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20 深淵を見通す…って、誰が?? テオ・ターン
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◆深淵を見通す…って、誰が?? テオ・ターン
魔獣、ゲコヌメェを撃破し、第三階層に突入する俺ら、勇者一行。
でも俺は、魔獣…というより、サファの凶器にぶっ刺され。イオナのヒールを受けても、まだなにか、股に挟まっているかのような違和感を感じていて。
いや、歩けるんだが。
有無を言わせず、サファの肩に担がれてしまった。
「おろせよ、サファ。歩くことくらい、できる」
「嫌だよ。俺のせいで、無理させたんだから。今日はテオに、なにもさせないからな?」
そうして、意味深に俺の腰を撫でる。
やめろよぉ、そういうふうに匂わせるのはぁ。
サファの後ろを歩くイオナが、俺のことをジト目で見ているんですけどっ。
「それにボス部屋は、俺らが攻略したんだから。通路の雑魚は、クリスとユーリに任せればいい。彼らにも、活躍の場を与えないとな?」
そういうものかなぁと、思いつつ。
クリスとユーリは文句も言わずに、連係プレイで通路に現れる魔獣を倒していくのだった。
だけど。この通路は、ボムベアの巣のようで。
ボムベアは、なんか、爆弾を投げてくるクマ、なんだけど。
その爆弾をどうやって入手しているのかは、不明な。あまり生態を知られていない魔獣なのだった。
まぁ、ここにいる魔獣は、どれも初めて遭遇する、謎魔獣ばかりだけどな。
ボムベアの爆弾を、ユーリが魔法で爆発させ、クマはクリスが斬る。
同士討ち? ではないけど。
それを繰り返していたら、一匹、ベアに突破された。
「勇者様、すまないっ」
突破されたクリスが、謝るが。サファは、嬉々とした感じで剣を抜いた。
「任せろっ」
俺は肩に担がれて、後ろしか見えないから。彼の顔は知らないが。
ウキウキワクワクの感情が、ダダ漏れているから。
大体そういうとき、どんな顔をしているのかは、わかる。
にやりと、口角をあげた、好戦的で、野性味を帯びた顔だ。
サファは、クリスの剣を逃れて、こちらにツッコんでくるクマに、斬りかかる。
つか、俺を抱えたままなんですけどっ?
それでも、なんの障害もないというように、早いスピードで動くし。
剣さばきにも、淀みはない。
「おろせよ、俺、邪魔だろ?」
「そう見える? テオが邪魔なんて、絶対ないし。むしろテンション上がるっつぅの。ずっと抱えていたいっ」
なんか、最後の方、欲望が透けて見えたが。
まぁ、言ってみただけ。俺はやつにとって、蚊ほどの存在感もないらしい。
そして、クマのドロップ品であるクマ肉を拾いながら、イオナがつぶやいた。
「あぁ、サファイアさま、格好いいですわぁ。普段は理知的で、深淵を見通すような、凛としたお顔立ちですけど。ワイルドなサファイアさまも、素敵ですわぁ?」
深淵を見通す…って、誰が??
俺は、サファのこと。一度も、頭がいいなんて思ったことない。
つか、普段から。クソ馬鹿駄犬勇者がぁって、怒っているくらいで。
深淵を見通すって、目に見えない事柄を見抜く、みたいな? 聡い人物のような意味だと思うのだが。
真面目に考え込むような姿なんざ、ひとっ欠片も、見たことがないぞ?
大体、キリリとしているとき。サファは。
ヤベェ悪戯を考えていたり。俺のなにかを妄想していたりするのだ。
そのあとは、必ず迷惑な厄災が降りかかるのだ。
決まっているのだ。
そういうときこそ、要注意なのだっ。
てか。世間様が目に写すサファと。俺の目に映るサファが。大河の対岸ほどもかけ離れていることを知った。
俺だって。サファが勇者なのは、ちゃんと認識しているよ?
