43 / 48
43
しおりを挟む
リンクル殿下が12歳のころだったろうか。弟の第二王子の誕生日が1か月後に迫ったある日のことだ。
「いいことを考えた!誕生日に絵本を送ろうと思うんだ!シャリナ手伝ってくれ!」
「え?絵本をですか?誕生日が来ると5歳でしたよね……私が手伝うよりも、殿下が選んで差し上げた方が喜ぶのではないですか?」
殿下が首を横に振った。
「選ぶんじゃない、作るんだ。せっかく外国語を習っているんだ。我が国の絵本を外国語に直した絵本を作って贈ろうと思う。そうすれば絵本も楽しめるし、外国語の勉強にもなるだろう?」
「まぁ!なんて素敵な贈り物でしょう!私は何を手伝えばいいかしら?訳せばいい?」
「それは、俺がやる。シャリナには絵を描いてほしい」
そりゃそうか。外国語の勉強のためには殿下が訳した方がいい。
それにしても、私が絵を?
私は、殿下が訳した言葉のチェックを手伝うとかではなく、絵を描くの?
殿下が選んだ絵本は、王子が世界を亡ぼすドラゴンをやっつけるストーリーのものだった。
殿下が翻訳を頑張っている間、私は我が国の絵本の挿絵を見本に、四苦八苦しながらドラゴンの絵を描き上げた。
「なんだこれ?牛は出てこないぞ?」
「牛ではなく、ドラゴンです」
う、牛……!せめてトカゲと言われるならまだしも……!1時間かけて描いたドラゴンの絵が牛……!
「はぁ?これのどこが……あ、ドラゴンの角のつもりか?牛の角じゃなくて?え?この背中の模様みたいなのが、羽?」
殿下が眉に皺を寄せる。
そんなにひどいかな?
「ぷはははっ」
「わ、笑うなんてひどくないですか?一生懸命描いたのにっ!」
「いや、違う、そうじゃない。シャリナにも苦手なものがあったんだなと思ったら……賢くてなんでも知ってて……なんでもできると思ってたのに……!」
思わず頬を膨らませて抗議する。
「できない事はたくさんありますよ。乗馬はできても御者はできないし……殿下のように剣を振ることもできませんよ」
殿下は私の顔を見て笑うのをやめた。
「ほっぺた膨らんでるぞ?」
殿下が私の頬を両手で挟んだ。
「ちょ、殿下っ」
「子供みたいだな」
「どうせ、子供みたいな絵しか描けませんよ」
「すね方が子供みたいだ」
嬉しそうに殿下が笑った。
くっ。誕生日が来て私が成人したことが気に入らないのかな?子供みたいな姿を見て楽しいのかな?
「殿下の方こそ、レディに向かってこのような態度は子供みたいですよ?」
私の頬を挟んでいる殿下の手を取って引っぺがす。
「こ、子供じゃなくたって、するだろ?ほ、ほら、なんか、そういうの劇で見たぞ」
劇?
何度か見た劇で、大人がほっぺを手で挟むシーンなんてあったかな?
「あっ!」
恋人同士がキスをするシーンとか……。確か、そんなのあったかも……!
真っ赤になって早口で殿下にまくし立てる。
「いいことを考えた!誕生日に絵本を送ろうと思うんだ!シャリナ手伝ってくれ!」
「え?絵本をですか?誕生日が来ると5歳でしたよね……私が手伝うよりも、殿下が選んで差し上げた方が喜ぶのではないですか?」
殿下が首を横に振った。
「選ぶんじゃない、作るんだ。せっかく外国語を習っているんだ。我が国の絵本を外国語に直した絵本を作って贈ろうと思う。そうすれば絵本も楽しめるし、外国語の勉強にもなるだろう?」
「まぁ!なんて素敵な贈り物でしょう!私は何を手伝えばいいかしら?訳せばいい?」
「それは、俺がやる。シャリナには絵を描いてほしい」
そりゃそうか。外国語の勉強のためには殿下が訳した方がいい。
それにしても、私が絵を?
私は、殿下が訳した言葉のチェックを手伝うとかではなく、絵を描くの?
殿下が選んだ絵本は、王子が世界を亡ぼすドラゴンをやっつけるストーリーのものだった。
殿下が翻訳を頑張っている間、私は我が国の絵本の挿絵を見本に、四苦八苦しながらドラゴンの絵を描き上げた。
「なんだこれ?牛は出てこないぞ?」
「牛ではなく、ドラゴンです」
う、牛……!せめてトカゲと言われるならまだしも……!1時間かけて描いたドラゴンの絵が牛……!
「はぁ?これのどこが……あ、ドラゴンの角のつもりか?牛の角じゃなくて?え?この背中の模様みたいなのが、羽?」
殿下が眉に皺を寄せる。
そんなにひどいかな?
「ぷはははっ」
「わ、笑うなんてひどくないですか?一生懸命描いたのにっ!」
「いや、違う、そうじゃない。シャリナにも苦手なものがあったんだなと思ったら……賢くてなんでも知ってて……なんでもできると思ってたのに……!」
思わず頬を膨らませて抗議する。
「できない事はたくさんありますよ。乗馬はできても御者はできないし……殿下のように剣を振ることもできませんよ」
殿下は私の顔を見て笑うのをやめた。
「ほっぺた膨らんでるぞ?」
殿下が私の頬を両手で挟んだ。
「ちょ、殿下っ」
「子供みたいだな」
「どうせ、子供みたいな絵しか描けませんよ」
「すね方が子供みたいだ」
嬉しそうに殿下が笑った。
くっ。誕生日が来て私が成人したことが気に入らないのかな?子供みたいな姿を見て楽しいのかな?
「殿下の方こそ、レディに向かってこのような態度は子供みたいですよ?」
私の頬を挟んでいる殿下の手を取って引っぺがす。
「こ、子供じゃなくたって、するだろ?ほ、ほら、なんか、そういうの劇で見たぞ」
劇?
何度か見た劇で、大人がほっぺを手で挟むシーンなんてあったかな?
「あっ!」
恋人同士がキスをするシーンとか……。確か、そんなのあったかも……!
真っ赤になって早口で殿下にまくし立てる。
223
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる