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58 安曇眞仲、最後の日。
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◆安曇眞仲、最後の日。
十二月三十一日、いや、もう元日になったのか。
ライラを通して、紫輝と年越しカウントダウンを終えて通信を切った天誠は、自室の寝台の上でこの上なく楽しそうに笑った。
あぁ、兄さん。カウントダウンではしゃいじゃって、本当に可愛い。
天誠が年越しを意識したのは、八年ぶりのことだ。紫輝がそばにいなければ、大晦日も正月もない。
血脈でもないのに、我は手裏一族の者だと声高に主張するジジイどもと、美味くもない酒を飲むばかりで。
めでたくもない。
明日はその会合に出なければならず、天誠は京都まで戻っているのだが。
ライラの爪の画面越しに愛らしい兄の顔を見てしまえば、すぐにもあの村に帰りたくなる。
つか、なんでジジイの相手をしなければならないのか。面倒くさい。
それもこれも、手裏家の黒の大翼を持っている者が、もう己しかいないからだ。
一族だとわめくジジイも、カラス羽だしな。
紫輝が言うには本物が将堂にいるらしいが、翼は折れているようで。
やはり手裏家の象徴を手にしているのは、己だけのようだった。
面倒くさい。早く紫輝と名実ともに伴侶となって、この地を平定してしまいたい。
そして心置きなく、紫輝といちゃいちゃらぶらぶするのだ。
そうして天誠は目を閉じる。良い夢が見られそうだった。
★★★★★
京都、手裏家本邸の大広間には。黒の軍服、黒の翼の、手裏家一族と称するジジイどもと、軍の上官が整然と居並んで正座していた。
まるで任侠映画の襲名披露の場面のようだ。任侠映画、見たことないけど。
上座にはマントをまとわぬ天誠、手裏基成バージョン。
その後ろに、黒マントがふたり控えている。
天誠が新年の挨拶を述べ、酒席につき。戦場での功績者数人に声をかけたら退室、というのがいつものパターンだった。
「諸君、つつがなく新年を迎えられ、我は嬉しく思う。今年は手裏軍が栄華を誇る特別な年にするつもりだ。全土の平定を目指す所存。忠誠を持って我に従え」
手裏軍の重鎮たちはオオッと感嘆の息を漏らし、忠義の証に深く頭を垂れた。
これで天誠の仕事は半ば終えたも同然で、天誠はニヤリと口角をあげたのだったが。
まさに、ハプニング。アクシデントが起きた。
「我は、手裏銀杏。手裏家長子である」
黒マントを脱いだ銀杏が、天誠の隣に並び、声をあげた。
は? この女、なにをとち狂ったんだ?
「私は基成様の影となり、何年も手裏家に尽力してきた。その功績を認め、我を手裏一族として迎えてもらいたい。そして基成様と婚姻を結び、手裏家の更なる結束の一助となる所存だ」
その爆弾発言に、重鎮たちはあからさまにうろたえた。
基成の前でざわざわと囁き合っている。
かくいう天誠も、こんな話はなにも聞いていないし。
つか、なに勝手にぶちかましてくれてんのかな?
「銀杏様は、先代ご一家を乱心により惨殺したという話では?」
「それは、我ではない。我は一族の前に姿を出してはいなかったので、実績を積んでから姿を現すことになっていたのだ」
「では、誰が先代を惨殺したのですか?」
「…それは」
重鎮たちの質問に答えられなくなり、銀杏は口ごもる。
え、考えてないのかよ。
その銀杏の様子を見て、さらに重鎮どもがざわつくが。
今度は不破が黒マントを外して、声を出した。
「我は天龍、不破だ。先代一家を惨殺したのは、賢龍、安曇眞仲である。彼はすでに亡き者となっているのだが、しかし龍鬼がひとりになってしまうと、将堂軍につけ入られる恐れがあったため、基成様と銀杏様と我が黒マントをまとい、安曇不在を隠していたのだ」
機転を利かせた不破の言い訳は、なかなかそれっぽい。それに乗るしかない。
天誠は怒りに奥歯を噛みしめつつも、地を這うような低い声でその場を一喝した。
「静まれ。我の言葉に耳を傾けよ」
天誠の言葉に、その場に集まるすべての者が深く叩頭した。
辺りがしんと静まり返る。
「みな、突然のことに動揺したことと思うが。不破の話は本当だ。家族を亡き者にしたのは、安曇である」
そして再び不穏な空気が広間に流れたが、天誠が片手をあげてそれを静める。
「しかし銀杏の話を、私は受け入れない。姉上はこのとおり養子の身で、手裏の血筋ではない。我は漆黒の手裏の翼を守るつもりだ」
銀杏の翼は赤茶色の大翼だ。それは手裏の色ではない。
手裏の者は、その翼の色が黒であったことで不遇にあって来たのだ。
黒い者は、黒でない者を容易に受け入れない。
銀杏が顔を出すのは時期尚早だった。
紫輝との婚姻発表のタイミングをうかがうのも、手裏の、頑なな黒以外、手裏以外を認めないという気持ちを和らげてからだと、画策したからなのに。
ったく、余計な真似をしやがって。
「それは、私は…」
天誠は銀杏を睨んで、言葉を止める。
将堂の血を持つとでも言うつもりか?
