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10 龍鬼って大変だ①

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     ◆龍鬼って、大変だ ①

 夏の富士山って、こんなんだっけ…と思いながら、間宮紫輝は山を仰ぎ見る。
 紫輝は日本にいたけれど、住んでいた家周辺からは富士山が見えなかった。
 両親は有名人だから。人が多い観光地などには、行ったことがなくて。この世界に来て初めて、生の富士を見たのだった。
 つまり。紫輝は。テレビに映った富士山しか知らなかったのだ。

 富士山は、青と白というイメージ。
 でも夏の富士は、緑がかっているのだな?
 とにもかくにも、三百年後(正確には二八〇年前後なのだが、面倒くさいし、切りが悪いから、大雑把に三百年後と言う)も変わらず、雄大な姿でそこにあることに。紫輝は感動する。
 つい最近まで、これが富士山もどきだと思っていたことは。棚に上げて。

 四ヶ月前、紫輝は、過去の日本から、この世界に来た。
 大きな手に掴まれ、弟の天誠と猫のライラと一緒に、穴へ引きずり込まれ。気づいたらここにいた。
 その日は、紫輝の十八歳の誕生日だったのに。ただの、高校生だったのに。

 でも、ただの高校生ではなかったのだ。
 紫輝は元から、この世界の…三百年未来の日本に生まれた者だったのだ。

 弟の天誠が言うことにゃ、今は二三〇一年、なんだって。

 化学兵器で人類滅亡の危機。からの、鳥の遺伝子を組み込んだ人類がわずかに生き延び。
 今では、翼の生えた人々、有翼人種が、この日本で生活している。
 というか、日本っていう名前は、みたいだけど。

 天誠いわく、この世界の日本は、まだ国として成り立っていない。御近所トラブルレベルだ、ということ。
 いやいや、御近所トラブルよりは、もう少し規模がでかいのでは? と紫輝は思うが。
 まぁ、ひとつにまとまっていない、法やルールが定まっていない、という点で、国として成り立っていないというのは、理解できる。

 たぶん、国として始まりかけている…そんな段階なんだろうな。

 まぁ、そんなこんなで。
 天誠に羽が生えたり、ライラが猫又になったり、自分がマジ龍鬼だったりと、いろいろありまして。
 紫輝と天誠とライラは、有翼人種が栄える、この異世界チックな場所で、生きていくと決めたのだった。
 決めた、というか。どうしようもなかっただけだけど。

「紫輝、ぼけっとしてんなよ。集合掛かってるぞ」
 富士山を見ながら、考え事をしていた紫輝は。望月千夜に頭をグリグリ撫でられる。
 千夜の、メタリックがかった瑠璃色の翼が、目にまぶしい。
 毛量が多い長い髪は、翼と同じ色。
 紫輝は第五大隊二十四組九班に所属しているが。千夜は、その九班の班長だ。
 戦場では、疾風怒濤の剣技を見せ、頼もしい存在。
 龍鬼である紫輝を、蔑視することなく。友達になってくれた、ありがたい存在だ。

 梅雨が明け、夏の陽気が肌を焦がし始める季節だが。まだ朝早いので。山のふもとは、空気がひんやりしていて、心地いい。
 第五大隊は今日、基地周辺の警備をする任務だ。
 二十四組の猛者、およそ百名が、小さめの広場に集まっている。

 壇上、と言うには、粗末な木箱の上に乗り。組長の高槻廣伊が兵士に指示を出す。
「今日は所用があり、私は席を外す。二十四組の采配は、一班班長の上条に任せるので、彼の指示に従うように」

 キラキラ光る緑色の髪は、肩口まで伸びている。
 幼い顔立ちに小柄な体格。見た目は中学生くらいに見えるが、御年二十五歳のバリバリベテラン剣士。
 最前線で鍛えられた猛者たちを従える、小さな緑の人は。右軍の幹部を教育したというのだから、あなどれない強者なのだ。

 木箱を降りて、上条に場を譲った廣伊は。九班の方へやってきて、千夜に耳打ちする。
 千夜が小さくうなずいたと思ったら、廣伊が紫輝に目を合わせてきた。

「紫輝、私と特別な用事だ。こちらへ」
 滑舌の良い、耳が気持ち良くなる声で、廣伊が紫輝に指示を出す。
 班長の千夜を見やると、うなずくので。
 紫輝は廣伊のあとをついていくことになった。

 廣伊の背後には、いつも千夜がいるのに。今日は自分なのだ。
 そう思うと、千夜の代わりを務めなくてはいけないような気になって、責任重大。気持ちをピリリと引き締めた。
 二十四組の集団から離れた紫輝たちは、丸太で組まれた廣伊の宿舎に入っていく。

「おはよう、紫輝くん」
 語尾にハートマークが見える、可愛らしい感じで、挨拶され。紫輝は目を丸くする。
 部屋の中には、右軍のナンバーツーである、側近の瀬来月光と。ナンバースリーである、時雨堺がいた。

「お、おはようございます。瀬来様…」
 月光は優雅なティータイムという様子で、椅子に座り、お茶を飲んでいる。
 堺は机の上の、三つのマグカップに、お茶を注いでいるところだ。

 マグカップ…は、ここでは、なんと言うのか。
 この世界に、和製英語はあまり残っていない。コップ…湯飲み? でも取っ手がついているなぁ、うーん。

 っていうか、部屋の中、色とりどりだな。
 軍服の色味だけでも、赤、水色、緑、紫で。
 堺や廣伊は、ものすごく強い人だから心配ないけど。
 月光は…桃色の髪で赤い軍服というのは、彼にすごく似合っているんだけれど。そんな色で戦場に出て、大丈夫なのかな?
 と、紫輝は余計な心配をしてしまう。

「瀬来様、なんて他人行儀な。この前は月光さんって、言ってくれたじゃーん」
「紫輝、お茶をどうぞ。…高槻も」
 拗ねる月光を、華麗にスルーした堺に言われ。紫輝は、廣伊をうかがう。
 堺とは友達だけど、上官でもある。
 直属の上司である廣伊の動向が、重要なのだ。
 廣伊がうなずいたので、紫輝は椅子に腰かける。

 ちなみに、この世界の椅子には、背もたれがない。
 翼の邪魔になるからだろう。
 紫輝には、翼がないが。背中にライラ剣を背負っているので、どちらにしても寄り掛かれないけれど。

 差し出されたお茶を、堺からいただく。
 そういえば、この世界に来て、二度目のお茶だ。

 初めては、眞仲が。
 天誠の仮の姿だった、安曇眞仲が出してくれた。
 お茶は、以前の世界では、水のような感覚で飲んでいたが。この世界では贅沢品である。
 天誠は、紫輝に最大級のもてなしをしてくれたってことだ。

 自分の出現を待ち望んでいた、弟。
 たかがお茶。
 でもそこには、彼の喜びの形が見える。
 天誠が目の前にいるわけでもないのに。彼の好意の印のようなお茶を見るだけで、なんか、照れちゃうな?

