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71 ここからが本題です
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◆ここからが本題です
「紫輝、おまえ、すげぇな。尊敬するわ。鬼畜の弟に振り回されたあげく、愛してやるなんて。器が広いねぇ。赤穂の身代わりくらいで、クソジジイをなじっていた俺が、小さく思えるぜ」
これまでたどってきた経緯や、あれやこれやをすべてさらし、紫輝はなんだかぐったりした。
堺には以前、心をさらしていて、過去のことはほとんど、映像化というか、追体験、みたいな感じで伝わっているので。
天誠の描写は、堺の主観も付け加わり、かなり辛辣なものになっている。
堺、天誠がお嫌いですか?
とはいえ、話し終え、疲労困憊な紫輝に、堺は優しくお茶を出してくれる。ありがとう。
でも、まぁ。基本をおさえた上で、ここからが本題です。
「つまり、簡単に言うと。今、手裏基成やってる弟と、将堂の血脈である紫輝が結婚することで、将堂と手裏の統合を図り。終戦に持っていき、領地をひとつにまとめて国にすると。それは龍鬼や黒羽などという差別とは無縁の世界にしたいと。そういうことだな?」
まとめとして、青桐が理解した内容を、紫輝に確認してくる。
「あぁ。俺は…天誠とライラと、穏やかに、静かに暮らせたら、それでいいんだけど。戦をしている間は、将堂、手裏、どちらも強力な駒である龍鬼を手放さず、使い倒すだろ? 逃げても無駄だし。龍鬼である俺は、平穏を望めない。天誠はそういう世情から、俺を早く解放したいと思ってくれてる。だから、終戦させると言い。俺はそんな天誠に従っているんだよ」
青桐の問いに、紫輝が答え。ふたりは静かにうなずく。
「いいんじゃねぇ? 赤穂と入れ替わって、俺は堺と、長野にこもろうかと思っていたが。それは終戦しないと叶わないと言うのなら。紫輝が示す、その道が最善だ。堺を、龍鬼の呪縛からも将堂の呪縛からも解き放つには、それしかねぇような気もするしな。俺は紫輝に協力するぜ」
宣言する青桐を、堺は柔らかい笑顔で見守る。
わぁ? なんか、ラブラブ。
昨日は、それほどでもなかったような気がするのになぁ?
昨日、なにがあったのかなぁ?
つか、幸直と巴も、昨日なにかあったような気がするなぁ?
紫輝はちょっと蚊帳の外な感じで、拗ねた。
「ありがとう、青桐。そうは言っても、ガンガン裏工作かますとか、そういうことはないんだけど。今は情勢を見守っているところだ。やんわりとでも、龍鬼の地位を向上していけたらと思っている」
「生ぬるくねぇ? 俺は早く堺と結婚したい」
「俺だって、そうだよ。早く天誠との結婚を公表したいよ。たぶん…天誠も、そうだと思うから。それほど待たせないとは思うけど? つか。隠す必要がなくなったみたいなことを、さっき言っていたが。堺、昨日、なにがあったの? あと、堺は青桐をどうするの? また記憶消すか?」
そんなことしないのは、わかっているけど。
堺が、金蓮の命令を無視して、青桐につくのか?