どれだけ浅はかをさらすつもりだ? 愚かなやつめ。
「基成の言葉をさえぎるな、無礼者。姉でなければ。手裏の末席にも置けぬぞ」
「で、でも。私は大きな実績を成した。将堂赤穂を殺したのだ」
銀杏の言葉に軍の上官たちは色めき立ち、それは好機、今すぐ出陣を、と声をあげた。
「はやるな。赤穂は死んでなどいない」
天誠の訂正に。銀杏も幹部も、さらには不破まで驚いた顔をしていた。
なんだ、顛末まで調べていないのか?
「そんなはずはない。赤穂の胸に矢は刺さった。生きていられるわけがない」
ヒステリックにわめく銀杏を、天誠は見向きもせず。
ジジイどもに説明していく。
「我の情報網では、赤穂は命を取り留めたと聞いている。しかし凶事続きゆえに、名を青桐と改めたようだ。将堂軍内部では、すでに布告された、機密でもなんでもない情報だ。詳細も知らずに攻め入ったら一網打尽になる。浅慮は控えよ」
目の前の重鎮たちは、恐縮して身を震わせる。
全く、年明け早々面倒くさいことばかりで、嫌になる。
「今日は輝かしい新年の始まりだ。戦のことはしばし忘れ。みな、酒宴を楽しんでいくがいい」
少し穏やかな声を出して、フォローすると。天誠は大広間を後にした。
その後ろに、銀杏と不破がついてくる。
天誠は空き部屋に入り、亜義に部屋周囲の人払いを徹底させて彼らに向き直った。
「不破、おまえがついていながらなんだ、この考えなしの行き当たりばったりなザマは。赤穂暗殺未遂の件も含め、なんでこんな馬鹿な真似をしたのか、説明してもらおうか?」
元より、この話は聞くつもりだったのだが。
もう。大勢の前で前触れもなくぶちまけるなど、あり得ない。
天誠は頭を抱えたくなった。紫輝なら、わからないことはしっかり聞いてくるし、無茶なアドリブは絶対にしないし。失敗しても、とにかく可愛いが。
頭の悪い、可愛くない仲間を抱えることほど、頭の痛い話はない。
天誠の剣幕に震えあがりながらも、銀杏が言い訳を口にし始めた。
「物心ついたときから、私は座敷牢に監禁されていたのだ。ただ将堂の血が流れているという理由だけで。私は、将堂を根絶やしにしたい。積年の恨みを晴らしたいのだ。安曇だって、龍鬼として長く虐げられてきたはず。私の気持ちがわかるだろう?」
将堂憎しの瞳は、赤く燃えるが。天誠には甘えるような媚びがにじむ。
その銀杏の目が、天誠は気持ちが悪かった。
勿論、その銀杏の主張を天誠が承諾できるわけもない。
それは将堂の血筋である、紫輝の命を脅かす宣言だ。
「私が基成と結婚すれば、手裏と将堂の土地をすべて我らの手にできるではないか。基成は私と結婚するべきなのだ」
考えナシなどではない、良い案を持っているのだと銀杏は鼻高々だ。
まぁ、確かに。己も、その道をたどろうとしているが。
それは、頭の悪い銀杏とではなく。求心力のある紫輝だからこそ、見える道である。
たかだか数十人の重鎮どもに穴を突かれてオロオロする、この女では。なしえない道なのだ。
この考えまで到達できたということは、それなりに頭は使ったのだろうが。
そこに基成と結婚したい願望が見えるから、それありきの短絡思考なのだろうと、天誠は思う。
そういえば。金蓮も、藤王への恋慕で支離滅裂な女だった。
姉妹共々、短絡思考。恋愛脳。救えないな。
「今のおまえが将堂に出向いて、一族を掌握できるのか? 手裏一族にも、先ほどの様子では受け入れてもらえないぞ。おまえには、人心を掌握する力が圧倒的に足りないのだ。夢ばかり見ず、現実を見ろ。おまえは大勢の幹部の前で女の身をさらした。もう戦場には出せぬ。これからの身の振り方を考えたらどうだ?」
「私を見捨てるのか? いずれ手裏の総帥に取り立てる約束ではないか」
「すべておまえが台無しにしたのだ。手裏も将堂も忘れ、どこかで静かに暮らすがいい」
銀杏は声さえ出さなかったが、大粒の涙をこぼした。
泣けば許されると思うなよ、と天誠は冷たい目で見やるが。
不破が、さすがにとりなした。
「安曇、そこまで言わずとも…」
「そうだ、この女のせいで俺は安曇眞仲を失ったのだ」
安曇と呼ばれ、怒りが再燃した。
超絶不機嫌な顔で、天誠は言うが。
銀杏は勝機を見たとばかりに口を出す。
