【完結】勇者のスキルにラッキースケベがある(村人A専用って、俺ぇ!?)

北川晶

文字の大きさ
上 下
14 / 43

12 第一階層のボス部屋の手前 テオ・ターン

しおりを挟む
     ◆第一階層のボス部屋の手前 テオ・ターン

 エロダンジョンに入ったはいいが、早速、見たことのない魔物に襲われて。解毒のために、ダンジョンを引き返すことになってしまった、勇者一行。
 毒を浴びてしまった、サファとユーリの解毒が済んで。装備も整えて。
 気を取り直して、もう一度、ダンジョンに突入した。

 解毒の話は、しないよ? サファもユーリも、俺も。なかったことにしたいだろうからな?
 俺はただ、サファを死なせたくなくて、必死で。
 そうしたら、なんか、いつの間にか、俺まで…んんっ、これ以上は思い出さないのっ。

 アレは。治療だから。完全に、ノーカウントです。

 それで。落ちてきたスライムの残骸は。やはり、あの酒瓶に変わっていて。
 それで、バラケイアが倒れたところには、やはり、瓶が落ちているのだが。鑑定すると。
「バラの香りの、高級化粧品だって。肌が、モチモチつるつるになるよって書いてある」
 もう、俺が鑑定持ちなのは、バレたので。隠すことなく、告げた。

「あなた、なんで鑑定持ちだって言わなかったのよ? 隠し事をされると、命に関わることもあるわ?」
 化粧品を渡したイオナに、聞かれる。
 まぁ、そうだよね? 信用問題、ってことだね?
 でも、こちらにも事情があったのだからね。

「冒険中に、そんなに役立つ能力だって知らなかったんだ。もう隠し事はないから。マジで」
 本当かしら、という目で見られるけど。
 疑いの目で見られちゃうのは、、まぁ、隠し事していた俺が悪いんだから、仕方がないね。

 それで、とにかく。
 通路を進んで行くと、スライムが落ちてきて。スライムの体液は布を溶かすから。
 サファとユーリが炎魔法で蹴散らす。

 あと、でっかい唇で、辺りのものを吸引しまくる魔植物、リップチュウチュウ(鑑定により名が判明)も現れたけど。それも、サファが炎で焼いた。
 魔植物は、基本、火に弱いね?

「俺をチュウチュウするのは、テオだけでいいんで」
 魔物を倒して、サファが得意げに言うけど。
 一言、多いんだ。バカ。

 ちなみに、リップチュウチュウのドロップ品は、精力剤だった。
 もしかして、冒険者が精液吸われて腰砕けになるやつって、コレ?
 冒険者の精液を吸ってできた、副産物? いらねぇ…。

 そんな感じで、勇者一行は、なんとか第一階層のボス部屋の手前まで来た。
 しかし、今まで出会った魔物が、あまりにも、見たことのないものだったし。
 一度、毒に侵されて、体力も消耗したということで。
 慎重を期して、ボス部屋に入る前に、睡眠をとる、長い休憩をすることになった。

 ダンジョンの中に入ると、日が差さないから、時間がよくわからないが。
 疲労感から。まぁ、夜だろう。
 ボス部屋の手前には、ちょうど冒険者が休めるようなスペース、いわゆる退避部屋というのがある。五十名くらいは入りそうな、ちょっと開けた空間があって。入り口がひとつだから、魔物が入ってきても、すぐに退治できる。
 休憩するには、もってこいの場所なのだ。
 そこで焚火を起こして、一息入れた。

 火を囲んで、焼いた肉とスープとパンの簡単な食事(それでも、俺がいなかった頃よりはマシな食事)をとる。
 あと、退避部屋を探検したら、奥から水音がしたから。その部分を見てみたら。天井からお湯が落ちてくるところがあった。
 鑑定しても、なんの混じりけもない、普通のお湯。
 雫はぽたぽたとしか落ちてこないが。手拭いを濡らして、サッと体を拭くには、充分だな。
 ダンジョン的には、冒険者に優しい作りだなと思った。

 まぁ、中身の魔物が、癖ツヨ過ぎるけど。

「ユーリの治療は、なんで、先生がやっていたんだ?」
 食べて、体も清めて、みんなでまったりしているところに。サファがぶっこんで来た。
 そこに触れるぅ? ユーリが可哀想だろ? 涙目になってるじゃん。

 この件は。ユーリは、なにも言えないので。
 イオナが答えた。
「だってぇ、ユーリのおっぱいを舐めている私の顔を、先生には見られたくないしぃ。でも、私一人で治療するには、ユーリのおっぱいは大きすぎますわぁ? だから、私は。少し離れて。新しい装備や服の用意をしていましたの」
 イオナは、おっとり、にっこりと、言うけれど。
 人々の心や病を癒す聖女なのに、結構ひどいね。

「…俺は、一刻の猶予もないと思ったから。解毒した」
 今まで、あまり言葉を発さなかったクリスが。ぽつりと言う。
 ユーリは、その言葉に。むすっとして、頬を膨らませている。

