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15 ネクタイは、私が外す ★
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◆ネクタイは、私が外す
山頂までを一気に駆け足で登ったような気分で。私は荒い息をついて寝台に横たわっていた。
激しい情交のあと、ラダウィが体を離してくれて。今はひと息ついているところだ。
けだるい性交の余韻に、目を閉じてぐったりしていたら。私の隣に王が身を横たえた気配がして。
目を開ける。
ラダウィは、衣服をすべて脱ぎ捨てて、ゴトラも取っていた。
まるで、ライオンが寝そべるかのような悠然とした態で、手枕をして私を見ている。
胸元まで伸びる波打つ黒髪を、ゆるく後ろで結んでいて。秀でた額から、ほつれて下がったおくれ毛が、ひどくセクシーです。
長髪でも全く女性的に見えないのは。力強くも形の良い太い眉が、男らしく。鋭い視線や、余裕の笑みを掃く口元が、獰猛で。威厳たっぷりだから。
褐色の肌は張りがあり、引き締まった体躯を彩る筋肉の盛り上がりを、艶が強調している。
思わず、私は手を伸ばして。その胸に触れてしまった。
焦がれずにはいられない、百獣の王。その美しい肉体。
「ふふ、なんだ? 物欲しそうな顔をして。私が欲しいのか?」
からかわれて。手を引っ込めた。
「申し訳ありません。ラダウィ様が、あまりにも御美しいから」
「構わぬ。これは、おまえのものだ」
引っ込めた手を、ラダウィが握って。彼の胸の上に置く。
その体温、その指先のきめ細やかな肌の質感。
今だけでいい。彼に触れて。胸に刻む。
その思い出を糧に、生きていけるように。
そんな気持ちで、彼の筋肉のおうとつに手を這わせた。
…いやらしい気持ちではありません。
すると、彼は。私に片手を伸ばし。ネクタイのノットに手をかけた。
そのとき私は。今まで、シャツを脱いでいなかったことに気がつきましたっ。
「す、すみません。気が利かなくて…」
ラダウィに、言われたとおりのことしか出来なくて。最中は、つい夢中になっていて。
自分からは全く動けていなかった。
申し訳ない気持ちで、今更ながら、自分で衣服を脱ごうとする。
しかし私の手は、彼の手で払われてしまった。
「おまえのネクタイは、私が外す」
艶めいた視線を投げて、王は衣擦れの音を立てながら、シュルリとネクタイをほどくと。ベッドの下に落とした。
「そして、私がネクタイを外すときは、おまえが私に抱かれるときだ。覚えておけ」
器用に、片手でシャツのボタンも外していき。話を続ける。
「今回は、成長して会社員になったおまえを抱きたかったから、わざとそのままにしておいたのだ。おまえの失態ではない」
シャツをはだけさせながら、私を抱き寄せて。ラダウィは私を、寝そべる彼の上に乗っけた。
肉厚で頑丈そうな、彼の鋼の体躯は。私ひとりが乗っかったところで、びくともしない。
子供のときは、彼の方が身長が高かったとはいえ、自分と似たような体格で。若木のようにしなやかだったラダウィの肉体が。今は大樹のようにどっしりとたくましく。
私など、まるで小鳥が枝葉に止まるほどのものだ。
「私が欲しいなら、好きにしていいぞ」
先ほど彼に手を伸ばしたことを、揶揄されているみたいです。
でも、これは。
なすがままだった自分も、少しは動け。という意味かもしれませんね。
手を置いていた、彼の胸を。そっと撫でると。したたかな弾力と、生命力を感じます。
唇を寄せると、彼の拍動を感じて。
彼が生きている、そのことを実感し、喜びがあふれる。
舌で触れると、味、などはないですが。彼の肌をたどる感触が己の舌先に伝わって。
それだけで興奮してしまいます。
筋肉の盛り上がり、その溝を、舐め濡らしていくと。彼がフッと笑った。
「おまえの愛撫は、くすぐったいばかりだ。まぁ、たまにはおまえにも私を味わわせてやっても良いがな」
腹の上で舌を伸ばしている、私の頭に彼は指を差し入れ、髪をゆるりと撫でる。