でもな。
うん。どちらかと言えば、俺がよく見るのは。
今、イオナがワイルドだと言った。嬉々として魔獣を狩る、ヤンチャな顔の方が多いのかもしれないな。
はしゃぐ、馬鹿ワンコ。
「テオ、どうだ? ボムベアは、全部狩りとったぜぇ?」
抱える俺を、神輿の担ぎ棒のごとく、ゆさゆさと揺さぶるサファ。
やーめーろー。
でも、俺に、褒めて褒めてと、全身でアピールしてくるから。
しょうがねぇなっ。
「えらいえらい、さすが勇者さまだな」
そう言って、サファの銀の髪をモフッてやったのだ。
「ふふぅ、褒められてる感じ、しねぇ」
文句を言うけど。嬉しそうな笑いが漏れているぞ、馬鹿ワンコ。
★★★★★
第三階層のボス部屋の手前で、俺たちは退避場所に入って。しっかり休憩を取ることにした。
今日の戦利品である、クマ肉を。包丁で叩いてミンチにして、ハーブで臭みを消して。塩、コショウ、卵、牛乳、パン粉などなど、混ぜてコネコネ。焚火の上に鉄板を置いて、形を整えた肉をジュジュッと焼けば。クマ肉ハンバーグの出来上がり。
野菜も鉄板の上で焼いて、付け合わせにする。
ソースは、スライムがドロップしたワインと、バターを合わせたやつだ。
さぁ、召し上がれ。
「んぁぁぁ、美味しいっ。こんなダンジョンの奥で、こんな美味しいものが食べられるなんてぇ」
「つか、うちのシェフより、美味しいものを作らないでよっ、テオ」
イオナとユーリが、褒めてるような、怒っているような、ことを言う。
でも、料理を褒められるのは、単純に嬉しいですよ。
「あり合わせで喜んでもらえて、嬉しいよ、イオナ、ユーリ」
男性陣は、黙々と口にかき込んでいるので。
黙っているけど、こちらも、美味しいと、態度であらわされているな。よしよし。
また、例によって、退避場所には風呂場があるので。仲間は順番に湯を使い。
今日の汚れをさっぱり洗い流した。ふぅ。
ゲコヌメェに、ヌメヌメにされたからな。
イオナの浄化で、綺麗にはなったのだけど。気持ち的な意味で、体を洗えて、すっきりしたよ。
広場に戻ったら。寝床を用意していたサファに、当たり前のように、ここに座れと示される。
まぁ、いいけど。
「テオ、どこか、痛いところはなかったか? 気持ちは? 怒っているなら、全部口に出して、吐き出してしまった方がいいぞ?」
甲斐甲斐しく俺の世話をするサファを、俺はジト目で見やる。
サファは。
ビクビクワンコになっていた。
ご主人様に叱られそうなときの、アレだ。
たぶん、合意なくセックスしたことを、気に病んでいるのだろう。
俺が、怒っているとか。俺が、傷ついているとか。俺が、サファを嫌いになったとか。
そんなところだと、思うが。
旅に出る前、同意なく触れるなと、約束させたから。そこに引っかかっているのかもしれないな?
確かに、今回のことは。本当の意味では、合意ではない。
サファのことを、俺が好きになって。サファの嫁になりたい、サファに抱いてほしいって。思ったわけではないからな。
でも、俺は。許したのだ。
サファが、俺を抱くことを。
彼を正気に戻すためとはいえ、自分から、抱いていいと言った。
だから。サファが、そんなにビクつく必要はない。
今回は、ノーカウント。それで、いいのに。
いつまでも、うじうじしてぇ。
「じゃあ、サファがそこまで言うなら、言わせてもらおうかなぁ?」
ドスンと、俺が彼の前に座って、言うと。
サファは、正座で、身を縮めた。
耳をペソっと下げた、泣きべそフェンリルが見える。
「おまえ、ここんとこ、まるで良いとこ、ないからな? ま、さっきのボムベアと、第二階層のボス瞬殺は、良かったけど。しょっぱなから、毒を浴びるし。紐を解くのにもたもたするし、カエルに乗っ取られるし。ダメダメじゃん?」
サファは、さらに、ペソォとするけど。
セックスのことを言われないので、ハテナになった。
「旅に出る前、俺を惚れさせるなんて息巻いていたけど。こんなんじゃ、全然、惚れねぇな」
俺の言葉のあと。サファの背後で、ブブーという効果音が鳴った。
どうやら、レベルが落ちたようだ。
なにって…ラッキースケベのレベルだろう?