「…みんな、これから仕事なのに。こんなにまったりしちゃって、申し訳ない感じだな? そういえば、堺。この前のアレ、大丈夫だった?」

 アレとは、二日前。将堂軍全体の大将である将堂金蓮が、陣中見舞いで、この前線基地に入ったのだが。金蓮は大の龍鬼嫌い、ということらしく。
 龍鬼である紫輝、廣伊、堺は遠くから金蓮を見守ることにしたのだ。
 しかし、堺は幹部だから。挨拶しなきゃダメって…。准将、赤穂に連れて行かれてしまった。
 という経緯があった。

「すまない、紫輝。それが…少々、面倒なことになってしまいました」
 堺は、しょんぼりと肩を落とし、お茶をすする。
 眞仲と同じくらい大柄なのに、ひと回り、体が小さく見えた。

「あれは、堺のせいじゃないよぉ。金蓮様は赤穂をいたぶりたいだけなんだから」
 不満げに、月光はお茶をズゾゾっと音をたてて飲むと。紫輝に言った。
「実は、こんなことがあってね…」

     ★★★★★

 紫輝が金蓮を遠目から出迎えた、あの日。
 金蓮一行の行進の列は、ゆっくりゆっくりと進み。全員が前線基地に入場するのに、数時間が掛かった。
 長旅の疲労を癒すのに、一息入れ。身支度を整え、金蓮が幹部の待つ作戦指令室に足を踏み入れたのは、とっぷりと日が暮れたあとだった。

 紫輝が、暴言男と呼ぶ、准将赤穂が。借りてきた猫のようにおとなしく、金蓮に頭を下げた。
「兄上、前線基地までご足労いただき、ありがとうございます。兵士たちも皆、大将のお出ましに、士気を上げることでしょう。お疲れが取れましたら、山中湖の支部まで、お下がりくださいませ」

 十月から冬季の期間は、左軍が前線の指揮を執る。右軍と左軍の入れ替えが行われるのだ。
 八月からは、左軍の二大隊が前線基地に入り。十月には、基地に駐留する全大隊が、左に置き換わる。
 十月までは、前線基地の采配は、准将赤穂が取り仕切るが。
 十月からは、金蓮に指揮権が移る。

 今回、金蓮が前線基地へ赴いたのは、指揮権委譲の前段階である、左二大隊の入れ替えのためだ。
 前線から北へ下がった山中湖付近には、将堂軍の支部があり。前線基地へ着任する十月まで、将堂の総帥である金蓮が快適に過ごせるよう、すでに支度を整えている。

「そのように邪険にするなよ。おまえは戦が好きだから、ここから動きたくなくて、私が邪魔なのだろうが。数日滞在するくらい、良いだろう?」
「邪険になど…期日まで支部へ下がるのは、いつものことではありませんか? 前線では、総帥がご満足いただけるおもてなしもできませんし」
 金蓮のジャブを、赤穂は軽やかにかわす。
 嘘くさい笑みを顔面に貼りつけて、へりくだる。

「確かになぁ、おまえのおもてなしは、いただけない。時雨を、私の前に出すなと言っておいたはずだが…」
「時雨は俺の護衛です。俺の後ろに立つことが、時雨の職務なので。ご容赦ください」
 金蓮の蔑みに。堺は赤穂の背後、軽く頭を下げた姿勢のまま微動だにしない。
 これくらいの嫌味は、赤穂も堺も、予想の範囲内だった。

「そうそう、新しい龍鬼が入ったそうじゃないか。龍鬼を三匹もはべらして、まさか、将堂軍を乗っ取る気ではないだろうな? 兄弟とはいえ、おまえは将堂の傍流だ。そのことを忘れるなよ」

「立場は、わきまえております。ただ。兄上は、龍鬼が御嫌いなので。俺が有意義に、龍鬼をこき使っているだけですよ」
 数時間前、紫輝に『堺をこき使うな』と言われたことが、赤穂の頭に残っていて。つい、そう言ってしまった。
 良くも悪くも、紫輝という存在が、脳内に強烈に刻みつけられている。と赤穂は思った。

「別に、嫌いではない。ただ、将堂の龍鬼は、藤王を連想させるから…」
 しばし、金蓮は思案し。そして赤穂に言ったのだ。
 三人目の龍鬼を見たい、と。

     ★★★★★

「なに、それ」
 月光の説明に、紫輝は眉間にしわを寄せた。
 不快じゃない部分が、一ヶ所もないなんて。

 月光は、ものすっごい上官なのだが。思わずタメ口で、不満を口に出してしまった。
 隣に座る緑の人に、睨まれた。

「…ということで。将堂軍大将の命令で、紫輝くんはこれから、作戦指令室に行ってもらいまーす」
 ボブっぽい髪型の、横の髪をふわりと揺らし。月光は可愛らしく、極悪な命令を告げた。
 行きたくねぇ…と、あからさまに表情に出した紫輝に。堺と廣伊がフォローを入れる。

「大丈夫です、紫輝のことは、この命に代えても守ります」
「私も一緒に行く。紫輝は私の後ろで黙っていればいいから」
 そして、穏やか桃色癒し系の月光も、赤ピンクの瞳をウルウルさせて、言った。

「もしも本当に嫌なら、行かなくていいよ? そうだ、僕と一緒に、逃げちゃう?」
 マグカップを持つ紫輝の手を、月光は両手で包み込む。
 一見では、性別が読めないくらい、美少女的な容貌の月光に、手を握られ。紫輝は。嬉しいような、困ったような気になる。

「いえ、逃げませんけど。てか、逃げたら大変なんでしょう? 一生、追討されるって聞いていますけど?」
「うー、確かに。言いくるめればなんとかなるような気もするけどぉ」
 月光は眉間にシワを寄せるが。眉尻が下がって、その顔も可愛い。

「それに、堺や廣伊の立場もありますし。月光さんだって、側近なんだから。逃げちゃダメでしょ?」
「だって、君のことが心配なんだもん」
 手を放し、今度は紫輝の頬や髪を手で撫で回し始める。
 月光の、脈絡のない行いに。紫輝は、これはなに? とばかりに。堺や廣伊に、助けを求める視線を送る。

「なに? なんですか? なんなの?」
「瀬来様は、龍鬼大好きという、奇特なお方だ。あきらめろ」
 廣伊に言われ、そういえばと紫輝は思い返す。
 赤穂も月光も、最初から紫輝を差別していなかった。

 赤穂は、紫輝の髪を鷲掴みしてきた。
 乱暴だし、急に斬りかかってきたのも、いただけないが。その目に、嫌悪の色は見えなかった。
 月光は、今現在、紫輝を撫でくり回しているし。三人の龍鬼に囲まれていても、動じていない。
 さらに、龍鬼の淹れたお茶を飲んでいる。
 これは、龍鬼との接触を厭うこの世界では、本当にあり得ないこと。
 紫輝は同じ食事の場につくだけでも、嫌がられてきたのだから。

