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20 私に逆らう愚か者 ★
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◆私に逆らう愚か者
私の目の前には、出会った頃のラダウィがいて。子供サイズの民族衣装を着た彼が言うのだ。
「レン、おまえは本当につまらんな」
その言葉を聞くと、胸がキュッとなる。喜びではなく、身が縮まる恐れのキュだ。
でも、今は。
子供の彼に呆れたような目で見やられていても。
彼が私をレンと呼ぶ、そのことがひどく嬉しい。
当時は好かれていなかったかもしれないけれど。私が蓮月だと認識はされていた。
それがどんなに幸せなことだったか、と。しみじみ思ってしまう。
良い夢を見た、と思い。
夢? と思って。
ハッと目を開ける。
目の前には、ブロンズの肌を惜しげもなく見せつける、全裸の大人ラダウィがいて。私の髪を手で撫でていたのだ。
「やっと起きたか。つまらんと思っていたところだ」
少し口をムッと引き結ぶラダウィを見て。私は昨日のことを思い出すのだが。
王が宴を中座して、私をベッドに運んだ、ところまでしか覚えていません。
陛下を前にして、まさかの寝落ち??
「も、申し訳ありません。昨夜、私は…」
「あぁ、構わぬ。日本で夜通しセックスしたあとも、仕事や移動でおまえは寝られなかったのだろう?」
朝の陽光が差し込む部屋で、私はラダウィに敷布の波に沈められ。頬やこめかみや鼻の頭をついばまれる。
唇でチュッと吸いつかれると、くすぐったくて。
その仕草に優しさを感じて、嬉しくなるが。
彼の手は、いやらしく胸や腹の上を這い回り。明確に情事を意識させる。
あ、肌を直接撫でられているということは…自分も全裸ですかっ?
視線を巡らせ事態を把握すると。十人くらいは余裕で寝られそうなだだっ広い王の寝台に、一糸まとわぬ自分がポツンと体を横たえている。
それに気づいて。血の気が下がった。
だらしなく貧相な体をさらすのもダメですが。
このベッドは、もしかしてハーレム用ですか?
「あぁぁ、の。陛下、朝ですし。わ、わ、私の服は…」
「朝だからなんだ? おまえの服は昨夜脱がせたあと使用人が持って行ったが?」
そうして、ラダウィは私の鎖骨をかじって、色っぽく笑う。
そんな、着替えがないと部屋から出られません。
「あああ、朝から、情事は、その…」
「おまえが昨夜、ひとりで寝てしまったのが悪いのだろう? それに、朝からセックスしてはいけないなどという道理はない。あと、私に逆らうな」
わわ、逆らうなと言われると弱いのですが。
道理がないと言われたら、そうなのですがぁ。
なんとなく常識的に、明るい中でそういうことするのは、ちょっとぉ。
しかし、私が昨日寝落ちをしなければ、とも思いますし。
ラダウィが胸や腹を舌で舐めていく感触を受けながら、どうしようと思っていると…。
ぐぅぅぅ、と盛大にお腹が鳴ってしまって。
ラダウィは、腹に耳を当てながらクスクスと笑い。
私は恥ずかしすぎて、顔を赤くした。
「正直な子がいるようだ。おまえはここに、私に逆らう愚か者を飼っているのか?」
笑い交じりに、ラダウィは人差し指で私の腹をグリグリこねくり回した。
「申し訳ありません」
「興覚めだ。食事が先だな」
王が寝台脇の小机にある呼び鈴を鳴らそうとしたが。ふと手を止めた。
「やはり食事の前に、汗を流そう」
私の手を引いて、ラダウィはシャワールームに入っていく。
昨日から、いえ、ラダウィに再会してから、彼に振り回されっぱなしです。
寝室につながるところにあるそこは、本当に汗を流して身だしなみを整えるだけの空間のようで。日本の私の家でたとえると、洗面所的な感じでしょうか?
