千年妖狐さん

オオサキ

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四話

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目が覚めると、目の前に女神がいた。

いやまあ、わしみたいな和風な感じではなくて西洋風の女神、何というか、あんまり詳しくないが古代ぎりしゃっぽい服を着て天使の輪っかと羽をつけた女神じゃ。

ええと・・・・・何でこんなことになっておるんじゃろ。

確かまたあやめに会いに行って・・・・・・ああいや、もう分かった。何が起きたのか大体分かった。また何かしらの厄災に巻き込まれたんじゃな・・・・・・。

ええっと、とりあえずどうすればいいんじゃろ。わし外国の女神と話すの初めてなんじゃよな。

「は、はろー・・・・・・?」

「初めまして、異界の神よ」

日本語話せるんかい。なんかばかみたいではないか。

ってん?わしのことを異界の神と、今言いおったな・・・・・・?

「ということは・・・・・・」

「はい、大体あなたが考えている通りです。私はあなたの世界とは別の世界担当の神。私の世界の住人が、異世界人召喚の儀式を執り行っているので、あなたを召喚者に選ばせていただきました」

「また異世界の女神は・・・・・・こっちの世界の住人を勝手に自分の世界へ拐かすだけじゃ飽き足らず、今度は神まで拐かしおったのか。それって普通に外交問題・・・・・・いや界交問題ものじゃからな?高天原から正式に抗議したじゃろうが」

「あー文句とか今はいいんで、とりあえずとっとと召喚しちゃってくださーい」

「おい!」

「はーいそれじゃあ召喚されちゃいましょうねー」

「ちょ待っ・・・・・・せめてこれから行く世界がどんな世界なのか説明を────」

「これから行く世界ですかー?ああ、駄目なろう系の異世界ですねー」

「駄目なろう系の異世界!?」

それはどういう世界なのか、詳しく聞く暇もなく、わしの視界は光に包まれた─────。



気がつくと、わしは豪奢で煌びやかで巨大な空間におった。

わしの足元には大きな幾何学模様の、いわゆる魔法陣のようなものが描かれておった。

左右には兵がずらりと並び、正面の小高いところにはは赤いまんとを羽織り装飾過多な王冠を被ったいかにもな王が、装飾過多な椅子に座りふんぞり返っておった。

その王の前には臣下であろういかめしい顔をしたおっさんがわしをじろじろと眺めておっった。

おー、召喚されとるされとる。わし完全に召喚されとるなあ。

と、わしがおのぼりさんのように辺りをきょろきょろと見回しておると、いかめしい顔をした臣下のおっさんが咳払いと共に口を開いた。

「ようこそ来てくれた、異世界からの召喚者よ。早速だが、単刀直入要件から入ろう」

どうやら日本語は通じるみたいじゃな。あの女神が何とかしてくれたんじゃろう。なろう系あるあるじゃな。

「はあ・・・・・・」

「あなたには魔王を倒してもらいたいのだ!」

ほむ、てんぷれじゃな。

「しかし、ここで一つ問題がある。それは魔王を倒すには聖剣の所有者でなくてはならないということだ!」

「・・・・・・ほお」

「そこであなたに問いたい!あなたは召喚者特典に何をもらってきたのか!?」

「召喚者特典?」

何じゃそれは。初めて耳にする単語じゃぞ?

「そんなのもらってきておらんのじゃが・・・・・・」

「なに?そんなはずはない。召喚者には召喚者特典というチート級アイテムが女神様からもらえるはずだ!みんな何らかのチート級アイテムの所有者となってこの世界に降り立つのだ!」

「そんなこと言われてものう・・・・・・」

「ということで鑑定してステータスを見てみよう」

「そんな気軽に人の情報を見るな!情報保護の概念とかないのかここは!?」

臣下おっさんは懐から水晶の玉のようなものを取り出すと、それで『鑑定』なるものをし出した。

国王も玉座から降りてきてその水晶を覗き込む。

「うーんカエデ・ササキ・・・・・・性別女、千歳、職業神・・・・・・なんだかよくわかりませんね」

「そうだなよくわからん」

「いやわかるじゃろ。これ以上ないくらいわかりやすいじゃろ」

「確かに所有物は無しになっているな・・・・・・」

「そうですね、これは・・・・・・」

二人は揃ってわしの方を指差しながら叫んだ。

「「チート級アイテム持ってないから無能!」」

「は!?」

「「ということでお前を追放する!!」」

いや待て待て追放って言い方はおかしくないか・・・・・・っていうか無能認定が早すぎるうえに無理やりすぎないか!?職業神のところなんか意図的に理解しないようにしてたとしか思えんぞ!?

