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55 年越し小話 ②
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◆紫輝と天誠のイチャイチャカウントダウン
十二月三十一日、真夜中。
紫輝は獣型のライラとともに、裏の山の中に入っていった。
ここは四季村。
二十九日の夜に、紫輝たちはなんとか家にたどり着き、野宿を免れた。
そして一日ゆっくり休み。
大晦日は、つい先ほどまで橘が用意してくれた最高の御馳走を囲んで、パーティーしていた。
ちなみに、赤穂も月光もすでに酒で潰れ。
廣伊と千夜は、自宅に戻った。
そして、もうすぐカウントダウン…くらいの時間になってきたので、紫輝は屋敷を出て、天誠に連絡を取ることにしたのだ。
紫輝は毎年必ず、天誠とカウントダウンしていた。
今年は、もう、本当に考えられないようなことがいっぱい起きたけれど。
天誠と変わらずに年越しできることが、嬉しい。
天誠にとっては、八年ぶりのイベントだ。張り切らざるおえないっしょ?
今日の四季村は、ちらちら雪が降っている。でも常緑樹が辺りを覆っているから、山に入ると紫輝の頭の上にはそれほど雪は落ちてこなかった。
紫輝はライラをお座りさせて、天誠を呼び出した。
「天誠、天誠、聞こえますか?」
すると、キリリとした目のライラ(天誠憑依型)が紫輝をみつめた。
「お疲れ様、紫輝。任務は無事に完了したか?」
「天誠と月光さんが考えていたことは、ほぼそのとおりにできたよ。特に金蓮のところとかは。でも、まぁイレギュラーがいっぱいあったから、かなりアドリブ入れちゃったな?」
「イレギュラー?」
天誠の甘くて大人っぽい声で、言っているのだろうが。ライラの声帯で小首を傾げて言われると、かーわーいーいーってなっちゃうよ。
「金蓮のところでは、弟に会った。マジ弟。でも俺とは似てなかった。茶髪で礼儀正しい感じ」
「うん。兄さんじゃないね」
「謙遜したんだから、そんなことないよって言えよぅ」
拗ねて、紫輝は唇を突き出した。
天誠はその顔見たさにそういうことを言うというのに。思う壺である。
「あと幸直の屋敷では、まず右次将軍の瀬間様に会ったんだけど、月光さんに惚れてたみたいで。行方不明になったことをマジ切れしてた」
「恋も知らない朴念仁、じゃなかったのか? 瀬来は頭はキレるが、己に関しては鈍感なのだな?」
断言である。
ここぞとばかりに月光をディスる天誠だった。
「堺との話はおおむね良好だ。堺にはこのまま青桐についてもらって、青桐が変な方に向かわないよう見守ってもらう感じ。それより青桐が、案外頭がキレるというか。赤穂の勘に、冷静な知性が乗っかったみたいな感じ。味方にできたら心強いかも、だけど。それは彼に見極めてもらおうと思う。俺らはこのまま突っ走るが、俺らの考えが、絶対的に正しいわけじゃないかもしれないじゃん? 臨機応変に、より良い方向に進んでいけたらいいよね?」
「そうだな、なるほど。兄さんはたまにいいことを言う。俺は、俺らが絶対的に正しいつもりでいるのだが。柔軟思考を持っていた方がスムーズに着地できる場合もある。兄さんの言うとおりにしよう」
天誠に褒めてもらって、紫輝はニヘリと笑った。
鼻の頭が赤く、もこもこマントを着た、紫輝のニヘリは。天誠の心臓を突き刺した。
もう。なんで、己はそこにいないのか! すぐにもベッドで抱き潰してやりたい。
「あと、もうひとつ」
「まだあるのか? イレギュラー、多過ぎじゃね?」
天誠は軽く笑い飛ばしたが。
紫輝の言葉を聞いて、息をのんだ。
「本物の手裏基成が、いた」
「…どこに? なんでわかった?」
「幸直の屋敷にいた。右軍の幹部だ。里中巴と名乗っている。翼が…天誠と同じだったから」