 龍鬼大好き、というのは。好感が持てる。
 けれど、天誠以外の人から、過度のスキンシップを受けるのは。慣れていないので、きつい。

 紫輝は…話を戻すことで、月光の手から脱出を図った。
「つか、赤穂と金連様も仲が悪いのか? 傍流って?」

 月光はピタッと手を止め、椅子に座り直す。
 脱出成功。

「イヌワシ血脈の、赤茶色の大翼が、将堂家の証なんだけど。赤穂は、黒系の翼でしょ? 赤穂の母上はオオワシで、その特徴が出てしまったんだ。赤穂の父上は将堂家の次男で、赤穂が生まれる前に戦死なさった。それで金蓮様の父上が赤穂を引き取ったわけ。つまり、兄弟だけど、厳密には従兄弟いとこ。だから、傍流」

「え、それ、言っちゃっていいやつ?」
 将堂家のお家事情は、トップシークレットなのではないかと。紫輝はひやりとしたのだが。

「いいや、将堂軍にいる者は、誰でも知っている話。むしろ広めている。赤穂は戦に強いから、将堂の頭に据えたいと目論む者がいるんだ。だが赤穂は直系ではないと知らしめ、そういうやからをけん制したいわけ」
「なるほど、それで将堂乗っ取りなんてワード…言葉が出てきたんだ?」

「赤穂に、その気は全くないんだけどね。あのふたりの仲が悪いか…それは、よくわからない。好きをこじらせた、嫌いのようにも。本気で嫌いなようにも。触らぬ神に祟りなし、的な回避のようにも。見えるし。実際、あのふたりの性格は真逆なので、相性が悪いのは確かだね」

 赤穂と月光は、廣伊と千夜みたいに、ニコイチっぽい印象だ。
 だから、月光がわからないというのが、少し意外に思えた。
 まぁ、そう簡単に、人の関係性なんてわからないものだよな?
 でも、今、紫輝にわかることは。金蓮は好ましくないということ。

 龍鬼を三匹と言った、それだけで、紫輝の中の金蓮の好感度は爆下がりだ。

「わかりました。嫌なことはさっさと済ませましょう。あ、堺は、命かけないでいいからな」
 命に代えても、と言った堺に、釘を刺しておく。
 堺は本当に、紫輝のことを、命懸けでかばってしまいそうだから、心配なのだ。
 それに、金蓮の前に出たら、また傷つけられそうなのに。
 己のために一緒に行ってくれると言うし。

 本当に、心優しい友人で。だから紫輝も、堺のことを守ってあげたくなるのだ。

 席から立ち上がり、みんなで廣伊の宿舎から出る。
 紫輝は、作戦指令室なんて、どこにあるのかわからないので。堺と廣伊が先に立って歩いていく。
 その後ろを、紫輝はついていったのだが。
 ちょいちょいと、月光に袖を引っ張られ。
 視線を向けると、月光が人差し指を唇に当て、言った。

「内緒だよ。僕の息子がね、龍鬼なんだ。だから、紫輝くんのことが、他人事じゃないんだよ?」
 紫輝は、開いた口が塞がらないくらい、驚いた。

 だって、月光は。自分と、年齢はそんなに変わらないんじゃないかと思っていたから。
 廣伊の例があるから、年齢だけなら、そういうこともあるかと思えるけれど。

 まさか、息子までいるなんて…信じられない。

「え、息子さんが、いるの? 月光さん、いくつなんですか?」
「歳? 二十一だけど」
 思ったより年上で、驚いた。
 廣伊のときほどではないが。ふわふわ系桃色美少女顔が、年上だなんて。

「えー、すごいな。そんなに若いのに、側近なんて幹部職で。それに子供までいるなんて…」
「子供は、ともかく。役職は家柄のせいだよ。赤穂とは幼馴染みでね、くっついていたら、なんか、いつのまにか、側近になってたって感じ。僕自身は、全然すごくないんだ」

 でも、右軍総司令官である赤穂にツッコめる幼馴染みというのが、もう貴重な人材と言えるのではないだろうか。心の中で紫輝は、うんうんとうなずいている。
 その間に、月光は話を進めていた。

「今の世の中、龍鬼は生きにくいでしょう? 金連様みたいな、頭の固い人ばっかりで。嫌になるよ。龍鬼を子に持つ親として、君のことも、とても心配しているよ。ぜひ、君の力になりたい」
「ありがとうございます。嬉しいです。そんなふうに言ってくれる人、少ないから」

 紫輝は、将堂の龍鬼である、堺とも廣伊とも友達だから。龍鬼であることの孤独は、初めからなくて。
 早い段階で、眞仲や千夜という、自分に味方してくれる人たちとも会えたから。
 堺みたいに、傷つき切るところまで、いかないで済んで。幸せな方なのだろうと、自分で思っている。
 そして、月光が力になりたいと言ってくれたことが、本当に嬉しかった。
 ひとりひとり、心を開ける人物が増えていくといいな。

「それで…紫輝のご両親は、どこにいるの?」
 無邪気な感じで聞かれたけれど、それは、龍鬼的にはデリケートな質問なのでは?
 龍鬼は、龍鬼を生み出した一族ごと処分されることもあるという。
 なので、身内のことは明かさないのが鉄則だ。

 そもそも紫輝は。本当の両親のことなど、知らないし。
 でも。この世界で生まれたということは。

 この世界に自分の両親もいる…ってことだよな?

 弟と再会し、真実を知り、自分が龍鬼であることを知って…いろいろありすぎたから。正直、そこまで頭が回っていなかった。
 回す余裕がなかったというか。

「さぁ、今、どこにいるのか。それは知りませんが」
 育ての親は、三百年前です。多分アメリカにいるけれど、今はわからないな。ということで。
 嘘ではないので。紫輝は、変に顔を引きつらせずに済んだ。

「あれ? もしかして警戒しちゃった? 詮索するつもりじゃなかったんだけど…。じゃあ、紫輝より年下の龍鬼には会ったことない?」
「ないです、けど」
 これは本当にないので。
 でも、質問の趣旨がわからず。紫輝は首を傾げた。

 そのとき。あの、背筋が痺れるような殺気が、紫輝に向けられて。
 紫輝は本能で、ライラ剣を後ろ手で掴む。
 あれ、つい最近、似たようなことがあった。デジャブ。とりあえず、ライラ。生気を吸わないでっ。

 剣を振り下ろし、でっ、のところで、剣が合わさった。
 二撃、三撃、受けたところで、赤穂が引く。つか、やっぱり赤穂だった。

「赤穂、てめぇ、また、いきなり斬りかかってきやがって。こういうの、やめろよな??」
「あぁ? おまえだってこの前、いきなり生気吸っただろうがっ」
 お互いに、剣を鞘に収めながらも、威嚇し合う。

