3 / 43
1 物語は、はじまりの村から始まる テオ・ターン
しおりを挟む
◆物語は、はじまりの村から始まる テオ・ターン
俺は、テオドール。通称、テオ。十八歳。
はじまりの村、ハージマで。両親とともにパン屋を営んでおります。
今の、俺のステータスは、こんな感じ。
テオドール・リンツ 十八歳 種族:人間
職業:料理人、村人A、鑑定士
スキル:荷物運びLv.50
料理Lv.30
片付けLv.12
俊足Lv.5
特殊スキル:鑑定Lv.15
特殊スキル欄が下になったのは、普通のスキルが、それを上回っちゃったから。優先順位が低くなっちゃったんだろうね?
荷物運びが、レベル50なのは。
ほら。パン屋って、粉を多く使うだろう? 小麦粉をせっせと運んでいたら、なんか、レベルが上がっちゃったんだよね。
でも、普通の村人的に言うと、レベル10以上になれば、なかなかの職人扱いになるんだよ?
だから料理レベル30の、俺の店は。おかげさまで繁盛しているよ。エッヘン。
サファは、子供のときから、ほとんどのスキルが、レベル100を上回っていたけど。
アレは、規格外なんだからね?
なにせ、勇者って生き物だ。剣術も運動神経も魔法も。なにもかもが、化け物級なわけ。
十歳で、レベル100超えとか。普通の人間じゃ、ありえないんだからね?
でも、だからこその、勇者なんだ。
そうでなければ、魔王なんか倒せないでしょ。
ま、俺には関係ないことだ。頑張ってぇ。
俺は、特殊スキル:鑑定、があるから。自分のスキルも、お客のスキルレベルも、わかるけど。
普通の人は、十歳の鑑定の儀で、鑑定を受けたら。あとは、あまり。自分のレベルとか、調べないものなんだ。
だって、王都の役所に行って、有料で、鑑定してもらわなきゃならないんだよ?
めんどくさいし、お金を払ってまで知りたいものでもない。
普通に暮らしている分には、レベルとか、あまり関係ないからね?
つつましく、日々、懸命に働くのみですよ。
ところで、ここハージマ村は、はじまりの村なので。よく冒険者が、森に探検に行く前に、立ち寄ります。
そして、俺のパン屋に冒険者が来ると。俺は、情報を口にするのだ。
他愛もないことだよ?
東に、魔獣ボムベア(なんか、爆弾投げてくるクマ)が出た、とか。
西に、スライムが大量発生中とか。
それで、村人Aの役割が果たされて。職業欄の鑑定士の上に、村人Aがあるわけ。
鑑定スキルも、それなりに使っているんだけどね?
冒険者が、横暴な振る舞いをしたりしたときに、鑑定して。
俺より、レベルが低かったら。荷物運びの馬鹿力を使って、店から追い出したりするんだ。
冒険者は、なんでか威張りんぼなやつが多いから。困っちゃうよねぇ。
でも、はじまりの村は、はじまりだけあって、周りの森にいる魔獣も、そんなに強くない。
初級者用? みたいな。
だから、この村に来る冒険者も、初級者じゃん? だから、俺でも対応できるんだよね。
俺は、あまり、身長が伸びなくて。中肉中背ってやつだから。相手は大抵、俺を見くびってくるけど。
でも、荷物運びレベル50は、結構な力持ちなんだよ?
二十キロの小麦粉の袋を、三つくらいなら、軽々持てるんだからね? まぁまぁでしょ。
あと、俊足もあるから。荷物を持って、サカサカ移動もできるよ?