全く、わかりやすくて、嫌になる。
俺は、苦笑して。言った。
「だから、いつまでもしょんぼりしてないで。いつもの、自信満々ワンコに戻れよ。そして、魔獣を瞬殺してくれ」
そうでないと、俺の身が持たない。
早く、このエロダンジョンから、抜けたいのだ。
「それとも、もう、あきらめるか? 旅の同行も、婚約話もなしに…」
「しないっ。あきらめない。もっと、もっと、テオに好きになってもらいたい。テオをお嫁さんにしたい」
サファは鼻息荒く、俺にしっかり宣言した。
でも、自信なさそうに、そっと聞く。
「テオ。今回のことで、俺のこと、嫌いになってない?」
「嫌いになってねぇって、言ってんじゃん。でも、いつまでもうじうじしていたら。嫌いになるかもな?」
はうぅ、と唸って。まだ、耳がペソォとしているが。
少し、瞳に力が戻ってきた。サファイアの瞳に、温かい光が戻った。
そうそう、元気になれ。おまえが元気ないと、こっちも調子が狂うんだ。
「旅に誘った、責任を取れ。俺を最後まで、守り抜いてくれよ」
「責任っ、とる。テオのことは、俺が必ず守る。もう魔獣に指一本、触れさせねぇからな?」
「本当かよ。じゃあ、ま、期待している」
にやりと、挑発的に笑う。やれるもんならやってみろ、的な?
そうしたら、サファは。
満面の笑みになって、俺に抱きついてきた。
うわっ、この、馬鹿ワンコ。
でかい図体で、飛び掛かってくんじゃねぇ。
俺は、激しい勢いで押し倒され、床に頭をぶつけるかと思ったが。
サファは優しく、俺の頭を手で支えて。そっとそっと、卵を抱える繊細さで、俺を寝床に横たえた。
「惚れた? 俺のこと、好きになった?」
額と額をぶつけて、すっごく甘い微笑みで、たずねるから。
ちょっと、ドキリとしちゃったけど。
「調子に乗るな、ばぁか。まだなにも、してねぇだろ?」
俺が、そう言い放っても。サファは嬉しそうな顔のまんまで。
額をぐりぐり、俺に押しつけて。クスクスと笑う。
俺も、サファの髪をナデナデして。
それで、なんか、こんな顔を近づけて馬鹿みたいって思うと。おかしくなって。
ふたりで、笑い合った。
みんな、もう寝ているから。そっと。こっそりと、だけど。
まぁ、これで。仲直りはできたかな?
俺たちの間にあった、ギクシャクした空気がなくなって。
互いのわだかまりがほぐれたのが、なんとなく、わかった。
「仲直りのチュウ、させて」
なにやら甘えんぼモードで、サファに囁かれて。
俺は、うなずきはしなかったけど。
そっと顔を寄せてくるサファの鼻に、鼻が当たらないよう、ちょっと頭を傾けて。
流れのままに、サファのキスを受け入れた。
いつもサファは、すぐに深いくちづけに移行していくけど。
今日は、俺の唇をついばむような、可愛らしいキスだけをした。
でも、ちゅぷって、音が鳴るほど。しっとりと濡れる、くちづけで。
上唇に吸いついたり。下唇は甘噛みしたり。ふたついっぺんに、サファの口の中に食べられちゃったり。
ディープキスじゃなくても、充分にいやらしいんだけど。
うっすら、唇を開いても。サファは口腔に入り込んでこなかった。
俺の唇を、舌で、めくりあげるみたいにするけど。
もう、俺の口で、遊ぶなぁっ。
くすぐったいような、むず痒いような、感触に。
フフっと、笑みが漏れて。
サファも、クスクスと喉の奥で笑いながら。
戯れるキスをいっぱいした。
サファは、唇をひとつ吸うたびに、うかがうように俺をみつめたが。
笑い交じりに、俺はただ、彼を受け入れた。
「おやすみのチュウも、していい?」
お伺いをたてられたので、今度は、小さくうなずく。
このくらいのキスなら、まぁ、いいかと思って。
そうしたら。サファは。