「剣を合わせたら、生気を吸うって約束なんですぅ。今度やったら、電撃落とすぞっ」
「上官に電撃喰らわすなんて、悪い龍鬼だなぁ。処分だ。減俸にしてやる」

 紫輝と赤穂の不毛な言い合いに、月光が割って入った。
「はいはい、准将赤穂が、大人げないこと言わない」
「ちょっとした、お遊びだろうが」

 赤穂は、整った容貌だが。シャープな顎のライン、不穏な笑みをかたどる唇。吊り気味の、切れ長な目元に、尖った視線など。なにもかもが鋭い印象。
 でも、月光に怒られて拗ねる様子とか、どこか憎めない愛嬌が感じられる。

「それより紫輝、誰と約束しているんだ?」
 ピキッと、紫輝は固まった。
 約束は、もちろんライラとしているのだ。けれど、ライラの存在を知るのは、ごく限られた人たちのみで。
 その他の人には、紫輝が龍鬼として能力を使っている、ということになっているのだった。

「それは…自分の中の約束事、というか」
「ふーん、ニャーニャーうるさい、ただのノラ猫かと思っていたが、おまえは意外と牙を隠し持った妖獣かもな。こりゃ、当分、楽しめそうだ」
 赤穂に、疑いの眼差しで、顔をのぞき込まれる。
 目の前の男は、実に楽しげに、ニヤニヤ笑っていた。

 隠し事は、うまく誤魔化せなかったかもしれない。
 たとえ話で真実かすっているのも、ひやりとするんですけどぉ。

「まぁ、いい。兄上がお待ちかねだ。行くぞ」
 小突くような、髪をくしゃりとするような、少し乱暴な手つきで。赤穂は紫輝の頭をかき混ぜた。

 先を歩いていく赤穂に、紫輝は口を尖らせ。乱れたくせ毛を、手ぐしで直すのだった。

     ★★★★★

 作戦指令室は、簡易天幕などではなく、純和風住居だった。
 樹海の中に、唐突に、屋敷みたいな建物が出現するのだから、ちょっと不思議空間。
 ここより、さらに樹海の奥へ入ると。幹部の宿舎があるって、堺が説明してくれた。

 屋敷の中は、畳敷きかと期待したのに。板張りだった。
 ブーツを脱がなくても、入れるようになっている。
 廊下の突き当りにある部屋に、赤穂を先頭に、入っていく。
 紫輝は、堺と廣伊の背中に隠れるようにして、入室した。

 壁一面に、富士山周辺の地図が張ってあり。それを背にするように、ひとりの男性が椅子に腰かけている。
 偉そうに見えるから、あれが将堂金蓮なのだろう。
 赤茶色の長い髪は、よく手入れしてあるみたいで、ストレートでつやつやしている。

 兄弟なら、赤穂の髪の手入れの手配も、お願いしたいものです。

 少し吊り気味の目。への字に引き結ばれた口元。なんか、ツンツンしてる感じ。
 背中には、赤茶色の大きな翼。服は軍服ではなく、ズボンの上に着物を三重くらい重ね着している創作着物みたいな感じ。
 赤穂と兄弟とは思えない、上品なたたずまいは一言で表すなら…。

「お公家さんっ」
「…紫輝、それは鳥類の名前ではないのでは?」

 さすがに、将堂軍の中で、一番偉い人。元の世界的に言えば、総理大臣クラスの人物の前なので。本当に、こっそりつぶやいたのに。
 堺にツッコまれた。

 堺は初対面のとき、紫輝に、鶴だと言い当てられたのを覚えていて。
 今回も鳥の名前を…イヌワシって、言うと思っていたのに、違ったから。
 つい、ツッコんでしまったのだった。

 金蓮の横には、濃茶と黒の、枯葉みたいな色の髪の男性が立っている。
 鳥の名前は…わからないな。と、紫輝は首を傾げる。
 スズメの色目に見えるけど、羽がすごく大きいから違うのか?
 あ、瞳の色が、とても綺麗な金色だ。左の幹部だから、きっと珍しい鳥なんだろう。

「兄上、新しく入軍した、龍鬼の間宮紫輝を連れてきました」
 赤穂が紹介したので、紫輝は廣伊の後ろで、無言で会釈した。

「時雨、おまえは席をはずせ。目障りだ」
 さっそく金蓮が、堺に突っかかってきた。だが堺は、それを顔色ひとつ変えずにいなす。

「本日は、間宮の護衛で来ています。ご容赦ください」
「龍鬼が、龍鬼の護衛か? 馬鹿馬鹿しい。いいから、下がれ」
「堺が部屋を出るなら、俺も出ます。行こう、堺」
 紫輝は堺の腕を取って、一緒に部屋を出ようとする。
 この不快な時間を、さっさと切り上げられるなら、その方が良い。
 あぁ、早く終わって良かったなぁ。と紫輝は思ったのだが。

 そこを、金蓮の隣にいた男性が止めた。
「なにを勝手な。金蓮様がわざわざ、お時間を割いて、おまえを見に来たというのに」
 別に、わざわざ時間を割いてもらわなくても、いいんですけど…と、口には出さなくても。
 紫輝は、ありありと表情に出した。
 堺を目障りだと言ったときから『やっぱり金蓮、嫌い』という思いが紫輝の中にあふれている。
 つか、見に来たとか、パンダじゃねぇんだから。本当に失礼な人たちだよ。

 すると、赤穂が紫輝の顔を手のひらで覆った。無礼な紫輝の顔を隠したのだろう。
「あ、兄上。堺は俺が、紫輝の護衛につけたので。どうか、お目こぼしを」
 赤穂は紫輝の頭を小突きながら、廣伊の背中に隠した。

「高槻、おまえも、この龍鬼の護衛なのか?」
「恐れながら。間宮は、私の直属の部下でございます。彼はまだ、上官と接する機会が少ないので。礼儀を指導する意味で、本日は同行いたしました」
「高槻の部下ということは、二十四組にいるのか? 燎源りょうげん、間宮を私付きの護衛にする。早急に手続きしろ」
 金蓮が隣にいた人に向かって指示を出す。
 彼は燎源という名前らしい。
 いやいや、それよりも聞き捨てならないことを言われた。紫輝は反射的に、声を出す。

「え…普通にイヤですけど」

 紫輝の発言に、部屋にいるすべての人物が一瞬固まった。
「はは、おまえは、まだ子供だから。私の言っている意味が、よくわかっていないのだな? 大将の護衛ということはな、もう戦場に出なくて良いということだ。右軍と左軍では、左の方が地位が上だということは、知っているか? さらに、私の護衛なのだから、給与も、今の数倍は跳ね上がるのだぞ?」

 いち早く我に返った金蓮が、諭すように言うのだが。
 また子供に言い聞かせるような、その態度が、紫輝は気に入らない。

 金蓮は、落ち着きを払った態度で、威厳がある。
 でも赤穂の兄なんだから。赤穂と幼馴染みの月光が、二十一歳なんだから。自分とそんなに、歳の差はないんじゃないかなぁ??