それでも、うちのユニットバスの浴室より、全然大きな設えなのですけど。
王が栓をひねると、天井の、手を広げたくらいの幅の蛇口からシャワーが出る。
手で持つシャワーノズルしか知らなかった私は、その最新の機器にわぁと思う。
けれど、ぬるめの細かい水滴が、二人並んだ私たちの頭の上に降りかかり、とても気持ちがいいです。
いいえ、ほわっとしている場合ではありません。
いろいろ陛下にやらせるのは、いけませんね。
「体を…洗っても?」
とはいえ、王の体に触れるのは恐れ多く。問いかけるようになってしまうが。
聞くと、彼は首を振る。
「ここは、汗を流すだけだ。いろいろしてもらうのは、浴室でいずれ、ゆっくり楽しませてもらう」
シャワールームの他に、浴室があるようです。
国王ともなれば、使用人が丁寧に王の体をケアするのだろうから。私が手を出すまでもないのかもしれません。
と、思っていると。
陛下が私の頭を手でガシガシとこすってきた。
「この色は落ちないのか? 赤い髪でないと、おまえのような気がしない」
「すみません、染毛しているので。すぐにはどうにも。でも、二ヶ月もすれば元に戻ります」
それまで、私の命があるか、わかりませんけど。
一ヶ月おきに美容室で短く髪を整え、そこで染毛もしてもらっていた。だから二ヶ月くらいで生え変わるとは思います。
「もう髪は染めるな。おまえは、ありのままで美しい」
そう言うラダウィは、黒髪に水を滴らせ、男の艶を際立たせていて。
美しいのは貴方の方だと、声を大にして言いたいです。
湯気が輪郭をぼやかし、幻のように尊く、気高く、厳かに見え。
触れるのさえ、ためらわれる。
けれど、つい。その神が作り上げた強靭な肢体に、手を這わせてしまった。
陛下こそ、お美しい。
うっとりとして、彼に見入っていたら。
唇にそっとキスされた。
「目も口も、陶器のような白い肌も、私のものだ。私の許可なく変えてはならぬ」
水滴を弾きながら、彼の大きく武骨な手が、私の肌を撫でていく。
「はい、ラダウィ様」
彼に執着されることが、なにより嬉しくて。彼の言葉にはなんでも従いたくなる。
髪を染めるなというのなら、もう一生染めません。
「ふふ、とろんとした目で、おまえに『はい、ラダウィ様』と言われると、いい気分だ。従順なおまえは可愛いな」
褒められて、頬を染めると。
少し乱暴に頭を掻き抱かれ、唇を食いつかれるような深いキスをされた。
喉の奥を焼くような過激なキス、舌をなぶられ、かき回されて。
王にすべてを委ね、まぶたから力が抜ける。
「後ろを向け、夜までなど、到底待てぬ」
お腹は空いていますけど、そのように情熱的な目でみつめられたら。拒めません。
私は彼に背を向けるが。
壁に鏡が張り付けられていて。裸の自分が映っています。
オドオドした情けない顔や、局部をさらす己の格好が恥ずかしく。身を赤くする。
「そこに、手をつけろ」
それは恥ずかしい、と思って。
なんでも従いたい気はあるのですが、つい、口を出してしまう。
「鏡が、あるのですが」
「そうだが? おまえが頬を染めて恥ずかしがりながらも、困り顔で私に従う、その表情を見るのが楽しいのではないか」
安定の意地悪です。
でも、王の命令は絶対なので。
羞恥に目をつぶって。彼の意に従う。
「目を閉じたら、お仕置きだぞ。朝食抜きで、ここから出さぬ」
どうしても、自分の情けない姿を見なければならないようです。
ラダウィの体躯は、筋肉で均整がとれていて、いつまでも見ていられますが。
私の体は、ただのヒョロで。見ても面白くないのですけど?