まぁ、つくだろうけど。一応、聞いておこうかと思って。
あと、昨日なにがあったのか知りたいしっ。
「記憶を縛るのは、大技なので。使用すると、半年は使えないんです」
「…そうなのか?」
堺の言葉に、青桐がホッとしたような感じで聞く。
もうっ、そうじゃなくて。
「俺は、能力が使えたら、青桐の記憶を消すか? と聞いている。金蓮に凄まれても、青桐を選べるのか?」
「もちろんです。本当ならば、記憶を奪った私をなじって、手討ちにされても文句は言えません。でも青桐様は…私と過ごした時間を、忘れたくないと言ってくださって。私の命は、青桐様のものです。もしも金蓮様に、もう一度記憶を消せと言われても、私は従えない。そのときは…覚悟します」
堺の言葉は、金蓮に手討ちをされる覚悟、将堂の命令に背く覚悟、死を覚悟、という意味で。
紫輝は自分で聞いていて、ゾワリとした。
「させるかよ。堺の命は俺のものだろ。兄上に、好き勝手させねぇから」
低い声で、青桐は不穏な声を出す。
怖ぇ。
それに、堺も。すぐ命懸けるんだから。
「そうだよ。堺の命は、もう堺だけのものじゃないんだから。命で問題解決しようとしちゃ、駄目なんだからな。よく覚えておいて。堺が死んだら。青桐は世のすべてを恨んで、闇の底をさ迷い、苦しみ、嘆き悲しみ、世界など滅んでしまえと、自暴自棄に荒れ狂うだろう」
まんま、天誠だったら、という架空話だが。
紫輝は、見えるのだ。
紫輝が亡くなったあと、ひとり取り残された天誠の末路が。
だから、もうひとりにはできないし。己が先に死ぬこともできないと思っている。
でも、愛する人が亡くなったら、おおよそ、同じような感じになるだろうから。青桐もそうだろうと思うのだ。
紫輝の言葉に、堺は顔を青くして。唇を引き結んだ。
「おい、紫輝。あまり堺を怖がらせるなよ。彼が繊細なの、知ってるだろ?」
「あぁ。堺、今のはたとえ話だよ。だから、堺は命を投げ出す前に、まず青桐に相談するんだぞ? 青桐がなんとかする。な?」
青桐は堺の手を握り締め、力強くうなずいて、堺をはげました。
「ま、兄上につけ込まれないよう、俺は記憶喪失のフリを続行する。幸直たちは、そこらはおそらく聞いていなかっただろうから。ここでは基本、そのように振舞う」
先ほど、己の話を開示したとき。紫輝は己が、赤穂と金蓮の子供であることも話した。
以前、堺に心をさらしたときはまだ、自分自身、そのことを知らなかったから。
堺も、今日知って、驚いていた。
紫輝は赤穂の子供なので、充分に将堂の血脈であると言えるのだが。
金蓮が母だということで、血脈としても色濃いことが知らされ。終戦への道がより現実味を帯びるのだ。
青桐は金蓮が女性だと知らぬ態なので、今も兄上呼びを継続している。
でも、金蓮が紫輝の命を脅かしたのを聞いて、実の子が…いや、実の子だからこそ、龍鬼であるのは認めないという非情さ、そして金蓮が芯から龍鬼嫌いであることを知り。
警戒心を強めていた。
そうだ。それでなくても、金蓮は堺を目の敵にしているのだから。できれば会わせない方がいいよ。
それぐらい警戒していい。
「記憶と言えば。一日だけ失われていた私の記憶が戻ったのです」
思いがけないことを聞かされ、紫輝は堺に目を向けた。
「え? どうして? 自然に思い出したのか?」
「いえ。青桐様が記憶を無くしていなかったのは、私の術が失敗したからではなく、術を打ち破ったからなのです。その方法を教えてもらったら…私も記憶を縛られていたとわかって…」
「堺の能力を打ち破る方法って?」
龍鬼の能力が相殺される方法があるとしたら、末恐ろしいと思ったのだが。青桐は言う。
「精神を集中させて、額をグリグリ。気合で、糸をぶっちぎる」
「…いったい、どんだけ修業を重ねれば、気合でそこまでできるんだ?」
まさかの精神論だった。呆れてしまう。
「それで、堺の糸もぶっちぎったのか? それで、どう…だった?」
紫輝は、堺が、己が両親を殺したのではないか? 兄を殺したのではないか? と脅えているのを知っていた。
絶対に、堺のような繊細な人が、両親を殺したりしないと知っているし。