「メリット…良い面ばかりを提示するのは、ズルいですよ。地位は左が上だなんて、言いますが。左は、龍鬼の差別が激しいって聞いています。金蓮様も、龍鬼が御嫌いなんでしょう? わざわざ傷つきに、左に行く気はありません。あと、大将が戦場出ないなんて大々的に言ったら、ダメでしょう。士気が下がりますよ」

(昇進? 給料アップ? そんなのいりませんから。つか、なんで俺を呼ぶのかな。嫌がらせ? 悪い予感しかしねぇ。あぁ、新しい龍鬼を赤穂から離すことで、戦力を削ぎたいとか? 今の俺なら、簡単に言うこと聞かせられると思っている? 子供だと思っているから? 完全に舐められてる)

 頭の中で、紫輝はぶつくさ文句を言い。
 そうだ、訂正しておかないと、と思った。

「あと、俺、子供じゃないんで。十八歳ですから」
「「「「えっ!」」」」
 廣伊以外のみんなが、驚いた顔で紫輝を見た。
 なんだよ。自分は、年相応だと思いますけど??

「間宮。別に私は、龍鬼が嫌いなわけではない。以前は、藤王が。私の護衛をしていたのだから。そこの…汚らわしい男が、藤王を殺すまではなっ」
 金蓮が指をさしたのは、紫輝の隣にいた、堺だった。
 堺は、白いまつ毛を少し伏せ、うつむき加減でジッとしていた。

「なに、言ってんの? 堺は、何年もお兄さんのこと探しているんですよ。堺が殺すわけないでしょ」
 廣伊に小声で『敬語』って注意されたけど。イライラが募って、それどころじゃない。
 堺は、感情を表に出していない。
 けれど、そのこと自体が、悲しいってことを物語っているんだ。

「おまえこそ、なにもわかっていない。この男が、両親も、藤王も殺したんだ。あの事件のとき、無傷だったのは、この男だけ。あげく、なにが起きたのか、説明もできない。犯人は、この男しかいない」
 あの事件とか、紫輝のわからないことを言われ。紫輝は眉間にしわを寄せる。
 それでも、堺が犯人じゃないことだけはわかっていたが。

「藤王は、私の自慢の部下だった。美しい龍鬼。彼こそ、最強の龍鬼だ。この男は、そんな藤王に嫉妬して、実の兄を手にかけたのだろうよ。醜い。見るに堪えない、兄殺しの男がっ」

 金蓮の罵倒は、どこか聞いたことのある内容だ。
 いいや、そのニュアンスは長年、紫輝も言われ続けてきた、他人の意見と同じものだった。
 藤王は美しいが、堺は醜い。天誠がこんなにも美しいから、醜い紫輝はひがんでいる。

 自分は極悪ノラ猫顔だから、天誠と比べられたら、グゥの音も出なかったけれど。
 でも堺は、神が作り上げた氷像のように、緻密で繊細な美しい容貌なのだ。

 初めて堺と会ったとき、堺は本気で、自分が醜いと思い込んでいた。
 こいつが、堺を醜いと言い続けていたせいなのだなと、悟り。
 だから、言った。

「あんた、目ぇ見えてんの?」

 紫輝の啖呵に、廣伊はじめ、右軍の面々が、ため息をついた。
 敬語ね。わかっているけど。ここは無理。

「あんた? 大将の私に、あんただとっ? 無礼な!」
「引っかかるとこ、そこじゃないんですけど。堺はな、とっても美人さんなのっ。そして繊細な心を持ってんの。実の兄を殺せるような人間じゃないの。そんなの、ちょっと堺と関われば、わかることでしょうがっ。なのに、何年もグチグチ堺を痛めつけやがって。あんたは目が見えてないんだよ。節穴だよ」

「はっ、この短期間で、このガキを篭絡ろうらくしているとはな。龍鬼同士で慣れ合って、将堂に歯向かう気か? 時雨っ」
 金蓮に口撃されても、堺は微動だにしなかった。
 黙することで、紫輝を守っているように見える。

 でも紫輝は、堺がたぶらかしたみたいな言い方をされ、本当にむかついた。
「馴れ合いのなにが悪いんだよ。龍鬼に冷たいこの世界で生きるのにはな、肩を寄せ合いでもしなきゃ、凍えて死んじゃうんだよ。俺たちが、どんだけつらい目にあってるか、あんたにはわからねぇ。ただ龍鬼ってだけで、突っかかってくる奴が、後を絶たねぇから、俺らは生きづらくって仕方ねぇんだよ」

 今まで、将堂の龍鬼は物静かな性質の者が多かった。
 だから、まさか龍鬼が、不満を爆発させるなんて、金蓮は思いもしなかったのだ。

 これほど責められると、さすがに気圧されて。金蓮は二の句が継げなくなる。

「大将さん、あんたの大事な藤王が、今、帰ってきたら。どうすんの? 藤王が、弟をいじめたあんたのこと、許すとでも思ってんの? 兄貴ってのはな、弟をコケにされたら、黙ってられない生き物なんだよ。少なくとも俺は、大事な弟を傷つけた相手を許さない」

「間宮、大将の金蓮様に向かって、無礼が過ぎるぞ。将堂の兵士は、上官の命令を黙って聞くものだ」
 金蓮に代わって、燎源が紫輝をいさめるが。
 怒りMAXの紫輝は、おさまらなかった。

「たとえ、あんたが俺を護衛に指名しても、俺はあんたを守ったりしない。尊敬できない者を守る道理は、こっちにはないんだからな。もう一度、藤王にお願いすれば? まぁ、藤王が帰ってきても、あんたの護衛はしないだろうけど。とにかく、堺のことは、二度といじめないでくださいね」
「龍鬼ごときがっ、私に指図するのか!」

 椅子から立ち上がった金蓮は、興奮に羽を逆立たせ、柄に手をかけた。
 最悪『らいかみっ』撃って、堺と一緒に逃げちゃおうかな? って思った。
 天誠と合流して、三人なら逃げられんじゃね? なんて考えていたのだが。

 赤穂が間に入って、金蓮を止めた。

「そこまでにしていただきます、兄上。紫輝はまだ、私の部下だ。私の有能な兵士を、傷つけないでいただきたい」
「赤穂…おまえ、ずいぶん龍鬼の支持を受けているのだな? これでは、謀反を邪推されても致し方あるまい?」
「そのような思惑は一切ありません。ですが、時雨も高槻も間宮も、手放す気はありません。龍鬼は右軍が、有益に使いますから。左では、宝の持ち腐れでしょう?」

 左軍は、十月から四月まで前線基地に駐留するのだが。
 雪深くなれば、双方、停戦するのが、お決まりだった。
 つまり、左軍は。ほぼ戦闘をしないということだ。

 赤穂は『龍鬼は戦闘に使ってこそ意義がある』という姿勢らしい。 

「…兵の教育がなっていない。しつけろ」
 足音荒く、金蓮は部屋を出て行き、燎源も後に続いた。
「躾けろって言われても、猫は芸をしないものだ」

 室内に右軍だけになり。赤穂はつぶやきとともに、深い、ふかーいため息を長く吐き出した。
 そして、一度ガクリと垂らした頭を、グワッと上げ。紫輝を、苛烈な視線で睨んだ。

