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53 はやく帰れっ

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     ◆はやく帰れっ

 夕食を済ませた紫輝は、マントを着込んで外に出た。
 雪は降っていないが、もう夜なので、キンと冷えた空気が頬に突き刺さるようだ。
 でも、八時にはここに到着すると。大和が言っていたので。
 そろそろ来るかなと思い、門の前で待っているのだ。

「おい、こんな寒い中でなにやってんだ?」
 白い息を吐いて聞いてきたのは、青桐だ。
 紺色の着物に、綿入れ丹前姿。
 腕を組んでいると、任侠映画に出てきそうな感じ。任侠映画、見たことないけど。

「俺の付き添いがそろそろ到着しそうだから、待っているんだ」
「付き添い? 部下か? つか、門番に頼んで、来たら知らせてもらえばいいじゃないか」
「部下というか、護衛というか、友達というか。ひとりだけ遠回りさせちゃったから。お出迎えくらいはしないと」
「ふーん、優しいじゃん」
 そう言いつつも、唇をへの字に引き結び。かといって、屋敷に戻る気配もない。
 なにか言いたいことがある模様。ま、予想はついているが。

「なんで、余計な提案するんだよ?」
 青桐は、単刀直入に聞いてきた。
 夕食のときに言っていた、本拠地の屋敷で幹部が一緒に暮らす件についてだ。
 ある意味、回りくどくなくていい。

「いや、俺は助け船のつもりだったんだぞ。堺が、青桐とふたりきり。なんて状況は、金蓮様が許さないだろうから。問題回避というやつだよ」

「金蓮様…俺の兄上だと聞いたが?」
「青桐は、まだ金蓮様とはお会いしていないのか?」
 彼が首を振り、紫輝は半目になる。

 自分で指示して、顛末も確認していないとは。仕事、粗すぎ。
 まぁ、さすがに。弟との初対面の場で堺を罵倒したりはしないだろうが。
 金蓮はやりかねない、と思う。

「さっき、庭で話しただろう? 龍鬼の胸糞悪い話」
「将堂から龍鬼をうんぬんってやつか?」
 紫輝の命がかかっているという、デリケートな話題だとわかっているようで。青桐は声のトーンを落とし、言葉を濁してくれた。
 誰が聞いているかわからないから、助かります。

「あれは、堺と青桐にも当てはまることだ。金蓮様は龍鬼を…堺を毛嫌いしている。ゆえに交際には反対するだろう」
「なんで? 堺はあんなにも優しくて、綺麗な人なのに」

 青桐の意見としては、善人を嫌うやつなんかいない、ということなのだろう。
 紫輝だって、そう思う。
 堺ほど心の美しい人はいないだろう。

 心無い者に傷つけられてきたというのに、その傷口カッティングが輝きを放つダイヤモンドのよう。
 透明で、キラキラで。
 三百年前の世界なら、さぞかしモテモテだったろう。

 しかし。それが通用しないのが、この世界の龍鬼への差別観なのだ。
 紫輝もそれを理解するまで、さんざん傷つけられた。

「どんなに優しくて、綺麗で、聡明で、純粋な人でも。龍鬼だからダメなの。金蓮様はそういう人なの」
 なにを言っても、どれだけ真摯に接しても、聞く耳持たない人がいる。
 紫輝はこの世界に来て、初めてそういう人たちに会い。
 なにをやってもダメなことがある、という。できれば遭遇したくない事象に、遭遇してしまったのだ。