今度は舌を絡める、ディープなキスをして。
もう、どうして。おやすみのチュウが、こんなにいやらしいやつなんだよって。
心の中で、人知れずツッコんだ。
やっぱり、調子に乗ったな? 駄犬勇者めっ。
魔獣、ゲコヌメェを撃破し、第三階層に突入する俺ら、勇者一行。
でも俺は、魔獣…というより、サファの凶器にぶっ刺され。イオナのヒールを受けても、まだなにか、股に挟まっているかのような違和感を感じていて。
いや、歩けるんだが。
有無を言わせず、サファの肩に担がれてしまった。
「おろせよ、サファ。歩くことくらい、できる」
「嫌だよ。俺のせいで、無理させたんだから。今日はテオに、なにもさせないからな?」
そうして、意味深に俺の腰を撫でる。
やめろよぉ、そういうふうに匂わせるのはぁ。
サファの後ろを歩くイオナが、俺のことをジト目で見ているんですけどっ。
「それにボス部屋は、俺らが攻略したんだから。通路の雑魚は、クリスとユーリに任せればいい。彼らにも、活躍の場を与えないとな?」
そういうものかなぁと、思いつつ。
クリスとユーリは文句も言わずに、連係プレイで通路に現れる魔獣を倒していくのだった。
だけど。この通路は、ボムベアの巣のようで。
ボムベアは、なんか、爆弾を投げてくるクマ、なんだけど。
その爆弾をどうやって入手しているのかは、不明な。あまり生態を知られていない魔獣なのだった。
まぁ、ここにいる魔獣は、どれも初めて遭遇する、謎魔獣ばかりだけどな。
ボムベアの爆弾を、ユーリが魔法で爆発させ、クマはクリスが斬る。
同士討ち? ではないけど。
それを繰り返していたら、一匹、ベアに突破された。
「勇者様、すまないっ」
突破されたクリスが、謝るが。サファは、嬉々とした感じで剣を抜いた。
「任せろっ」
俺は肩に担がれて、後ろしか見えないから。彼の顔は知らないが。
ウキウキワクワクの感情が、ダダ漏れているから。
大体そういうとき、どんな顔をしているのかは、わかる。
にやりと、口角をあげた、好戦的で、野性味を帯びた顔だ。
サファは、クリスの剣を逃れて、こちらにツッコんでくるクマに、斬りかかる。
つか、俺を抱えたままなんですけどっ?
それでも、なんの障害もないというように、早いスピードで動くし。
剣さばきにも、淀みはない。
「おろせよ、俺、邪魔だろ?」
「そう見える? テオが邪魔なんて、絶対ないし。むしろテンション上がるっつぅの。ずっと抱えていたいっ」
なんか、最後の方、欲望が透けて見えたが。
まぁ、言ってみただけ。俺はやつにとって、蚊ほどの存在感もないらしい。
そして、クマのドロップ品であるクマ肉を拾いながら、イオナがつぶやいた。
「あぁ、サファイアさま、格好いいですわぁ。普段は理知的で、深淵を見通すような、凛としたお顔立ちですけど。ワイルドなサファイアさまも、素敵ですわぁ?」
深淵を見通す…って、誰が??
俺は、サファのこと。一度も、頭がいいなんて思ったことない。
つか、普段から。クソ馬鹿駄犬勇者がぁって、怒っているくらいで。
深淵を見通すって、目に見えない事柄を見抜く、みたいな? 聡い人物のような意味だと思うのだが。
真面目に考え込むような姿なんざ、ひとっ欠片も、見たことがないぞ?
大体、キリリとしているとき。サファは。
ヤベェ悪戯を考えていたり。俺のなにかを妄想していたりするのだ。
そのあとは、必ず迷惑な厄災が降りかかるのだ。
決まっているのだ。
そういうときこそ、要注意なのだっ。
てか。世間様が目に写すサファと。俺の目に映るサファが。大河の対岸ほどもかけ離れていることを知った。
俺だって。サファが勇者なのは、ちゃんと認識しているよ?