藤王が生きているのも、知っているから。
それに堺が、ここでこうして自分から言い出したことでもあるので。
ひどい話ではないと思うのだが。
紫輝はまだ、あの事件の真相は知らないので。恐る恐るたずねた。
「熱発していた私を、両親が殺そうとして。それを、兄がかばってくれたようです。でも、両親を殺したのは、手裏の龍鬼でした。私が見たことのない、年配の龍鬼です。でも、まだわからないことの方が多くて。兄は、私がその龍鬼に剣を向けると、彼をかばって。私を置いて、彼について行ってしまった。私があの日の記憶を失っていたのは、私の能力を模倣した兄が、記憶を縛ったからだったのです」
堺は神妙な顔で、話を続けていく。
「龍鬼の特異能力は、他者には真似できないものだと思うのですが。兄は、できた。兄は、とても優れた龍鬼でしたから、できることなのかもしれませんが。それも謎のひとつです」
紫輝は、眉根を寄せて、なんとも気まずそうな顔で、堺を見る。
これはもう、堺に隠しておいてはいけないやつだな。
どちらにしろ、近々、ふたりを会わせる方向で調整するつもりだったのだ。良い機会だと思おう。
決心して、紫輝は堺に、藤王の話を切り出した。
「堺。さっき話した、大きな手に掴まれて、三百年前から俺が連れ戻されたってやつだが。あの手は、藤王だ」
「えっ?」
堺も青桐も、紫輝の言葉に息をのむ。
「金蓮に襲われた五歳の俺は、龍鬼の能力を使って三百年前に逃れたのだが。その場に居合わせた藤王が、俺の能力を模倣して、時空の穴に手を突っ込んだ。藤王が掴んだのは、十八歳の俺だったが…」
「兄さんは生きているのですか? でも、なんで兄さんが紫輝を? その場に居合わせるなんて、そんな偶然が?」
「月光さんは、龍鬼の子供を育てるために、山で隠れて生活をしていたのだが。天誠の話によると、初めは月光さんを、手裏に引き入れるために訪問したということらしい。ま、はっきり言っちゃうと。手裏軍の龍鬼である不破が、藤王なんだ」
将堂と敵対している、手裏の龍鬼。不破の名前は、昔から轟いているので。
そんなに近いところに兄がいたことに、堺は驚きを隠せなかった。
「しかし、不破の名前は、私が子供のときから、時々話題にのぼる名前でしたよ? 兄とは別人です」
「天誠に聞いた限りなんだけど。今の不破…藤王は、先代の不破から地位や屋敷を譲渡されたということだ。その代わりに、虐げられた龍鬼や子供を救えという使命を受け継いだ。だから、殺されそうになっていた俺を助けようとしたみたいなんだ。たぶん、堺が見た手裏の龍鬼が、先代の不破だったんじゃないかな? その直後、彼と入れ替わった…」
一口、お茶を飲んで、紫輝は息をつき。
さらに慎重に話を進めていった。
「天誠も、ひとりで、この世界に堕とされて。龍鬼として、つらい目にあっていたのだが。それを藤王に助けられたって。天誠と藤王は、それから今までの八年間、家族的な付き合いをしてきた。天誠は『兄さんは紫輝だけ』だなんて、頑なだけど。たぶん、兄的な意味で。互いに、頼り、力を合わせて、生きてきたのだと思う。そんな天誠が、言うには…藤王の特異能力は、一度限り、他の龍鬼の能力を真似できる、というもの。だから、藤王は堺の記憶を縛り、俺も連れ戻すことができたんだ」
堺は目を見開いて、本当に信じられない、というような顔をしている。
そんな呆然自失の堺に変わって、青桐が紫輝にたずねた。
「おい、紫輝。おまえ、いつから知っていたんだよ? その…藤王が、不破だということを」
「実は…天誠と合流し、彼に手裏内部の話を聞くうちに、薄々だけど、気づいてはいた。でも、確証が持てたのは、半月前。赤穂が瀕死の重傷を負ったときだ」
そこで紫輝は、あの顛末も説明した。
ある日、藤王が金蓮を呼び出した。金蓮は藤王に強い執着を持っていて、のこのこと会いに行く。
しかし藤王は、金蓮暗殺を目論んでいた。
だが、失敗。
矢が、金蓮をかばった赤穂に刺さり。赤穂は生死をさ迷うことになる。
しかし金蓮は、藤王を連れ戻せなかった失態を隠すため、赤穂を見殺しにし。顛末を知る月光のことも、軍から排除しようとした。