 堺にとって金蓮は、そういう相手だ。
 誠意を尽くしても、忠義を示しても、なにをしても。拒絶、排他、罵倒である。

 金蓮は、紫輝に対してはそれほど辛辣ではない。
 でも。堺を攻撃するから、敵認定は外せないね。

「まじか? いけすかねぇ」
 吐き捨てるように言う青桐を見て、紫輝はマズいと思った。
 ネガティブキャンペーンやっちゃったかな。

 これから兄と会うのだ。新しい家族になるのだ。先入観を持つのは良いことではない。
 青桐が金蓮のことをどう思うのかは、青桐が決めるべきことだ。

「…ごめん。今更だけど。会う前から、あんまり悪い情報を入れるのは良くなかったね? 青桐が将堂家に馴染めなくなったら、困る。だから、これ以上は言わないよ。ただ、堺を守るために。前情報だけ頭に入れておいてほしい。あとは金蓮様のこと、青桐の目で確かめていって」
「自分の目で確かめろ、か。俺の意見を尊重してくれるってわけだな?」
「それはそうだよ。自分で決めることは、自分が責任を持たなければならない。そのために、良い情報も悪い情報も自分で集めて、最終結論を出すんだ。人の意見を鵜のみにして、なにかを決めるのは。ただの操り人形。そうなりたくはないだろう?」
「…だな?」
 眉をひょいと持ち上げて、紫輝に同意する。

 青桐は、誰かの操り人形にはならないだろうと紫輝は確信した。
 赤穂の言うとおり、傀儡にはなりえない男のようだ。

「じゃあ、おまえからはさんざん悪口聞いたから。今度は燎源から、兄上の良いところを引き出そう。そして顔を合わせて話をしたあとに、最終結論といこうじゃないか」
 良かった。それでいいと思う。
 家族になる人を悪く言われたくないだろうし。
 堺のことは守ってほしいけれど、金蓮と敵対させたいわけでもない。
 ただ青桐の言葉に、紫輝は引っかかりを感じた。

「…燎源は来ているのか?」
 燎源とは、一度会ったきり。左の側近だ。
 金蓮は燎源を使って、計画がうまくいっているのか確認しているようだ。

 放置ではないが。人任せか。

 でも燎源は頭がキレそうだし。金蓮の忠実な部下という印象だった。
 抜け目なさそう。
「あぁ、たまに。俺がちゃんと記憶喪失か、確かめに来る。記憶がないフリは簡単だ。なにもわからないと言えばいいんだからな」
「真面目にやれよ。自分の首を絞めるぞ。あと、屋敷に燎源の息のかかっているやつが入り込んでいるかもしれないから。気を抜くな」

 口元に人差し指を当て、しぃーと言うと。青桐も表情を引き締めた。
 彼も、燎源は抜け目ないと思っているのかな?

「話を戻そう。龍鬼は、目撃しても子孫に影響を及ぼすと言われるほど、過敏に忌避されている。将堂の次男が、龍鬼と同棲なんて噂が立ったら?」
「俺は、構わねぇけど?」
「青桐はそうだろうが。堺がっ、すっごく怒られたり、謹慎させられたりするわけ。この場合、咎はみんな堺にいくよ。青桐の軽率な行動で、堺が傷ついてもいいのか?」
 構わねぇ、と言ったときは、やんちゃそうな顔で二カリと笑ったが。
 堺が傷ついてもと告げたときには、スゥと表情を消した。
 声に出さない、気迫を感じる。

「それはダメに決まっている」
「だろう? でも、幹部がみんな一緒なら、ふたりきりじゃないし同棲じゃないし、堺も怒られない。青桐も堺と同じ屋根の下で暮らすことには変わりないんだから。な? 悪くないだろ?」
「なるほど。わかった」
 ふと笑い、青桐がうなずく。
 どうやら腑に落ちたようだ。

「青桐には、こういう状況を踏まえて、賢く立ち回ってほしい。堺を守るためにもな」
「…龍鬼って、なんでそんなに…。結局、そこに思考が戻るんだ。堺も紫輝も、俺らとなにも変わらねぇ。翼がないだけだ」
「堺は、青桐の記憶を奪っただろう? 俺にも能力がある。人は、自分にはない能力を恐れるんだ。困ったことに、ね?」

