【完結】異世界行ったら龍認定されました

北川晶

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111 燎源の裏切り

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     ◆燎源の裏切り

 一月二十一日。朝の五時。
 紫輝一行は、誰にも気づかれることなく本拠地を出立し。早駆けのスピードで、一路、富士のふもとへと向かった。

 前日に、月光と赤穂に相談したところ。一番効果的なところで出て行くから、心配しないでぇ。ということで。
 行きがけの合流は、なくなった。
 大丈夫かな? 捕まるとかはないよね?
 赤穂と将堂の宝玉なんだから。

「つか、急だよねぇ? いきなり言われてもねぇ? あいつ、マジで、早く紫輝を囲いたいんだな? そうはいかないからっ、ひとり占めは許さないからぁ!」
 と、月光は半泣きで、いつものようにぼやいていたが。
 ま、ちゃんと来てくれるでしょう。

 そんなこんなで、道中はつつがなく進み。
 日が暮れかかる夕方四時ごろ、前線基地のほど近い村、田子の浦に到着。
 ここでほろ馬車を調達し、ライラの背中から、銀杏の身を荷台へ移し。ライラを剣に戻してから、樹海の中の基地に入っていった。
 ちなみにその間、銀杏は安らかに寝ている。生気を吸われて、すよすよと。
 のんきですな。

 紫輝は、到着した前線基地を、荷台の幌の隙間から、感慨深く見やる。
 この基地を、慌ただしく去ったのは、まだ三ヶ月ほど前のことなのに。なんか、懐かしいって思っちゃうよ。
 雪景色だから、夏の暑い盛りの風景とは全く違うんだけどね。

 ところで。自分たちは、最短距離の道を進んできて。
 この時代は、それほど幾筋いくすじも道があるわけではない。なのに、先触れというか、連絡というか、銀杏持ってきてぇ、と言ってくるべき連絡係と、出会わなかった。
 これはどういうことでしょうね?

 こちらは大和を先触れで出していたので。右軍幹部が駆けつけた、前線基地内の広場に。燎源ほか、数名の左の幹部が出迎えていた。
 広場にも、雪が積もっていて。みんな軍服の上にマントをかぶって防寒している。
 進軍するのは大変そうだ。

「青桐様、急にお出でになるとは、何事ですか?」
 糸目で笑顔の燎源に、青桐は、は? という顔をする。
 つまり、誤魔化すつもりらしいのだが。
 では、どうするつもりなのだろう? 燎源の思惑がわからない。

 とりあえず、瀬間が話を進めた。
「何事、ではない。こちらの独自情報では、金蓮様が捕縛されていると聞いた。受け渡す罪人も護送してきたのだ」
 瀬間の言葉に、燎源は、笑顔ながら青い顔をし。
 小さくため息をついた。

「人質の交換ができなければ、金蓮様の命が危ういのに。連絡係とすれ違うこともなかったぞ? 燎源、まさか貴様は、金蓮様を見殺しにする気だったのか?」

「そこまでわかっているのなら…もう誤魔化せないな」
 燎源が軽く右手を上げると、左軍の兵士が、剣を抜いて、青桐たちを睨みつけた。
 多勢に無勢なので、瀬間や青桐は顔をこわばらせたが。
 そこに紫輝が出て行く。

「統花様? なんで、こんな無謀な真似をしちゃったんです? 冷静で、金蓮様至上主義の貴方らしくもない」
 すると、少し後ろの方から、誰かが叫びを上げた。

「龍鬼の言葉なんかに、耳を傾けないでください、統花様。金蓮様がいなくなれば、統花様が将堂軍を率いていけるのです。そこの青桐も、まがい物。もう将堂家の者はいないのだから。小うるさい龍鬼などは、切って捨ててしまえばいいっ」

「あれあれぇ? そこで吠えているのは、大塚くんじゃない?」
 紫輝は、後ろ手にライラ剣を抜くと、剣先を大塚に向けた。
 大塚は堺が牢に入っていたとき、グチグチ言っていた、うぜぇ左次将軍だ。

「大塚くんは、知っているよね? 剣を合わせなくても、俺が雷、落とせることを。もう一度、電撃浴びたくなっちゃったかなぁ? 癖になっちゃったとかぁ?」
 名指しして、紫輝が挑発すると。
 大塚は、あのときのことを思い出したのか。ヒッと悲鳴を上げる。

「統花様、そこの大塚くんが言っているのは、間違いですよ。青桐はまがい物ではない。将堂の正統な血脈なのです。それに、青桐が継がないとしても、まだ夏藤様もいらっしゃいますし。あぁ、子供を傀儡かいらいにすることもできますけど、それはさすがに、名家の方が黙っちゃいない。ここには麟義家も時雨家もいる。金蓮様を見殺しにしたら、さすがに後継に統花様を、という話にはなりませんよ?」

「麟義も時雨も、みんなを殺ってしまえばいい。この件を知る者は口を封じてしまえば、将堂は統花様のものです」
 またもや大塚が吠えるので。
 紫輝はすかさず、訂正する。