「おまえ、紫輝っ、今のはマジで、殺されても文句言えねぇ度合だったぞ? 死にてぇのか!?」
「ううん、らいかみっ、撃って、とんずらするつもりだった」

 紫輝も、ひと山超えたのを実感し、フッと息を吐いた。
 まぁ、確かに、とんずらは、ちょっと考えなしだったかな。
 天誠の計画ぶち壊しで、怒られるレベルだ。
 それに、さっき月光に『逃げちゃダメでしょ』って言ったばかりだったのに、すぐ撤回するとか、格好悪ぅっ。
 怒りに我を忘れて、突っ走るのは良くないことでした。反省、反省。

「やめてよぉ…もう、せっかく紫輝くんと仲良くなってきたのに、無茶しないでぇ…」
 月光は半泣きで、紫輝に抱きついてきた。
 廣伊には、頭をこつんと拳で叩かれたが、それで済んで良かった。
 なんだかんだで、廣伊が一番、怖いと思っている紫輝だった。

「申し訳ありませんでした、紫輝…私のせいで。出世の機会を逃してしまった」
 金蓮に罵倒されていたときと同じ姿勢で、堺が紫輝に謝った。
 なにも、堺が謝るようなことはないのに。紫輝は呆れてしまう。

「堺、話聞いてた? 堺のせいじゃないし。左に行きたくないって言ったの、俺だからな」
「…金蓮様から私を守るために、あんなに怒っていただいて。嬉しかった。でも私は…あの日のことを覚えていないのは事実なのです」

 涙が出たら、氷の粒が降ってきそう。
 白皙の美しい顔に、雪が積もっているかのような白いまつ毛。薄青の瞳は、冷たい宝石のようにも感じるが。
 彼自身は、心の温かい優しい人。

 きっと、紫輝の知らない事件に、一番、心を痛めているのも。彼なのだ。
 だから、紫輝は何も言わずに、堺のことを抱き締めた。

     ★★★★★

 作戦指令室の廊下を抜け、金蓮と燎源は、そのまま外へ出た。
「あのガキ、なにも知らないくせに。最後まで、時雨をかばい通した。あんな男、かばう価値などないのに」
 金蓮は、イライラがおさまらずに、地団太を踏んだが。
 左側近の統花燎源とうかりょうげんは、すでに涼しい顔に戻っていた。

「藤王にも、あんなふうに、よく怒られていましたね? 貴方が、部下や龍鬼を見下す言動をとったときなどに」
 燎源の発言を、金蓮は信じられないという顔つきで見た。

「馬鹿な。あのガキが、藤王に似ているとでも?」
「顔はともかく。精神性は近いものがあるかと」

 金蓮は、藤王の顔を脳裏に思い描く。
 透明に近い白髪の、長く真っ直ぐな髪。整った顔の造作。上品な洗練された仕草。
 黒いくせ毛の、口の悪いガキとは、比べようもない。
 
「…藤王は、あのように声を荒げたりしない」
「でも、あの子に責められたときの貴方。藤王に怒られたときと同じ顔をしていた」

 金蓮が三歳のときから、燎源と藤王は、遊び相手としてそばにいた。
 彼らは、金蓮より四歳ほど年上だが。
 剣の修練も勉学も、ともに励んだ、かけがえのない友だった。
 名家に生まれ、将堂の跡継ぎとして育てられた金蓮には、大人も頭を下げる。自然、下々の者を見下すようになったが。

『今、貴方が頭を下げられる立場にいるのは、祖先の功績の結果であって。貴方が偉いのではない』『貴方のために働く者を、見下してはならない』などと、藤王はいつも正論で、金蓮をたしなめたものだ。

 あのガキが、藤王と同じなどと。思いはしない。
 ただ、自分に意見を言う者が久々に現れたから、驚いただけだ。

「間宮の言うとおり、時雨が藤王を殺害したというのは、言い過ぎかと。死体がない以上、生死は不明です」
「私の前から藤王がいなくなった、それだけで、時雨も高槻も罪に値する。あいつらがしっかりしていなかったから、いまだ藤王の消息がわからないのだ」
 龍鬼は特別な能力を持っているはずなのに、藤王ひとりみつけられないで、龍鬼を名乗るな。と、金蓮は思う。

(私の龍。気高く美しい龍。どこに隠れてしまったのか…)
「護衛の件、もう一度、間宮に打診しますか? 大将の命令は、基本、従わねばならぬものです」
「いいや。あれだけ真正面から守らないと豪語されては、な。しばし様子を見よう」
 龍鬼が…強い力が、赤穂のもとに一点集中するのは良くない。
 だが、時雨と高槻は。藤王と近しい者だから、そばに置きたくなかった。
 顔を見ればどうしても、藤王を思い出し、胸が痛む。

 なので金蓮は、なんのしがらみもない三人目の龍鬼は、手元に欲しいと思っていた。
 しかし、まさか。この短期間で、あれほど時雨に懐いてしまっているとは。

 そして時雨も、間宮のことを、全力で守ろうとしていた。
 時雨だけではない、高槻もだ。
 高槻は、終始黙っていたが。全く油断していなかった。戦闘態勢の気配だ。
 戦闘態勢と言えば、赤穂も、月光も同様だった、か。

「あのガキ、何者なんだ?」

 子供の龍鬼を、上司が守っている…という図なら。理解できるのだが。それだけではないような。
 しかし、間宮は。前線基地に入って、まだ二ヶ月のはずだ。
 直属の上司である廣伊はともかく、幹部連中は、それほど間宮と関わる時間はなかったはずなのに。
 幹部の、間宮への、あの執着は、いったいなんなのだろう?

 答えの出ない疑問が、腹立たしく。龍鬼を手に入れ損ねたこともまた、腹立たしい金蓮だった。

     ★★★★★

 紫輝と堺と廣伊は、引き続き作戦指令室にいた。
 堺が、紫輝に。事件のことを話したいと、言ってくれたのだ。

 赤穂と月光は、紫輝の尻拭いで、金蓮の御機嫌を取りに行くため。部屋を出て行った。
 月光は、嫌がっていたが。
『俺ひとりにやらせる気か?』と言って、赤穂が引っ張って行ってしまったのだ。

「…時雨様」
 廣伊が、堺になにかを言いかけたが。堺がそれを手で制した。
「高槻。私のことは、どうか、昔のように、堺と呼んでください。時雨の名は、私にとって、重たい枷なのです」
「本来は、格下である私が上官を名で呼ぶなど、恐れ多いことだが。貴方の気持ちもわかるし。では…龍鬼のよしみで、これからは、堺と呼ばせていただきます」

 ふたりは堅苦しい感じで、やり取りし。ようやく本題に入ることになった。

「当事者の堺には、話しにくいこともあるだろうから、私が語ろう。八年前の出来事を…」
 指令室には会議用の長机があり、紫輝たちは椅子に腰かけ、廣伊の話に耳を傾けた。