そんなわしの言い分は聞き入れられるはずもなく。

わしは近衛兵の手によって王城の外へ蹴り出されたのだった。



「いたたた・・・・・・ったく、乱暴に追い出しおって・・・・・・」

普通神を蹴るかね?全くどうなっとんじゃこの世界は。

全く納得できない不自然な流れで追い出されたわしは、とりあえず城下町をそぞろ歩いておった。

城下町はいろいろな店があって、いろいろな人々で賑わっておった。

うーん、わしは何をしたら良いんじゃろうか。あの女神、肝心なところを教えてくれんかったぞ・・・・・・。

と、わしがぼーっとしながら歩いていると、不意に声をかけられた。

「もし!そこの君!もしや同じ日本人ではあるまいか!?」

振り向くと、黒髪黒目童顔の男がおった。学生服とかでなくちゃんとこの世界に溶け込むような格好をしていて、上からまんとを羽織っており、隣に水色の髪の女性を連れておる。

ああ、よく見る造形じゃな。なろう系の九割で見る造形。

「おお、そうじゃ。わしも日本から来たんじゃ。お主もか?」

「ああ、そうなんだ。君、君もひょっとして追放されたのか?」

「そうなんじゃよ、何でも召喚者特典とやらを持っておらんから、無能なんじゃと」

「君もか!僕もそうなんだよ!僕は召喚者特典に担当してくれた女神様を指定したんだけど、聖剣の所有者じゃないから無能って言われて追放されたんだ!」

何じゃその理不尽すぎる追放理由は・・・・・・。

ていうかなんかその設定聞いたことあるぞ?特典に女神を選ぶってところ強烈な既視感があるんじゃが・・・・・・。

いやでも例の素晴らしい世界そのものは駄目なろう系ではないはず。おそらくこれは・・・・・

「で、コイツがその女神、名前はアク───」

「ちょ危ない危ない危ない!大丈夫か!?大丈夫か!?」

「アー。コイツの名前はアクアー。水の女神アクアーだ」

「依然として危ない!伸ばし棒つけただけじゃろうが!!」

・・・・・・これはあれじゃ。駄目なろう系あるある、他作品からの堂々とした剽窃じゃな。いやでもいかな駄目なろう系でもここまで堂々とした剽窃あるか・・・・・・?

「ちなみコイツはノーパンだ」

「そんなとこまで!?」

「ああーっ!!アクアーが転んで尻丸出しに!!」

「やめろーっ!!脈絡のないえろが一番嫌われるんじゃって!!」

こうして、わしの異世界生活が始まった・・・・・。

「ちなみに、お主の名前は何というんじゃ?」

「カルマだ」

「ちょっと変えた末に別の作品と被っとったら世話ないのう・・・・・・」



「へー、ここが冒険者ギルドか」

「異世界に来たら百人中九十九人がここに来るのう・・・・・・」

わしらはあのあと何故か共に行動することになってしまい、そして今、三人で冒険者ぎるどの建物を見上げていた。

「ところで、この水の女神とやらは何でずっと黙ったままなんじゃ?」

「ああ、コイツは『カルマくんすごーい!』しか喋れないんだ」

「何じゃそれ・・・・・・」

さて、冒険者ぎるどの中へ入ると、そこは厳ついおっさんで賑わっていた。ええい、むさ苦しい。萌え日常系みたいなおなごはおらんのか。

かるまは厳つい冒険者たちの視線に臆することなく、さっさと受付の方へ歩いて行った。

「ご用件はなんでしょう」

「冒険者登録したいんだが・・・・・・」

「はい、わかりました。冒険者になるためにはまず試験を受けていただく必要があります。こちらへどうぞ」

わしらは受付嬢に奥の方へと案内された。通されたのは広々とした闘技場であった。

「試験は的当てとなっております」

出た!的当て!

「試験は的当てだけなのか?」

「的当てだけです」

「的当てだけでちゃんと冒険者に相応しいかどうかわかるんかのう」

「わかります。的当ては全てを明かしてしまうんです。魔法精度から、その人の知能や人となり、人生経験、愛、裏切り、絶望・・・・・・全てわかります」

「なるほど、それは色んなところで的当て試験するはずじゃな・・・・・・愛、裏切り、絶望って何?」

「さ、試験を始めましょう」

こうして的当て試験が始まったが、かるまは当然のことながら闘技場の壁をぶっ壊して合格した。

こうして無事(?)冒険者となったわしらは、初めての依頼として、森の中の洞窟に住まうごぶりんを退治することになったのであった。



「いやー、勝ったなー」

「戦闘描写無し!?」

わしらは初めての依頼としてごぶりん退治を受けたんじゃが・・・・・・何故か戦闘の場面を全部削られた。

ふと気づけばもうごぶりんたちは地に倒れ伏していた。

戦闘描写が苦手すぎて省略するくらいならそういう展開を入れ込まんでよろしい。

「・・・・・・ところで、お主はどんな魔法が使えるんじゃ?的当て試験も今度の戦闘も省略されたから見れんかったんじゃが・・・・・・」

「ああ、水魔法だ。水の女神の加護があるからな」

「ほおん・・・・・・」

「まあ水魔法以外も使えるけどな」

「え?何でじゃ?」

「決まってるだろ、いいか?水は温度を低くする。つまりはマイナスってことだ」

「うむ」

「マイナスにマイナスをかけるとどうなる?プラスになるだろ。つまり水魔法を重ね掛けすると炎魔法になるんだよ」

「・・・・・・???」

「そして水は流れるもので風も流れるものだから風魔法も使える。土は水が染み込むものだから使える。そして氷はもちろん使える・・・・・・つまり俺は全属性魔法が使えるんだ!」

