【完結】勇者のスキルにラッキースケベがある(村人A専用って、俺ぇ!?)

北川晶

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エピローグ サファ・ターン

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     ◆エピローグ サファ・ターン

 エロダンジョンを抜けた俺たちは、またまた二週間かけて、モヨリ町に戻ってきた。
 冒険者ギルドへ行って、ダンジョン踏破の報告と、地図や攻略ガイダンス、ゲットした未使用のドロップアイテムなどを売りに出した。
 すると、まぁ。五人で分けても、ひと財産築けてしまった感じ?
 うーん、これだから冒険はやめられないなぁ。
 一攫千金の夢があるじゃん?

 まぁ、テオを危険にさらしてしまったから、そこは反省点だけど。
 ギリ、貞操は俺が奪ったということで。テオにも、お許しをもらっています。
「ま、ゲコヌメェのアレがなかったら。たぶんいまだに、おまえの凶器は受け入れられてねぇだろうから。結果オーライでいいんじゃね?」
 もうっ、テオは。すっごい男前発言。
 ゲコヌメェは最高に気持ち悪かっただろうに、お、俺を受け入れるために我慢してくれたのぉ? そうではないかもしれないが。惚れるよっ、マジでっっ。

 で、モヨリ町にいた冒険者たちは。放置したドロップアイテムがあるという俺たちの話を聞いて。早速ダンジョンへ出かけて行ったのだ。
 無論、攻略対策は万全にして、な?
 なんといっても、勇者一行も手こずる、癖ツヨエロダンジョンだ。難易度はAクラスと言っていいだろう。お気をつけて。
 それで、俺たち勇者一行は。とりあえず、モヨリ町の一番いい宿の一番いい部屋をふたつ取り。
 二日ほど、お休みすることになった。
 まぁ、その間。俺たちもクリスたちも、部屋から出ることはなかったのだが。

 クリスたちは。どうやら三人でお付き合いする感じになったようだ。
 優柔不断なクリスは、彼女たちのどちらかを選ぶことができず。
 ユーリもイオナも、互いの能力や人柄を尊敬しているので。相手を蹴落として、自分が、という気にはならなかったという。
 そして、ダンジョンのラストミッションで、三人でいたしたアレが、それほど悪い印象ではなかったらしく。
 だったら三人で仲良く過ごしましょう、ということになったようだ。

 ある意味、クリスはひとり勝ちなのかもしれないな。

 いや、俺も、テオという最愛と気持ちが通じ合ったのだから。勝者だけどな?

 いやいや、勝ったといったら。あの魔剣が一番ウハウハなのかもしれない。
「あぁ、絶倫勇者とテオのドエロラブもいいけどぉ。クリスたち三人のラブパワーもなかなか濃厚よぉ? いつもラブゲージが満タンで、ホントに満足だわぁ? このパーティーに同行できて、あたし本当に、し、あ、わ、せっ」
 オスが無理やり高い声を出しているオネェ声で、言われると。
 なんか、腹立つな。

「おまえ、護身用に、仕方なく寝台のそばに置いているが。最中に声を発したら、速攻、川に捨てるからな?」
 俺は寝台のそばの小机に立てかけてある魔剣に向かって、そう言った。

 一番いい宿の一番いい部屋と言っても、モヨリ町はまだまだ小さな町なので。このドラゴンがラストミッションで用意したみたいな、ムードのあるおしゃれな部屋に大きな寝台、というわけにはいかない。
 板張りの床に古ぼけた家具が置かれた、質素な部屋だ。
 寝台も、ダブルの割には、俺が寝転んだら、終了という感じ。
 ま、テオのことは抱っこして寝るから。狭くてもいいけど。

 で、今は。第一ラウンド終わって、軽食を摘まんでいるところ。
 途中で息切れしないように、な。
 夜は長いし。テオと、一晩中抱き合うっていう約束をしているので。ゆっくり、じっくりだ。

 テオは寝台にうつ伏せに寝ていて。肘をついて頭を起こしている。
 俺はその口元に、皮をむいた果物を差し出した。
 それをテオは口を開けて、パクリ。
 あぁ、無防備で。俺に気を許して、俺の甘やかしを受け入れるテオ。かっわいぃぃぃ。