経験のほとんどない、私のつたない愛撫では物足りなかったのでしょう。
至らず、申し訳ありません。
けれど。ラダウィの剛直は、すでに隆々にみなぎっている。
存在感のあるソレが、私のお尻に当たっているので。わかっています。
「くちづけを、許す」
ラダウィは、髪を撫でていた手で、私の頭を抱き寄せる。
うながされ、私は王の頬を両手で包み。唇をしっとりと押し当てた。
最初はついばむように。王の唇を唇で揉み。舌で濡らして。
彼がその気になるように、ちゅくちゅくと吸いつきます。
唇のあわいが開いたら、舌を差し入れ、口腔を丁寧にかき混ぜる。
舌で、彼の舌を舐めるくらいのことしかできないのですけど。
そうしたら、ラダウィが焦れて。私の髪を鷲掴み。頭を固定した状態で情熱的に舌を絡ませてきた。
口腔をまさぐるような、舌を引っこ抜くような、激しさで。
淫猥ながらも陶然となる、なまめかしいキスをされてしまいました。
口元から唾液の糸を引いて、キスをほどいたときには。
唇はふやけて。舌は痺れて。頭はのぼせて。
ただ荒い息をつくばかりになっていた。
「相変わらず、子供のようなキスで、成長がないな? おまえは」
彼に、そう言われ。私は身を縮める。
「申し訳ありません、ラダウィ様」
でも。弟の名誉のために。
華月はちゃんと成長していると思います、陛下。
言えませんけど。たぶん。
「まぁ、誰に仕込まれたかわからない、エロいキスをされるよりは、マシだ」
ラダウィは身を入れ替えて、私を体の下に組み敷いた。
「おまえのお楽しみの時間は終了だ。今度は私の番」
そう言って、王は私の肌にくちづけてきた。
先ほど私が彼にしたように、素肌をついばみ、舌で舐め濡らす。
貪るようにして、体を味わっている。
舌先で肌をえぐるようにして、刺激し。私の胸の上に、唾液の道を作る。
私がした愛撫は生温いと教えているような、官能をほじくり返すような愛撫をされて。
彼の手で触れられるだけでも、私は歓喜に打ち震えるのに。
そのようにエロティックに舐められたら。すぐにも快楽の波に溺れてしまいます。
そして、とうとう。ラダウィが私の乳首に舌を這わせる。
そこは、以前も。彼によって快楽を目覚めさせられた場所で。
待ちわびた期待感の中、彼がねっとりと舌の腹で舐め上げれば。
体の奥に、すぐにもぞくぞくとした官能が呼び起こされる。
あぁ、どうして。物凄く感じる場所というのは、首も胸の局部も、肉食獣がガブリとやったら命を失うような急所ばかりなのでしょうか?
いいえ、私にとっては。
ラダウィという百獣の王が触れる部分は、どの場所も急所になりうるのかもしれません。
だって、彼が触れたところは。どこも、気持ちが良い。
「なに、笑っているのだ? こいつめ」
ラダウィに聞かれ。罰だというように、乳頭を軽く噛まれて。その冴えた痛みに、ハッとする。
知らぬうちに、私は笑みを浮かべていたようです。
「私の愛撫にも余裕の態度だとはな? なんと高慢で…手ごわいのだろう」
王は私の足を左右に大きく開いて、すぼまりに剛直の先を押し当てた。
正面から、後孔に剛直が沈んでいく光景を見せつけられる。
「あ、あ…ラダウィ様、が…ん、入っ、て」
ジワリと蕾が割り開かれ、ミシリと隘路が押し広げられ、ズクズクと奥に突き入れられていく体感と。
その様子がつぶさに見える視覚から。
私はラダウィが己の中を侵食していくのを、リアルに実感させられた。
先ほど受け入れたばかりのソコは、ラダウィの太い熱杭を、はしたなくも喜んで、のみ込んでいく。
根元まで、ずっぷりとねじ込んだ王は。
私に顔を寄せ、唇が触れ合いそうなほんの間近で囁いた。
「小憎らしい、私の月…おまえはもう、私のものだ。二度と離さない」
心の中で、私は横に首を振る。
あなたは、華月のものです。
離さないと、いくら言っても。あなたは明日、帰国する。
そう思った刹那、豪雪の中にあるように、心臓が凍った。
ラダウィと、離れたくない。
いくら私がそう思っても。その願いは叶わないのだけど。
だって彼は、一国の王であり。
その王が真に望むのは。華月なのですから。