「安曇は、もう基成ではないか。隠れ蓑などいらぬ。手裏基成として堂々と総帥になればいい。私はその隣にいられるなら、それでいい。総帥に取り立てられなくてもいい。だから…」
「だから結婚しろと? はっ、おまえのような頭の悪い女と結婚してなんの利益があるのか? おまえを嫁にしたところで将堂が手に入るとでも? ふざけんな。地を平定するってのは、そんな簡単なことじゃねぇんだよ。そんなこともわからないで、色にとち狂ってんじゃねぇ」
銀杏はひくりと嗚咽をあげ、さすがに部屋を泣きながら出て行った。
それでも天誠の怒りはおさまらない。
「不破っ、おまえもなんで銀杏に手を貸した? いつも冷静なおまえらしくもない」
怒気を放つ天誠にひるむこともなく、不破はクスリと笑って肩をすくめた。
「私が銀杏に手を貸したことを知っているということは。私の正体も知っているということだな? 全く、おまえには隠し事ができなくて困るよ」
不破の今の姿は、手裏の黒い詰め襟軍服に、黒く透き通った長い髪。
だが赤穂を襲ったとき、彼は元の色である白髪だった。
龍鬼の能力で、視覚を歪ませ、黒に見せていたのか。
天誠がまばたきひとつしたときには、彼は白い髪になっていた。
そうすると、瞳の赤がすごく強調される。
「時雨、藤王だな」
内心、天誠は驚いていたが。魔王様モードで乗り切った。
「いつから知っていた? 私が藤王だと」
「出会って、半年くらいか。本名を聞いたら、それは言えないとおまえは言った。馬鹿真面目にな。そこは偽名を名乗る場面だったんだよ。名を言えば正体がわかる龍鬼など、行方不明の藤王しかいないだろう」
「そんな昔からか。全く、おまえの賢さには脱帽だ。そして知っていて、なにも言わずにいてくれたおまえに、私は感謝するしかないのだろうな」
龍鬼として共闘し、すべての悪事をともに遂行し、兄弟のように、家族のように、過ごした相手だ。
紫輝には会わせられない、恐ろしい相手だが。
天誠も不破のことは憎からず思っている。
だからこそ、今回の暴挙が信じられないのだ。
「私は、銀杏に加勢したわけではないんだ。先ほどの件に関して、私は全く知らなかったので。銀杏を庇うことすらできぬ。安曇が怒るのももっともだしな」
フと言葉を切って、不破は天誠をみつめる。
「赤穂が死んでいない、というのは本当か? 銀杏の矢は確かに正中をとらえていた」
「女の力で、致命傷にはならなかったようだ。ある場所でピンピンしている」
実際には、致命傷だった。
ただ、紫輝が治したのだが。
そして隠密情報ではなく、この目で。天誠は赤穂がウザいくらい元気なところを見ている。
赤穂に成り代わった青桐も、あるところで元気にしているので、嘘ではない。
「私は、赤穂を殺すつもりはなかったんだが、彼が金蓮をかばって…私はただ金蓮を暗殺したかっただけなのに。藤王の名で呼び出したらのこのこと姿を現したから、実行に移しただけだ」
「…なぜ、今? おまえはずっと、正攻法で、正面から将堂に挑んでいた。しかし今季は、随分姑息な手も使ったようだな? なりふり構わず、というふうに見えるが?」
そのせいで、ちょっと紫輝がピンチになってヒヤッとしたぞ。
たくさん泣いたしな。
「呪縛が外れたのだ。もう、我慢できない。私は私の欲しいものを手に入れる。その資格ができたのだ。それと、私の寿命もあとわずかなような気がして…」
不破は手甲をつけている右手を、目の前に出した。
誰の目にも、ただの手に見えるだろうが。
紫輝の加護を持つ天誠の目には、その手が紫色の炎に焼かれているように見える。
「痛むのか?」
「痛いような、息苦しいような。今まではあまり気にならなかったのだが、ここ半年ばかり不快感があってな」
半年前というと、紫輝がこの世界に降り立ったくらいの頃だ。
紫輝の能力に共鳴しているのかもしれない。
「不破、おまえはなにが我慢できない? なにが欲しいというのだ?」
「安曇は、兄を慕っていたな。だから私の気持ちをわかってほしいのだが…私は、弟を溺愛している。龍鬼を虐げるこの世界から弟を救い出し、伴侶とするのだ。そして弟を貶めたすべての者を破壊したい」