料理人的には、なかなかいいスキルを手に出来たと思っている。
ま、そんなわけで。はじまりの村で、のんびりのほほんライフを満喫していた、俺。
そこに、嵐がやってきたのだ。
「勇者だ。勇者、サファイアが。この村に戻ってきたぞぉ??」
なんだか、店の外が騒がしいと思ったら。
肉屋の息子が、そう叫びながら、村を走り回っていた。
は? なんで勇者が、この村に来るの? まっすぐ、魔王城へ行けばいいのに。
と、俺は。人知れず、思う。
店のカウンターから、離れる気はない。
そうしたら、母さんが厨房から出てきて。俺に言った。
「あら、テオ。アルフくんの声が聞こえなかったの? サファくんが、戻ってきたのよ? 早く、お出迎えに行ってらっしゃい?」
嫌です。とは言えないので。首を振って、やんわり断る。
ちなみに、アルフくんは、肉屋の息子である。
「別に、俺が行かなくても。村人がみんなで、お出迎えするんだろ?」
なにせ、このハージマ村は。勇者生誕の地として、賑わいを見せている。
勇者にあやかりたい冒険者も、よく訪れているので。国の境にある割には、栄えた村なのだ。
そんな、恩恵を享受している村人は、もろ手を挙げて、勇者を出迎えるに決まっている。
「なに、言ってんの。子供の頃は、サファくんに、べったりだったじゃない?」
母よ。
俺が、べったりだったのではなく。サファが、俺にべったりだったのです。
細目にして、俺は不本意だと表す。
「一番の親友で、幼馴染のあんたが、お出迎えしないなんて。そんな薄情な息子に育てた覚えは、ないわよ? とにかく行ってらっしゃい。そして、パンをいっぱい買わせなさい」
母は。商魂たくましい女性だった。
サファには、むしろ、会いたくないが。
勇者一行として、サファは多くの仲間を引き連れているかもしれないしな?
確かに、パンをいっぱい買ってもらえるかもしれない。
俺は、母の言葉を受けて。しぶしぶ店を出るのだった。
でも、出た、すぐそこに。
通りで村人に囲まれたサファが、いたのだ。
揉みくちゃ、ほどではないが。みなさんの歓迎ぶりに、若干引き気味の、勇者。に、見える。
「あぁ、テオ。久しぶり。か、変わらないね? 子供のときのテオのままだ」
サファは、俺を目にして一番に、そう言った。
くっきりしたアーモンド形の目元を、やんわり細めて。
ヤッバイくらいの、キラキラ壮絶イケメンの微笑みで。周りを悩殺したが。
は?
それって。俺が子供のまんまだって言いたいわけ?
ちゃんと、成長してるっつうの、ボケ。
まぁ? サファは。
確かに、上にも横にも、がっちり大きくなっているからぁ?
それほど身長の伸びなかった俺を、馬鹿にしちゃうんだろうけどぉ?
ムカつく。
サファは、俺が見上げるほどの長身になっていた。
短髪だけど。襟足が見えないくらい、ちょっと長めにして、おしゃれにしている銀の髪は。子供の頃から比べて、三倍、キラキラしくなっている。
サファの名前の由来である、サファイア色の瞳は、光が差して、濃く、深く、穏やかな青色。
子供時分は、お人形さんみたいに、ただ整った顔立ちだったが。
今は、鼻梁は高く、唇は肉感的で。さわやかにキラリと笑うと、誰もが目を奪われる、美丈夫だ。
顔の輪郭もシャープになって、すっかり大人の男性になっている。そんな中に、威厳や、気品や、色気も備わっているから。
これは…なんか、女性にモテそう。
いや、もう、モテてるな。
村の女の子たちが、遠巻きにキャーキャー言っているし。
仲間らしき、初顔の女性陣もふたり、サファの斜め後ろにピッタリくっついている。
モテモテだ。ハーレムだ。
勇者で、これだけ顔が良かったら。ですよねぇ? という感じだ。
でも、さすが勇者というくらいだ。体は引き締まっている。
一般的な冒険者は、服の上に、鎧を身につけ、剣とか武具とか装備するのだが。
サファは、冒険者より、防具は少なめ。
胸当て肩当てと、足首から膝を金属で覆うブーツ、腰周りに剣を装備、くらいかな?
他は、普通の衣服なので。その布越しに見える、腕とか腹とか腿の筋肉が、すごい。
一見して、分厚い。
なんか。なにもかもが、俺より一回りも二回りも大きい感じ。
むむぅ。小さいって言われても、仕方がないか。
「悪かったな、小さいまんまで」
「そんなこと、言ってないよ。でも、再会して早々の言葉が、それって。ふふ、テオらしい。なんか、帰ってきたって感じがする」
そうだなぁ。そういえば、サファは。
ハージマに戻ってくるのが、八年ぶりになるのだもんな?