「わかっているわよぉ。あたしはラブゲージが下がるようなことはしないわぁ? 空気を読める魔剣よぉ?」
 ドラゴンが、そう言うが。テオは魔剣をジッと見やる。
「なんか、見られている気がする」
 魔剣の鍔の中央についている、ドラゴンの宝玉。ペリドットなのでテオの瞳の色と同じで、俺は気に入っているが。確かに、キラリンと輝く宝石は、ドラゴンの瞳のようでもある。
 というわけで、魔剣を裏返す、俺。
「ちょっとぉ、あたしのおたのしみを少しくらい残しておいてちょうだいよぉ?」
「ここに置かれるだけでありがたいと思って、おとなしくエロゲージだけ貯めとけっ」
「ひどーい。魔剣の扱いが雑なんですけどぉ??」
 ぶすくれるドラゴンに、テオは屈託ない笑みを見せる。

 うーん、なかなか、幸せ。

 俺は、この頃、ヘルセリウム国に流通されるようになった『っんもも』という果物を口にして、テオに口移しで食べさせた。
「んっ、甘。桃? 美味しい」
「俺も、美味しい? テーオ?」
 意味深に目を細めて、彼を見やると。テオも、はにかんで笑い。
 そして、っんもも味の甘い甘いキスを交わすのだった。
 俺は布団に潜り込み、テオを腕の中に閉じ込めて。足と足を絡める。
 朝まで、もう離さない。

     ★★★★★

 というわけで、私生活が充実しまくりの、イケてる勇者一行は。
 モヨリ町を出て、一路、魔王が統治するアストリアーナ魔王国へ向かったのだった。

 途中の森で、出没する魔獣を退治しながら、一ヶ月ほどをかけて。アストリアーナ魔王国、通称、魔国の検問所へたどり着く。
 普通は、生まれた国とは違う国へ入るとき。国が発行する通行証を検問所に出して、通るわけだが。
 勇者が魔王を倒しに来たのだから。そう簡単に通してはもらえないだろう。
 勇者一行は、身構えて。検問所に通行証を出す。
 検問所から魔王城までは、さらに歩いて数ヶ月の道程だ。
 一応、初手は穏便に。牙をむいてきたら対峙する。そう仲間とも事前に打ち合わせをしていたのだが。
 通行証に勇者と書いてあるのに。(一応、偽造の通行証もあるが。正面から堂々と行くスタイル)
 なんでか、すんなり通してくれた。
 舐めてんのか?

 そうしたら、検問所の職員が『勇者一行が御到着したぞぉ』と高らかに叫びやがった。
 ツノの生えた村人、魔族が、ぞろぞろと集まってきて。
 すわ、戦闘かと思ったが。

 みんな、ニッコリ笑顔で歓迎してくれる。
「まぁ、勇者様が魔国に来たのは何年ぶりかしらぁ?」
「十年? いや、二十年前かなぁ?」
「勇者様、旅のお守りをどうぞ? 旅の安全を守る、魔国の名物なのですよぉ?」
 村人がくれた、なにやら太った守護天使のお守りを見やり。俺は首を傾げる。
 騙されている? 油断を誘っているのか?

「えぇ? これ、可愛いなぁ。いただいていいんですかぁ? ありがとうございます」
 根が素直なテオは、すでに村人と和気あいあい話している。コミュ力高っ。
 そして、俺が警戒しながら、町の露店などを見ていたら。テオが辻馬車をチョッパヤで捕まえてきた。
「なぁ、サファ。あの馬車で魔王城まで乗せていってくれるって」
 仕事早っ。しかも格安。

「大丈夫かぁ? テオ。罠かもしれないぞ?」
「そうしたら、みんなでやっつければいいんだろ? 敵陣に入って。魔王を倒すなんて言えば、魔族が総力をあげて挑みかかってきてもおかしくないが。できれば、なるべく魔族と対峙するのは避けたいじゃないか? 攻撃してこないうちは、こちらから手を出さない方がいい」
 こっそり、テオが耳打ちしてきて。こそばゆいけど。

 まぁ確かに、余計な殺生せっしょうは好まない。

 それに、魔族はツノが生えてはいるが、普通の人間と、さほど変わりない様相をしている。さすがに、そういう輩を手にかけるのは、胸が痛むし。なるべく相対さないに越したことはない。
「よし、辻馬車で魔王城まで行こう」
 どのみち魔王城には、勇者の名乗りをして、正面から入るつもりだったのだ。
 魔王が大妖精を解放してくれるのなら。戦闘はしなくてもいいと考えている。
 国王が望む、大妖精を魔王から救い出すというミッションが果たせれば、なにも、大きな戦闘を引き起こすことはない。
 まぁ、冷徹で残忍であるという噂の魔王が、話し合いに応じてくれるとは思わないが。
 そうして、魔王城まで数ヶ月かかるだろうと思っていた道のりは。
 途中、魔族に襲われることもなく。なんのトラブルもないまま。二週間で目的地に到着したのだった。

 マジか?

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