◯◯の向こう側

出雲心一

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はじめ

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「休日は何してるの?」

おぞましい質問である。正しくは趣味など無く、人生の目的や大義名分など無く惰性でこのまま生きてきてしまった自分にとってはおぞましい質問である。

「いや、寝る事っスかね?」

素直に答える。本当にそれしかないのだ。
ここで「映画鑑賞」だの「読書」だの述べるものなら、その先の質問で

「へぇ~、じゃあ最近観たものは?もしくはおススメとか」

なんて聞かれてしまう。いやいやそこまで読み込めてねぇッスよ。
たしかに映画を観るのも、小説、マンガ、エッセイなどを読むのは好きだよ? だけどさ、寝る事や食べる事に負けないくらい、むしろ寝食を忘れてするほどのものが、俺にはないんだよ。

「へ、へぇ~」

と、そして会話が止まる。当然だ、寝る事が趣味の奴なんてなんの面白みもないじゃないか。

寝る事が趣味だから面白くないのか、面白くないから寝る事が趣味なのか、どっちが先かは今となっては調べようもないし、そもそもどうでもいい。

「じゃあさ、良いものがあるんだ」

はて、この会話についてくるなんて随分と悪趣味な奴だな。

そして手渡せれたものはワイヤレスのイヤホン、ただそれだけ。

「寝る時にこれを付けてみてよ、そうすればもう少しは楽しい夢が観れるよ」

睡眠導入の音楽でも聞こえるのだろうか? それとも催眠か何かの類か? そもそもこのイヤホンは何処と繋がっているのか?

「・・・・・・・・・」

まあいいか、依然として得体の知れない物ではあるが、現状何も無い俺にとっては、気晴らしやネタの一つになるならなんだって構わない。
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