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 自然と出た言葉にびっくりする。
 男の人……。
 そうだ。
 殿下は成人したのだ。もう、男の子じゃない。
 男の人なんだ。
 子供じゃない……。
 思い出の中の殿下は成人前で……。
 身長が伸びても、声変わりしても、でもそれは子供の変化でしかなくて。
 今の殿下は、大人なんだ。
 成人の義も追えた……。
 王族の成人の義の一つに、女性の扱いを学ぶためのものがあるのだから……。
 きっと私よりももう大人だ……。
 3年の記憶は失っているけど、私は独身だ。結婚もしていないのに男性と関係を持つことなどないだろうし……。
 ルゥイを育てるのに必死で恋愛どころではなかっただろうし。
 ルゥイの顔が浮んだ途端に、違和感を感じる。
「シャリア……許してくれるのなら、その……話したいことがたくさんあるんだ」
「こ、ここではできない話ですか?」
 違和感の正体。
 ルゥイのことを全く尋ねないこと。
 ……殿下の子じゃないの?
 ただ似てるだけ?
「えっと、あの……こ、ここでするような話じゃないというか、もう少し時間をかけて、えっと……聞いてほしいというか、その……」
 もし、ルゥイのことを公にするつもりがないのならば、隠さないといけないのならこのような場所でできる話ではない。
 けど……。ルゥイのことを本当に隠す気があるのなら、私に接触するのはおかしな話だ。
 バレてしまう可能性が高くのなるのだから。
 一体どういうことなのだろう?
 殿下はルゥイのことを知らないと考えた方がいいのか、それともルゥイを取り巻く環境が変わったため、迎え入れる準備でもしている……というようなことを話したいのだろうか?
 ごくりと唾をのみこむ。
 ルゥイを王族として迎え入れるのなら……。離されてしまう。
 いいえ。もし、ルゥイを王族として迎え入れるのなら、語学教師としてそばに居させてもらおう。
 リンクル王子に言葉を教えたように……母親代わりの役目が終わったら、ルゥイの語学教師としてそばに……。
 そう言えば。
「殿下は、結婚をお考えだとか」
 婚約する相手にすべてを話て、ルゥイを迎えいれることになったのだろうか?
「あ、えっと、シャリア、すぐにでも結婚したい。シャリアさえ頷いてくれるのなら、俺は、シャリア」
 私がルゥイを渡すことに頷いたら、すぐにその相手と結婚するってこと?
「少し……時間を……」
 やだ。
 やだ。
 何、何これ。
 私の大切なルゥイと引き離されちゃうなんて嫌だ。
 私のかわいかった生徒が、いつの間にか大人になって知らない間に恋をして誰かと結婚する。
 そのことにもショックを受けているなんて……。
 何、これ……。
 ああ、そう、大好きな兄やかわいい弟が結婚するのが寂しいって思うって話をしている子たちがいたなぁ。
 リンクル殿下も……そう言えば……。

「シャリア、さっきの男なんだよ!誰だよ!まさか婚約するとか言わないよな?」
 あれは、私が17歳の時だっただろうか。
 隣国で隣の家に住んでいた知り合いが親善大使の一行の一人としてこの国に来たことがあった。
 通訳として舞踏会に出席していた私は、通訳の仕事中だというのに、彼とずいぶん話し込んでしまった。
「だめだからな、シャリア!俺は許さないぞ!」
 なんてことも言っていた。
 あれは、今思えば、姉を取られる弟みたいな感情を持ってくれたのかな?
 その時の私は、隣国に嫁いでいくと殿下の家庭教師を辞めてしまうと思ってだめだと言っているのだと思っていたけれど。



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ご無沙汰……

  
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