【完結】勇者のスキルにラッキースケベがある(村人A専用って、俺ぇ!?)

北川晶

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7 魔剣があるのは、エロエロダンジョン?! テオ・ターン

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      ◆魔剣があるのは、エロエロダンジョン?! テオ・ターン

 サファに巻き込まれるようにして、俺は勇者一行の旅に付き添うことになってしまった。
 村を出るときの、サファの親父さんの顔を見て。
『テオくん、申し訳ないねぇ。うちの息子が、また無茶を言ってぇ』という声が、聞こえてくるかのようだった。

 昨日はサファと、いろいろあって。思い返すと、なんか顔が赤くなっちゃうけど。
 いやいや、考えるな。あんなことは、もう許さねぇし。
 それに、旅には。サファの他にも、仲間がいるのだ。みんなの前で、サファもそうそう不埒な真似はできまい。

 俺は、貞操を絶対に守り抜いて。
 そして、旅の終わりで。
「やっぱ、好きになれなかった。つか、サファのこと、嫌い」
 って言って。引導を渡してやるのだ。

 そこで、サファとは、ジ・エンド。綺麗さっぱり、因縁を断ち切ってやる。
 だから、サファの親父さん。心配しないで。
 俺は、元気にこの村に戻ってきて、パン屋を続けますっ!

 なのに、サファったら。早速、仲間に。俺はサファの婚約者だなんて、言っちゃった。
 せっかく、イオナが。能力のない俺を心配して、村に戻った方がいいって、言ってくれたのにぃ。
 でも、そのとき。なんか、子孫を残す、みたいな話になって。

 サファが。種族が勇者だから。人間との間に子供をもうけるのは難しい、って言った。

 えぇ? そうなんだ。
 体の組成は、人間と同じだと思うけど。異種族交流になっちゃうのかな?

 それで、自分は自分の好きな人と結ばれたい。なんて言って。俺を見るから。
 なんか。なんも言えなくなっちゃった。

 サファも、自分が勇者であることで。いろいろ悩んだりしたのかなって思うと。
 ひとりで、王都で悩んでいたのかなって思うと。
 やっぱ、ちょっと、可哀想になっちゃって。

 王都にいるサファから、いっぱい手紙が来たけど。
 封も切らずに、机の引き出しに入れてある。
 もしかしたら、悩みを書きつづってたり、したかもしれない。
 そうしたら、相談に乗らなくて悪かったなぁって。しみじみ思っちゃったりして。

 なんで、手紙を読まなかったのか?
 そんなの。二度と会えないと思っていた悪友のことを。思い出したくなかったからさ。
 ま、会っちゃったけど。
 そして、なんでか、一緒に旅してるけど。

 でも、そのしみじみは。友達への同情であって。
 婚約だとか、結婚だとか、サファとするって話じゃないから。
 それとこれとは、別ぅ。

 ってなわけで。森の中で、魔獣を駆除しながら、二週間後。
 俺たちは、ラルラウア山のほど近くにある、モヨリ町にたどり着いたのだ。
 そこの町でも。勇者御一行が来たぞ、と。大歓迎を受けて。俺たちは歓待されたのだった。

 森の中で駆除した、魔獣のドロップアイテムを、冒険者ギルドで換金して。
 それが、結構な金銭になったので。宿屋では、ひとり一室で借りた。
 ずっと、誰かと顔を突き合わせている生活なんて。俺は、今までなかったから。気疲れしてたみたい。
 個室に入ったら、なんかホッとした。
 寝台がひとつ置いてあるだけの、小さな部屋。そのベッドに、ドスンと身を横たえて。ひと息つく。

 ハージマ村を出てから、この二週間の旅の間。
 サファは、約束通り、俺を守ってくれたし。
 剣士のクリスも。聖女のイオナも。魔法使いのユーリも。きっちり、自分の仕事を果たしていた。
 俺は、料理しかできないから。野営のときの支度などは、俺がやる感じで。役割分担だな。

 焚火の火おこしは。パン屋は、朝、かまどに火を起こすところから始めるので。楽勝だし。
 テントの設営は、まぁ村人なら誰もができる基本というか。
 料理はレベル持ちなので、なにを作っても、大抵美味しく仕上げられます。