駆けつけた紫輝が、能力で赤穂を癒して、赤穂は一命を取り留め。
今は月光ともども、ある場所で静かに暮らしている…ということを。
「手裏側から、藤王が出てきたことで。藤王が不破であるということが、明らかになり。天誠もそれを認めた。だから、藤王が生きていることをちゃんと知ったのは、マジでつい最近なんだ。憶測で言えないから、結果、黙っているような感じになって、ごめんな? 堺」
紫輝は謝ったが。堺は気持ちが晴れないような、眉間にモヤモヤを溜め込んでいるような顔つきをした。
わかるよ。自分だって、天誠がみつかる前は、どんな片鱗でもみつけたいって気持ちだったから。
でも、藤王は。天誠が最近まで、ものすごく危険視している人物だったし。
紫輝も、もしかしたら藤王が両親を殺したのではないかと思っていて。そうしたら堺が傷つくんじゃないかって、思ってしまって。
言い訳かもしれないけれど、紫輝にも堺に簡単に憶測を打ち明けられない事情があったのだ。
でも、ごめんよ、堺。
「この前、兄上が、赤穂を殺したわけじゃないと言っていたが?」
「自らの手で、始末をつけたわけじゃない、という意味だ。でも俺は、赤穂に満足な治療をさせず、見殺しにして、青桐を立てて、失態をもみ消そうとした金蓮を。許さねぇよ。だが…それは青桐には関係ない」
「関係はあるだろうが? これほど容姿が似ているんだ。俺と赤穂は血縁なんだろう?」
「これは私怨だから、関係ないって意味だったんだけど。血縁と言われたら、全く無関係ではないな。青桐は赤穂の双子の弟だって。名家の双子は、家督争いの火種になるから、片方は処分されるか、隠して育てられるか、らしいぞ。居場所は赤穂も知らなかったようだが…」
「ふん、血脈を残したかったか、影武者にでもするつもりだったか…そんなとこだろ?」
ちょっと拗ねた感じで、青桐が言った。
目にしたことはなくても、兄のこと、やっぱり気になるんだな?
血縁って不思議だよね。
紫輝も赤穂と会ったとき、なんだかビビッとしたのだから。
「赤穂は、裏工作できるやつじゃないから。影武者とかは、考えたことないと思うぞ。青桐が身代わりとして立てられるまで、存在を気にしていなかったようだし。どっかで元気に暮らしてれば良いなぁ、くらいに。考えていたんじゃね? こういうことを言うと『俺を無能呼ばわりする息子よ』とか言って、嫌味言われそうだけど」
「ふーん、赤穂は堺のこと、ぞんざいに扱っていなかったか? 人間扱いしないとか、戦の駒としか見ないとか?」
「そのようなことは、ありません」
青桐が紫輝にたずねたところで、黙って聞いていた堺が口をはさんだ。
それに、紫輝も、補足を加える。
「赤穂は将堂家の者だが、厳密にいえば従兄弟筋になり、家族として認めてもらえず孤立していた。そんなとこから、赤穂はずぶずぶの将堂ではないんだよ。赤穂と堺は、いわゆる幼馴染で。堺の家族背景も知っているから、堺を気遣っていた方だと思うけど。俺という龍鬼の息子もいるから、龍鬼には優しい男だぜ?」
青桐は、赤穂にも警戒心を持っていたようだ。
まぁ、金蓮をまず見てしまったのだから、将堂家の者は、みんなこんな感じと思うのも仕方がないことだ。
援護しておいてやったぞ、赤穂。
一方の青桐も、ホッとしていた。
同じ顔で、堺を罵倒などしていたら。堺の心証が悪くなるじゃないか。
だが、それはなさそうなので。よかったかな。
「でも、乱暴な口調だったから、堺は傷ついたことがあったかもね。青桐は気をつけて」
安堵させてからの、大爆発だ。
この、黒猫耳めっ。まじ、しめるぞ。
「紫輝、おまえ、すげぇな。尊敬するわ。鬼畜の弟に振り回されたあげく、愛してやるなんて。器が広いねぇ。赤穂の身代わりくらいで、クソジジイをなじっていた俺が、小さく思えるぜ」
これまでたどってきた経緯や、あれやこれやをすべてさらし、紫輝はなんだかぐったりした。
堺には以前、心をさらしていて、過去のことはほとんど、映像化というか、追体験、みたいな感じで伝わっているので。
天誠の描写は、堺の主観も付け加わり、かなり辛辣なものになっている。
堺、天誠がお嫌いですか?
