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39 どんだけエロいの? テオ・ターン

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     ◆どんだけエロいの? テオ・ターン

 俺が目を覚ますと、サファが温かい濡れた手ぬぐいで体を拭いてくれていた。
 うつ伏せだったから、手ぬぐいの当たる背中が、温かくて気持ちいい。
「ん、俺、寝てた?」
 なんか、頭がボッファァァってしてる。目が覚めても、のぼせたままの感じ?
「俺がちょっと、やり過ぎた。ごめん」
 甲斐甲斐しく、俺の世話を焼くサファが、軽くついばむキスをして。なんだか、許して許してというような、イカ耳ワンコになっている。
 それで。あぁ、絶倫勇者がタガを外したのだったと、俺は思い出した。

「でも、ありがとう。俺とあんなに幸せなエッチをしてくれて」
 顔を覗き込んで、フフっと笑われたら。
 怒れないじゃないか。ズルいワンコめ。

「早く、起きなきゃな。ラスボスの部屋に裸でポイされたくない」
 俺は口をへの字にしながらも、暴走の件には触れず。
 まぁ、お互い様な部分もあるからな。
 着替えをしようと、ベッドの上で、ウゴウゴ動いた。痛くはないけど、あちこち、体がギシギシするぅ。
「急がないで大丈夫。部屋の扉は開いているけど、アイテムを取らないと、元の部屋には戻らないみたい。いつものボス部屋と同じ感じだ」
 そう言って、サファはやんわり俺をおさえつけて、濡れ手ぬぐいで俺の体を拭いていった。
 前面はすでにさっぱりしているから、寝落ちしていた間に、綺麗にしてくれたみたい。
 うぅ、恥ずかしいけど。
 後始末をしてくれたことがありがたいし。まだ体がウゴウゴなので。しばらく、サファに身を任せた。

「アイテムが出た?」
「廊下にある。テオに鑑定してもらってから、取ろうと思って」
「罠かもしれないし。賢明な判断だな」
 急がなくても大丈夫と言われても。いつまでも裸でいたくないので。あらかたサファが体を拭きあげてくれたのを機に、俺はノロリと体を起こす。
 サファはすでに、装備まで整えた、万全の体勢だ。

「つか、猶予が与えられるのは、ありがたいが。あんなに腰を酷使したあとで、ラスボス戦できるのか?」
「もちろん、俺は今、最高に燃えている。ラスボスでも星でも、今なら壊せそうだ」
 目をキラキラ輝かせ、拳を握るサファは。確かに最高の笑顔で俺を見やっている。
「…星を壊すのはよせ」
 一応、忠告はした。濃厚な情事で頭がボヘボヘでも、それがヤバいことはわかる。

「ラブゲージを貯めるのに、精も根も尽き果てさせて、ヘロヘロの冒険者を踏み潰すというのが、ドラゴンの思惑なら。おあいにく様だな? 俺はまだまだメキメキだっ」
 まだメキメキなんだ、と。呆れてジト目になる、俺。

 サファが目の前に置いてくれる服に袖を通しながら、聞いた。
「てか、いつ、扉開いたんだ?」
「………さぁ」
 おい。なんだ、その間は?
 まさか、扉が開いているのを知っていて、享楽にふけっていたわけではあるまいな?
 疑いの眼差しで見るが。まぁ、いいか。
 俺も、サファと。幸せなエッチに溺れてしまったのだからな。
 服を着つけていると。クリス先生たちが廊下に出てきたから。
 急いで体裁を整えて。ベッドを降りた。

「大丈夫? 俺が抱っこしてやろうか?」
 サファが、キラキラの目のままで、俺に手を差し出すから。顔が赤くなった。
 そんな、いかにも激しいセックスしました、みたいな様子を。みんなの前で出したくないっつーの。
「恥ずかしいから、そういうのいらないっ」
「ホントに? 腰抜けてない? 俺のぶっとい凶器を、この小さなお尻で受け止めたんだから、心配だ」
 そうして、腰を手で撫でてくる。やーめーろー。
「自分でぶっとい、言うな。恥ずかしいやつめ」