「美濃家の幸直は本拠地に残してあるんですよ。今回の顛末は、俺の隠密が、随時本拠地へ報告しているので。死人に口なし、にはならないんだよ? 大塚くん」

 まぁ、そんな企ては、していなかったけど。もしも、そういうことが起きても、もう言ったから、この場にいる隠密は従うでしょう? と紫輝は。希望的観測をする。
 でも、死ぬ気もないからね。

 観念したのか、燎源は上げた手を下ろした。
 左の兵士たちも、息を抜いて、剣をおさめる。
 さすがに命令とはいえ、味方に、上官に、剣を向けるのは、後ろめたかったのだろう。

「統花様っ」
 大塚だけが、気負って、燎源をけしかけるが。
 彼は首を横に振る。

「連絡が間に合わないのなら、私のせいではないと思えたが。もうここに、手裏の要人がいるというのに。この状況で、私は金蓮様を見殺しにはできない」
「じゃあ、大塚くんだけ、天誅てんちゅうだな」
 そう言って、紫輝は笑顔で、紫に光る電撃を大塚に放った。
 彼はビキビキと感電し。その場に倒れる。

 いやいや、見た目は派手だけど、生気を吸って、気絶しただけだから。命に別状はないよ。

 左の兵士は、その大塚の倒れっぷりに、恐れおののきながら。彼を医務室に運ぶため。解散した。
 その場には、燎源だけが残っている。

「金蓮様に、忠誠を誓っていた貴方が、なんで大塚なんかの甘言かんげんに乗ったんですか?」
 紫輝の、燎源の印象は。
 金蓮至上主義、金蓮のためならなんでもやれる、金蓮の盾になって死ねる、それぐらいの忠節を持っている。
 でも、腹黒そうなイメージもあり。
 しかし、それは金蓮のために発揮されるものだと思っていた。
 金蓮のために、陰ながら手を汚す、的な。

 あくまで、イメージなのだが。
 あたらずといえども遠からず、だと思うんだよね。

「金蓮様は、藤王が絡むと、挙動がおかしくなられる。藤王と仲が良い者を、毛嫌いしたり。藤王が声をかけた者を冷遇したり。藤王自身へも、金蓮様の対応は、総じて厳しいもので。だから、金蓮様は藤王を嫌っているのだと、最初は思ったほどなのだ」

 なんだ、それ? プライド高い系ツン? ねじ曲がった、ツン? デレのない、ツン?
 わかりずれぇ…。

「だが、藤王が失踪すると、金蓮様は恐慌をきたすほど荒れて。それで、私は。金蓮様が藤王を好いていたのだと、ようやくわかったというか。納得できた。藤王の姿を見なくなれば、奇行はおさまるかと思ったが。堺を目にすれば、藤王を思い出しておかしくなるし。結局その部分は変わらず。ここ最近になって、藤王が生きていたことがわかり。また…。彼のことさえなければ、金蓮様は。良い傀儡であったのに」

「…傀儡?」
「政治に関しては、ほとんど、私の言うとおりに動いてくれた。このまま行けば、名君であったのだが」

「名君? 龍鬼をあれだけ差別する方向へ推し進めたのは、あんただったってことか?」
 怒りに燃える目を、紫輝は燎源に向けた。
 しかし彼は首を振る。

「言っただろう、藤王に関することは駄目なのだ。龍鬼はどうしても、藤王を連想させるだろう? すると金蓮様は拒否反応を示される。ひどく感情的になる。だから、龍鬼の件には触れずに来ただけだ」

「触れないことが、悪化する原因だろ? なら、なんとかするべきだった」
「なんともできないから、見限ったのではないかっ」

 燎源は、口惜しい気持ちを、紫輝を睨んで示す。
「もうずっと、金蓮様の情緒は不安定だ。私も井上も、心の病は癒せぬ。なぜ、今更。藤王は現れたのか?」
「死んでいた方がいいって、言いたいのか?」
「言えるか。藤王は親友だったのに。彼が、ずっとそばにいてくれたら良かった。それだけのことなのだ」

 常に笑みを浮かべていた燎源が、苦悩に顔をゆがませ。苦々しげに内心を吐露した。

「親友だったが、優秀な藤王は、私にとっては煙たい存在だ。なかなか乗り越えられない、高い壁。好敵手。でも、龍鬼だから。将堂の中では、自分より上官にはなれない。それだけが、己の誇りを守ってくれた。だから、彼を貶めなくて済んだ。そんな、醜い心を隠すように、私はいつも笑顔でいた」
 笑顔の仮面で、燎源は本心を隠していたのだな。と紫輝は思う。
 紫輝は知らないし、想像しかできないけれど。
 藤王が将堂にいた頃が、燎源にとっての最高の時間だったんだろう。

「だが、失踪直前。金蓮様も藤王も、どこかおかしくて。ギクシャクしていた。失踪の心当たりといったら、それくらいしかないが。いや、なにも関係ないかもしれない。ただ、私は。彼がいなくなって、ホッとした。安堵、してしまった」