 事件があった二二九三年は、慌ただしい年だった。
 前年に、将堂軍の、当時の総帥であった将堂山吹が、討ち死にし。
 年明け早々に、将堂家長男の金蓮が、十六歳という若さで、将堂軍総大将の任に就いたのだ。
 若い大将を盛り立てたのは、分家である美濃みのう家と。三大名家と呼ばれていた、時雨家、瀬来家、麟義りんぎ家だった。

 堺の兄である藤王は、幼少期から金蓮に仕えていた。
 藤王は、火も水も扱える、強力な龍鬼であり。頭脳も冴え、武芸にも秀でていて。左筆頭参謀の地位に就いていた。
 上司には忠誠をつくし。部下には気さくに接する。平等を重んじ、正義に熱い。非の打ちどころのない人格者で、龍鬼でありながら周囲の評判も高い、稀有な存在でもあった。

 その頃の堺は、十五歳。右軍参謀として、赤穂の下で働いていた。

 時雨家で事件が起きたのは、二月、雪の降る晩のことだった。
 その日、堺は熱を出し、実家で養生していたのだが。
 兄弟仲が良いと評判の藤王も、堺を看病するのだと部下に言い残し、夕方、左軍の宿舎を出たらしい。
 藤王が目撃されたのは、そこが最後。

 離れに下がっていた時雨家の使用人が、夜半に母屋での異変に気づき、軍に知らせを送る。
 母屋の中では、当時、左将軍だった堺の父、そして母が惨殺されており。そのそばに、血まみれの堺が、意識のない状態で倒れていた。
 家に帰ると言っていた藤王は、それきり行方不明になった…。

「…ん? それで、なんで堺が藤王を殺したことになるの?」

 廣伊の話をおとなしく聞いていたのだが。紫輝は黙っていられなくなって、たずねた。
 だって、堺がどうこうって要素、全くなくね?

「いや。時雨家は、手裏の襲撃を受け。藤王は、拉致されたのだろうと、調査団は判断した。しかし、すべてを知るだろう堺が、その日になにがあったのか、全く覚えていなかった。そして、推測の域を出ない検証結果に、不満を持つ者が多く。堺が乱心して、両親も藤王も討ったのではないか…という噂が立ったのだ」
「なんで、乱心なんて言われるの? 堺は別に、突然キレたりする、危ないやつじゃないだろ?」

 むしろ。穏やかで思慮深い。突拍子もないと思われる異世界の話を、紫輝がしたときも。堺は冷静に、いろいろな仮説を立ててくれた。
 そんな、賢く、理路整然としている堺が、なんで?

「時雨家は、藤王と堺、ふたりの龍鬼を産み出してしまった。そのことで、謀反を企てているのではないかと、常々疑惑の目を向けられていたんだ。実際には、他家が謀反を起こしたのだが。まぁ、それは別の話として。当時は名家の後継問題で、将堂軍全体が、ごたごたしていた時期ではあった。さらに堺の父上は厳格な人柄で、二人目の龍鬼である堺には、誰の目から見てもわかるほどに、冷淡だった。そんな背景から…後継に選ばれなかった堺が、今までの恨みを晴らしたのだとか、乱心したとか、言われたのだ」

「えぇ…それって。想像? 妄想? 言いがかり…なのでは? だって、堺は。何年も、お兄さんを探していて。それって、お兄さんを慕っているから、大好きだからじゃん? なんでもできるお兄さんに嫉妬してて、家督を継ぎたい野心があるなら、もう、とっくに、探すのやめてるはずだよ」
「…だな」

 廣伊が同意したので、紫輝も、そうだろうと、胸のうちで大きくうなずく。
 己の推理に満足していた。
 堺が神妙な面持ちで、悲しい言葉を絞り出すまでは。

「でも、私には記憶がない。両親の遺体のそばにいたのも、何故か。わからないのです。もしかしたら、本当に。両親を殺したのは、私なのかもしれません」
「いいや、絶対にそれはない。堺は、そんなこと、できないでしょ?」
 かぶせ気味に間髪入れず、紫輝は否定した。
 そう、堺に肉親を殺すことはできない。
 どんなに非情に、敵を斬り捨てる氷龍でも。普段の堺は、情にあふれた男なのだ。

 まだ数回しか顔を合わせていない、紫輝のことを。とても気遣ってくれる人だから。
 自分こそ金蓮に傷つけられるのに、紫輝を金蓮から守るために、同行してくれたし。
 弟を探すことをあきらめないでと、励ましてくれたし。
 紫輝が龍鬼だと知っていたのに、困惑させないよう落ち着くまで様子を見てくれた。
 そんな優しくて情に厚い人が。肉親を無残に殺すわけはないと思う。

 でも。藤王はわからない。
 廣伊の話を聞く限り、藤王は弟想いの人格者。万人に優しく、頭脳明晰で、見目も美しく…それって、どこかで聞いたような話。

 天誠だ。

 紫輝の両親は、人柄がよく。養子の紫輝を、愛情深く育ててくれた。
 だから、天誠が親を殺す、なんて思ったこともないけれど。

 でも、堺の話を自分たちに置き換えたら。
 両親が紫輝を、日頃から厭わしく思っていたとして。危害や中傷を紫輝が受けている現場に、天誠が居合わせたら…。

 その事件の日、なにが起きたかはわからない。
 でも藤王と天誠は、話を聞いた限り、気質が似ている気がする。
 藤王がどれだけ、堺を大事にしていたか。堺が兄を慕う様子を見ていれば、想像がつく。

 だから『藤王はわからない』なのだ。

 でも、これは。堺には話せない。
 天誠のたとえ話を、するわけにいかないのもあるが。
 紫輝の仮説は、藤王が両親を殺害して逃げたのではないか、ということだからだ。
 兄が犯人かも、なんて堺には言えないよ。

 でも、普通なら。一番に疑われるべきなのは、消息不明の藤王のはずなのだ。
 しかし藤王は人格者で。あの人はそんなことしない、というフィルターが、将堂軍全体に掛かっている。
 自然、消去法で、堺に矛先が向いてしまったのだろう。

 紫輝的に言えば『あの人はそんなことしない』の代名詞は堺なのだけど。

「堺は、自分を信用していないのかもしれないけど。なら、俺を信じて。堺はやってない。俺は断言できる」
 紫輝は堺の手を握り、しっかりと目をみつめて、言い切った。
 それに、廣伊もうなずく。

「私も、そう思います。かつて、藤王は。虫も殺せぬ心優しい弟が、戦場に出るのを、とても心配していた」
「虫くらい、殺せます」
「…罠にかかったうさぎを、助けてあげてと、泣いて頼んだとか? 食用だったが、泣く弟があまりにも可愛かったから。逃がした、と聞きましたが」

 兄バカだ!
 紫輝は心の中で叫んだ。
 やはり、天誠と同じ人種…。藤王は、スーパーブラコン確定だっ。
 泣く弟が『可哀想』ではなく『可愛い』と言っちゃうところが。天誠と同じ、ヤバいブラコン臭がする。