そうしたら。久しぶりに顔を合わす幼馴染が、こんなツンツンしていたら。さすがに可哀想かな?
なので。俺は。笑顔を向けて、彼を歓待した。
「おかえり、サファ」
「ただいま、テオ」
そうして、握手を交わしたが。
サファは、なんと。俺の手をひっくり返して、甲にキスしたのだ。
ぎやぁぁぁぁああ?
「な、な、なにすんだ??」
ブンブンして、振りほどきたいのに。勇者の馬鹿力で、握った手は、びくともしないのだった。
嘘だろぉぉ? 俺だって、馬鹿力、自負してたのにぃぃ。村一番の馬鹿力なのにぃ。
勇者を囲む村人たちからも、キャーーっ、と悲鳴があがった。
はーなーせー。
「なにって? 挨拶に決まっているだろ?」
不思議顔で首を傾げた、サファは。そのあと、麗しい顔つきで、甘ったるく微笑むのだ。うぇぇ。
男の俺に、なんでイケメンの無駄遣いをするかなぁ?
でも。そのサファを見て、村の女の子たちが、今度は華やいだ悲鳴を出す。
せわしないっ。
「そうだ、テオに話があるんだ。ちょっと、そこの酒場に来てくれないか? おばさん、いいですよね?」
サファは、俺の後ろで成り行きを見ていた母に、許しを乞う。
「いや、今、忙しいから」
俺は、なんとか断ろうとするが。母は、それを許さない。
「なに言ってんの。今、一番時間があるでしょ? うちの村の勇者様が、お願いしているのだから。行ってらっしゃい?」
「ありがとう、おばさん」
そう言って、サファは俺を引っ張って、酒場に入って行くのだった。
つか、俺の意見は無視? ムカつく。
サファは、昔から、そういう強引なところがあったよな?
それで、引きずられていく間に、ちょっとサファのステータスを見たんだけど。
別れ際は、ラッキースケベ(村人A専用)だったが。
それが、ラッキースケベ(テオ限定)に変わっているんですけどぉ?
そして、Lv.1736って、何事ぉ?
なんで離れていたのに、こんなにレベルが上がっているんですかっ? 解せぬ。
俺は、テオドール。通称、テオ。十八歳。
はじまりの村、ハージマで。両親とともにパン屋を営んでおります。
今の、俺のステータスは、こんな感じ。
テオドール・リンツ 十八歳 種族:人間
職業:料理人、村人A、鑑定士
スキル:荷物運びLv.50
料理Lv.30
片付けLv.12
俊足Lv.5
特殊スキル:鑑定Lv.15
特殊スキル欄が下になったのは、普通のスキルが、それを上回っちゃったから。優先順位が低くなっちゃったんだろうね?
荷物運びが、レベル50なのは。
ほら。パン屋って、粉を多く使うだろう? 小麦粉をせっせと運んでいたら、なんか、レベルが上がっちゃったんだよね。
でも、普通の村人的に言うと、レベル10以上になれば、なかなかの職人扱いになるんだよ?
だから料理レベル30の、俺の店は。おかげさまで繁盛しているよ。エッヘン。
サファは、子供のときから、ほとんどのスキルが、レベル100を上回っていたけど。
アレは、規格外なんだからね?
なにせ、勇者って生き物だ。剣術も運動神経も魔法も。なにもかもが、化け物級なわけ。
十歳で、レベル100超えとか。普通の人間じゃ、ありえないんだからね?
でも、だからこその、勇者なんだ。
そうでなければ、魔王なんか倒せないでしょ。
ま、俺には関係ないことだ。頑張ってぇ。
俺は、特殊スキル:鑑定、があるから。自分のスキルも、お客のスキルレベルも、わかるけど。
普通の人は、十歳の鑑定の儀で、鑑定を受けたら。あとは、あまり。自分のレベルとか、調べないものなんだ。
だって、王都の役所に行って、有料で、鑑定してもらわなきゃならないんだよ?
めんどくさいし、お金を払ってまで知りたいものでもない。
普通に暮らしている分には、レベルとか、あまり関係ないからね?
つつましく、日々、懸命に働くのみですよ。
ところで、ここハージマ村は、はじまりの村なので。よく冒険者が、森に探検に行く前に、立ち寄ります。
そして、俺のパン屋に冒険者が来ると。俺は、情報を口にするのだ。
他愛もないことだよ?
