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エピローグ ①
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◆エピローグ
三峰商事は、首都ガザハーンに近代建築の高層ビル群を建設予定だが。油田候補地にほど近いエルバルにも、工事関係者の居住区建設を検討していた。
エルバルの街並みは、白壁の低層住宅が居並ぶ、古き良き景観である。
私、天野蓮月は。三峰の特別顧問として。そしてシマーム国で育った者として。中東色が色濃いエルバルの印象を損ねないよう配慮した建設計画を、三峰本社とシマーム政府に提出した。
もちろん、三峰から派遣された建設部門の精鋭社員にいろいろ助言を貰いつつですが。
それによってシマーム観光省の役人からお褒めの言葉をいただきまして。
政府から感謝の意を受けた三峰からも、私の仕事を高く評価してもらいました。
つまり、ガザハーンはホテルや商業施設の充実した、近代建築で形成する都市計画が進められ。
エルバルは古式ゆかしい街並みを維持する。
いまだシマームに根強く存在する、保守派も納得する開拓が進められることになったのだ。
「天野特別顧問、お久しぶりです」
エルバルの三峰支社(仮)に顔を出したら。平川本部長がいて。私に挨拶してきた。
「本部長、からかわないでください。それに二日前にリモートしたので、お久しぶりではないです」
平川本部長は、私の上司であるのに。肩書が私の方が上になってしまったから。顔を合わせるたびに、まずは特別顧問と呼んで私を恐縮させるのだった。
「ははっ、天野は相変わらず生真面目だな? しかし久しぶりではないかもしれないが、こうして直に顔を合わせると、モニター越しではわからない顔色とか雰囲気とか目に見えて、安心できるんだ」
本部長も相変わらずさわやかに笑って、私の肩をバンバン叩く。
この痛みも、懐かしいと思うと甘んじて受け入れられます。
「それに、こんなに髪が明るかったんだなと、今気づいたよ」
「元々この髪色なのです。日本では派手なので、高校生のときから染めていたのですが。今は陛下に染めるなと指示を受けていますので…」
「あぁ、構わないよ。三峰は外国籍の社員も多いし。元々、自毛推奨な会社だからな。しかしよく見ると、まつ毛も眉毛も赤かったんだな?」
顔をまじまじと見やられて。
憧れの上司ですから、なにやら照れてしまいます。
本当に、本部長とこのように親しくしていただけるのは、つい最近までは考えられないことだったので。
人生、いつなにが起きるかわからない、ということですね?
「あの、本部長。少しお話があります」
人気のないところに彼を誘い、私は王に天野蓮月だと認識されたことを報告しました。
「宰相に間に入ってもらい、穏便に誤解を解くことができました。この件で三峰に迷惑をかけることはもうありません」
すると本部長は、太陽のような大きな笑顔を見せた。
「本当か? それは朗報だ。あぁ、この件はずっとひやひやしていたが。ひと安心だなぁ? 社長もきっと喜ぶと思うぞ。それで天野特別顧問の待遇も、以前と同じで良いのか?」
「はい。そのように伺っております」
私が国王の妃として遇されていることは、会社には内緒にしたいとラダウィに言いました。
彼は渋々ですが、うなずいて。
どちらにしても、同性の伴侶は大々的には発表できないお国柄なので。
契約満了となる十年後には必ず会社に打ち明けること。
それによって会社の対応がどうなるのか、仕事を続けるのか、など。私の進退はそのときに決めよう。
そんな感じで話は落ち着きました。
つまり、今まで通り仕事をして。
今まで通り、ラダウィの寵姫です。
「承知したよ、天野。せっかくいい仕事をして、特別顧問としての信用を得たんだ。引き続きシマームの中心で仕事ができそうで、良かったな? これから建設ラッシュが始まり、天野にもいろいろ仕事を任せたいと思っている。忙しくなるだろうが、これからもバリバリ働いてくれ?」
懸念がなくなり晴れやかに笑った本部長は、そう言って私を激励してくれました。
私も会社に万事問題なしと報告できたこと、とても嬉しく思います。
まだまだ社畜として頑張りますよっ。
社畜…は、言い方は合っているのでしょうか?