「なぜ、泣くのだ? 離さないと言っているのに。それとも、私に支配されるのは嫌なのか?」
ラダウィに言われて、私は自分が泣いていることに気づく。
くちづけで唇を結び。
彼のモノで私の内側をかき乱されて。
私のすべてはあなたのものになったけれど。
ちゃんと、わかっているのです。
ラダウィが抱いているのは華月であって、私ではないのだということを。
だから、真の意味で、この幸福感に溺れてしまえない。
弟の恋人と体をつなぐ背徳感に、身を押し潰されてしまう。
だから、涙が出るのです。
「いいえ。私は、ラダウィ様のものです。あなたに、支配されたい」
ラダウィの背に手を回し、私は彼にしがみつく。
「良いのか? そんなことを言って。もしも私を裏切ったら。部屋に鎖でつないで、虜囚にしてやる」
恐ろしい言葉の中に。愛も感じて。
だから。私への言葉ではないけれど。そっとうなずいた。
私はあなたになら、囚われても構わない。
強く抱きしめられ、身をせつなくすり合わせ、激しく腰を揺らされれば。
この熱さ、激しさ、荒々しさだけが。私を幸福に満たすから。
本能のままに、彼の嵐に身をゆだねた。
「あ、あ、ラダウィさま…あぁ…」
私の中を、思うさまかき回して、引き裂いて、閉じ込めて、食らいつくしてほしい。
決して手の届かない王に、強く求められた。
理想の男と肌を合わせられた。
それこそが、僥倖。
本来なら私は、彼に抱かれることは一生なかったでしょう。
だから、彼の勘違いに心の底から感謝しています。
ラダウィの顔を見ていられるのは、あと、ほんの数時間ですが。
どうか。その間だけ、夢を見させてください。
彼が国に帰ったら。弟に真実を打ち明けて。
本来の恋人同士は、元の関係に戻って。
私は罰を受けなければなりません。
王を騙し、弟を裏切った私には、悲しみに浸る権利はない。
罪を胸に刻印し。そう、己を戒めた。
山頂までを一気に駆け足で登ったような気分で。私は荒い息をついて寝台に横たわっていた。
激しい情交のあと、ラダウィが体を離してくれて。今はひと息ついているところだ。
けだるい性交の余韻に、目を閉じてぐったりしていたら。私の隣に王が身を横たえた気配がして。
目を開ける。
ラダウィは、衣服をすべて脱ぎ捨てて、ゴトラも取っていた。
まるで、ライオンが寝そべるかのような悠然とした態で、手枕をして私を見ている。
胸元まで伸びる波打つ黒髪を、ゆるく後ろで結んでいて。秀でた額から、ほつれて下がったおくれ毛が、ひどくセクシーです。
長髪でも全く女性的に見えないのは。力強くも形の良い太い眉が、男らしく。鋭い視線や、余裕の笑みを掃く口元が、獰猛で。威厳たっぷりだから。
褐色の肌は張りがあり、引き締まった体躯を彩る筋肉の盛り上がりを、艶が強調している。
思わず、私は手を伸ばして。その胸に触れてしまった。
焦がれずにはいられない、百獣の王。その美しい肉体。
「ふふ、なんだ? 物欲しそうな顔をして。私が欲しいのか?」
からかわれて。手を引っ込めた。
「申し訳ありません。ラダウィ様が、あまりにも御美しいから」
「構わぬ。これは、おまえのものだ」
引っ込めた手を、ラダウィが握って。彼の胸の上に置く。
その体温、その指先のきめ細やかな肌の質感。
今だけでいい。彼に触れて。胸に刻む。
その思い出を糧に、生きていけるように。
そんな気持ちで、彼の筋肉のおうとつに手を這わせた。
…いやらしい気持ちではありません。
すると、彼は。私に片手を伸ばし。ネクタイのノットに手をかけた。
そのとき私は。今まで、シャツを脱いでいなかったことに気がつきましたっ。
「す、すみません。気が利かなくて…」
ラダウィに、言われたとおりのことしか出来なくて。最中は、つい夢中になっていて。
自分からは全く動けていなかった。
申し訳ない気持ちで、今更ながら、自分で衣服を脱ごうとする。
しかし私の手は、彼の手で払われてしまった。
「おまえのネクタイは、私が外す」
艶めいた視線を投げて、王は衣擦れの音を立てながら、シュルリとネクタイをほどくと。ベッドの下に落とした。