でも、仕方なく目を開けると。鏡の中のラダウィがニヤリとした。
そうだ、ラダウィを見ていることにしましょう。
「ちゃんといい子に、私とおまえの愛の営みを見ているのだぞ?」
ラダウィは私の顎を手で持ち、頬をべろりと舐めた。鏡の中の私を挑発するように。
そして後ろからそっと抱き締めて、背中に唇を落とす。
時折きつく吸われる感触に、ゾワリとして、肩をすくめる。
ラダウィが私の背中にキスマークをつけているのが、鏡に映っている。
なにをされているのか、わかるのはいいが。
なにをして、その感触なのかがわかると。
恥ずかしさや、快感が高まるような気がした。
そして手を前に回して、乳首を揉む。乳輪を丸く指でなぞるのを、私に見せる。
「乳首をいじられているのを、目で、感覚で、知ると。一層、気持ちいいだろう?」
そこは、もう。愛撫の良さを知って、ラダウィの手を待ちわびている。
「は、ん…」
まだ、乳輪をくすぐられているだけなのに。もう、官能が芽生えて。
もっとして、って。はしたなく、ねだってしまいそうになる。
「おまえは本当に、ここが好きだなぁ? ほら、赤いグミのように熟れて、美味そうだ」
親指と人差し指でキュッとつままれて。
「んぁ、あぁ…」
ツキンとする甘い痛みに、身をくねらせて、あえいだ。
鏡に映る、乳首をつままれた己の姿態が、卑猥すぎます。
赤い乳頭をはさんで、クニクニと彼の指が動いて。
そのうごめきに、胸の上と屹立が一緒に疼いた。
「敏感で、エッチな、極上の体だ。ここだけでイけるように、いつか調教してやる」
自分の体が、彼の手によって変えられるのを想像して。
恐れと期待と好奇がせめぎ合う。
「だが、今はこちらだ。おまえの腹の虫が餓死する前に」
棚からなにかしらの瓶を出し、手の上にその液体を出すと。花の香りが漂った。その指を私のつぼみに当て、ゆっくり挿入する。
スムーズに指を出し入れされるから、香油かローションだと思います。
ラダウィは性急ながらも、後ろもじっくりとほぐしてくれました。
手は肌を撫で、口は首筋を舐めて、私の体の官能を高めていき。
じりじりとした悦楽に、腰が揺れる頃。
すぼまりにズクリと王のモノが入れられる。
「んっ、あ、う」
剛直の張り出した部分がすぼまりにのみ込まれるまでは、いつも苦しくて、息が詰まる感覚ですが。
それでも欲しいと、お尻を突き出してしまう。
ラダウィは、そんな私の臀部を手で力強く掴み。剛直を奥まで挿入すると、精力的に律動した。
「あん、あ、は、ん、や、ぁ、んぅ、は、ぅ」
ズクズクと小刻みに突き入れられ、その激しさに、私は手で鏡にすがりつく。
そこには、だらしなく口を開いて気持ち良さに酔いしれる己の顔が映っていて。恥ずかしくて見ていられなかった。
ラダウィを目に移せば、その精悍さは最中でも変わらないというのに。
ミストから立ち上る湯気と、熱い吐息で、鏡が曇る。
やるせない激情に、手のひらの熱を吸って鏡も熱くなった。
降りかかるシャワーの湯はぬるいのに、後ろから王にもたらされる燃ゆる愉悦に、のぼせそうになり。
もどかしく、鏡に爪を立てる。
するとラダウィが、私の手に手を重ね。ギュッと握ってくれた。
「中で、気持ちいいのを覚えたな? こうして引き抜いていくと、中がまといついてくる」
苛烈に抜き差しされているときは、ただ彼の情熱を受け止めるばかりだが。
ゆっくり引かれると、彼の剛直の存在をありありと感じ。隘路をこすられる愉悦を味わってしまう。
「は、んぁ、はい、いい、気持ちいい、です」
「あぁ、上手に私を受け入れて、いい子だな? エッチなおまえは、私のモノをここでずっとくわえ込んでいたいのだろう? 三峰の者たちの前でも、私が抱っこして、貫いてやろうか?」
「そ、それは…」
同僚の前でそんなことは、いくら陛下の望みでもできません。
セクハラになってしまいます。
陛下はともかく、くたびれたおっさんのこんな姿はお目汚しです。
いえ、問題はそこではないのですけど。
官能が高まって、自分がなにを考えているのかわからない。
「クハっ、おまえの困った顔は格別だな」