 男の人に、胸を舐められたのが。やっぱり不快だったのかな?
 でも、治療してくれた恩があるから。クリスに怒ったり、暴言吐いたりは、さすがにしなかった。
 さすが、優等生。常識はわきまえているみたいで、良かったよぉ。

 それはともかく。
 クリスのことを、俺は、濃茶のおひげが、クマちゃんみたいって思っていたんだけど。

「クリスは、なんで先生って呼ばれているの?」
 俺が聞くと。イオナが得意げに教えてくれる。
「クリスは、私たち三人の、剣術の先生なのよ。だから、あなたも。クリスのことは先生とお呼びなさい?」

「剣術の先生は、師匠じゃないのか?」
 さらにたずねると。クリスが、首を横に振りながら、言った。

「俺たちには、共通の師匠が、別にいる。俺はいわゆる、勇者様たちの、兄弟子という立ち位置だ。でも、テオにはなにも教えていないから、クリスでいいよ?」
 優しい声音で、そう言ってくれる。
 クリスは、本当に優しいんだ。俺が忙しく設営していると、なにも言わずに手伝ってくれるし。力持ちだから、少し大きめの倒木とかも運んでくれるしね。
 料理も、切るだけならできるって。
 いやいや、食事係は、それをやってもらえるだけでも、助かります。

 だから、俺は。その優しいクリスに、いつも感動するのだ。
 頼もしくて、尊敬できる、大人だぁって。

「サファの先生なら、俺も先生って呼びたい。クリス、いい?」
「あぁ、好きに呼べ」
 にこにこと、俺とクリスが笑い合っていると。
 サファが、唇を突き出して、睨んできた。

 スルースキル、発動!

     ★★★★★

 睡眠をしっかりとって、リフレッシュした勇者一行は、ひとつ目のボス部屋の前に立った。

「信じらんねぇ。勇者の俺が、一日で、たったひとつの階層もクリアできねぇなんて…」
 そんな風につぶやくサファを、背中を叩いてなだめつつ。扉を開けさせたが。

「ん、開かないな」
 ボス部屋は、両開きの扉で、右と左の二枚であるが。右だけ押しても開かない構造のようだった。
 そして、なかなか重い。

「みんなで、押し開こう。せーのっ!」
 サファの掛け声で、俺たちは入り口の扉を押していくが。あるところまで行くと、急に軽くなって。
 勢いのまま、俺はコロンと部屋の中に転がってしまった。

 そうしたら、目の前に。
 大きな蛇の魔獣…ビッグスネークカモンがいたぁ。

「テオ、危なーい」
 とか言って、サファは俺を抱え。ピョーンと飛んだと思ったら。
 魔獣がとぐろを巻く、そのど真ん中に飛び込んだ。

「ぎゃぁぁぁぁっ、なんで、俺と一緒に、敵地のど真ん中に飛び込むんだよっ??」
「いやぁ、ここに、空間があったからさぁ。てへ?」
 勇者のくせに、てへ? とか言うんじゃねぇっ!
 つか、まつ毛バサバサ美麗な美形のくせに、馬鹿面しやがって。
 マジ、殴りてぇ。この、駄犬がぁっ。

 俺が睨んでいると、サファは、自信満々な笑みでニヤリとする。
「まぁまぁ、このくらいの魔獣は、瞬殺してやる」
 そうして、気をみなぎらせたサファは。部屋いっぱいにでっかくなっている蛇を、シャシャッと輪切りにして、殲滅した。
 マジで、瞬殺。ホッ。
 ビッグスネークカモンのいたところには、まむしドリンクがドロップしていた。
「まむしドリンク。滋養、強壮、精力増進、などなど」
 鑑定文を読むけれど。サファは精力有り余っているから、いらないな?

「つか、先生たち、いなくね?」
 蛇を倒したあと、部屋にいるのは、俺とサファだけだった。

「あぁ、入り口が、扉の半分しかないから。たぶん、別の部屋に誘い込まれたんだな?」
「仲間を分断する罠があったのか。大丈夫かなぁ?」
「クリスは強いし。大丈夫だろ。それより、宝箱がある」
「あっ、鑑定してから…」
 宝箱こそ、罠があるっていうのに。
 サファは不用意に開けやがった。勇者のくせに迂闊うかつな奴めっ。

 そうしたら、箱の中から、なんか、なわみたいなものがいっぱい出てきて。部屋中にロープが張り巡らされた。
 俺は、そのひもに触れてしまって。体をあちこち、縛られてしまう。
 手は後方に引っ張られ、腰は前方に引っ張られて、グルグル巻きになって宙に浮き。足は膝が曲がった状態で、左右に引っ張られて。
 後ろ手で、空中に座っているような体勢で。がんじがらめになってしまった。

「テオ、大丈夫か? 今、縄を切ってやるから」
 そうして、サファが。剣を振りかぶる。
 しかし、あんな巨大な蛇を、一刀両断した剣が。なんでか、ビヨーンと弾いて、跳ね返されてしまうのだ。

「嘘だろ? 切れない」
 サファが、反動をつけないで、ぎこぎことノコギリみたいにして切ってみるけど。それでも、縄は切れないのだ。

 えっ? これ、どうするの?

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...