とはいえ、話し終え、疲労困憊な紫輝に、堺は優しくお茶を出してくれる。ありがとう。
でも、まぁ。基本をおさえた上で、ここからが本題です。
「つまり、簡単に言うと。今、手裏基成やってる弟と、将堂の血脈である紫輝が結婚することで、将堂と手裏の統合を図り。終戦に持っていき、領地をひとつにまとめて国にすると。それは龍鬼や黒羽などという差別とは無縁の世界にしたいと。そういうことだな?」
まとめとして、青桐が理解した内容を、紫輝に確認してくる。
「あぁ。俺は…天誠とライラと、穏やかに、静かに暮らせたら、それでいいんだけど。戦をしている間は、将堂、手裏、どちらも強力な駒である龍鬼を手放さず、使い倒すだろ? 逃げても無駄だし。龍鬼である俺は、平穏を望めない。天誠はそういう世情から、俺を早く解放したいと思ってくれてる。だから、終戦させると言い。俺はそんな天誠に従っているんだよ」
青桐の問いに、紫輝が答え。ふたりは静かにうなずく。
「いいんじゃねぇ? 赤穂と入れ替わって、俺は堺と、長野にこもろうかと思っていたが。それは終戦しないと叶わないと言うのなら。紫輝が示す、その道が最善だ。堺を、龍鬼の呪縛からも将堂の呪縛からも解き放つには、それしかねぇような気もするしな。俺は紫輝に協力するぜ」
宣言する青桐を、堺は柔らかい笑顔で見守る。
わぁ? なんか、ラブラブ。
昨日は、それほどでもなかったような気がするのになぁ?
昨日、なにがあったのかなぁ?
つか、幸直と巴も、昨日なにかあったような気がするなぁ?
紫輝はちょっと蚊帳の外な感じで、拗ねた。
「ありがとう、青桐。そうは言っても、ガンガン裏工作かますとか、そういうことはないんだけど。今は情勢を見守っているところだ。やんわりとでも、龍鬼の地位を向上していけたらと思っている」
「生ぬるくねぇ? 俺は早く堺と結婚したい」
「俺だって、そうだよ。早く天誠との結婚を公表したいよ。たぶん…天誠も、そうだと思うから。それほど待たせないとは思うけど? つか。隠す必要がなくなったみたいなことを、さっき言っていたが。堺、昨日、なにがあったの? あと、堺は青桐をどうするの? また記憶消すか?」
そんなことしないのは、わかっているけど。
堺が、金蓮の命令を無視して、青桐につくのか?