 ウザがらみしてくる勇者を手で追い払いながら、廊下に出ると。
 まぁ、気まずそうな顔をして、三人が俺たちを待っていた。
 仕方がない。エッチしろと言われて、脱出できたということは。そういうことなのだからね。
 大人は、そこには触れてはいけない。空気を読むよ、俺は。
 それに、カピバラサンのところで、彼女たちがクリス狙いに切り替えたことは、わかっていたので。
 三人でどうしたのかはわからないけど。
 まぁ、なんとかしたのだろうと、思うのだった。アバウト。

 それで、廊下には。スツールみたいな形の小さな机に、小瓶が乗っていた。
 鑑定すると。
「ユメバクキャンディー。ひと粒舐めて、就寝すると、夢の中であなたの望みが叶います。ハーレム、国一番のお金持ち、グルメ食べ放題。なんでもオッケー。用法用量は正しくお使いください、だって」
「それって、先ほどのユメバクのドロップアイテムじゃないの? 使い回しするなんて、ケチねぇ」
 ユーリがむむっとして、告げる。確かに。

「じゃあ、アイテムを取ったら。みんな、ラスボス戦だぞ。いいな?」
 サファが聞くと。みんなが神妙な顔つきで、こくりとうなずく。
 俺は、ちょっといろいろ、げっそりお疲れだが。
 クリスもユーリもイオナも、なんかピカピカつやつやしているよ。みんな、精力的なんだね?
 それで、サファがアイテムを手にしたら。
 エッチしないと出られない部屋は、掻き消えて。

 揉み手のドラゴンが、魔剣の後ろの方にいて。びっくり目でこちらを見た。

「は? 二時間でエロゲージ満タンにしたのに、なんで四時間後に出てくるのかしらぁ? あたし、待ちくたびれちゃったわよぉ。つか、あんたたち。どんだけエロいの?」
 ラブゲージをエロゲージって言っちゃったよ、このドラゴン。
 俺は、思わず苦笑した。
 つか、やっぱり。時間はアレだったね。まぁ、そこには触れないでおこう。

「だけど、まぁ、オスの願望に近いお部屋を用意したからね? やっぱりあなたたちには簡単な試練だったようねぇ? サファはテオを一晩ペロペロしたかったのでしょう? クリスはアワアワ風呂でハーレムよぉ?」
 ドラゴンの暴露に、女性陣はカカッと頬を染める。
 想像したらまずいけどぉ。両手に花でアワアワ?
 クリス先生、意外とむっつりなんだな?

「おぉ、アワアワぬるぬるパラダイスか? さすがだな、クリスッ。今度俺も、テオにしてもらおうっ」
 空気読まないサファが、そんな発言するから。
 もう、そこは言わないであげなよぉ。
 つか、お、俺、やらないぞ??
 てか、ラスボス戦に集中してっ。

「御託はここまでだっ、ドラゴン、覚悟っ」
 サファは魔剣の柄を握ると、ラブゲージが満タンで、怪しげな魔力に満ち溢れた魔剣を引き抜いた。
 それは、大柄なサファが持っても遜色のない、大きなつかに、ブリブリに彫刻されて飾り立てられたつば、そして厚みと幅のある、長大なもろ刃の剣だった。
 その魔剣で、サファは一度ドラゴンに斬りかかり。ドラゴンはギャギャアアアと叫ぶ。
 そこにユーリが爆炎魔法をドーンと落とし。
 クリスが激しい剣戟で斬りかかり。
 イオナが聖なる光ホーリーブライトで、ドラゴンの魔力を弱らせ。
 とどめに、サファが再び斬りかかる。勇者パワーでドラゴンを一刀両断した。

 ドラゴンは、やーらーれーたー、と鳴いて。消滅した。
 すごい。圧勝じゃないかっ、勇者一行!!