特別顧問の社畜は聞いたことがありませんけど。
まぁ、細かいことはいいです。
★★★★★
恋も仕事も順調…自分で言うのもなんですが。
そんな私の前に、一番の難関が立ちはだかりました。
謁見の間では。民族衣装を身につける、威厳に満ちた国王が悠然と玉座に腰かけ。
彼の隣の椅子に座る私は、スーツ姿で凡庸で。見劣り感は甚だしく。
そして、一段下になっているところに。ムサファに案内されてきた、鬼の形相の華月がいます。
華月は一週間ほど前に私が呼び寄せて、一度シマームに来ましたが。
仕事を放って、私の安否を確認に来たので。アメリカに取って帰らなければならなかったのです。
詳細を言わないで華月を呼んで、心配させてしまって申し訳ありません。
しかし私も当時は、華月の背景を考えられないくらいにテンパっていたようで。
社会人としてありえませんね?
あとで弟には電話で平謝りいたしました。ごめんなさい。
それで、華月は。もしかしたら私が事件に巻き込まれたのではないかとか、最悪なことを想像してシマームに来てくれたのですが。
一応、命の危険はないことがわかって、一度戻ったのです。
ですが、私がラダウィの元にいるのは危険に違いなーい、ということで。
仕事を調整してから再びシマームに戻ってきた、ところです。
しかし、すべては明らかになり。弟の嘘も陰謀も露呈しました。
事の収拾は複雑怪奇極まりなし、です。
「レンちゃんっ」
両手を開いて、挨拶を要求する弟を見て。私は椅子から立ち上がり、彼の元へ向かう。
アメリカ式にハグをして、頬にチュウまでした。
「あぁ、レンちゃんの匂いが懐かしい。レンちゃんは接客業でもないのに、こんなに髪を短くすることないんだぞ? うーん、しかししかし、このうなじはたまらん」
そう言って、首筋にもチュウした。
弟の髪型は、私と同じなのですけど。だから、首筋も匂いも私と同じなのでは?
「触るな。それは私のうなじだ」
あとからやってきたラダウィに、華月はべりっとはがされて、私から距離を取らされる。
というか、これはラダウィのでも華月のでもなく、私のうなじです。
「うるせぇ、レンちゃんをこんなところに閉じ込めやがって…」
再びラダウィに牙をむく弟に、私はオロオロしてしまいます。
「いえ、違います、ここには三峰の仕事をしに…」
「いいや、こいつが強引に連れてきたに決まっている。昔からレンちゃんに対するこいつの執着は並外れていた。どうせ三峰に多額の取引でも持ち掛けて、レンちゃんを巻き込んだんだろ?」
華月は、一国の王をこいつ呼ばわりして、睨んだ。
もう、その恐れ多い感じが肝を冷やします。
しかし弟の予想がほぼほぼ当たっているから、それも恐ろしいです。
確かに、ラダウィはただの会社員である私を獲得するために、三峰との契約を結んだと言っていましたから。
反論はできず、苦笑するのみです。
「一週間ぶりだな、親友殿。いや、レンの弟だから私の弟でもあるな? 兄の私に挨拶はないのか? ハナ」
敵意丸出しの華月に対し、ラダウィは薄ら笑いの余裕の態度だ。
「親友? どの口が言う。さらにおまえが兄だと? そんなものは認めない」
「ハナちゃん、おまえだなんて国王陛下に失礼だよ? いくら親しくても、もうそんな言い方をしたら駄目なんだ」
「こんな奴、おまえで充分なんだよ、レンちゃん。俺の大事な兄貴をとうとう拉致しやがった」
「拉致じゃないからっ」
王に聞こえないように、こっそり弟をたしなめるが。
ラダウィは気にも留めていないようだ。
「はは、拉致ではない。これは合意と言うんだ。ハナはアラビア語に疎くなったな?」
「はぁ?!」
怒った華月が王に詰め寄ろうとするが。ラダウィは私を引き寄せて、腕の中に囲ってしまう。
弟は私に気兼ねして、動きを止めた。
というか、馴染みのある彼の香りと腕のぬくもりに包まれて、私は心地よさを感じてしまう。
双子の弟は、自分に一番近しい者だった。