 サファに話を聞くと。みなさん、王都育ちの名家の御子様だったようで。
 いわゆる、上げ膳据え膳?
 焚火も満足にできなくて。ハージマに来るまで、野営のときは、干し肉を食べていたという…。
 だから、夜、暖かい火に当たり、温かい食事が食べられることになって。
 俺はみんなにも、まぁまぁ、重宝してもらえたわけだ。

 良かったです。足手まとい感、半端なかったので。

 てなわけで。少し休憩もしたし。
 俺は、村人Aの役割でもある、情報収集をしに。まずは、この村にある酒場に向かう。
 冒険者が口を軽くするのは、酒場と決まっているのだ。

 酒場は、ハージマのものより、ちょっと大きくて。太い木の柱で建造された、立派な構えだ。そこで冒険者たち、ザッと五十人くらいか? にぎやかに酒を飲んでいる。
 さすが、町だけあって。ハージマより、建物の規模も、人の多さも、段違いだ。
 明るい雰囲気の酒場に入り、俺は店主にオレンジジュースを頼む。未成年なんで、すみません。

「お? あんたは、さっき、勇者一行の中にいた子だな?」
「十八歳だから、子供ではないぞ」
「オレンジジュースを頼むうちは、お子様だよ」
 店主にからかわれ。
 でも、その通りなので。俺はムムッと、唇を突き出した。

「ところで、勇者一行は、ラルラウア山のダンジョンに行くつもりなのだが。なんか、情報ないか?」
 何の気なしに、俺は店主に聞いたのだが。
 それで、酒場の中が、ざわざわっとした。

 口々に、あのダンジョンに? チャレンジャー? 美味しい? エロエロ。などの言葉が飛び交う。

「なんだ? エロエロって。店主?」
 たずねると、店主は。カウンターにガバッと乗り出して、俺にこっそり言う。

「ラルラウア山のふもとのダンジョンに行くのかい? やめといた方がいいぞ。あそこは、エロエロダンジョンだ」
 俺は、目を丸くして、店主を見やる。
 サファは、魔王に対抗しうる、魔剣を取りに、そこへ行くのだ。

 なのに。魔剣があるのは、エロエロダンジョン?!

「そ、それって。どういう意味? 対策は?」
「いやぁ、対策なんて、ないよ。挑戦した冒険者は、第二階層くらいまでで、ギブアップして帰ってくるからな? まさに、精も根も尽き果てるってやつよ」
「ど、どういう、攻撃が? 魔力を吸われるのか?」

 聞くと、さらに店主は声を潜めて、言う。
「エロエロダンジョンだって、言ったろ? 触手でぬるぬるとか、精液を吸う植物に襲われて、腰砕けで、みんなダンジョンから出てくるんだ。勇者一行には。女性もいるんだろ? ちゃんと同意を取らないと。仔細を説明しないでエロダンジョンに誘導された、とか言って。あとから訴訟を起こされたりするからな? そこは、きっちり確認を取った方がいいぞ?」

 わぁ、大変だ。訴訟はヤバいってぇ。
 それに、普通に考えて。女の子が触手でぬるぬるは。ダメでしょう!

 そう思っていたら。他の、冒険者が次々に教えてくれる。
「そこの商店に。触手にツンツンされても大丈夫な、革製の下着が売っているから。買っていった方がいいぞ?」
 え、局部をカバーした方がいいの? そんなにぃ?
「あと、衣類は、いっぱい持って行った方がいい。服を溶かすスライムが、いっぱいいるし。あそこの魔獣は、爪で衣服を引き裂くのが好きだ。下着もびちょびちょになる」
 うぇぇ、聞きたくないですぅ。でも、重要情報ですな?

「俺たちは、あのダンジョンに全然、太刀打ちできないが。勇者なら、最深部まで攻略してくれるだろう。期待しているぜ? そして、エロエロの攻略法を、ぜひ伝授してくれ」
 頼むぅ、と、俺を拝む冒険者たちは。ダンジョンから漏れ出てくる魔獣を駆除するので、精一杯らしい。
 彼らは、ダンジョンの根本を、勇者に正常化してもらいたいのだ。

 そんなこと、出来るのかな? と思いながら。
 俺は、仲間たちに。この情報を伝えなければならなかったのだ。

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