・・・・・・

「・・・・・・いやいくら駄目なろうだからって穴だらけすぎるじゃろ!!何じゃその理論は!!」

というか全属性使えたら具体的に何がすごいのかもわからん!そういう諸々のことは事前に説明しとけ!

「でも現に使えるし・・・・・・」

「カルマくんすごーい!」

「うおびっくりした!!初めて声を発したなお主!!」

「・・・・・・」

「また話さなくなってしもうた・・・・・・」

「言っただろ?そいつはそれしか喋らないんだ。よーし冒険者ギルドへ帰るぞー!!」

「お、おー?」



さて、ぎるどへ帰ろうと森の中を歩いておると、急に大きな悲鳴が聞こえた。

「きゃーっ!!」

見ると馬車が魔物の大群に襲われていた。

百万回見た展開。

「っと、そんなこと言っとる場合ではない!早く助けに行くぞ!」

「やれやれ、仕方ないなあ・・・・・・」

どこかむかつく様子で助けに入るかるま。

そのままかるまは全属性魔法を駆使して魔物を虐殺し始めた。

「ヒャッハー!!皆殺しだぜー!!」

「お主本当に元日本人か!?」

とりあえずわしはかるまの魔法に巻き込まれないように馬車にいる人や護衛を結界で守る。

「というかひゃっはーって・・・・・・なんかきゃら変わっとらんか?」

「鋭いですね」

「うおっびっくりした!!」

気がつくと隣に立っておった男が、わしに話しかけてきた。

「誰じゃお主」

「私はこの馬車の護衛に雇われている者です」

「そうか、鋭いとはどういうことじゃ?」

「ここの部分はコミカライズされた時に漫画家がオリジナルで入れたシーンなんです。原作にないシーンなんで、彼のキャラがちょっと違ってるんですよ」

「そうなのか・・・・・・というかお主、なんかあやつと似とらんか?」

「描き分けができてないだけです」

「ああそう・・・・・・」

ちなみに、馬車の中には隣国のお姫様がおって、当然のことながらあやつに惚れた。



さて、あれから本当に色々なことがあった。

ほんとーに色々なことがあった。

かるまが盗賊を虐殺しようとしたから止めたり、かるまが何としてもわしの頭を撫でようとしてくるのを必死で避けたり、貴族の子弟に絡まれたり・・・・・・ほんとーに、色々なことがあった・・・・・・。

じゃがついにわしらは魔王のもとへ辿り着いた!!

やっとじゃ・・・・・!この魔王を倒したらやっと元の世界へ帰れる・・・・・!

「よく来たな異世界からの召喚者よ、余は水の魔王だ・・・・・・」

うーむ、水の女神と水の魔王、水が被ってしまった。

「ここまで来てもらって悪いが、お前らに余は倒せない」

「な、何だって!?」

「そう、何故なら・・・・・・余の体は水で出来ているからだ!」

「・・・・・・?」

それがどうしたというんじゃ?

「な、何だって!?体が水で!?」

「え?何でお主も驚いておるんじゃ?」

「だって体が水で出来てるってことは・・・・・・物理攻撃が使えないじゃないか!!」

「いや炎魔法使えばいいじゃろ」

「くっそう、物理攻撃が使えないなんてどうすればいいんだ・・・・・・!」

「いやだから炎魔法使えばいいじゃろ!!最終決戦だからって無理に苦闘感出そうとするな!!」

・・・・・・まあ魔王を倒すまでにも色々あったが、無事に魔王を倒せてわしは元の世界へ帰れたのだった。



「おーあやめ、今帰ったぞ」

軽い感じであやめに声をかけると、ものすごい勢いで抱きついてきた。

「ぐすっ、楓さまぁぁぁ、無事でよかったですぅぅぅ・・・・・・」

わしに抱きつきながら泣くあやめを何とか宥めながら、わしはぽつりと呟いた。

「まあ散々駄目なろう系を弄ったものの、この小説もなろう系ではないが駄目な方には入るんじゃよなあ・・・・・・」

「?楓様、なろう系ってなんですか?」

「お主は知らなくていいんじゃよ・・・・・」
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