まぁ、つくだろうけど。一応、聞いておこうかと思って。
あと、昨日なにがあったのか知りたいしっ。
「記憶を縛るのは、大技なので。使用すると、半年は使えないんです」
「…そうなのか?」
堺の言葉に、青桐がホッとしたような感じで聞く。
もうっ、そうじゃなくて。
「俺は、能力が使えたら、青桐の記憶を消すか? と聞いている。金蓮に凄まれても、青桐を選べるのか?」
「もちろんです。本当ならば、記憶を奪った私をなじって、手討ちにされても文句は言えません。でも青桐様は…私と過ごした時間を、忘れたくないと言ってくださって。私の命は、青桐様のものです。もしも金蓮様に、もう一度記憶を消せと言われても、私は従えない。そのときは…覚悟します」
堺の言葉は、金蓮に手討ちをされる覚悟、将堂の命令に背く覚悟、死を覚悟、という意味で。
紫輝は自分で聞いていて、ゾワリとした。
「させるかよ。堺の命は俺のものだろ。兄上に、好き勝手させねぇから」
低い声で、青桐は不穏な声を出す。
怖ぇ。
それに、堺も。すぐ命懸けるんだから。
「そうだよ。堺の命は、もう堺だけのものじゃないんだから。命で問題解決しようとしちゃ、駄目なんだからな。よく覚えておいて。堺が死んだら。青桐は世のすべてを恨んで、闇の底をさ迷い、苦しみ、嘆き悲しみ、世界など滅んでしまえと、自暴自棄に荒れ狂うだろう」
まんま、天誠だったら、という架空話だが。
紫輝は、見えるのだ。
紫輝が亡くなったあと、ひとり取り残された天誠の末路が。
だから、もうひとりにはできないし。己が先に死ぬこともできないと思っている。
でも、愛する人が亡くなったら、おおよそ、同じような感じになるだろうから。青桐もそうだろうと思うのだ。
紫輝の言葉に、堺は顔を青くして。唇を引き結んだ。
「おい、紫輝。あまり堺を怖がらせるなよ。彼が繊細なの、知ってるだろ?」
「あぁ。堺、今のはたとえ話だよ。だから、堺は命を投げ出す前に、まず青桐に相談するんだぞ? 青桐がなんとかする。な?」
青桐は堺の手を握り締め、力強くうなずいて、堺をはげました。
「ま、兄上につけ込まれないよう、俺は記憶喪失のフリを続行する。幸直たちは、そこらはおそらく聞いていなかっただろうから。ここでは基本、そのように振舞う」
先ほど、己の話を開示したとき。紫輝は己が、赤穂と金蓮の子供であることも話した。
以前、堺に心をさらしたときはまだ、自分自身、そのことを知らなかったから。
堺も、今日知って、驚いていた。
紫輝は赤穂の子供なので、充分に将堂の血脈であると言えるのだが。
金蓮が母だということで、血脈としても色濃いことが知らされ。終戦への道がより現実味を帯びるのだ。
青桐は金蓮が女性だと知らぬ態なので、今も兄上呼びを継続している。
でも、金蓮が紫輝の命を脅かしたのを聞いて、実の子が…いや、実の子だからこそ、龍鬼であるのは認めないという非情さ、そして金蓮が芯から龍鬼嫌いであることを知り。
警戒心を強めていた。
そうだ。それでなくても、金蓮は堺を目の敵にしているのだから。できれば会わせない方がいいよ。
それぐらい警戒していい。
「記憶と言えば。一日だけ失われていた私の記憶が戻ったのです」
思いがけないことを聞かされ、紫輝は堺に目を向けた。
「え? どうして? 自然に思い出したのか?」
「いえ。青桐様が記憶を無くしていなかったのは、私の術が失敗したからではなく、術を打ち破ったからなのです。その方法を教えてもらったら…私も記憶を縛られていたとわかって…」
「堺の能力を打ち破る方法って?」
龍鬼の能力が相殺される方法があるとしたら、末恐ろしいと思ったのだが。青桐は言う。
「精神を集中させて、額をグリグリ。気合で、糸をぶっちぎる」
「…いったい、どんだけ修業を重ねれば、気合でそこまでできるんだ?」
まさかの精神論だった。呆れてしまう。
「それで、堺の糸もぶっちぎったのか? それで、どう…だった?」
紫輝は、堺が、己が両親を殺したのではないか? 兄を殺したのではないか? と脅えているのを知っていた。
絶対に、堺のような繊細な人が、両親を殺したりしないと知っているし。
藤王が生きているのも、知っているから。
それに堺が、ここでこうして自分から言い出したことでもあるので。