天誠は、不破の気持ちがわからないでもなかった。
どうにもならなかったら、天誠も紫輝を腕に抱いたまま、世界のすべてを破壊する道を歩いたかもしれない。
でも今は、紫輝に愛し愛されているし。ふたりで生きる道を歩いている途中だから。賛同はできないのだが。
「俺と兄は、血のつながりがないのだが。実の兄弟でそういう気になるものなのか?」
「近いからこそ、心が通じ合っていると感じるのだ。それに、我らは龍鬼だ。同性で睦み合っても子はできぬし。むしろ他人は喜ぶのではないか? 龍鬼の目が、己を見初め襲われる、そんなことを危惧している輩はな。誰であろうと、私は堺以外に食指は動かぬが。私は堺を…弟が子供の頃から、己の嫁にすると決めていた。清らかで、優しい子。堺こそが私の伴侶。両親は最後まで、認めはしなかったがな」
「なるほど。では不破は堺を手にして、龍鬼を虐げるこの世を壊す。それが望みなのだな?」
うーん、堺を人身御供にしたら、紫輝は怒っちゃいそうだな。
自分はまだ堺には会っていない。戦場でもぶつからなかった。
紫輝に言わせると、天誠パート2だという。
なに、それ。
ムムッとなったが。
堺は紫輝にとって、弟カテゴリーらしく。守ってあげたいんだと。
うううぅーん。まぁ、それならいいか。
とにかく、紫輝は堺を弟的に溺愛している。
あれ、不破と同じなのか?
そんなに庇護欲をくすぐる男なのか?
つか、紫輝より年上じゃね?
まぁ年上の俺も、弟扱いできる紫輝だから。年齢とか考えていないんだろうけど。
どんな男なのか、全く想像がつかないな。
堺を不破の手に渡すには、堺の意志が必要だ。そうしないと紫輝が激怒する。
堺が自分で不破の元へ行くと言うなら、紫輝も納得するだろうが。
どうなることやら。
でも龍鬼を虐げる世を壊すことは、できそう。
うまく不破を取り込めたらいいのだが、それは己の腕の見せ所なのだろうな。
「ともかく、このようにまとまりがないと動きが取れないぞ、不破」
「そうだな。計画を練り直そう。私も、少し頭を冷やす。単独行動をとってすまなかった、安曇…いや、もう基成様だな」
不破は能力で髪色を黒く戻すと、黒マントを羽織って部屋を出て行った。
部屋にひとりきりになった天誠は。当然、キレる。
ったく、余計なことをしやがって。(二回目)
己になにも言わず、心の赴くままに行動に移した不破もだが。
一番腹立たしいのは。銀杏だった。
簡単に、隠れ蓑などいらぬと言うが。安曇眞仲はただの隠れ蓑ではない。
もうひとりの己だった。
八年もの長きに渡って、この地で苦難と戦ってきた、戦友のようなもの。
紫輝が愛した、包容力があって、たくましく、すべてを委ねられる、絶対的な安寧をもたらす者。
しかし今回の件で、この世界の安曇眞仲は死んでしまった。
己が殺したので、手裏家惨殺の汚名を着せられて、というわけではないが。
とにかく。安曇の名前で活動はできないし。安曇の名前すら、もう口に出すことはできないのだ。
赤穂の血脈図に載せた、紫輝の隣に並ぶ名前は手裏基成だった。
将堂赤穂の息子である将堂紫輝が、手裏基成と結婚した、というふうに書かれている。
それは赤穂が、紫輝を息子であると正式に認めた証であり。紫輝と天誠の切り札でもある。
ここで間宮天誠や安曇眞仲の名を載せなかったのは、いずれ全土を平定するときに、将堂と手裏の統合がなされたことを世に知らしめるためだった。
なので紫輝は、新婚早々未亡人にはならなくて済んだが。
銀杏は、己の中の安曇眞仲を殺した。絶対に許さない。
それに今回の騒動でどれだけ計画に支障が出るのか。さすがに読めない天誠だった。
十二月三十一日、いや、もう元日になったのか。
ライラを通して、紫輝と年越しカウントダウンを終えて通信を切った天誠は、自室の寝台の上でこの上なく楽しそうに笑った。
あぁ、兄さん。カウントダウンではしゃいじゃって、本当に可愛い。
天誠が年越しを意識したのは、八年ぶりのことだ。紫輝がそばにいなければ、大晦日も正月もない。
血脈でもないのに、我は手裏一族の者だと声高に主張するジジイどもと、美味くもない酒を飲むばかりで。
めでたくもない。
明日はその会合に出なければならず、天誠は京都まで戻っているのだが。