でもな。
うん。どちらかと言えば、俺がよく見るのは。
今、イオナがワイルドだと言った。嬉々として魔獣を狩る、ヤンチャな顔の方が多いのかもしれないな。
はしゃぐ、馬鹿ワンコ。
「テオ、どうだ? ボムベアは、全部狩りとったぜぇ?」
抱える俺を、神輿の担ぎ棒のごとく、ゆさゆさと揺さぶるサファ。
やーめーろー。
でも、俺に、褒めて褒めてと、全身でアピールしてくるから。
しょうがねぇなっ。
「えらいえらい、さすが勇者さまだな」
そう言って、サファの銀の髪をモフッてやったのだ。
「ふふぅ、褒められてる感じ、しねぇ」
文句を言うけど。嬉しそうな笑いが漏れているぞ、馬鹿ワンコ。
★★★★★
第三階層のボス部屋の手前で、俺たちは退避場所に入って。しっかり休憩を取ることにした。
今日の戦利品である、クマ肉を。包丁で叩いてミンチにして、ハーブで臭みを消して。塩、コショウ、卵、牛乳、パン粉などなど、混ぜてコネコネ。焚火の上に鉄板を置いて、形を整えた肉をジュジュッと焼けば。クマ肉ハンバーグの出来上がり。
野菜も鉄板の上で焼いて、付け合わせにする。
ソースは、スライムがドロップしたワインと、バターを合わせたやつだ。
さぁ、召し上がれ。
「んぁぁぁ、美味しいっ。こんなダンジョンの奥で、こんな美味しいものが食べられるなんてぇ」
「つか、うちのシェフより、美味しいものを作らないでよっ、テオ」
イオナとユーリが、褒めてるような、怒っているような、ことを言う。
でも、料理を褒められるのは、単純に嬉しいですよ。
「あり合わせで喜んでもらえて、嬉しいよ、イオナ、ユーリ」
男性陣は、黙々と口にかき込んでいるので。
黙っているけど、こちらも、美味しいと、態度であらわされているな。よしよし。
また、例によって、退避場所には風呂場があるので。仲間は順番に湯を使い。
今日の汚れをさっぱり洗い流した。ふぅ。
ゲコヌメェに、ヌメヌメにされたからな。
イオナの浄化で、綺麗にはなったのだけど。気持ち的な意味で、体を洗えて、すっきりしたよ。
広場に戻ったら。寝床を用意していたサファに、当たり前のように、ここに座れと示される。
まぁ、いいけど。
「テオ、どこか、痛いところはなかったか? 気持ちは? 怒っているなら、全部口に出して、吐き出してしまった方がいいぞ?」
甲斐甲斐しく俺の世話をするサファを、俺はジト目で見やる。
サファは。
ビクビクワンコになっていた。
ご主人様に叱られそうなときの、アレだ。
たぶん、合意なくセックスしたことを、気に病んでいるのだろう。
俺が、怒っているとか。俺が、傷ついているとか。俺が、サファを嫌いになったとか。
そんなところだと、思うが。
旅に出る前、同意なく触れるなと、約束させたから。そこに引っかかっているのかもしれないな?
確かに、今回のことは。本当の意味では、合意ではない。
サファのことを、俺が好きになって。サファの嫁になりたい、サファに抱いてほしいって。思ったわけではないからな。
でも、俺は。許したのだ。
サファが、俺を抱くことを。
彼を正気に戻すためとはいえ、自分から、抱いていいと言った。
だから。サファが、そんなにビクつく必要はない。
今回は、ノーカウント。それで、いいのに。
いつまでも、うじうじしてぇ。
「じゃあ、サファがそこまで言うなら、言わせてもらおうかなぁ?」
ドスンと、俺が彼の前に座って、言うと。
サファは、正座で、身を縮めた。
耳をペソっと下げた、泣きべそフェンリルが見える。
「おまえ、ここんとこ、まるで良いとこ、ないからな? ま、さっきのボムベアと、第二階層のボス瞬殺は、良かったけど。しょっぱなから、毒を浴びるし。紐を解くのにもたもたするし、カエルに乗っ取られるし。ダメダメじゃん?」
サファは、さらに、ペソォとするけど。
セックスのことを言われないので、ハテナになった。
「旅に出る前、俺を惚れさせるなんて息巻いていたけど。こんなんじゃ、全然、惚れねぇな」
俺の言葉のあと。サファの背後で、ブブーという効果音が鳴った。
どうやら、レベルが落ちたようだ。
なにって…ラッキースケベのレベルだろう?