ひどい話ではないと思うのだが。
紫輝はまだ、あの事件の真相は知らないので。恐る恐るたずねた。
「熱発していた私を、両親が殺そうとして。それを、兄がかばってくれたようです。でも、両親を殺したのは、手裏の龍鬼でした。私が見たことのない、年配の龍鬼です。でも、まだわからないことの方が多くて。兄は、私がその龍鬼に剣を向けると、彼をかばって。私を置いて、彼について行ってしまった。私があの日の記憶を失っていたのは、私の能力を模倣した兄が、記憶を縛ったからだったのです」
堺は神妙な顔で、話を続けていく。
「龍鬼の特異能力は、他者には真似できないものだと思うのですが。兄は、できた。兄は、とても優れた龍鬼でしたから、できることなのかもしれませんが。それも謎のひとつです」
紫輝は、眉根を寄せて、なんとも気まずそうな顔で、堺を見る。
これはもう、堺に隠しておいてはいけないやつだな。
どちらにしろ、近々、ふたりを会わせる方向で調整するつもりだったのだ。良い機会だと思おう。
決心して、紫輝は堺に、藤王の話を切り出した。
「堺。さっき話した、大きな手に掴まれて、三百年前から俺が連れ戻されたってやつだが。あの手は、藤王だ」
「えっ?」
堺も青桐も、紫輝の言葉に息をのむ。
「金蓮に襲われた五歳の俺は、龍鬼の能力を使って三百年前に逃れたのだが。その場に居合わせた藤王が、俺の能力を模倣して、時空の穴に手を突っ込んだ。藤王が掴んだのは、十八歳の俺だったが…」
「兄さんは生きているのですか? でも、なんで兄さんが紫輝を? その場に居合わせるなんて、そんな偶然が?」
「月光さんは、龍鬼の子供を育てるために、山で隠れて生活をしていたのだが。天誠の話によると、初めは月光さんを、手裏に引き入れるために訪問したということらしい。ま、はっきり言っちゃうと。手裏軍の龍鬼である不破が、藤王なんだ」
将堂と敵対している、手裏の龍鬼。不破の名前は、昔から轟いているので。
そんなに近いところに兄がいたことに、堺は驚きを隠せなかった。
「しかし、不破の名前は、私が子供のときから、時々話題にのぼる名前でしたよ? 兄とは別人です」
「天誠に聞いた限りなんだけど。今の不破…藤王は、先代の不破から地位や屋敷を譲渡されたということだ。その代わりに、虐げられた龍鬼や子供を救えという使命を受け継いだ。だから、殺されそうになっていた俺を助けようとしたみたいなんだ。たぶん、堺が見た手裏の龍鬼が、先代の不破だったんじゃないかな? その直後、彼と入れ替わった…」
一口、お茶を飲んで、紫輝は息をつき。
さらに慎重に話を進めていった。
「天誠も、ひとりで、この世界に堕とされて。龍鬼として、つらい目にあっていたのだが。それを藤王に助けられたって。天誠と藤王は、それから今までの八年間、家族的な付き合いをしてきた。天誠は『兄さんは紫輝だけ』だなんて、頑なだけど。たぶん、兄的な意味で。互いに、頼り、力を合わせて、生きてきたのだと思う。そんな天誠が、言うには…藤王の特異能力は、一度限り、他の龍鬼の能力を真似できる、というもの。だから、藤王は堺の記憶を縛り、俺も連れ戻すことができたんだ」
堺は目を見開いて、本当に信じられない、というような顔をしている。
そんな呆然自失の堺に変わって、青桐が紫輝にたずねた。
「おい、紫輝。おまえ、いつから知っていたんだよ? その…藤王が、不破だということを」
「実は…天誠と合流し、彼に手裏内部の話を聞くうちに、薄々だけど、気づいてはいた。でも、確証が持てたのは、半月前。赤穂が瀕死の重傷を負ったときだ」
そこで紫輝は、あの顛末も説明した。
ある日、藤王が金蓮を呼び出した。金蓮は藤王に強い執着を持っていて、のこのこと会いに行く。
しかし藤王は、金蓮暗殺を目論んでいた。
だが、失敗。
矢が、金蓮をかばった赤穂に刺さり。赤穂は生死をさ迷うことになる。
しかし金蓮は、藤王を連れ戻せなかった失態を隠すため、赤穂を見殺しにし。顛末を知る月光のことも、軍から排除しようとした。
駆けつけた紫輝が、能力で赤穂を癒して、赤穂は一命を取り留め。
今は月光ともども、ある場所で静かに暮らしている…ということを。