東に、魔獣ボムベア(なんか、爆弾投げてくるクマ)が出た、とか。
西に、スライムが大量発生中とか。
それで、村人Aの役割が果たされて。職業欄の鑑定士の上に、村人Aがあるわけ。
鑑定スキルも、それなりに使っているんだけどね?
冒険者が、横暴な振る舞いをしたりしたときに、鑑定して。
俺より、レベルが低かったら。荷物運びの馬鹿力を使って、店から追い出したりするんだ。
冒険者は、なんでか威張りんぼなやつが多いから。困っちゃうよねぇ。
でも、はじまりの村は、はじまりだけあって、周りの森にいる魔獣も、そんなに強くない。
初級者用? みたいな。
だから、この村に来る冒険者も、初級者じゃん? だから、俺でも対応できるんだよね。
俺は、あまり、身長が伸びなくて。中肉中背ってやつだから。相手は大抵、俺を見くびってくるけど。
でも、荷物運びレベル50は、結構な力持ちなんだよ?
二十キロの小麦粉の袋を、三つくらいなら、軽々持てるんだからね? まぁまぁでしょ。
あと、俊足もあるから。荷物を持って、サカサカ移動もできるよ?
料理人的には、なかなかいいスキルを手に出来たと思っている。
ま、そんなわけで。はじまりの村で、のんびりのほほんライフを満喫していた、俺。
そこに、嵐がやってきたのだ。
「勇者だ。勇者、サファイアが。この村に戻ってきたぞぉ??」
なんだか、店の外が騒がしいと思ったら。
肉屋の息子が、そう叫びながら、村を走り回っていた。
は? なんで勇者が、この村に来るの? まっすぐ、魔王城へ行けばいいのに。
と、俺は。人知れず、思う。
店のカウンターから、離れる気はない。
そうしたら、母さんが厨房から出てきて。俺に言った。
「あら、テオ。アルフくんの声が聞こえなかったの? サファくんが、戻ってきたのよ? 早く、お出迎えに行ってらっしゃい?」
嫌です。とは言えないので。首を振って、やんわり断る。
ちなみに、アルフくんは、肉屋の息子である。
「別に、俺が行かなくても。村人がみんなで、お出迎えするんだろ?」
なにせ、このハージマ村は。勇者生誕の地として、賑わいを見せている。
勇者にあやかりたい冒険者も、よく訪れているので。国の境にある割には、栄えた村なのだ。
そんな、恩恵を享受している村人は、もろ手を挙げて、勇者を出迎えるに決まっている。
「なに、言ってんの。子供の頃は、サファくんに、べったりだったじゃない?」
母よ。
俺が、べったりだったのではなく。サファが、俺にべったりだったのです。
細目にして、俺は不本意だと表す。
「一番の親友で、幼馴染のあんたが、お出迎えしないなんて。そんな薄情な息子に育てた覚えは、ないわよ? とにかく行ってらっしゃい。そして、パンをいっぱい買わせなさい」
母は。商魂たくましい女性だった。
サファには、むしろ、会いたくないが。
勇者一行として、サファは多くの仲間を引き連れているかもしれないしな?
確かに、パンをいっぱい買ってもらえるかもしれない。
俺は、母の言葉を受けて。しぶしぶ店を出るのだった。
でも、出た、すぐそこに。
通りで村人に囲まれたサファが、いたのだ。
揉みくちゃ、ほどではないが。みなさんの歓迎ぶりに、若干引き気味の、勇者。に、見える。
「あぁ、テオ。久しぶり。か、変わらないね? 子供のときのテオのままだ」
サファは、俺を目にして一番に、そう言った。
くっきりしたアーモンド形の目元を、やんわり細めて。
ヤッバイくらいの、キラキラ壮絶イケメンの微笑みで。周りを悩殺したが。
は?
それって。俺が子供のまんまだって言いたいわけ?
ちゃんと、成長してるっつうの、ボケ。
まぁ? サファは。
確かに、上にも横にも、がっちり大きくなっているからぁ?
それほど身長の伸びなかった俺を、馬鹿にしちゃうんだろうけどぉ?