 ゴトリと音をさせて落ちてきたのは。黄緑色の大粒の宝石だ。
「ペリドットドラゴンの宝玉。魔剣の飾りに出来るわぁ。大きな魔力も強力な物理攻撃も薙ぎ払う、レアアイテムよぉ。ぉ? なんか、オネェっぽい解説だけど、罠はなさそう」
「へぇ? ペリドットは、テオの瞳に色味が似ているから。俺には最高の装飾だな」
 サファがアイテムを手に取り、魔剣の鍔の部分に取り付けると。ラスボスの部屋が一瞬にして掻き消えて。

 俺たちは森の中にいた。

「外? エロダンジョンを攻略したってことだな?」
 サファが言うと、みんなでわわっと喜びの声をあげた。
「やったわ、やったわ? 外に出れたわぁ」
 でも。サファとクリスとユーリとイオナ、そして俺。とは違う声が聞こえて。
 俺らは顔を見合わせる。

 すると、サファの腰に下げられた魔剣が、ガタガタっと震えて。言った。
「あたしぃ、もう、三百年くらいダンジョンを守ってきたのだけどぉ、誰も攻略しに来てくれないから、飽きちゃったのぉ。絶倫勇者にくっついていたら、エロエネルギーも食い放題だしぃ? 最高じゃなぁい?」
「おまえは、さっきのドラゴンかっ??」
 サファが叫んで。
 俺は、あぁ、やっぱりぃ? と思った。

 なんか、ドラゴンの討伐が、やけに簡単に終わったなぁ。やられたー、ってラスボスが言うかなぁ? 演技っぽいなぁ? なんて思っていたのだ。
 それに、宝玉鑑定したとき文言が、めっちゃオネェだったじゃん?

 で、あのオネェドラゴンがついてきちゃったようなのだ。ひえぇ。

「それって、ラスボスがダンジョンを捨ててきちゃったってことなのぉ? じゃあ、このエロダンジョンは、廃ダンジョン?」
 イオナがドラゴンに聞く。
 持て余してはいたようだが、モヨリ町の資源にもなるダンジョンだ。廃棄されるのは忍びない。

「それは大丈夫よ? 後継のピンクドラゴンを置いてきたわ? 今度は彼女が、このダンジョンを守っていくのよぉ?」
 後継は、ピンクなんだ。エロ要素が高まりそうだな。
 でも、廃ダンジョンにならなくて良かったよ。
 ドロップアイテムが、なかなか物珍しい品ばかりだったからな。なくなるのは惜しい。
 いや、俺は特に欲しいものはなかったけどぉ。
 んん、ゲコヌメェのラブローションは、悪くない。

 とはいえ。
「サファ、その剣、モヨリ町のギルドで売っちゃえばぁ?」
「うーん。しかし、テオの瞳と同じ、ペリドットを売っちゃうのは、もったいない」
「別に、今までの剣でいいじゃん? エロドラゴンぶら下げて、魔王討伐に行くのか?」

 そうだ。エロダンジョンがあまりにも癖強いから、忘れていたけど。
 勇者一行は魔王討伐の指令を受けているのだ。
 せっかく、癖ツヨダンジョンを抜けて、ゲットした魔剣だが。

 それ、捨てた方が良くね?

「ちょっとぉ、待ちなさいよぉ。魔王討伐に行くのなら、絶対、あたしは必要よぉ? どんな魔力も跳ね返すのよぉ? あたしが魔王からあなたたちを守ってあげるからぁ? 捨てないでぇ」 
 なんか、短い手を拝むように合わせて、くねくね懇願するドラゴンが、見えちゃった。
 捨てるのは、ちょっと可哀想?

「ちっ、仕方ねぇなぁ。とりあえず、魔王城に行くまでは、持っててやるか。なんかの役に立つかもしれねぇからな。ただし、ベラベラしゃべんじゃねぇぞっ? ウザくなったら川に捨てるからなっ」
 サファの言に、ドラゴンは、ひぇぇぇぇと鳴いて。そのあとは沈黙した。
 よし。まぁ、いいでしょう。

 で、ひとまず落ち着いて、辺りを見回したら。宝箱があって。
 いわゆる、ダンジョン攻略を果たした者に与えられるご褒美アイテムみたいなものがあった。
 魔剣自体が、そのようなものでもあるので。さらにもらえるのは、ありがたい。
 というわけで、罠もなさそうなので、開けてみたら。
 宝箱には、今までダンジョンで出た、ドロップアイテムがみっちり詰まっていた。
 つまり、夜の営みグッズ?

 これはぁ…全部ギルドに売ろう。

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