ライラの爪の画面越しに愛らしい兄の顔を見てしまえば、すぐにもあの村に帰りたくなる。
つか、なんでジジイの相手をしなければならないのか。面倒くさい。
それもこれも、手裏家の黒の大翼を持っている者が、もう己しかいないからだ。
一族だとわめくジジイも、カラス羽だしな。
紫輝が言うには本物が将堂にいるらしいが、翼は折れているようで。
やはり手裏家の象徴を手にしているのは、己だけのようだった。
面倒くさい。早く紫輝と名実ともに伴侶となって、この地を平定してしまいたい。
そして心置きなく、紫輝といちゃいちゃらぶらぶするのだ。
そうして天誠は目を閉じる。良い夢が見られそうだった。
★★★★★
京都、手裏家本邸の大広間には。黒の軍服、黒の翼の、手裏家一族と称するジジイどもと、軍の上官が整然と居並んで正座していた。
まるで任侠映画の襲名披露の場面のようだ。任侠映画、見たことないけど。
上座にはマントをまとわぬ天誠、手裏基成バージョン。
その後ろに、黒マントがふたり控えている。
天誠が新年の挨拶を述べ、酒席につき。戦場での功績者数人に声をかけたら退室、というのがいつものパターンだった。
「諸君、つつがなく新年を迎えられ、我は嬉しく思う。今年は手裏軍が栄華を誇る特別な年にするつもりだ。全土の平定を目指す所存。忠誠を持って我に従え」
手裏軍の重鎮たちはオオッと感嘆の息を漏らし、忠義の証に深く頭を垂れた。
これで天誠の仕事は半ば終えたも同然で、天誠はニヤリと口角をあげたのだったが。
まさに、ハプニング。アクシデントが起きた。
「我は、手裏銀杏。手裏家長子である」
黒マントを脱いだ銀杏が、天誠の隣に並び、声をあげた。
は? この女、なにをとち狂ったんだ?
「私は基成様の影となり、何年も手裏家に尽力してきた。その功績を認め、我を手裏一族として迎えてもらいたい。そして基成様と婚姻を結び、手裏家の更なる結束の一助となる所存だ」
その爆弾発言に、重鎮たちはあからさまにうろたえた。
基成の前でざわざわと囁き合っている。
かくいう天誠も、こんな話はなにも聞いていないし。
つか、なに勝手にぶちかましてくれてんのかな?
「銀杏様は、先代ご一家を乱心により惨殺したという話では?」
「それは、我ではない。我は一族の前に姿を出してはいなかったので、実績を積んでから姿を現すことになっていたのだ」
「では、誰が先代を惨殺したのですか?」
「…それは」
重鎮たちの質問に答えられなくなり、銀杏は口ごもる。
え、考えてないのかよ。
その銀杏の様子を見て、さらに重鎮どもがざわつくが。
今度は不破が黒マントを外して、声を出した。
「我は天龍、不破だ。先代一家を惨殺したのは、賢龍、安曇眞仲である。彼はすでに亡き者となっているのだが、しかし龍鬼がひとりになってしまうと、将堂軍につけ入られる恐れがあったため、基成様と銀杏様と我が黒マントをまとい、安曇不在を隠していたのだ」
機転を利かせた不破の言い訳は、なかなかそれっぽい。それに乗るしかない。
天誠は怒りに奥歯を噛みしめつつも、地を這うような低い声でその場を一喝した。
「静まれ。我の言葉に耳を傾けよ」
天誠の言葉に、その場に集まるすべての者が深く叩頭した。
辺りがしんと静まり返る。
「みな、突然のことに動揺したことと思うが。不破の話は本当だ。家族を亡き者にしたのは、安曇である」
そして再び不穏な空気が広間に流れたが、天誠が片手をあげてそれを静める。
「しかし銀杏の話を、私は受け入れない。姉上はこのとおり養子の身で、手裏の血筋ではない。我は漆黒の手裏の翼を守るつもりだ」
銀杏の翼は赤茶色の大翼だ。それは手裏の色ではない。
手裏の者は、その翼の色が黒であったことで不遇にあって来たのだ。
黒い者は、黒でない者を容易に受け入れない。
銀杏が顔を出すのは時期尚早だった。
紫輝との婚姻発表のタイミングをうかがうのも、手裏の、頑なな黒以外、手裏以外を認めないという気持ちを和らげてからだと、画策したからなのに。
ったく、余計な真似をしやがって。
「それは、私は…」
天誠は銀杏を睨んで、言葉を止める。
将堂の血を持つとでも言うつもりか?