 このことは、庭でも少し話したが。龍鬼の差別感に触れてこなかった人間には、なかなか飲み込めない事柄なのだと思う。
 紫輝も、天誠と龍鬼問答をして、なんとか理解できる着地点をみつけたが。
 今でも。なんで? とか、そこまで? とか、思うことがある。

「不用意に堺に触れると。龍鬼だから駄目だと言われる。なぜ駄目なのかを聞いても、困った顔をするばかりで答えてくれないんだ。そのなぜの部分を、ずっと知りたかった」
「堺が言うことは、少し意味合いが違うかもしれないな。堺は生まれたときから、龍鬼であることで疎まれてきたようだ。それこそ、両親からもな。そんなにも長年苦しんできたら、龍鬼に生まれてきたことこそが駄目なのだと、思ってしまうんじゃないかな? 私に触られるのは御嫌でしょう、と。俺もたまに言われる。堺は龍鬼である己を、好きじゃないんだ」

 だから、紫輝は強引にでも堺の手を自分から握る。
 自分から抱きつく。
 そうして、少しずつでも堺が自分を汚いとか、嫌いとか、醜いとか、思わなくなるといいと願っている。

「おまえは違うのか? 俯瞰ふかんした考え方をするよな、紫輝は」
「俺は、堺とは違う。山の中で育てられ、幸いにも親の愛情に恵まれた。俺も、龍鬼として疎まれたのはつい最近、軍に入ってからなんだ。青桐とおんなじで、なんで忌み嫌われるのか、最初はわからなかったよ」

 話に熱中していると寒くはないのだが、頬が冷たすぎてヒリヒリしてきたから、ミトン型の手袋をつけた手で紫輝は頬をすりすり擦った。

「龍鬼って、なんでそんなに…俺もそれを考えてきたから、答えられるのかな。でも、言い伝えられているようなひどいことが、本当に起きたわけじゃないよ。身近な人の翼が腐り落ちたことはないし。龍鬼を見ただけで、子供が龍鬼になるのなら、戦場に出た兵士の子供はもれなく龍鬼だろう? でもそんなことはない。今までの龍鬼は、忌み嫌われていたから、結婚しなかったし。自分の子供も持てなかった。でも龍鬼の遺伝子は残っていないのに、二十年周期で平均三人の龍鬼が生まれてくる。それって、もう運次第だと思わない?」

 どういうわけかは、わからない。
 三百年前の科学者の仕業なのか。
 とにもかくにも、龍鬼のせいではないと、紫輝は声を大にして言いたいのだ。

「つまり、なにが言いたいのかというと…龍鬼は恋をしてもいい、ってこと」
 にっこり、紫輝が笑いかけると。
 青桐は胸を張って、当然だという感じでうなずいた。

「あっ、でも。ちゃんと手順を踏んで恋愛してくれよな? 今、同じ部屋で寝ているようだが。堺に勝手に触れるんじゃねぇよっ!」
「あぁ? なんでおまえにそんなこと言われなきゃならねぇんだよ?」

 紫輝も、青桐ばりに体の前で腕を組み、胸を張って言ってやった。
「俺のことは、堺の小姑だと思え。俺の弟には、指一本触れさせねぇ…とまでは言わないが。意識のない相手に触るとか、同意ないまま事に運ぶような不埒な真似したら…許さないぞ」

 睨む紫輝に、青桐は鼻で笑って、手をプラプラ振る。
「ハッ、おまえ堺より年下だろ。なんで弟? つか、年齢設定滅茶苦茶で、ツッコミが追いつかねぇわっ」
「そこは、説明面倒くさいから、省くけど。とにかく。堺は今まで、すっごい人に傷つけられてきたの。ようやく笑ってくれるようになったの。そこで、心を開いた相手に強姦されて、滅茶苦茶にされたら、また心を凍らせてしまうよ。そうなったら…マジ殺すから」

