは言っても、ゲームの強制力とか、あるかもしれないし。他の攻略対象って、誰、誰?」
「宰相の孫、公爵令息、聖騎士候補生、あと忍者っぽいの。暗殺者か、陛下の陰の護衛か、とにかくシークレットがひとりいたわ?」
「宰相って、ウィレムさんの孫か。あと、公爵令息って、シオン? あぁ、やっぱりシオンはネームドだったかぁ。あと聖騎士と忍者は、たぶん、まだ会っていない系だよね? じゃあ、ぼくは。ツーでもモブみたいだね?」
モブが、主人公に対抗できるのかは、わからないが。
そこは陛下の愛を信じて。モブはモブらしく、物語の展開を陰から見ていればいいのかなぁと思ったのだけど?
アイリスは、口をへの字にして、首を横に振った。
「いいえ、クロウ様は悪役令嬢ポジ、ですわ」
「ええぇっ? 前作モブで、続編は悪役令嬢ポジ、ですとぉ? なんで、そんなことに?」
モブから一転、役柄を与えられて。ぼくはオロオロしてしまう。
もう、モブですから、なんて。高みの見物はできないってことじゃん?
「陛下にも、他の方たちにも、婚約者が漏れなくおります。攻略対象者の婚約者は、すべて悪役令嬢ポジ、ですの。主人公は、悪役令嬢から攻略対象者の心を奪って、断罪して、婚約破棄からの国外追放などなど。ヘタしたら、死刑もある、それが王道乙女ゲームの顛末ではありませんかっ。まぁ、どういう物語展開になるのか、それはわからないのですけど。腐っても癖強のアイキンですもの。一筋縄ではいきませんわ、きっと」
国外追放? 断罪からの死刑?
昔よく聞いた言葉や、物語展開が、ぼくの脳裏にワーッと通り過ぎていく。
これは、ヤバいよ。
つか、ぼくは陛下の悪役令嬢…ってことはぁ? 主人公のモロ敵?
「はっ、もしかして、ツーでも成敗があるの?」
前作のアイキンでは、成敗をくらうと、ジ・エンド。
まぁ、死んじゃうわけだからね。
すぐに成敗される、クソゲーだったし。ぼくもこの世界で、ずっと陛下に成敗されないように心掛けていたのだが。
悪役令嬢になったら、成敗される確率が上がるんじゃね? って、思ったのだけどぉ。
「いいえ? ツーでは、成敗はないみたいよ?」
そうなんだ? 良かった。
と、ホッとしたのも束の間。
「アイキンⅡが出た年は『がえんじない』が流行語になったわぁ。がえんじないって、うなずけないとか、受け入れられない、みたいな意味なんだけど。えらそうな感じで『がえんじない』って言って、拒否ったり、告白を断ったりするのが流行ったのよねぇ?」
またもや流行語を作り出したのか、アイキンⅡ、恐るべし。
「がえんじないって、攻略対象に言われると、好感度がグーッと下がって、主人公といえど、攻略が困難になるの。だから陛下から、がえんじないって言われなければ、たぶん大丈夫よぉ、クロウ様?」
その話を聞いて。ぼくは、目が点になった。
その言葉、つい先ほど聞きました。
「アイリス…ぼく、もう。陛下から『がえんじない』いただいちゃっているんですけどぉ」
「な、なんですってぇーっ」
王宮に、アイリスの叫び声が轟いた。
ぼくが、サロンからシャーロット殿下の居室に戻ると。殿下はすでに、白布を丸い輪っかにはめて、刺繍を始めていた。
外の日差しが差し込む窓際で、丸い机の前に腰かけて。シャーロットとアイリス、ふたりの淑女が刺繍をしている姿は、とても清楚な御令嬢っぽいけれど。
刺繍の出来が、ふふ、笑える作品なのです。
「ふたりとも、なぜ、ドレスのチョイスは最高なのに、刺繍糸の色選びが地味なのですか? 黒や茶色ばかりでなく、黄色やオレンジなど、若い女性らしい、華やかなお色を選んでください?」
アイリスの隣の椅子に腰かけて、助言をすると。
アイリスが、パッと笑顔を浮かべた。