戸惑っていると、鏡の中のラダウィが、愉快そうに笑った。
冗談のようです。良かった。
というか、冗談だと気づかない融通の利かない男で、申し訳ありません。
「拗ねるな。おまえの可愛い顔が見たかっただけだ。さぁ、そろそろイけ。許しを乞うのを忘れるな? 礼儀を失したら、できるまで続けるぞ」
左手は、手を重ねたまま、時折愛しげに、手首の腕輪に触れる。
右手は私の屹立をしごいて、吐精をうながし。
腰は荒々しく、私を攻めて、剛直を突き入れてきた。
体の中を剛直で熱烈にこすりたてられ、内側が燃え上がる。
彼に覚えさせられた、若い官能の芽を、ジクジクと容赦なく攻め立てられ。
私はなやましく身悶えた。
「んぁ、ぁあ、あ、ラダウィ様ぁ、イく、も、イきます、あぁ、くるぅ…も、お許しを」
「あぁ、許す」
耳元に甘い声が吹き込まれ。耳たぶを噛まれて。
ふわっと、快感が体の中を突き抜けていく感覚に襲われて。
「んっ、あ、あぁぁっ」
ラダウィに屹立を強くしごかれた瞬間、ビクリと体が跳ねて。勢いよく精を放った。
後孔が無意識に痙攣し、剛直にまといつく。その感触が、良い。
気持ち良さを堪能し。注がれる彼の熱液の感触に、陶酔した。
最中は、嵐に巻き込まれたような、きつい、鮮烈な刺激だが。
達したあとの余韻は、身がとろけるような、甘美な愉悦で。
体の中でラダウィの存在を感じられる至福も、私に悦楽を与えた。
だから、彼がゆっくり身を引いて、剛直を引き抜く瞬間は。
敏感な入り口の浅い部分をずるりと撫であげながら出ていく、その体感に、フと息が漏れるが。
どこか寂しく感じてしまう。
「さぁ、朝食にしよう。おまえの腹の虫が癇癪を起さぬうちにな?」
私を向き合わせ。満足そうに甘いくちづけをしながら。
ラダウィは私の体を撫でこすり、体内に出された彼の残滓も洗い流してくれる。
あぁ、王にそのようなことをさせてはいけないのに。
絶頂のけだるさで、すぐに体が動きません。
至らなくて、本当にすみません。それに…。
私の腹の虫なんかに、気を遣わなくていいのに。
と思ってしまう。
でもそれは、恋人を労わる王の優しさで。
それを受け取るべきは華月だと。脳裏をよぎると。
先ほどまで熱く抱かれていたというのに。
体はシンと冷えて。悲しみが私の胸を占めた。
私の目の前には、出会った頃のラダウィがいて。子供サイズの民族衣装を着た彼が言うのだ。
「レン、おまえは本当につまらんな」
その言葉を聞くと、胸がキュッとなる。喜びではなく、身が縮まる恐れのキュだ。
でも、今は。
子供の彼に呆れたような目で見やられていても。
彼が私をレンと呼ぶ、そのことがひどく嬉しい。
当時は好かれていなかったかもしれないけれど。私が蓮月だと認識はされていた。
それがどんなに幸せなことだったか、と。しみじみ思ってしまう。
良い夢を見た、と思い。
夢? と思って。
ハッと目を開ける。
目の前には、ブロンズの肌を惜しげもなく見せつける、全裸の大人ラダウィがいて。私の髪を手で撫でていたのだ。
「やっと起きたか。つまらんと思っていたところだ」
少し口をムッと引き結ぶラダウィを見て。私は昨日のことを思い出すのだが。
王が宴を中座して、私をベッドに運んだ、ところまでしか覚えていません。
陛下を前にして、まさかの寝落ち??
「も、申し訳ありません。昨夜、私は…」
「あぁ、構わぬ。日本で夜通しセックスしたあとも、仕事や移動でおまえは寝られなかったのだろう?」
朝の陽光が差し込む部屋で、私はラダウィに敷布の波に沈められ。頬やこめかみや鼻の頭をついばまれる。
唇でチュッと吸いつかれると、くすぐったくて。
その仕草に優しさを感じて、嬉しくなるが。
彼の手は、いやらしく胸や腹の上を這い回り。明確に情事を意識させる。
あ、肌を直接撫でられているということは…自分も全裸ですかっ?
視線を巡らせ事態を把握すると。十人くらいは余裕で寝られそうなだだっ広い王の寝台に、一糸まとわぬ自分がポツンと体を横たえている。
それに気づいて。血の気が下がった。
だらしなく貧相な体をさらすのもダメですが。
このベッドは、もしかしてハーレム用ですか?