どれだけ浅はかをさらすつもりだ? 愚かなやつめ。
「基成の言葉をさえぎるな、無礼者。姉でなければ。手裏の末席にも置けぬぞ」
「で、でも。私は大きな実績を成した。将堂赤穂を殺したのだ」
銀杏の言葉に軍の上官たちは色めき立ち、それは好機、今すぐ出陣を、と声をあげた。
「はやるな。赤穂は死んでなどいない」
天誠の訂正に。銀杏も幹部も、さらには不破まで驚いた顔をしていた。
なんだ、顛末まで調べていないのか?
「そんなはずはない。赤穂の胸に矢は刺さった。生きていられるわけがない」
ヒステリックにわめく銀杏を、天誠は見向きもせず。
ジジイどもに説明していく。
「我の情報網では、赤穂は命を取り留めたと聞いている。しかし凶事続きゆえに、名を青桐と改めたようだ。将堂軍内部では、すでに布告された、機密でもなんでもない情報だ。詳細も知らずに攻め入ったら一網打尽になる。浅慮は控えよ」
目の前の重鎮たちは、恐縮して身を震わせる。
全く、年明け早々面倒くさいことばかりで、嫌になる。
「今日は輝かしい新年の始まりだ。戦のことはしばし忘れ。みな、酒宴を楽しんでいくがいい」
少し穏やかな声を出して、フォローすると。天誠は大広間を後にした。
その後ろに、銀杏と不破がついてくる。
天誠は空き部屋に入り、亜義に部屋周囲の人払いを徹底させて彼らに向き直った。
「不破、おまえがついていながらなんだ、この考えなしの行き当たりばったりなザマは。赤穂暗殺未遂の件も含め、なんでこんな馬鹿な真似をしたのか、説明してもらおうか?」
元より、この話は聞くつもりだったのだが。
もう。大勢の前で前触れもなくぶちまけるなど、あり得ない。
天誠は頭を抱えたくなった。紫輝なら、わからないことはしっかり聞いてくるし、無茶なアドリブは絶対にしないし。失敗しても、とにかく可愛いが。
頭の悪い、可愛くない仲間を抱えることほど、頭の痛い話はない。
天誠の剣幕に震えあがりながらも、銀杏が言い訳を口にし始めた。
「物心ついたときから、私は座敷牢に監禁されていたのだ。ただ将堂の血が流れているという理由だけで。私は、将堂を根絶やしにしたい。積年の恨みを晴らしたいのだ。安曇だって、龍鬼として長く虐げられてきたはず。私の気持ちがわかるだろう?」
将堂憎しの瞳は、赤く燃えるが。天誠には甘えるような媚びがにじむ。
その銀杏の目が、天誠は気持ちが悪かった。
勿論、その銀杏の主張を天誠が承諾できるわけもない。
それは将堂の血筋である、紫輝の命を脅かす宣言だ。
「私が基成と結婚すれば、手裏と将堂の土地をすべて我らの手にできるではないか。基成は私と結婚するべきなのだ」
考えナシなどではない、良い案を持っているのだと銀杏は鼻高々だ。
まぁ、確かに。己も、その道をたどろうとしているが。
それは、頭の悪い銀杏とではなく。求心力のある紫輝だからこそ、見える道である。
たかだか数十人の重鎮どもに穴を突かれてオロオロする、この女では。なしえない道なのだ。
この考えまで到達できたということは、それなりに頭は使ったのだろうが。
そこに基成と結婚したい願望が見えるから、それありきの短絡思考なのだろうと、天誠は思う。
そういえば。金蓮も、藤王への恋慕で支離滅裂な女だった。
姉妹共々、短絡思考。恋愛脳。救えないな。
「今のおまえが将堂に出向いて、一族を掌握できるのか? 手裏一族にも、先ほどの様子では受け入れてもらえないぞ。おまえには、人心を掌握する力が圧倒的に足りないのだ。夢ばかり見ず、現実を見ろ。おまえは大勢の幹部の前で女の身をさらした。もう戦場には出せぬ。これからの身の振り方を考えたらどうだ?」
「私を見捨てるのか? いずれ手裏の総帥に取り立てる約束ではないか」
「すべておまえが台無しにしたのだ。手裏も将堂も忘れ、どこかで静かに暮らすがいい」
銀杏は声さえ出さなかったが、大粒の涙をこぼした。
泣けば許されると思うなよ、と天誠は冷たい目で見やるが。
不破が、さすがにとりなした。
「安曇、そこまで言わずとも…」