「クロウ様? お帰りなさいませ。でも、バラの茎は茶色でしょう?」
「茶色か緑か。選択するなら、明るい緑でいいでしょう? でも、バラの茎には棘があるので、刺繍で表現するには、葉っぱまでが良いのですよ。ハンカチにどのような絵柄を添えるのか、考えるのもセンスです。アイリスは、バラの側面をイメージしているのでしょうが。花を正面からとらえて、主人公にする方が、映えるでしょう?」
アイリスは、うーんと唸り。
シャーロットは、きゅるんとした丸くて大きな瞳を、こちらに向けた。
「でも、それでは個性がないわ? 花のモチーフは、ありきたりですもの。みんなとは違う構図にしたいじゃない?」
「個性と奇抜は違うのです。殿下のそれは、なんですか?」
「見てわからない? アジサイとカタツムリよ」
アジサイは、まだ着手していないようだが。
茶色い糸で縫われた、渦巻の物体は。言葉にしてはいけないやつにしか見えない。それに…。
「カタツムリがその大きさでしたら、アジサイはハンカチいっぱいに刺繍するようになりますが?」
シャーロットは、そのことに今、気づいたようで。ガーンという擬音を、背中に背負っていた。
「わ、わかっていたわよ? クロウが戻ってくるまで、ちょっと、試し縫いしていただけよ」
強がりを言いながら、涙目で糸をほぐしていくシャーロットが、可愛い。
「そのことですが、殿下、アイリス。ぼくは今夜、公爵家に戻ることになりました。ご指導が途中になってしまうこと、申し訳ありません」
そう言って。ぼくと陛下が、学園に入学することになったことも話した。
「まぁ、お兄様とクロウも学園に行くの? すごーい。楽しみだわぁ?」
シャーロットは学園で、知り合いがアイリスしかいないことを、少し心細く思っていたみたいだ。
ぼくと陛下も一緒と知って、とてもご機嫌さんになった。
鼻歌交じりに、失敗した刺繍の糸をほどき始める。
「そうですかぁ…クロウ様も学園に。ということは、やはりアレですわね?」
アイリスが神妙な顔つきで言うのに、ぼくはたずねる。
「アレって、なんですか?」
「クロウ様は、ご存じないですか? アイキンⅡがあるのですよ?」
そのアイリスの言葉に、ぼくの脳天に雷が落ちた…ような気になった。
バリバリドッカーン、である。
「あ、あ、あ、アイキン、ツー? シーズン、ツー?」
あまりのことに、ぼくは涙目になった。
だって、せっかく、せっかく、すっごく大変な思いをして、陛下をお救いし。なんとか、ハッピーエンドに持ち込んだというのに。
続きがあるとか、聞いてないんですけどぉ?
信じられない思いで、ぼくはアイリスを見やる。
「そうですわよねぇ? クロウ様には、ショックですよねぇ? 私も、ツーの話にはならないかなぁ、と思っていたのですが。どうやらその方向に流れているみたいですわ? ツーは、学園が舞台の王道乙女ゲームですの。陛下も、クロウ様も学園に入るとなれば、これはもう確実ですわぁ?」
「嘘でしょー? ど、ど、どんな話なの? でも、主人公はアイリスだよね? ぼくと陛下に、試練はないよね?」
アイリスは、眉を下げる、困った顔で。でも、主人公顔のキラキラ目で、ぼくを見た。
「クロウ様…私ぃ、クロウルートをもう一度やりたくて、旧作を周回するのに忙しかったと…以前、申しましたっけ? そんなわけで、ツーは後回しにしていて、手付かずなのです」
「嘘でしょー!!!」
ぼくの断末魔の叫びが、王宮に響き渡った。
詰んだ。
ぼく、アイキンⅠもよくわからないながら、登場人物とか、話の背景とかは知っていて、なんとかハッピーエンドまでたどり着けたけれど。
アイキンⅡは、全然、なにも、わからないんですけどぉ?