「あぁぁ、の。陛下、朝ですし。わ、わ、私の服は…」
「朝だからなんだ? おまえの服は昨夜脱がせたあと使用人が持って行ったが?」
そうして、ラダウィは私の鎖骨をかじって、色っぽく笑う。
そんな、着替えがないと部屋から出られません。
「あああ、朝から、情事は、その…」
「おまえが昨夜、ひとりで寝てしまったのが悪いのだろう? それに、朝からセックスしてはいけないなどという道理はない。あと、私に逆らうな」
わわ、逆らうなと言われると弱いのですが。
道理がないと言われたら、そうなのですがぁ。
なんとなく常識的に、明るい中でそういうことするのは、ちょっとぉ。
しかし、私が昨日寝落ちをしなければ、とも思いますし。
ラダウィが胸や腹を舌で舐めていく感触を受けながら、どうしようと思っていると…。
ぐぅぅぅ、と盛大にお腹が鳴ってしまって。
ラダウィは、腹に耳を当てながらクスクスと笑い。
私は恥ずかしすぎて、顔を赤くした。
「正直な子がいるようだ。おまえはここに、私に逆らう愚か者を飼っているのか?」
笑い交じりに、ラダウィは人差し指で私の腹をグリグリこねくり回した。
「申し訳ありません」
「興覚めだ。食事が先だな」
王が寝台脇の小机にある呼び鈴を鳴らそうとしたが。ふと手を止めた。
「やはり食事の前に、汗を流そう」
私の手を引いて、ラダウィはシャワールームに入っていく。
昨日から、いえ、ラダウィに再会してから、彼に振り回されっぱなしです。
寝室につながるところにあるそこは、本当に汗を流して身だしなみを整えるだけの空間のようで。日本の私の家でたとえると、洗面所的な感じでしょうか?
それでも、うちのユニットバスの浴室より、全然大きな設えなのですけど。
王が栓をひねると、天井の、手を広げたくらいの幅の蛇口からシャワーが出る。
手で持つシャワーノズルしか知らなかった私は、その最新の機器にわぁと思う。
けれど、ぬるめの細かい水滴が、二人並んだ私たちの頭の上に降りかかり、とても気持ちがいいです。
いいえ、ほわっとしている場合ではありません。
いろいろ陛下にやらせるのは、いけませんね。
「体を…洗っても?」
とはいえ、王の体に触れるのは恐れ多く。問いかけるようになってしまうが。
聞くと、彼は首を振る。
「ここは、汗を流すだけだ。いろいろしてもらうのは、浴室でいずれ、ゆっくり楽しませてもらう」
シャワールームの他に、浴室があるようです。
国王ともなれば、使用人が丁寧に王の体をケアするのだろうから。私が手を出すまでもないのかもしれません。
と、思っていると。
陛下が私の頭を手でガシガシとこすってきた。
「この色は落ちないのか? 赤い髪でないと、おまえのような気がしない」
「すみません、染毛しているので。すぐにはどうにも。でも、二ヶ月もすれば元に戻ります」
それまで、私の命があるか、わかりませんけど。
一ヶ月おきに美容室で短く髪を整え、そこで染毛もしてもらっていた。だから二ヶ月くらいで生え変わるとは思います。
「もう髪は染めるな。おまえは、ありのままで美しい」
そう言うラダウィは、黒髪に水を滴らせ、男の艶を際立たせていて。
美しいのは貴方の方だと、声を大にして言いたいです。
湯気が輪郭をぼやかし、幻のように尊く、気高く、厳かに見え。
触れるのさえ、ためらわれる。
けれど、つい。その神が作り上げた強靭な肢体に、手を這わせてしまった。
陛下こそ、お美しい。
うっとりとして、彼に見入っていたら。
唇にそっとキスされた。
「目も口も、陶器のような白い肌も、私のものだ。私の許可なく変えてはならぬ」
水滴を弾きながら、彼の大きく武骨な手が、私の肌を撫でていく。
「はい、ラダウィ様」
彼に執着されることが、なにより嬉しくて。彼の言葉にはなんでも従いたくなる。
髪を染めるなというのなら、もう一生染めません。
「ふふ、とろんとした目で、おまえに『はい、ラダウィ様』と言われると、いい気分だ。従順なおまえは可愛いな」