「そうだ、この女のせいで俺は安曇眞仲を失ったのだ」
安曇と呼ばれ、怒りが再燃した。
超絶不機嫌な顔で、天誠は言うが。
銀杏は勝機を見たとばかりに口を出す。
「安曇は、もう基成ではないか。隠れ蓑などいらぬ。手裏基成として堂々と総帥になればいい。私はその隣にいられるなら、それでいい。総帥に取り立てられなくてもいい。だから…」
「だから結婚しろと? はっ、おまえのような頭の悪い女と結婚してなんの利益があるのか? おまえを嫁にしたところで将堂が手に入るとでも? ふざけんな。地を平定するってのは、そんな簡単なことじゃねぇんだよ。そんなこともわからないで、色にとち狂ってんじゃねぇ」
銀杏はひくりと嗚咽をあげ、さすがに部屋を泣きながら出て行った。
それでも天誠の怒りはおさまらない。
「不破っ、おまえもなんで銀杏に手を貸した? いつも冷静なおまえらしくもない」
怒気を放つ天誠にひるむこともなく、不破はクスリと笑って肩をすくめた。
「私が銀杏に手を貸したことを知っているということは。私の正体も知っているということだな? 全く、おまえには隠し事ができなくて困るよ」
不破の今の姿は、手裏の黒い詰め襟軍服に、黒く透き通った長い髪。
だが赤穂を襲ったとき、彼は元の色である白髪だった。
龍鬼の能力で、視覚を歪ませ、黒に見せていたのか。
天誠がまばたきひとつしたときには、彼は白い髪になっていた。
そうすると、瞳の赤がすごく強調される。
「時雨、藤王だな」
内心、天誠は驚いていたが。魔王様モードで乗り切った。
「いつから知っていた? 私が藤王だと」
「出会って、半年くらいか。本名を聞いたら、それは言えないとおまえは言った。馬鹿真面目にな。そこは偽名を名乗る場面だったんだよ。名を言えば正体がわかる龍鬼など、行方不明の藤王しかいないだろう」
「そんな昔からか。全く、おまえの賢さには脱帽だ。そして知っていて、なにも言わずにいてくれたおまえに、私は感謝するしかないのだろうな」
龍鬼として共闘し、すべての悪事をともに遂行し、兄弟のように、家族のように、過ごした相手だ。
紫輝には会わせられない、恐ろしい相手だが。
天誠も不破のことは憎からず思っている。
だからこそ、今回の暴挙が信じられないのだ。
「私は、銀杏に加勢したわけではないんだ。先ほどの件に関して、私は全く知らなかったので。銀杏を庇うことすらできぬ。安曇が怒るのももっともだしな」
フと言葉を切って、不破は天誠をみつめる。
「赤穂が死んでいない、というのは本当か? 銀杏の矢は確かに正中をとらえていた」
「女の力で、致命傷にはならなかったようだ。ある場所でピンピンしている」
実際には、致命傷だった。
ただ、紫輝が治したのだが。
そして隠密情報ではなく、この目で。天誠は赤穂がウザいくらい元気なところを見ている。
赤穂に成り代わった青桐も、あるところで元気にしているので、嘘ではない。
「私は、赤穂を殺すつもりはなかったんだが、彼が金蓮をかばって…私はただ金蓮を暗殺したかっただけなのに。藤王の名で呼び出したらのこのこと姿を現したから、実行に移しただけだ」
「…なぜ、今? おまえはずっと、正攻法で、正面から将堂に挑んでいた。しかし今季は、随分姑息な手も使ったようだな? なりふり構わず、というふうに見えるが?」
そのせいで、ちょっと紫輝がピンチになってヒヤッとしたぞ。
たくさん泣いたしな。
「呪縛が外れたのだ。もう、我慢できない。私は私の欲しいものを手に入れる。その資格ができたのだ。それと、私の寿命もあとわずかなような気がして…」
不破は手甲をつけている右手を、目の前に出した。
誰の目にも、ただの手に見えるだろうが。
紫輝の加護を持つ天誠の目には、その手が紫色の炎に焼かれているように見える。
「痛むのか?」
「痛いような、息苦しいような。今まではあまり気にならなかったのだが、ここ半年ばかり不快感があってな」
半年前というと、紫輝がこの世界に降り立ったくらいの頃だ。
紫輝の能力に共鳴しているのかもしれない。