「そんな…子供の頃の話ですよ」
 色白の頬をほんのり赤くして、堺はつぶやく。
 可愛い。
 堺は、今の天誠と同じく、年上で、体格が大きくて、強い戦士。可愛いと言うのは、失礼なんだけど。
 でも、弟属性だから。
 体が、いくら大きくっても。弟という生き物は、いつでも可愛く見えるものなのだ。
 紫輝の兄属性が、うずうずするのだっ。

「わかった。やっぱり、うさぎを助けた堺には、兄殺しなんかできないってことだ」
 まだ納得していない、心細そうな顔をする堺を。紫輝は、兄の顔で諭した。

「堺が、この話をしてくれたのはさ。もしかしたら、自分に非があって、金蓮様の意見も一理あるかもって、思ってたからなんだろ? でも俺は。どうしても、堺が首謀者とは思えないよ。結局さ、金蓮様が、藤王がいなくなったことを堺に八つ当たりしてるだけじゃん。なんで藤王がいなくなったのか、それは謎だけど。とにかく、それは堺のせいじゃない。俺みたいに、金蓮様に仕えたくなくて、逃げちゃったのかもしれないし。本人にしかわからない事情や理由が、藤王にはあったんだろうって思うんだ。でもそれで、大事な弟が長く苦しんだって知ったら。兄貴は悲しむと思うんだけどな?」

「しかし龍鬼が、八年もの間、誰にも見られずにいるのは難しいぞ」
 冷静な声で、廣伊に言われるが。
 以前の世界では変装やコスプレが珍しくはなかったから、紫輝は首を傾げる。

「そう? 藤王は優秀なんでしょ? 擬態くらい、普通にするんじゃないかな?」
「「擬態!?」」

 廣伊と堺が、考えたこともないという様子で驚いた。
 あれ? まず変装ぐらいは、するでしょ?

「まさかっ、紫輝が…兄さんっ?」
 そして、目をキラキラさせて、あり得ないことを堺が言い出した。

「いやいや、、みんなの話を聞く限り、藤王って美しいんでしょ? 俺、極悪ノラ猫顔なんですけど。ここまで別人に変化…しちゃう? 藤王ならしちゃうの?」
「兄さんなら、できますっ…たぶん」
 なんか、堺が断言しちゃったよ。
 ええぇぇ、そんなつもりじゃなかったんですけど?
 期待を裏切るようで、ちょっと可哀想な気もするけれど。仕方なく、そこは否定した。

「堺…それは、ない。俺が藤王だったら、自分でネタばらし、しないでしょ?」
 目に見えて、堺は肩を落とした。
 いや、ごめん。でも、事実、藤王じゃないから。マジでごめん。

「俺が考える擬態は、羽はないけど、あるように見せるとか。そういう惑わしや誤魔化しが、龍鬼の能力でできるんじゃないかなってこと」
「確かに、藤王の能力は底が知れなかったから。そのようなことができないとは言えないな。まぁ、今の話はすべてが憶測だ。藤王がみつからなければ、事の真相は、なにもかもわからない」

 結局、そこに話が戻り。三人でうーん、となる。
「あの…良い機会なので、高槻にも謝りたいのですが。兄が失踪したことで、左軍から追われてしまって、多大なご迷惑を…ずっと、申し訳ないと思っていました」
「いいや。それは、先ほど紫輝が言ったように、堺が謝ることではない。そして、左軍は私のいるべき場所ではなかった。それだけのことだ」
 そう言って、廣伊は。堺を慰めるように、肩口をポンポンと叩いた。

 あれ? これって、廣伊の失脚話じゃね?

     ★★★★★

 時間は少し、さかのぼり。紫輝たちが、堺の過去の話を聞いている頃。

 先に作戦指令室を出た、赤穂と月光は。木が生い茂る樹海の中にいた。
 地面に日が差さないほどに、鬱蒼とした場所に。身を潜ませている。

「堺は、紫輝のこと、記憶喪失だなどと言っていたが。兄上との話の中で、兄弟がいるような表現があった。あいつは、記憶喪失じゃねぇ」
「確かに、親のことを聞いたときも、覚えていないではなく、知らないと言っていた。でも、堺が僕たちに嘘を言うなんて、考えられないけどな」

 赤穂の言葉に、月光は首を傾げる。
 赤穂たちが五歳のとき、七歳の堺に出会った。いわゆる幼馴染で、それから十六年の長い付き合いがある。
 なので、赤穂は。堺を、信頼しているのだが。

「堺じゃねぇ。紫輝が嘘をついているんだ。大体龍鬼が、十八歳まで誰にもみつからずに、育てられるわけねぇ。それに加えて、紫輝の、あの天真爛漫さだ。がっちり監禁されていて、みつけられなかった。であるならば、あれほど健全で、真っ当な人間は育たねぇよ」
「そうだね。紫輝は、とても良い子だ。頭の回転も速く、学識もありそう」

 赤穂も月光も、紫輝が金蓮に食ってかかった、あの場面を思い出していた。
 感情的ではあったが、紫輝の主張は正論だった。

 ほとんどが、龍鬼であることの弊害や、堺を貶めたことへの不満だったが。
 金蓮の、堺への攻撃を。紫輝は、真っ向から不当であると示し続けた。

 赤穂だって、堺が藤王を殺したなど、思ったことはない。しかし、肝心の堺自身が、胸を張って無実を主張できなかったのだ。
 本人が信じていないことを、かばい続けるのは。将堂家の次男という、平等な判断を下さなければならない地位にいる赤穂には限界がある。

 でも、紫輝はそれを押し通した。

 だが、それをやり遂げるには、自分が正しいと思う、確固とした軸を持ち。さらに権力者を恐れない、勇気が必要だ。
 龍鬼は、迫害を受け続けるうちに、大衆や権力者という、太刀打ちできない力を持つ者を、恐れるようになる。
 でも紫輝には。その傾向が見られない。迫害を受ける環境で育たなかった、のか?

 そして、普通の者ならば、左軍の上位に取り立てると言われたら、即うなずく。
 大抵の者が、稼ぐために入軍するからだ。
 でも、紫輝は断った。
 金銭に、こだわっていないということだ。
 それは、養うべき家族がいないということか。元々裕福なのか、だ。

 さらに。紫輝は強力な龍鬼なので、あまり危機感がないのかもしれないが、戦場に出なくて良いというのも、出世する魅力のひとつである。
 誰しも、安全で、楽して、稼ぎたいだろう。
 つまり紫輝は、安全も、楽も、金銭も、必要ないのだ。それって、どういうこと?

「あいつには、なにか裏がある。紫輝が入軍した経緯を、洗い直す必要があるな? 紫輝の素性がわかれば、なにか…手掛かりになるかもしれない」
「…うん。そうだね。もう少し探ってみよう」

 優しく穏やかな、月の光のように柔らかい印象の月光。その瞳に、一瞬。強い光が宿った。

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