「あの翼で、幹部にはなれないだろう? いくらなんでも」
「翼が、途中で折れていて。羽もむしっている。カラスを装っているんだ」
「うーん、そこまでされたら、さすがに将堂もわからないか。逆に、そこまでしなければ今まで生き延びることはできなかったということだ」
考察する天誠に、紫輝は神妙な顔つきで、頼んだ。
「天誠。俺は、この件には触れたくない。なにもしないでくれるか?」
「…いいよ」
あまりにもあっさりと天誠が承諾してくれたから。紫輝は驚いてしまった。
「本当に? いいの?」
「どうせ兄さんは、自分のせいだとか考えちゃったんだろう? 俺のせいなのに。だから、兄さんの気の済むようにしたらいいよ。彼の追跡などはすでに終了しているし、今更彼が手裏基成だと騒いだところで、それが覆されることもない。ただ。彼が穏便に、将堂で生活したいと思っているのならいいが。もしも彼が、復讐の炎に燃えていたり、俺らの計画を邪魔する存在になりそうだったら。兄さん、そこは情を絡めず、すぐに連絡してくれ。それはすでに仲間になった者たちの生死にも関わることだと、肝に銘じておいてくれよ」
「うん。わかった。俺は俺なりに。できる範囲で。巴に償っていくことにするよ。天誠は。これを誰にも言わないことを償いとしたらいい」
「了解」
一番気掛かりだったことを報告できて、紫輝は安堵の息をついた。
堺には、バレてしまったが。
紫輝も。このことはもう、誰にも言わないことにする。
誰も、知らなくていいんだ。巴は、巴として生きているんだから。
「じゃあ、そろそろカウントダウンだね?」
「もう、年越しているんじゃないか?」
「秒針ないんだから、適当でいいの。天誠なら、時計くらい作れそうな気がするんだけど」
「時計は歯車が重要だ。専門職だよ。俺にはできない…かな」
「あぁ、あやしーい。できなくもなくもないって思っているんだろ?」
「いやいや。ほら、カウントダウン。十、九…」
「待って、待って。八、七、六」
五、四、三、ニ、と紫輝は天誠と声を合わせた。
「一。ハッピーニューイヤー、天誠」
「明けましておめでとう、兄さん」
紫輝はライラの首元にギュギュギュと抱きついて。眉間にチュウした。
ライラだったら、イヤーンと鳴くところだが。
天誠憑依型のライラは、嬉しそうに、満足そうに、目を細めた。
「あぁ、紫輝。俺と同じ時間に紫輝が存在している、この幸福を。喜びを、どう表現したらいいか。愛してる。大好きだよ、兄さん。今年も。その先も。よろしくな」
「うん。今年も、来年も、三百年後も、千年後も、よろしくな」
天誠はこの場にいないけれど、ライラの瞳の向こうで紫輝をみつめてくれている。
だから。紫輝は寂しくない。
でも。体は触れ合いたいのに触れ合えなくて、悲しいから。ライラのピンクの鼻に紫輝の鼻をくっつけて、鼻チューをした。
天誠も己を近くに感じてくれたらいいな、と紫輝は思った。
十二月三十一日、真夜中。
紫輝は獣型のライラとともに、裏の山の中に入っていった。
ここは四季村。
二十九日の夜に、紫輝たちはなんとか家にたどり着き、野宿を免れた。
そして一日ゆっくり休み。
大晦日は、つい先ほどまで橘が用意してくれた最高の御馳走を囲んで、パーティーしていた。
ちなみに、赤穂も月光もすでに酒で潰れ。
廣伊と千夜は、自宅に戻った。
そして、もうすぐカウントダウン…くらいの時間になってきたので、紫輝は屋敷を出て、天誠に連絡を取ることにしたのだ。
紫輝は毎年必ず、天誠とカウントダウンしていた。
今年は、もう、本当に考えられないようなことがいっぱい起きたけれど。
天誠と変わらずに年越しできることが、嬉しい。
天誠にとっては、八年ぶりのイベントだ。張り切らざるおえないっしょ?