ムカつく。
サファは、俺が見上げるほどの長身になっていた。
短髪だけど。襟足が見えないくらい、ちょっと長めにして、おしゃれにしている銀の髪は。子供の頃から比べて、三倍、キラキラしくなっている。
サファの名前の由来である、サファイア色の瞳は、光が差して、濃く、深く、穏やかな青色。
子供時分は、お人形さんみたいに、ただ整った顔立ちだったが。
今は、鼻梁は高く、唇は肉感的で。さわやかにキラリと笑うと、誰もが目を奪われる、美丈夫だ。
顔の輪郭もシャープになって、すっかり大人の男性になっている。そんな中に、威厳や、気品や、色気も備わっているから。
これは…なんか、女性にモテそう。
いや、もう、モテてるな。
村の女の子たちが、遠巻きにキャーキャー言っているし。
仲間らしき、初顔の女性陣もふたり、サファの斜め後ろにピッタリくっついている。
モテモテだ。ハーレムだ。
勇者で、これだけ顔が良かったら。ですよねぇ? という感じだ。
でも、さすが勇者というくらいだ。体は引き締まっている。
一般的な冒険者は、服の上に、鎧を身につけ、剣とか武具とか装備するのだが。
サファは、冒険者より、防具は少なめ。
胸当て肩当てと、足首から膝を金属で覆うブーツ、腰周りに剣を装備、くらいかな?
他は、普通の衣服なので。その布越しに見える、腕とか腹とか腿の筋肉が、すごい。
一見して、分厚い。
なんか。なにもかもが、俺より一回りも二回りも大きい感じ。
むむぅ。小さいって言われても、仕方がないか。
「悪かったな、小さいまんまで」
「そんなこと、言ってないよ。でも、再会して早々の言葉が、それって。ふふ、テオらしい。なんか、帰ってきたって感じがする」
そうだなぁ。そういえば、サファは。
ハージマに戻ってくるのが、八年ぶりになるのだもんな?
そうしたら。久しぶりに顔を合わす幼馴染が、こんなツンツンしていたら。さすがに可哀想かな?
なので。俺は。笑顔を向けて、彼を歓待した。
「おかえり、サファ」
「ただいま、テオ」
そうして、握手を交わしたが。
サファは、なんと。俺の手をひっくり返して、甲にキスしたのだ。
ぎやぁぁぁぁああ?
「な、な、なにすんだ??」
ブンブンして、振りほどきたいのに。勇者の馬鹿力で、握った手は、びくともしないのだった。
嘘だろぉぉ? 俺だって、馬鹿力、自負してたのにぃぃ。村一番の馬鹿力なのにぃ。
勇者を囲む村人たちからも、キャーーっ、と悲鳴があがった。
はーなーせー。
「なにって? 挨拶に決まっているだろ?」
不思議顔で首を傾げた、サファは。そのあと、麗しい顔つきで、甘ったるく微笑むのだ。うぇぇ。
男の俺に、なんでイケメンの無駄遣いをするかなぁ?
でも。そのサファを見て、村の女の子たちが、今度は華やいだ悲鳴を出す。
せわしないっ。
「そうだ、テオに話があるんだ。ちょっと、そこの酒場に来てくれないか? おばさん、いいですよね?」
サファは、俺の後ろで成り行きを見ていた母に、許しを乞う。
「いや、今、忙しいから」
俺は、なんとか断ろうとするが。母は、それを許さない。
「なに言ってんの。今、一番時間があるでしょ? うちの村の勇者様が、お願いしているのだから。行ってらっしゃい?」
「ありがとう、おばさん」
そう言って、サファは俺を引っ張って、酒場に入って行くのだった。
つか、俺の意見は無視? ムカつく。
サファは、昔から、そういう強引なところがあったよな?
それで、引きずられていく間に、ちょっとサファのステータスを見たんだけど。
別れ際は、ラッキースケベ(村人A専用)だったが。
それが、ラッキースケベ(テオ限定)に変わっているんですけどぉ?
そして、Lv.1736って、何事ぉ?
なんで離れていたのに、こんなにレベルが上がっているんですかっ? 解せぬ。
応援ありがとうございます!
44
お気に入りに追加
836
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる