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15 遅々として進まない テオ・ターン

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     ◆遅々として進まない テオ・ターン

 俺は、怒っている。
 今回のボス部屋は、抜けるのが大変だったみたいで。疲労感がなかなか抜けないのか。
 見張りのクリス以外は、みんな、ぐっすりと寝ている。
 俺を抱き枕にしているサファも。寝ているが。

 勇者一行だというのに、ダンジョン探索が、遅々として進まない。

 勇者というのは。
 眉目秀麗で、ずば抜けた力を有し、魔法もけた違い。
 困った人を助けたいと思う、高潔な心情を宿し。
 この世で一番、大きな災厄である魔王にすら、対抗できる能力を持っている。
 子供の頃、絵本で見た、英雄伝説として語られているものは。
 だいたい、そんな感じであったが。

 確かに、サファは。眉目秀麗で、ずば抜けた力を有し、魔法能力も桁違い。
 目の前で眠っているサファは、銀のまつ毛が長くて。鼻梁も高くて。肉厚の唇も色っぽい。
 容姿は、誰もが目をみはる美貌で。
 俺も、彼の外見は、好きだし。格好いいとも思うのだけど。

 眠っているときはな。

 そんな、誰もがあこがれの目でみつめる、勇者様が。
 なにをとち狂ったのか、村人Aである俺なんかを好きだと言う。
 そして、俺を抱きたいらしく、身を添わせてくるし、ベタベタするし。
 あまつさえ、嫁にしたいと言いやがる。

 勇者と村人Aが、結婚とか? 誰も認めやしないだろう?

 俺だって、サファのことは嫌いじゃないけど。
 結構、仲が良かった幼馴染だしぃ?
 でも、俺を危険に巻き込むところは。嫌だったし。
 優秀なサファがそばにいると、俺のダメさが際立って。それも、嫌なんだけど。

 うん。それだけだけど。
 でも、その気持ちがある限り、サファのことは、受け入れられないんだ。

 だけどさ。体の方が、先に屈服しちゃいそうなんだよねっ?
 今の悩みや、怒りは、そこっ。

 気持ちいいのって、あらがえないっていうか。
 その気になったら、突き抜けちゃいたいって。そんなふうに思っちゃう、そういう感覚があるわけだよ。
 悶々としたまま、放置できない、我慢できない、みたいな?
 ま、言ってしまえば。快感に弱い?

 今まで、性体験がなくて。
 俺は、こんなにも自分が、性的なあれこれにグズグズになる男だと思っていなかった、というか。
 想像もしたことなかった、というか?
 いや、逆に。性体験がなかったから、今、こんなにグズグズなのかもしれないけど。
 全部が全部、初体験で。
 俺は、本当に混乱している。

 エロダンジョンに入って。
 毒の中和で、サファのアレを舐めなきゃならなかったり。
 緊縛する魔獣? に、わけのわからない攻撃をされたりして。
 それによって、くすぶった体を。
 サファに触られると。

 その手から、俺は逃げられないんだ。

 エロに耐性がないから、ぞくぞくする性感をこらえられないし。
 勃起してしまえば、射精したいと思ってしまうし。
 それに、お尻が気持ちいいのも。知ってしまって。

 最初は、縄の結び目が、お尻の中に入ってしまって。その刺激に、感じてしまったわけだけど。
 浴室で、サファに。彼のモノで、そこをつつかれて。
 無機質な縄と、熱さをも感じる彼のモノが、触れる感覚は。

 まるで別物だった。

 熱い、サファの情熱が、俺のあそこに触れると。
 下半身がジュクジュクと、とろけるみたいな愉悦で、くすぶって。
 彼の、少しかさついた、大きな手で、全身をまさぐられると。
 下半身だけじゃなくて、全身がドロドロのでろでろになって。
 お尻の感覚が、何倍にも、膨らんで。そこの刺激のことしか、考えられなくなって。

 もっと。もっとして。もっと、ぐちゅぐちゅって、してっ、その熱いの、もっと欲しい…って。

 あぁっ! また。あのときのこと考えちゃった。いけない、いけない。
 俺は、こうして。快感に飲まれてしまうから、ダメなのだ。未熟なのだっ。
 それに、気持ちいいからって、流されたら。