褒められて、頬を染めると。
少し乱暴に頭を掻き抱かれ、唇を食いつかれるような深いキスをされた。
喉の奥を焼くような過激なキス、舌をなぶられ、かき回されて。
王にすべてを委ね、まぶたから力が抜ける。
「後ろを向け、夜までなど、到底待てぬ」
お腹は空いていますけど、そのように情熱的な目でみつめられたら。拒めません。
私は彼に背を向けるが。
壁に鏡が張り付けられていて。裸の自分が映っています。
オドオドした情けない顔や、局部をさらす己の格好が恥ずかしく。身を赤くする。
「そこに、手をつけろ」
それは恥ずかしい、と思って。
なんでも従いたい気はあるのですが、つい、口を出してしまう。
「鏡が、あるのですが」
「そうだが? おまえが頬を染めて恥ずかしがりながらも、困り顔で私に従う、その表情を見るのが楽しいのではないか」
安定の意地悪です。
でも、王の命令は絶対なので。
羞恥に目をつぶって。彼の意に従う。
「目を閉じたら、お仕置きだぞ。朝食抜きで、ここから出さぬ」
どうしても、自分の情けない姿を見なければならないようです。
ラダウィの体躯は、筋肉で均整がとれていて、いつまでも見ていられますが。
私の体は、ただのヒョロで。見ても面白くないのですけど?
でも、仕方なく目を開けると。鏡の中のラダウィがニヤリとした。
そうだ、ラダウィを見ていることにしましょう。
「ちゃんといい子に、私とおまえの愛の営みを見ているのだぞ?」
ラダウィは私の顎を手で持ち、頬をべろりと舐めた。鏡の中の私を挑発するように。
そして後ろからそっと抱き締めて、背中に唇を落とす。
時折きつく吸われる感触に、ゾワリとして、肩をすくめる。
ラダウィが私の背中にキスマークをつけているのが、鏡に映っている。
なにをされているのか、わかるのはいいが。
なにをして、その感触なのかがわかると。
恥ずかしさや、快感が高まるような気がした。
そして手を前に回して、乳首を揉む。乳輪を丸く指でなぞるのを、私に見せる。
「乳首をいじられているのを、目で、感覚で、知ると。一層、気持ちいいだろう?」
そこは、もう。愛撫の良さを知って、ラダウィの手を待ちわびている。
「は、ん…」
まだ、乳輪をくすぐられているだけなのに。もう、官能が芽生えて。
もっとして、って。はしたなく、ねだってしまいそうになる。
「おまえは本当に、ここが好きだなぁ? ほら、赤いグミのように熟れて、美味そうだ」
親指と人差し指でキュッとつままれて。
「んぁ、あぁ…」
ツキンとする甘い痛みに、身をくねらせて、あえいだ。
鏡に映る、乳首をつままれた己の姿態が、卑猥すぎます。
赤い乳頭をはさんで、クニクニと彼の指が動いて。
そのうごめきに、胸の上と屹立が一緒に疼いた。
「敏感で、エッチな、極上の体だ。ここだけでイけるように、いつか調教してやる」
自分の体が、彼の手によって変えられるのを想像して。
恐れと期待と好奇がせめぎ合う。
「だが、今はこちらだ。おまえの腹の虫が餓死する前に」
棚からなにかしらの瓶を出し、手の上にその液体を出すと。花の香りが漂った。その指を私のつぼみに当て、ゆっくり挿入する。
スムーズに指を出し入れされるから、香油かローションだと思います。
ラダウィは性急ながらも、後ろもじっくりとほぐしてくれました。
手は肌を撫で、口は首筋を舐めて、私の体の官能を高めていき。
じりじりとした悦楽に、腰が揺れる頃。
すぼまりにズクリと王のモノが入れられる。
「んっ、あ、う」
剛直の張り出した部分がすぼまりにのみ込まれるまでは、いつも苦しくて、息が詰まる感覚ですが。
それでも欲しいと、お尻を突き出してしまう。
ラダウィは、そんな私の臀部を手で力強く掴み。剛直を奥まで挿入すると、精力的に律動した。
「あん、あ、は、ん、や、ぁ、んぅ、は、ぅ」
ズクズクと小刻みに突き入れられ、その激しさに、私は手で鏡にすがりつく。