「手裏側から、藤王が出てきたことで。藤王が不破であるということが、明らかになり。天誠もそれを認めた。だから、藤王が生きていることをちゃんと知ったのは、マジでつい最近なんだ。憶測で言えないから、結果、黙っているような感じになって、ごめんな? 堺」
紫輝は謝ったが。堺は気持ちが晴れないような、眉間にモヤモヤを溜め込んでいるような顔つきをした。
わかるよ。自分だって、天誠がみつかる前は、どんな片鱗でもみつけたいって気持ちだったから。
でも、藤王は。天誠が最近まで、ものすごく危険視している人物だったし。
紫輝も、もしかしたら藤王が両親を殺したのではないかと思っていて。そうしたら堺が傷つくんじゃないかって、思ってしまって。
言い訳かもしれないけれど、紫輝にも堺に簡単に憶測を打ち明けられない事情があったのだ。
でも、ごめんよ、堺。
「この前、兄上が、赤穂を殺したわけじゃないと言っていたが?」
「自らの手で、始末をつけたわけじゃない、という意味だ。でも俺は、赤穂に満足な治療をさせず、見殺しにして、青桐を立てて、失態をもみ消そうとした金蓮を。許さねぇよ。だが…それは青桐には関係ない」
「関係はあるだろうが? これほど容姿が似ているんだ。俺と赤穂は血縁なんだろう?」
「これは私怨だから、関係ないって意味だったんだけど。血縁と言われたら、全く無関係ではないな。青桐は赤穂の双子の弟だって。名家の双子は、家督争いの火種になるから、片方は処分されるか、隠して育てられるか、らしいぞ。居場所は赤穂も知らなかったようだが…」
「ふん、血脈を残したかったか、影武者にでもするつもりだったか…そんなとこだろ?」
ちょっと拗ねた感じで、青桐が言った。
目にしたことはなくても、兄のこと、やっぱり気になるんだな?
血縁って不思議だよね。
紫輝も赤穂と会ったとき、なんだかビビッとしたのだから。
「赤穂は、裏工作できるやつじゃないから。影武者とかは、考えたことないと思うぞ。青桐が身代わりとして立てられるまで、存在を気にしていなかったようだし。どっかで元気に暮らしてれば良いなぁ、くらいに。考えていたんじゃね? こういうことを言うと『俺を無能呼ばわりする息子よ』とか言って、嫌味言われそうだけど」
「ふーん、赤穂は堺のこと、ぞんざいに扱っていなかったか? 人間扱いしないとか、戦の駒としか見ないとか?」
「そのようなことは、ありません」
青桐が紫輝にたずねたところで、黙って聞いていた堺が口をはさんだ。
それに、紫輝も、補足を加える。
「赤穂は将堂家の者だが、厳密にいえば従兄弟筋になり、家族として認めてもらえず孤立していた。そんなとこから、赤穂はずぶずぶの将堂ではないんだよ。赤穂と堺は、いわゆる幼馴染で。堺の家族背景も知っているから、堺を気遣っていた方だと思うけど。俺という龍鬼の息子もいるから、龍鬼には優しい男だぜ?」
青桐は、赤穂にも警戒心を持っていたようだ。
まぁ、金蓮をまず見てしまったのだから、将堂家の者は、みんなこんな感じと思うのも仕方がないことだ。
援護しておいてやったぞ、赤穂。
一方の青桐も、ホッとしていた。
同じ顔で、堺を罵倒などしていたら。堺の心証が悪くなるじゃないか。
だが、それはなさそうなので。よかったかな。
「でも、乱暴な口調だったから、堺は傷ついたことがあったかもね。青桐は気をつけて」
安堵させてからの、大爆発だ。
この、黒猫耳めっ。まじ、しめるぞ。
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弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

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一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
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小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
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