 ライラが獲物(ヤモリとか)を狙うときのような、真剣で殺気のこもった視線を、紫輝は青桐に向けた。
 極悪ノラ猫顔の目力、舐めんなよ。

「強姦なんて…するわけない。堺に嫌われるつもりはない」
 まぁ、とりあえずたじろいでくれたので。紫輝の本気は伝わったのだろう。
 一転、にっこりに戻す。

「なら、がっつかないで。ゆっくりお願いしますよ。同意、大切」
「はいはい、同意、大切」
 ぞんざいながらも、青桐が復唱し、紫輝は満足げにうなずいた。
 応援するんだから、期待を裏切らないでよね。

「さっき、鍛錬しながら、思っていたんだが。俺が身代わりなら、赤穂は…死んだってことだろう? 父親が亡くなったばかりなのに、堺を気遣っておまえはここまで来た。だけでなく、俺にもいろいろ教えてくれて。なんか、つらい思いがあるんじゃねぇか?」
 青桐がそっと身を寄せ、紫輝にこっそりと囁いた。
 うん。デリケート案件だからね。
 なので紫輝も、こっそりと返す。

「それはね。大丈夫。赤穂、生きてるから」

 ギョギョッと目を見はり、青桐は驚愕した。
 そして囁き声で怒る。
「おい、じゃあなんで出てこねぇんだ? 俺、必要ないじゃねぇ…暗殺か?」

 そう、出てこれない理由がある。それを察して、青桐は暗殺までたどり着いた。
 頭の回転は、かなりいいね。

「それに近い。相手は赤穂が死んだと確信しているから、青桐が命を狙われることはないよ」
 身代わりとか、替え玉という言葉に、青桐は思うところがあった。
 同じ顔、同じ翼の者と、縁が全くないわけがないではないか。
 目にしたことも、言葉を交わしたこともないが。
 その者が死んだのだと聞けば、心は多少揺らぐ。

 彼がいた場所に、涼しい顔で居続けることに、胸苦しさを感じる。
 でも、生きているのなら。
 生きているだけで。
 心の重しは、だいぶ軽く感じる。

 単純に、良かったと思う。

「俺の手紙で堺が泣いてたってやつ。どうやら、赤穂が生きていると感じたかららしいよ」
 でも紫輝の言葉で、別の不安が青桐の胸に迫った。

「堺は、赤穂が好きなのか?」

 堺が自分に優しいのは、赤穂と仲が良かったから?
 同じ顔が好みなのでは? と思うが。

 紫輝は、青桐の杞憂を一笑に付した。
「それは、ない。上官の尊敬。あとは、苦手にしていたよ。あの人、粗雑だから。繊細な堺とは合わなかったんじゃないか?」
 苦手と言われても、むむっとしてしまう。
 赤穂のせいで己の恋が成就しなかったら、どうしてくれよう。

 でも、そんな青桐を。紫輝はミトンの手袋でポフポフと、彼の二の腕を叩いて励ますのだった。
「堺はちゃんと、青桐のことを見ているよ。青桐の心を歪めたくないから、赤穂の分身にはしないと言っていた。だから、青桐は青桐のままに振舞って、大丈夫。俺らもサポート…助力するよ」

 堺を雑に扱わなければ、紫輝は己に協力してくれるようだ、と青桐は感じ。
 強力な助っ人を得たような気になった。

 まぁ。まずは、堺に同意をもらわなければならないが。

「明日、帰るのか。おまえの話はためになる。幹部には聞けないことも。よくわからないことも。堺のことも、教えてくれるし。的確な助言もくれるし。紫輝が滞在してくれたら助かるんだがな」

 記憶喪失のフリを続ける限り、青桐に真の仲間はできない。
 いつも気を張っていなければならないし、言葉にも気をつかわなければならない。

 もちろん、堺にもだ。
 そばにいてほしいと願いながら、彼のそばで安らぐことはできない。

 でも紫輝には、もうすべてを知られているから。唯一、気を抜ける相手になってしまったのだ。
 そんな弱味をちらりと見せたら。
 紫輝は小悪魔な、可愛い悪い顔で笑った。