「そんな…燎源は、兄上がいなくなったあとも、私を気遣ってくれて。兄上を探す手伝いをしてくれたこともあったではありませんか?」
 悲しげな堺の声に、燎源は、ふと、口角を上げて笑う。

「複雑なのだ。親友で、友として愛しているが、その才能に嫉妬し、憎んで。金蓮様を脅かす大きな影を恨んだ。藤王がいなくなり、孤立無援な堺にも、手を差し伸べたかったが。金蓮様のそばにいるうちはできない。なにもできぬ同情は、なにも生まない。ないのと同じ。藤王に嫉妬するなどといいながら、彼のような大きな心根を持ち得ない。それこそが、私の限界だ。私は藤王になれなかった」

「統花様は、藤王になりたかったのか?」
 紫輝の質問に、燎源は嫌そうに眉間を寄せるが。
 肯定も否定もしないで、口にした。

「金蓮様は、藤王しか見ていなかったから。長年、そばにいて尽くしてきたのは、私なのに。私のことは空気くらいの存在感しかない」
「空気も大事じゃん? でも…仕方ないんだよ。金蓮様は藤王に恋しちゃってんだから」

 この世界では、男同士の恋愛に、禁忌はそれほどないので。金蓮が男性だと思っている燎源も、即否定はしなかったが。
 金蓮と恋というワードがしっくりこないような、そんな顔をしていた。

「恋しちゃってるから、好きな人の気を引きたくて、わざとつれない態度を取ったり。好きな人が誰かと親密に話しているのが、ムカつくし。その人に冷たくしたり、するんだろ? 仕事に公私混同は、良くないけどね」

「まさか、金蓮様と藤王は恋仲だったとか? だから失踪直前に、ギクシャクと…しかし、昨日会った藤王は。金蓮様をとても冷たい目で見ていた。金蓮様は気づかなかったが。あのあからさまな嫌悪の目にすら、気づかないほど。金蓮様はなにも見ていなくて…」

 そうか、と紫輝は思う。
 やはり、なにも見えていないのか。
 藤王のいい部分だけ。
 いや、都合のいい部分だけ。もしくは都合のいい、妄想の藤王、しか。
 金蓮の目には、もはや映っていないのだろう。

 独りよがりの、悲しい恋だ。

「金蓮様と藤王が恋仲というのは、あり得ない。情緒不安定な金蓮様が、なにかやらかして、藤王の逆鱗に触れたから、殺意が湧くほど、こじれちゃったんじゃね?」
 特に天誠から詳しい話を聞いていないのに、なにげに核心を突いている紫輝だった。

「つか、統花様も金蓮様が好きなのか?」
「好きだなどと、恐れ多い。私はただひたすらに、金蓮様をお慕いし、尽くすだけだ」

「でも、藤王に嫉妬するってことは…無意識にそう思ってんじゃね?」
 その問いには、燎源は答えず。
 だが、胸のもやもやを吐き出したからか、苦い物を食べたような表情は落ち着いて。
 穏やかな顔でそっと、うつむいた。

「もしも金蓮様のそばに仕えていた、あの頃に戻れたら。おかしくなってしまった金蓮様も。元に戻られるのではないか? 藤王も、将堂でなにもなかったように過ごせるのではないか? どうしても、そう思ってしまう。でもそれは無理なこと。ならば、金蓮様を消し去って、あの日に戻れば良いと…大塚にそそのかされて馬鹿なことを考えてしまったのだ」

 それは、金蓮が死んだあと、燎源も死ぬつもりだった、ということだ。
 ふたりで、あの日に戻ろうとしたのだ。
 恋も愛も、恋愛の苦しさや喜びも味わっていないくせに。
 燎源も、歪んだ愛情を押しつけて、勝手に心中するつもりだったってことじゃん。そんなの、駄目じゃん。

「明日、俺が金蓮様を解放してやる」
「…おまえが?」
 なにを言っているのかと、理解できない表情で、燎源は紫輝を、その細い目で見やる。

「藤王には、藤王の事情があって、もう将堂には…統花様の元へも、あの日とやらにも、戻れないんだ。だから、すべて元通りにはできない。でも、ガチガチに武装された金蓮の重いよろいを、剥いで、剥いで、生身の体を、燎源に渡してやる。すべてを失い、だが身軽になる金蓮様を、貴方が支えるか、見捨てるか。それはそのときに考えてみてくれない?」

 もしも、燎源が。金蓮を見捨てたら。縁がなかったということだし。
 ただの金蓮となった彼女を見守り、苦しい想いはするだろうが、それでも彼女を愛するのならば、それは本物の気持ちだと思う。
 どうなるのかは、彼次第だ。

「すべてを失うって…おまえはいったい、なにを…」
「明日。とにかく、人質交換を見届けてくれよ。あと、統花様も。金蓮様に恋しちゃってるって、すぐにも認めた方がいいと思うよ? そしたら、自分のごちゃついた気持ちも、少しは整理できんじゃね?」

 一応、謀反のような感じではあったが。その場は、瀬間も青桐もスルーして。
 燎源の処分は様子見ということになった。

 大塚は、侮辱罪とか不敬罪で、捕縛されたけどね。

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