けれどいつの間にか、弟よりもラダウィの存在の方が大きくなっていた、みたいです。
「それにしても、ハナは無礼が過ぎるな。レン、兄であるおまえが謝罪の意を示せ」
グッと抱き込まれ、止める間もなく、唇と唇が深く重ね合わされてしまった。
弟の前で、ラダウィと濃厚な恋人のキスをするなんて。そんな精神は持ち合わせていません。
恥ずかしい、見ないで、どうしよう。
そんな思いが頭にグルグルと回る。
でも、キスは。動揺している間に濃密さを増していき。
舌を、彼の舌に絡め取られ、上あごをくすぐられ、ジンと痺れる快感が体を満たして。
敏感な口腔を舐め回されて、蕩けさせられて。
甘ったるいキスに溺れてしまう。
「ラダ、ウィ様…」
唇が離されたとき、目に映るのは彼の優しい笑顔だけだった。
快楽に視界が潤み、濡れた唇は彼を求め。
もっと欲しくて、あわいをゆるく開いたまま、ラダウィをみつめる。
「てめぇ、俺の純情可憐な兄貴を、よくもこんなエロエロにしやがったなっ??」
怒りに満ちた弟の声がそばでして、ようやく我に返りました。
慌てて唇を引き締めて、手で覆うけど。時すでに遅しで。顔を赤くする。
「全く、レンの本質をわかっていないのは、弟であるおまえだ。レンは私の腕の中では奔放な…」
「わーっ、聞きたくないっ」
華月は有無を言わさず私の手を引いて、逃げる勢いで謁見の間を出た。
「レンちゃんの部屋に案内して。ふたりでじっくり話そう」
廊下をずかずかと足音を響かせて歩く弟に、私は苦笑して、部屋に案内したのだった。
弟と、直接対決ですね?
三峰商事は、首都ガザハーンに近代建築の高層ビル群を建設予定だが。油田候補地にほど近いエルバルにも、工事関係者の居住区建設を検討していた。
エルバルの街並みは、白壁の低層住宅が居並ぶ、古き良き景観である。
私、天野蓮月は。三峰の特別顧問として。そしてシマーム国で育った者として。中東色が色濃いエルバルの印象を損ねないよう配慮した建設計画を、三峰本社とシマーム政府に提出した。
もちろん、三峰から派遣された建設部門の精鋭社員にいろいろ助言を貰いつつですが。
それによってシマーム観光省の役人からお褒めの言葉をいただきまして。
政府から感謝の意を受けた三峰からも、私の仕事を高く評価してもらいました。
つまり、ガザハーンはホテルや商業施設の充実した、近代建築で形成する都市計画が進められ。
エルバルは古式ゆかしい街並みを維持する。
いまだシマームに根強く存在する、保守派も納得する開拓が進められることになったのだ。
「天野特別顧問、お久しぶりです」
エルバルの三峰支社(仮)に顔を出したら。平川本部長がいて。私に挨拶してきた。
「本部長、からかわないでください。それに二日前にリモートしたので、お久しぶりではないです」
平川本部長は、私の上司であるのに。肩書が私の方が上になってしまったから。顔を合わせるたびに、まずは特別顧問と呼んで私を恐縮させるのだった。
「ははっ、天野は相変わらず生真面目だな? しかし久しぶりではないかもしれないが、こうして直に顔を合わせると、モニター越しではわからない顔色とか雰囲気とか目に見えて、安心できるんだ」
本部長も相変わらずさわやかに笑って、私の肩をバンバン叩く。
この痛みも、懐かしいと思うと甘んじて受け入れられます。
「それに、こんなに髪が明るかったんだなと、今気づいたよ」
「元々この髪色なのです。日本では派手なので、高校生のときから染めていたのですが。今は陛下に染めるなと指示を受けていますので…」
「あぁ、構わないよ。三峰は外国籍の社員も多いし。元々、自毛推奨な会社だからな。しかしよく見ると、まつ毛も眉毛も赤かったんだな?」
顔をまじまじと見やられて。
憧れの上司ですから、なにやら照れてしまいます。
本当に、本部長とこのように親しくしていただけるのは、つい最近までは考えられないことだったので。
人生、いつなにが起きるかわからない、ということですね?