今日の四季村は、ちらちら雪が降っている。でも常緑樹が辺りを覆っているから、山に入ると紫輝の頭の上にはそれほど雪は落ちてこなかった。
紫輝はライラをお座りさせて、天誠を呼び出した。
「天誠、天誠、聞こえますか?」
すると、キリリとした目のライラ(天誠憑依型)が紫輝をみつめた。
「お疲れ様、紫輝。任務は無事に完了したか?」
「天誠と月光さんが考えていたことは、ほぼそのとおりにできたよ。特に金蓮のところとかは。でも、まぁイレギュラーがいっぱいあったから、かなりアドリブ入れちゃったな?」
「イレギュラー?」
天誠の甘くて大人っぽい声で、言っているのだろうが。ライラの声帯で小首を傾げて言われると、かーわーいーいーってなっちゃうよ。
「金蓮のところでは、弟に会った。マジ弟。でも俺とは似てなかった。茶髪で礼儀正しい感じ」
「うん。兄さんじゃないね」
「謙遜したんだから、そんなことないよって言えよぅ」
拗ねて、紫輝は唇を突き出した。
天誠はその顔見たさにそういうことを言うというのに。思う壺である。
「あと幸直の屋敷では、まず右次将軍の瀬間様に会ったんだけど、月光さんに惚れてたみたいで。行方不明になったことをマジ切れしてた」
「恋も知らない朴念仁、じゃなかったのか? 瀬来は頭はキレるが、己に関しては鈍感なのだな?」
断言である。
ここぞとばかりに月光をディスる天誠だった。
「堺との話はおおむね良好だ。堺にはこのまま青桐についてもらって、青桐が変な方に向かわないよう見守ってもらう感じ。それより青桐が、案外頭がキレるというか。赤穂の勘に、冷静な知性が乗っかったみたいな感じ。味方にできたら心強いかも、だけど。それは彼に見極めてもらおうと思う。俺らはこのまま突っ走るが、俺らの考えが、絶対的に正しいわけじゃないかもしれないじゃん? 臨機応変に、より良い方向に進んでいけたらいいよね?」
「そうだな、なるほど。兄さんはたまにいいことを言う。俺は、俺らが絶対的に正しいつもりでいるのだが。柔軟思考を持っていた方がスムーズに着地できる場合もある。兄さんの言うとおりにしよう」
天誠に褒めてもらって、紫輝はニヘリと笑った。
鼻の頭が赤く、もこもこマントを着た、紫輝のニヘリは。天誠の心臓を突き刺した。
もう。なんで、己はそこにいないのか! すぐにもベッドで抱き潰してやりたい。
「あと、もうひとつ」
「まだあるのか? イレギュラー、多過ぎじゃね?」
天誠は軽く笑い飛ばしたが。
紫輝の言葉を聞いて、息をのんだ。
「本物の手裏基成が、いた」
「…どこに? なんでわかった?」
「幸直の屋敷にいた。右軍の幹部だ。里中巴と名乗っている。翼が…天誠と同じだったから」
「あの翼で、幹部にはなれないだろう? いくらなんでも」
「翼が、途中で折れていて。羽もむしっている。カラスを装っているんだ」
「うーん、そこまでされたら、さすがに将堂もわからないか。逆に、そこまでしなければ今まで生き延びることはできなかったということだ」
考察する天誠に、紫輝は神妙な顔つきで、頼んだ。
「天誠。俺は、この件には触れたくない。なにもしないでくれるか?」
「…いいよ」
あまりにもあっさりと天誠が承諾してくれたから。紫輝は驚いてしまった。
「本当に? いいの?」
「どうせ兄さんは、自分のせいだとか考えちゃったんだろう? 俺のせいなのに。だから、兄さんの気の済むようにしたらいいよ。彼の追跡などはすでに終了しているし、今更彼が手裏基成だと騒いだところで、それが覆されることもない。ただ。彼が穏便に、将堂で生活したいと思っているのならいいが。もしも彼が、復讐の炎に燃えていたり、俺らの計画を邪魔する存在になりそうだったら。兄さん、そこは情を絡めず、すぐに連絡してくれ。それはすでに仲間になった者たちの生死にも関わることだと、肝に銘じておいてくれよ」
「うん。わかった。俺は俺なりに。できる範囲で。巴に償っていくことにするよ。天誠は。これを誰にも言わないことを償いとしたらいい」
「了解」
一番気掛かりだったことを報告できて、紫輝は安堵の息をついた。
堺には、バレてしまったが。
紫輝も。このことはもう、誰にも言わないことにする。
誰も、知らなくていいんだ。巴は、巴として生きているんだから。
「じゃあ、そろそろカウントダウンだね?」
「もう、年越しているんじゃないか?」
「秒針ないんだから、適当でいいの。天誠なら、時計くらい作れそうな気がするんだけど」
「時計は歯車が重要だ。専門職だよ。俺にはできない…かな」
「あぁ、あやしーい。できなくもなくもないって思っているんだろ?」
「いやいや。ほら、カウントダウン。十、九…」
「待って、待って。八、七、六」
五、四、三、ニ、と紫輝は天誠と声を合わせた。
「一。ハッピーニューイヤー、天誠」
「明けましておめでとう、兄さん」
紫輝はライラの首元にギュギュギュと抱きついて。眉間にチュウした。
ライラだったら、イヤーンと鳴くところだが。
天誠憑依型のライラは、嬉しそうに、満足そうに、目を細めた。
「あぁ、紫輝。俺と同じ時間に紫輝が存在している、この幸福を。喜びを、どう表現したらいいか。愛してる。大好きだよ、兄さん。今年も。その先も。よろしくな」
「うん。今年も、来年も、三百年後も、千年後も、よろしくな」
天誠はこの場にいないけれど、ライラの瞳の向こうで紫輝をみつめてくれている。
だから。紫輝は寂しくない。
でも。体は触れ合いたいのに触れ合えなくて、悲しいから。ライラのピンクの鼻に紫輝の鼻をくっつけて、鼻チューをした。
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