「そして、私がネクタイを外すときは、おまえが私に抱かれるときだ。覚えておけ」
器用に、片手でシャツのボタンも外していき。話を続ける。
「今回は、成長して会社員になったおまえを抱きたかったから、わざとそのままにしておいたのだ。おまえの失態ではない」
シャツをはだけさせながら、私を抱き寄せて。ラダウィは私を、寝そべる彼の上に乗っけた。
肉厚で頑丈そうな、彼の鋼の体躯は。私ひとりが乗っかったところで、びくともしない。
子供のときは、彼の方が身長が高かったとはいえ、自分と似たような体格で。若木のようにしなやかだったラダウィの肉体が。今は大樹のようにどっしりとたくましく。
私など、まるで小鳥が枝葉に止まるほどのものだ。
「私が欲しいなら、好きにしていいぞ」
先ほど彼に手を伸ばしたことを、揶揄されているみたいです。
でも、これは。
なすがままだった自分も、少しは動け。という意味かもしれませんね。
手を置いていた、彼の胸を。そっと撫でると。したたかな弾力と、生命力を感じます。
唇を寄せると、彼の拍動を感じて。
彼が生きている、そのことを実感し、喜びがあふれる。
舌で触れると、味、などはないですが。彼の肌をたどる感触が己の舌先に伝わって。
それだけで興奮してしまいます。
筋肉の盛り上がり、その溝を、舐め濡らしていくと。彼がフッと笑った。
「おまえの愛撫は、くすぐったいばかりだ。まぁ、たまにはおまえにも私を味わわせてやっても良いがな」
腹の上で舌を伸ばしている、私の頭に彼は指を差し入れ、髪をゆるりと撫でる。
経験のほとんどない、私のつたない愛撫では物足りなかったのでしょう。
至らず、申し訳ありません。
けれど。ラダウィの剛直は、すでに隆々にみなぎっている。
存在感のあるソレが、私のお尻に当たっているので。わかっています。
「くちづけを、許す」
ラダウィは、髪を撫でていた手で、私の頭を抱き寄せる。
うながされ、私は王の頬を両手で包み。唇をしっとりと押し当てた。
最初はついばむように。王の唇を唇で揉み。舌で濡らして。
彼がその気になるように、ちゅくちゅくと吸いつきます。
唇のあわいが開いたら、舌を差し入れ、口腔を丁寧にかき混ぜる。
舌で、彼の舌を舐めるくらいのことしかできないのですけど。
そうしたら、ラダウィが焦れて。私の髪を鷲掴み。頭を固定した状態で情熱的に舌を絡ませてきた。
口腔をまさぐるような、舌を引っこ抜くような、激しさで。
淫猥ながらも陶然となる、なまめかしいキスをされてしまいました。
口元から唾液の糸を引いて、キスをほどいたときには。
唇はふやけて。舌は痺れて。頭はのぼせて。
ただ荒い息をつくばかりになっていた。
「相変わらず、子供のようなキスで、成長がないな? おまえは」
彼に、そう言われ。私は身を縮める。
「申し訳ありません、ラダウィ様」
でも。弟の名誉のために。
華月はちゃんと成長していると思います、陛下。
言えませんけど。たぶん。
「まぁ、誰に仕込まれたかわからない、エロいキスをされるよりは、マシだ」
ラダウィは身を入れ替えて、私を体の下に組み敷いた。
「おまえのお楽しみの時間は終了だ。今度は私の番」
そう言って、王は私の肌にくちづけてきた。
先ほど私が彼にしたように、素肌をついばみ、舌で舐め濡らす。
貪るようにして、体を味わっている。
舌先で肌をえぐるようにして、刺激し。私の胸の上に、唾液の道を作る。
私がした愛撫は生温いと教えているような、官能をほじくり返すような愛撫をされて。
彼の手で触れられるだけでも、私は歓喜に打ち震えるのに。
そのようにエロティックに舐められたら。すぐにも快楽の波に溺れてしまいます。
そして、とうとう。ラダウィが私の乳首に舌を這わせる。
そこは、以前も。彼によって快楽を目覚めさせられた場所で。
待ちわびた期待感の中、彼がねっとりと舌の腹で舐め上げれば。
体の奥に、すぐにもぞくぞくとした官能が呼び起こされる。
あぁ、どうして。物凄く感じる場所というのは、首も胸の局部も、肉食獣がガブリとやったら命を失うような急所ばかりなのでしょうか?