「あの、本部長。少しお話があります」
人気のないところに彼を誘い、私は王に天野蓮月だと認識されたことを報告しました。
「宰相に間に入ってもらい、穏便に誤解を解くことができました。この件で三峰に迷惑をかけることはもうありません」
すると本部長は、太陽のような大きな笑顔を見せた。
「本当か? それは朗報だ。あぁ、この件はずっとひやひやしていたが。ひと安心だなぁ? 社長もきっと喜ぶと思うぞ。それで天野特別顧問の待遇も、以前と同じで良いのか?」
「はい。そのように伺っております」
私が国王の妃として遇されていることは、会社には内緒にしたいとラダウィに言いました。
彼は渋々ですが、うなずいて。
どちらにしても、同性の伴侶は大々的には発表できないお国柄なので。
契約満了となる十年後には必ず会社に打ち明けること。
それによって会社の対応がどうなるのか、仕事を続けるのか、など。私の進退はそのときに決めよう。
そんな感じで話は落ち着きました。
つまり、今まで通り仕事をして。
今まで通り、ラダウィの寵姫です。
「承知したよ、天野。せっかくいい仕事をして、特別顧問としての信用を得たんだ。引き続きシマームの中心で仕事ができそうで、良かったな? これから建設ラッシュが始まり、天野にもいろいろ仕事を任せたいと思っている。忙しくなるだろうが、これからもバリバリ働いてくれ?」
懸念がなくなり晴れやかに笑った本部長は、そう言って私を激励してくれました。
私も会社に万事問題なしと報告できたこと、とても嬉しく思います。
まだまだ社畜として頑張りますよっ。
社畜…は、言い方は合っているのでしょうか?
特別顧問の社畜は聞いたことがありませんけど。
まぁ、細かいことはいいです。
★★★★★
恋も仕事も順調…自分で言うのもなんですが。
そんな私の前に、一番の難関が立ちはだかりました。
謁見の間では。民族衣装を身につける、威厳に満ちた国王が悠然と玉座に腰かけ。
彼の隣の椅子に座る私は、スーツ姿で凡庸で。見劣り感は甚だしく。
そして、一段下になっているところに。ムサファに案内されてきた、鬼の形相の華月がいます。
華月は一週間ほど前に私が呼び寄せて、一度シマームに来ましたが。
仕事を放って、私の安否を確認に来たので。アメリカに取って帰らなければならなかったのです。
詳細を言わないで華月を呼んで、心配させてしまって申し訳ありません。
しかし私も当時は、華月の背景を考えられないくらいにテンパっていたようで。
社会人としてありえませんね?
あとで弟には電話で平謝りいたしました。ごめんなさい。
それで、華月は。もしかしたら私が事件に巻き込まれたのではないかとか、最悪なことを想像してシマームに来てくれたのですが。
一応、命の危険はないことがわかって、一度戻ったのです。
ですが、私がラダウィの元にいるのは危険に違いなーい、ということで。
仕事を調整してから再びシマームに戻ってきた、ところです。
しかし、すべては明らかになり。弟の嘘も陰謀も露呈しました。
事の収拾は複雑怪奇極まりなし、です。
「レンちゃんっ」
両手を開いて、挨拶を要求する弟を見て。私は椅子から立ち上がり、彼の元へ向かう。
アメリカ式にハグをして、頬にチュウまでした。
「あぁ、レンちゃんの匂いが懐かしい。レンちゃんは接客業でもないのに、こんなに髪を短くすることないんだぞ? うーん、しかししかし、このうなじはたまらん」
そう言って、首筋にもチュウした。
弟の髪型は、私と同じなのですけど。だから、首筋も匂いも私と同じなのでは?