全く、わかりやすくて、嫌になる。
俺は、苦笑して。言った。
「だから、いつまでもしょんぼりしてないで。いつもの、自信満々ワンコに戻れよ。そして、魔獣を瞬殺してくれ」
そうでないと、俺の身が持たない。
早く、このエロダンジョンから、抜けたいのだ。
「それとも、もう、あきらめるか? 旅の同行も、婚約話もなしに…」
「しないっ。あきらめない。もっと、もっと、テオに好きになってもらいたい。テオをお嫁さんにしたい」
サファは鼻息荒く、俺にしっかり宣言した。
でも、自信なさそうに、そっと聞く。
「テオ。今回のことで、俺のこと、嫌いになってない?」
「嫌いになってねぇって、言ってんじゃん。でも、いつまでもうじうじしていたら。嫌いになるかもな?」
はうぅ、と唸って。まだ、耳がペソォとしているが。
少し、瞳に力が戻ってきた。サファイアの瞳に、温かい光が戻った。
そうそう、元気になれ。おまえが元気ないと、こっちも調子が狂うんだ。
「旅に誘った、責任を取れ。俺を最後まで、守り抜いてくれよ」
「責任っ、とる。テオのことは、俺が必ず守る。もう魔獣に指一本、触れさせねぇからな?」
「本当かよ。じゃあ、ま、期待している」
にやりと、挑発的に笑う。やれるもんならやってみろ、的な?
そうしたら、サファは。
満面の笑みになって、俺に抱きついてきた。
うわっ、この、馬鹿ワンコ。
でかい図体で、飛び掛かってくんじゃねぇ。
俺は、激しい勢いで押し倒され、床に頭をぶつけるかと思ったが。
サファは優しく、俺の頭を手で支えて。そっとそっと、卵を抱える繊細さで、俺を寝床に横たえた。
「惚れた? 俺のこと、好きになった?」
額と額をぶつけて、すっごく甘い微笑みで、たずねるから。
ちょっと、ドキリとしちゃったけど。
「調子に乗るな、ばぁか。まだなにも、してねぇだろ?」
俺が、そう言い放っても。サファは嬉しそうな顔のまんまで。
額をぐりぐり、俺に押しつけて。クスクスと笑う。
俺も、サファの髪をナデナデして。
それで、なんか、こんな顔を近づけて馬鹿みたいって思うと。おかしくなって。
ふたりで、笑い合った。
みんな、もう寝ているから。そっと。こっそりと、だけど。
まぁ、これで。仲直りはできたかな?
俺たちの間にあった、ギクシャクした空気がなくなって。
互いのわだかまりがほぐれたのが、なんとなく、わかった。
「仲直りのチュウ、させて」
なにやら甘えんぼモードで、サファに囁かれて。
俺は、うなずきはしなかったけど。
そっと顔を寄せてくるサファの鼻に、鼻が当たらないよう、ちょっと頭を傾けて。
流れのままに、サファのキスを受け入れた。
いつもサファは、すぐに深いくちづけに移行していくけど。
今日は、俺の唇をついばむような、可愛らしいキスだけをした。
でも、ちゅぷって、音が鳴るほど。しっとりと濡れる、くちづけで。
上唇に吸いついたり。下唇は甘噛みしたり。ふたついっぺんに、サファの口の中に食べられちゃったり。
ディープキスじゃなくても、充分にいやらしいんだけど。
うっすら、唇を開いても。サファは口腔に入り込んでこなかった。
俺の唇を、舌で、めくりあげるみたいにするけど。
もう、俺の口で、遊ぶなぁっ。
くすぐったいような、むず痒いような、感触に。
フフっと、笑みが漏れて。
サファも、クスクスと喉の奥で笑いながら。
戯れるキスをいっぱいした。
サファは、唇をひとつ吸うたびに、うかがうように俺をみつめたが。
笑い交じりに、俺はただ、彼を受け入れた。
「おやすみのチュウも、していい?」
お伺いをたてられたので、今度は、小さくうなずく。
このくらいのキスなら、まぁ、いいかと思って。
そうしたら。サファは。
今度は舌を絡める、ディープなキスをして。
もう、どうして。おやすみのチュウが、こんなにいやらしいやつなんだよって。
心の中で、人知れずツッコんだ。
やっぱり、調子に乗ったな? 駄犬勇者めっ。
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お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。
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文章能力が低いので読みにくかったらすみません。
※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました!
本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
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