「不破、おまえはなにが我慢できない? なにが欲しいというのだ?」
「安曇は、兄を慕っていたな。だから私の気持ちをわかってほしいのだが…私は、弟を溺愛している。龍鬼を虐げるこの世界から弟を救い出し、伴侶とするのだ。そして弟を貶めたすべての者を破壊したい」
天誠は、不破の気持ちがわからないでもなかった。
どうにもならなかったら、天誠も紫輝を腕に抱いたまま、世界のすべてを破壊する道を歩いたかもしれない。
でも今は、紫輝に愛し愛されているし。ふたりで生きる道を歩いている途中だから。賛同はできないのだが。
「俺と兄は、血のつながりがないのだが。実の兄弟でそういう気になるものなのか?」
「近いからこそ、心が通じ合っていると感じるのだ。それに、我らは龍鬼だ。同性で睦み合っても子はできぬし。むしろ他人は喜ぶのではないか? 龍鬼の目が、己を見初め襲われる、そんなことを危惧している輩はな。誰であろうと、私は堺以外に食指は動かぬが。私は堺を…弟が子供の頃から、己の嫁にすると決めていた。清らかで、優しい子。堺こそが私の伴侶。両親は最後まで、認めはしなかったがな」
「なるほど。では不破は堺を手にして、龍鬼を虐げるこの世を壊す。それが望みなのだな?」
うーん、堺を人身御供にしたら、紫輝は怒っちゃいそうだな。
自分はまだ堺には会っていない。戦場でもぶつからなかった。
紫輝に言わせると、天誠パート2だという。
なに、それ。
ムムッとなったが。
堺は紫輝にとって、弟カテゴリーらしく。守ってあげたいんだと。
うううぅーん。まぁ、それならいいか。
とにかく、紫輝は堺を弟的に溺愛している。
あれ、不破と同じなのか?
そんなに庇護欲をくすぐる男なのか?
つか、紫輝より年上じゃね?
まぁ年上の俺も、弟扱いできる紫輝だから。年齢とか考えていないんだろうけど。
どんな男なのか、全く想像がつかないな。
堺を不破の手に渡すには、堺の意志が必要だ。そうしないと紫輝が激怒する。
堺が自分で不破の元へ行くと言うなら、紫輝も納得するだろうが。
どうなることやら。
でも龍鬼を虐げる世を壊すことは、できそう。
うまく不破を取り込めたらいいのだが、それは己の腕の見せ所なのだろうな。
「ともかく、このようにまとまりがないと動きが取れないぞ、不破」
「そうだな。計画を練り直そう。私も、少し頭を冷やす。単独行動をとってすまなかった、安曇…いや、もう基成様だな」
不破は能力で髪色を黒く戻すと、黒マントを羽織って部屋を出て行った。
部屋にひとりきりになった天誠は。当然、キレる。
ったく、余計なことをしやがって。(二回目)
己になにも言わず、心の赴くままに行動に移した不破もだが。
一番腹立たしいのは。銀杏だった。
簡単に、隠れ蓑などいらぬと言うが。安曇眞仲はただの隠れ蓑ではない。
もうひとりの己だった。
八年もの長きに渡って、この地で苦難と戦ってきた、戦友のようなもの。
紫輝が愛した、包容力があって、たくましく、すべてを委ねられる、絶対的な安寧をもたらす者。
しかし今回の件で、この世界の安曇眞仲は死んでしまった。
己が殺したので、手裏家惨殺の汚名を着せられて、というわけではないが。
とにかく。安曇の名前で活動はできないし。安曇の名前すら、もう口に出すことはできないのだ。
赤穂の血脈図に載せた、紫輝の隣に並ぶ名前は手裏基成だった。
将堂赤穂の息子である将堂紫輝が、手裏基成と結婚した、というふうに書かれている。
それは赤穂が、紫輝を息子であると正式に認めた証であり。紫輝と天誠の切り札でもある。
ここで間宮天誠や安曇眞仲の名を載せなかったのは、いずれ全土を平定するときに、将堂と手裏の統合がなされたことを世に知らしめるためだった。
なので紫輝は、新婚早々未亡人にはならなくて済んだが。
銀杏は、己の中の安曇眞仲を殺した。絶対に許さない。
それに今回の騒動でどれだけ計画に支障が出るのか。さすがに読めない天誠だった。
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