「あれぇ? 俺が帰るの、寂しい感じぃ? ここに長く滞在したら、堺の部屋に入りびたって青桐の時間取っちゃうかもしれないけど、イイ?」
「うざっ、はやく帰れっ」

 紫輝にからかわれ、青桐は赤い顔をして怒る。
 そういうところ、月光にからかわれている赤穂そっくり。
 そう紫輝は思いながら、あははと軽く笑った。

 そのとき、門が開いた。
 ようやく大和が帰還したようだ。
 紫輝は二頭の馬を連れた大和に駆け寄り、労った。

「大和、お疲れ様。早くご飯を食べて、体を温めないとな?」
「紫輝…こんな寒い中、外で待っていてはいけませんよ」

 大和は、いつものように紫輝様と言いたいようだったが、そばに青桐がいることに気づき。様はなんとか飲み込んだ。
 そこで青桐は。紫輝の腕を掴み、大和からスススッと距離を取る。

「彼と紫輝は、同じ軍服なのだな。軍服って、好きな色を選べるのか? 赤穂は何色を着ていたんだ?」
 本当は。大和は、青桐が赤穂の身代わりなのを知っている。
 知らない態だけど。
 でも青桐は、そのことを知らないので、当然大和をただの部下として扱う。
 つまり、なにも知らない者には、赤穂であるという態度でいなければならない。

 ややこしくなってきたな。

 それゆえ、青桐は大和から離れて軍服のことを聞いてきたのだ。
 大和もマントを着ているのだが、袖がちらりと見えたらしい。
 紫、目立つものな。
 つか、それ、今、重要?

「赤穂は暗めの赤だった。えんじ色? 軍服は、好きな色を選べるが。派手な色だと、戦場では目立つ。剣技に自信がないと、着ちゃダメなやつ」
「堺と同じ色にしてもいいと思うか?」
「改名したんだから、青でもいいんじゃね?」

 堺は、薄青の軍服だ。白髪によく似合っているし。冷気を発する能力にも合っている。水の精霊のような感じ。
「じゃあ、そうする」
 にっこり笑って、青桐は屋敷に向かっていった。
 軍服を、堺とおそろいに出来そうで気分上がったようだ。わかりやすい。

「青桐、年明けに本拠地で。またな?」
 振り返りもせず、彼は片手を振って、玄関を入っていってしまった。
 その後ろ姿は赤穂そのもので。

 夏の前線基地、赤穂と月光と初めて会った日に、ふたりが並んで森の中へと入っていった情景を、紫輝はなんとなく思い出していた。

 あれから四ヶ月くらいしか経っていないのだが。
 いろいろあったなぁ、なんて。感慨深く思う。

「紫輝様、風邪をひきますよ。明日も早いのです。紫輝様も早く屋敷にお入りください」
 大和に声をかけられ、紫輝は彼に目を向ける。

「大和だって同じだろう。千夜と合流できた?」
「はい。年越しパーティーのために海の幸を仕込むよう、伝えておきました」
「ええぇ、気が利くぅ。あ、馬の世話は俺がやるから、大和はマジでご飯と風呂、もらってきて」
 大和から手綱を無理矢理奪って、紫輝は馬小屋に向かった。
 そうでもしないと、大和はいつまでも自分のお世話をしようとするから。

 それにしても、海の幸。年越しの楽しみがまたひとつ増えました。

     ★★★★★

 そうして、次の日の早朝。紫輝は慌ただしく幸直の屋敷を後にし、四季村へと馬を走らせた。
 だって、寒風吹きすさぶ中での野宿はマジ勘弁だから。
 絶対、その日のうちに家に帰りたかったんだよぉ。

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