そこには、だらしなく口を開いて気持ち良さに酔いしれる己の顔が映っていて。恥ずかしくて見ていられなかった。
ラダウィを目に移せば、その精悍さは最中でも変わらないというのに。
ミストから立ち上る湯気と、熱い吐息で、鏡が曇る。
やるせない激情に、手のひらの熱を吸って鏡も熱くなった。
降りかかるシャワーの湯はぬるいのに、後ろから王にもたらされる燃ゆる愉悦に、のぼせそうになり。
もどかしく、鏡に爪を立てる。
するとラダウィが、私の手に手を重ね。ギュッと握ってくれた。
「中で、気持ちいいのを覚えたな? こうして引き抜いていくと、中がまといついてくる」
苛烈に抜き差しされているときは、ただ彼の情熱を受け止めるばかりだが。
ゆっくり引かれると、彼の剛直の存在をありありと感じ。隘路をこすられる愉悦を味わってしまう。
「は、んぁ、はい、いい、気持ちいい、です」
「あぁ、上手に私を受け入れて、いい子だな? エッチなおまえは、私のモノをここでずっとくわえ込んでいたいのだろう? 三峰の者たちの前でも、私が抱っこして、貫いてやろうか?」
「そ、それは…」
同僚の前でそんなことは、いくら陛下の望みでもできません。
セクハラになってしまいます。
陛下はともかく、くたびれたおっさんのこんな姿はお目汚しです。
いえ、問題はそこではないのですけど。
官能が高まって、自分がなにを考えているのかわからない。
「クハっ、おまえの困った顔は格別だな」
戸惑っていると、鏡の中のラダウィが、愉快そうに笑った。
冗談のようです。良かった。
というか、冗談だと気づかない融通の利かない男で、申し訳ありません。
「拗ねるな。おまえの可愛い顔が見たかっただけだ。さぁ、そろそろイけ。許しを乞うのを忘れるな? 礼儀を失したら、できるまで続けるぞ」
左手は、手を重ねたまま、時折愛しげに、手首の腕輪に触れる。
右手は私の屹立をしごいて、吐精をうながし。
腰は荒々しく、私を攻めて、剛直を突き入れてきた。
体の中を剛直で熱烈にこすりたてられ、内側が燃え上がる。
彼に覚えさせられた、若い官能の芽を、ジクジクと容赦なく攻め立てられ。
私はなやましく身悶えた。
「んぁ、ぁあ、あ、ラダウィ様ぁ、イく、も、イきます、あぁ、くるぅ…も、お許しを」
「あぁ、許す」
耳元に甘い声が吹き込まれ。耳たぶを噛まれて。
ふわっと、快感が体の中を突き抜けていく感覚に襲われて。
「んっ、あ、あぁぁっ」
ラダウィに屹立を強くしごかれた瞬間、ビクリと体が跳ねて。勢いよく精を放った。
後孔が無意識に痙攣し、剛直にまといつく。その感触が、良い。
気持ち良さを堪能し。注がれる彼の熱液の感触に、陶酔した。
最中は、嵐に巻き込まれたような、きつい、鮮烈な刺激だが。
達したあとの余韻は、身がとろけるような、甘美な愉悦で。
体の中でラダウィの存在を感じられる至福も、私に悦楽を与えた。
だから、彼がゆっくり身を引いて、剛直を引き抜く瞬間は。
敏感な入り口の浅い部分をずるりと撫であげながら出ていく、その体感に、フと息が漏れるが。
どこか寂しく感じてしまう。
「さぁ、朝食にしよう。おまえの腹の虫が癇癪を起さぬうちにな?」
私を向き合わせ。満足そうに甘いくちづけをしながら。
ラダウィは私の体を撫でこすり、体内に出された彼の残滓も洗い流してくれる。
あぁ、王にそのようなことをさせてはいけないのに。
絶頂のけだるさで、すぐに体が動きません。
至らなくて、本当にすみません。それに…。
私の腹の虫なんかに、気を遣わなくていいのに。
と思ってしまう。
でもそれは、恋人を労わる王の優しさで。
それを受け取るべきは華月だと。脳裏をよぎると。
先ほどまで熱く抱かれていたというのに。
体はシンと冷えて。悲しみが私の胸を占めた。
応援ありがとうございます!
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