 大惨事である。

 だって浴室で見た、サファのイチモツ。普通に、太さも長さも俺の1.5倍以上あったからな?
 今まで、どさくさに紛れて、触れたりして。
 薄々は、気づいていたけど。

 明るいところで見たら。アレは、マジでヤバいよ。

 肩幅も身長も大きいから、立派な体躯だとは思っていたが。
 浴室に堂々と入ってきた、彼の裸身は。
 腹筋バキバキで、腕の筋肉も腿の筋肉も、すごく鍛えられている。一部の隙も無い、軍神のごとき美ボディだった。
 服を身につけていると、スレンダーに見えるけど。
 中身は、しっかり、みっしりで。骨太のはがねの肉体だ。

 俺の、貧相な体が。すごく情けなく思えて。思わず隠したくなるくらいに。

 体の構造が、俺とは全くの別物、という感じだったのだ。
 さすが、種族:勇者。である。
 それで、その。
 鋼の大柄な肉体に見合った。それはそれは立派なイチモツであったので。

 あんなの、俺の中に入るわけないよ。普通に考えて。マジでマジで。

 それは、ともかく。
 ま、そんなわけで。こんな、性的に未熟な者が、入ってはいけないダンジョンだったと。
 今は、痛感しております。

 パーティーを離脱した方が、いいんじゃないかとも考えるけど。
 このダンジョンに出てくる魔物は。よく見るタイプのものではなくて。
 本当に、初見とか。
 魔物辞典にも載っていないものが、出てきたりするから。俺が持つ、鑑定スキルは有用なのだ。
 弱点や。毒素などを出すものなら、その対処法もわかるし。
 勇者一行と言えども、今の時点で、特殊な攻撃を仕掛けてくる魔物に苦戦しているしな?
 俺が抜けたら、まずいのは。なんとなく、わかる。

 だから、俺は。
 まず魔獣の攻撃を受けないように、注意するしかないんだよな?
 魔獣の攻撃によって、エロい気持ちにさえならなければ。たぶんサファのエロ攻撃を回避できる。
 あれ? でも、もしかして。
 この一連の流れは。俺がエロに巻き込まれる、一番の要因は。

 サファなんじゃね?

「テオ? 眠れないのか?」
 一日の中で、何度も達したから、体は疲れているはずなのに。
 逆に目が冴えちゃって、俺はグルグルと考え事をしていたのだ。
 で、今。目の前の、サファの目が開いているのに気づいた。
 いや、ほぼ、閉じているか。寝ぼけているのかな?

「好き、テオ。好き、好き」
 そう言って、サファは。俺の目蓋や、頬や、こめかみに、チュッチュしてくる。
 銀のフェンリルが、俺に懐いて、じゃれているみたい。
 勇者をワンコにたとえるのは、どうかと思うが。
 サファは、どうにも。駄犬がご主人に、かまって攻撃をしてくるようにしか見えない。

 見る人が見れば。勇者、サファイアは。神にも等しい存在だというのにな?

 でも、ワンコのサファは。俺は好きだよ。
 癖のついた銀の髪を撫でれば。サファは、嬉しそうに、微笑む。

「大丈夫、俺は勇者だ。この世で、一番強いんだから。テオのこと、守るから…」
 まぁ、調子に乗って。すぐに、深いキスを仕掛けてくるけど。
 ベロを絡める、エロいキスは。ワンコの範囲を超えていて。俺はいつも、戸惑うけど。
 サファの甘い声音で。せつない吐息で。
 好きって言われると。
 無下にできないっていうか。

 もう、彼の好きは。疑っていないよ。
 どうして? とは、思うけど。なんでか、サファは。俺が好きらしい。
 うん。それは、わかったよ、サファ。

 キスの途中で、睡魔に負ける勇者の胸に。俺は、頭を預ける。

「ったく、駄犬が…」
 そっと微笑んで。
 俺たちは身を寄り添わせて、寝た。

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