いいえ、私にとっては。
ラダウィという百獣の王が触れる部分は、どの場所も急所になりうるのかもしれません。
だって、彼が触れたところは。どこも、気持ちが良い。
「なに、笑っているのだ? こいつめ」
ラダウィに聞かれ。罰だというように、乳頭を軽く噛まれて。その冴えた痛みに、ハッとする。
知らぬうちに、私は笑みを浮かべていたようです。
「私の愛撫にも余裕の態度だとはな? なんと高慢で…手ごわいのだろう」
王は私の足を左右に大きく開いて、すぼまりに剛直の先を押し当てた。
正面から、後孔に剛直が沈んでいく光景を見せつけられる。
「あ、あ…ラダウィ様、が…ん、入っ、て」
ジワリと蕾が割り開かれ、ミシリと隘路が押し広げられ、ズクズクと奥に突き入れられていく体感と。
その様子がつぶさに見える視覚から。
私はラダウィが己の中を侵食していくのを、リアルに実感させられた。
先ほど受け入れたばかりのソコは、ラダウィの太い熱杭を、はしたなくも喜んで、のみ込んでいく。
根元まで、ずっぷりとねじ込んだ王は。
私に顔を寄せ、唇が触れ合いそうなほんの間近で囁いた。
「小憎らしい、私の月…おまえはもう、私のものだ。二度と離さない」
心の中で、私は横に首を振る。
あなたは、華月のものです。
離さないと、いくら言っても。あなたは明日、帰国する。
そう思った刹那、豪雪の中にあるように、心臓が凍った。
ラダウィと、離れたくない。
いくら私がそう思っても。その願いは叶わないのだけど。
だって彼は、一国の王であり。
その王が真に望むのは。華月なのですから。
「なぜ、泣くのだ? 離さないと言っているのに。それとも、私に支配されるのは嫌なのか?」
ラダウィに言われて、私は自分が泣いていることに気づく。
くちづけで唇を結び。
彼のモノで私の内側をかき乱されて。
私のすべてはあなたのものになったけれど。
ちゃんと、わかっているのです。
ラダウィが抱いているのは華月であって、私ではないのだということを。
だから、真の意味で、この幸福感に溺れてしまえない。
弟の恋人と体をつなぐ背徳感に、身を押し潰されてしまう。
だから、涙が出るのです。
「いいえ。私は、ラダウィ様のものです。あなたに、支配されたい」
ラダウィの背に手を回し、私は彼にしがみつく。
「良いのか? そんなことを言って。もしも私を裏切ったら。部屋に鎖でつないで、虜囚にしてやる」
恐ろしい言葉の中に。愛も感じて。
だから。私への言葉ではないけれど。そっとうなずいた。
私はあなたになら、囚われても構わない。
強く抱きしめられ、身をせつなくすり合わせ、激しく腰を揺らされれば。
この熱さ、激しさ、荒々しさだけが。私を幸福に満たすから。
本能のままに、彼の嵐に身をゆだねた。
「あ、あ、ラダウィさま…あぁ…」
私の中を、思うさまかき回して、引き裂いて、閉じ込めて、食らいつくしてほしい。
決して手の届かない王に、強く求められた。
理想の男と肌を合わせられた。
それこそが、僥倖。
本来なら私は、彼に抱かれることは一生なかったでしょう。
だから、彼の勘違いに心の底から感謝しています。
ラダウィの顔を見ていられるのは、あと、ほんの数時間ですが。
どうか。その間だけ、夢を見させてください。
彼が国に帰ったら。弟に真実を打ち明けて。
本来の恋人同士は、元の関係に戻って。
私は罰を受けなければなりません。
王を騙し、弟を裏切った私には、悲しみに浸る権利はない。
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