「触るな。それは私のうなじだ」
あとからやってきたラダウィに、華月はべりっとはがされて、私から距離を取らされる。
というか、これはラダウィのでも華月のでもなく、私のうなじです。
「うるせぇ、レンちゃんをこんなところに閉じ込めやがって…」
再びラダウィに牙をむく弟に、私はオロオロしてしまいます。
「いえ、違います、ここには三峰の仕事をしに…」
「いいや、こいつが強引に連れてきたに決まっている。昔からレンちゃんに対するこいつの執着は並外れていた。どうせ三峰に多額の取引でも持ち掛けて、レンちゃんを巻き込んだんだろ?」
華月は、一国の王をこいつ呼ばわりして、睨んだ。
もう、その恐れ多い感じが肝を冷やします。
しかし弟の予想がほぼほぼ当たっているから、それも恐ろしいです。
確かに、ラダウィはただの会社員である私を獲得するために、三峰との契約を結んだと言っていましたから。
反論はできず、苦笑するのみです。
「一週間ぶりだな、親友殿。いや、レンの弟だから私の弟でもあるな? 兄の私に挨拶はないのか? ハナ」
敵意丸出しの華月に対し、ラダウィは薄ら笑いの余裕の態度だ。
「親友? どの口が言う。さらにおまえが兄だと? そんなものは認めない」
「ハナちゃん、おまえだなんて国王陛下に失礼だよ? いくら親しくても、もうそんな言い方をしたら駄目なんだ」
「こんな奴、おまえで充分なんだよ、レンちゃん。俺の大事な兄貴をとうとう拉致しやがった」
「拉致じゃないからっ」
王に聞こえないように、こっそり弟をたしなめるが。
ラダウィは気にも留めていないようだ。
「はは、拉致ではない。これは合意と言うんだ。ハナはアラビア語に疎くなったな?」
「はぁ?!」
怒った華月が王に詰め寄ろうとするが。ラダウィは私を引き寄せて、腕の中に囲ってしまう。
弟は私に気兼ねして、動きを止めた。
というか、馴染みのある彼の香りと腕のぬくもりに包まれて、私は心地よさを感じてしまう。
双子の弟は、自分に一番近しい者だった。
けれどいつの間にか、弟よりもラダウィの存在の方が大きくなっていた、みたいです。
「それにしても、ハナは無礼が過ぎるな。レン、兄であるおまえが謝罪の意を示せ」
グッと抱き込まれ、止める間もなく、唇と唇が深く重ね合わされてしまった。
弟の前で、ラダウィと濃厚な恋人のキスをするなんて。そんな精神は持ち合わせていません。
恥ずかしい、見ないで、どうしよう。
そんな思いが頭にグルグルと回る。
でも、キスは。動揺している間に濃密さを増していき。
舌を、彼の舌に絡め取られ、上あごをくすぐられ、ジンと痺れる快感が体を満たして。
敏感な口腔を舐め回されて、蕩けさせられて。
甘ったるいキスに溺れてしまう。
「ラダ、ウィ様…」
唇が離されたとき、目に映るのは彼の優しい笑顔だけだった。
快楽に視界が潤み、濡れた唇は彼を求め。
もっと欲しくて、あわいをゆるく開いたまま、ラダウィをみつめる。
「てめぇ、俺の純情可憐な兄貴を、よくもこんなエロエロにしやがったなっ??」
怒りに満ちた弟の声がそばでして、ようやく我に返りました。
慌てて唇を引き締めて、手で覆うけど。時すでに遅しで。顔を赤くする。
「全く、レンの本質をわかっていないのは、弟であるおまえだ。レンは私の腕の中では奔放な…」
「わーっ、聞きたくないっ」
華月は有無を言わさず私の手を引いて、逃げる勢いで謁見の間を出た。
「レンちゃんの部屋に案内して。ふたりでじっくり話そう」
廊下をずかずかと足音を響かせて歩く弟に、私は苦笑して、部屋に案内したのだった。
弟と、直接対決ですね?
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