む、ムリゲーですぅ。
「ゲームの詳細は、わからないのですが。でも、ガイドブックはちらりと読みましたよ?」
このときぼくは、アイリスが天使に見えました。
やった。お慈悲を。ぼくを導いてくださいませぇ。
胸の前で手を組んで、ウルウル目で、ぼくはアイリスにすがったのだった。
そうしたら、アイリスがアイキンⅡのあらすじを説明してくれる。
「舞台は、主人公のアイリスが、アルフレドルートを攻略した世界線」
「え、それって、アイリスがアルフレド攻略しなきゃ、ツーは起きなかったんじゃね? アイリス、ツーも視野に入れて、アルフレドを攻略したんじゃね?」
思わず、ツッコむと。アイリスは片頬をヒクリと引きつらせて、つぶやく。
「いいえっ、私は純粋に、アルフレド様を、あ、愛しているのですよ? 攻略とかぁ? そういうゲーム感覚ではないのですよ? つか、説明しているのですから、おとなしく聞いていてくださいっ」
怒られたので。ぼくはおとなしく、解説を聞くことにした。
「島から、無事に脱出した陛下が。世俗を勉強するために、学園に入るの。でも、バミネに命を脅かされていた陛下は、人間不信の気があり、誰にも心を開けない。そこに現れるのが、身分を偽って入学している、隣国の姫よ。主人公は、王の頑なな心を解きほぐし、恋に落ちるのかぁ? 落ちないのかぁっ?」
「え? アイリスが主人公じゃないの? そんなぁ? やっぱり陛下が、第一攻略対象者なのですか?」
「まぁ、題名が、愛の力で王を救えっ! なわけだから。どうしても陛下が対象にはなるわよねぇ? でも、前作同様に、攻略対象は五名いるわけだから。必ずしも、主人公が王を選ぶとは限らないわ? それに、陛下とクロウ様はラブラブの結婚間近なわけだしね? 陛下が目移りするとか、考えられないわ?」
「そうは言っても、ゲームの強制力とか、あるかもしれないし。他の攻略対象って、誰、誰?」
「宰相の孫、公爵令息、聖騎士候補生、あと忍者っぽいの。暗殺者か、陛下の陰の護衛か、とにかくシークレットがひとりいたわ?」
「宰相って、ウィレムさんの孫か。あと、公爵令息って、シオン? あぁ、やっぱりシオンはネームドだったかぁ。あと聖騎士と忍者は、たぶん、まだ会っていない系だよね? じゃあ、ぼくは。ツーでもモブみたいだね?」
モブが、主人公に対抗できるのかは、わからないが。
そこは陛下の愛を信じて。モブはモブらしく、物語の展開を陰から見ていればいいのかなぁと思ったのだけど?
アイリスは、口をへの字にして、首を横に振った。
「いいえ、クロウ様は悪役令嬢ポジ、ですわ」
「ええぇっ? 前作モブで、続編は悪役令嬢ポジ、ですとぉ? なんで、そんなことに?」
モブから一転、役柄を与えられて。ぼくはオロオロしてしまう。
もう、モブですから、なんて。高みの見物はできないってことじゃん?
「陛下にも、他の方たちにも、婚約者が漏れなくおります。攻略対象者の婚約者は、すべて悪役令嬢ポジ、ですの。主人公は、悪役令嬢から攻略対象者の心を奪って、断罪して、婚約破棄からの国外追放などなど。ヘタしたら、死刑もある、それが王道乙女ゲームの顛末ではありませんかっ。まぁ、どういう物語展開になるのか、それはわからないのですけど。腐っても癖強のアイキンですもの。一筋縄ではいきませんわ、きっと」
国外追放? 断罪からの死刑?
昔よく聞いた言葉や、物語展開が、ぼくの脳裏にワーッと通り過ぎていく。
これは、ヤバいよ。
つか、ぼくは陛下の悪役令嬢…ってことはぁ? 主人公のモロ敵?
「はっ、もしかして、ツーでも成敗があるの?」
前作のアイキンでは、成敗をくらうと、ジ・エンド。
まぁ、死んじゃうわけだからね。
すぐに成敗される、クソゲーだったし。ぼくもこの世界で、ずっと陛下に成敗されないように心掛けていたのだが。
悪役令嬢になったら、成敗される確率が上がるんじゃね? って、思ったのだけどぉ。
「いいえ? ツーでは、成敗はないみたいよ?」
そうなんだ? 良かった。
と、ホッとしたのも束の間。
「アイキンⅡが出た年は『がえんじない』が流行語になったわぁ。がえんじないって、うなずけないとか、受け入れられない、みたいな意味なんだけど。えらそうな感じで『がえんじない』って言って、拒否ったり、告白を断ったりするのが流行ったのよねぇ?」
またもや流行語を作り出したのか、アイキンⅡ、恐るべし。
「がえんじないって、攻略対象に言われると、好感度がグーッと下がって、主人公といえど、攻略が困難になるの。だから陛下から、がえんじないって言われなければ、たぶん大丈夫よぉ、クロウ様?」
その話を聞いて。ぼくは、目が点になった。
その言葉、つい先ほど聞きました。
「アイリス…ぼく、もう。陛下から『がえんじない』いただいちゃっているんですけどぉ」
「な、なんですってぇーっ」
王宮に、アイリスの叫び声が轟いた。
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