下級巫女、行き遅れたら能力上がって聖女並みになりました

富士とまと

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その後のハナ3

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「話が飛んでしまったわね。とにかく、そんなわけで、婚約は表向きは本当にしたことにしてほしいの」
「え?あの、それは……」
「うーんそうね、少なくとも半年は、婚約者として行動してほしいのよ。半年後に婚約を白紙に戻せば、陛下に嘘をついたことにはならないでしょう?ダメかしら?」
 半年は本当の婚約者として……。
「婚約解除の理由は……そうねぇ、アルフがほかの女性に心移りしたことにでもしましょうか」
「そんな、アルフさんが泥をかぶることはないです。私が、私が心変わりしたことにしてもらえれば」
 ミナーシェ様がずいっと身をのり出した。
「心変わり? 誰か、思いを寄せている人がいるの? 親しい男性がいるの? そうなの?」
 一瞬、ガルン隊長の顔が思い浮かんだ。
 親しいといえば親しいのだけれど、違う、そういう意味じゃないよね。
「いません、でも、私はミーサウ王国へ行こうと思っていますし、キノ王国での評判を落としたとしても大丈夫なので。あの、もともと……」
 行き遅れだと馬鹿にされていたのだからと、言おうとしたけれど言葉を飲み込んだ。
 立派な巫女だったミナーシェ様は、行き遅れだったことも恥ずべきことじゃないと言ってくださっている。
 そうだ、言うべきことは行き遅れだということではなく、結婚するつもりはないということ。
 あれ? でも、巫女の力を失いたくないから結婚したくなかったんだけど、もう力を失ってしまったんだから、結婚しない理由もなくなってしまったよね? ……あれ? 私、結婚したいって思うこともあるのかな?
 巫女の力を失わない為に結婚はしないと思って生きてきたから、恋愛とかそいうのも全然分かんないんだけど。誰かを好きになったりするのかな?
「そう、親しい男性はいないのね? 思いを寄せている人も……そうなの。そう」
 ミナーシェ様が嬉しそうな顔をする。
「半年、できれば1年、婚約者としてふるまってもらう間……あとは、アルフ次第……」
 アルフさん次第? 婚約者のふりを上手にこなすにはアルフさんに頑張ってもらうということだろうか。
 ふりとはいえ、公爵家のご子息で、しかも将軍職にある皆のあこがれの人だ。
 恥をかかせないように……私、ちゃんと婚約者のふりができるのかな?
「ミナーシェ様、私、何をすればいいのでしょう?」
 パーティーだけ婚約者役をすればいいと思っていたから、あと半年……どうすればいいのか。大丈夫なんだろうか。
「そうねぇ、まずはお茶会を開きましょう」
「お、お茶会ですか?」


=================
お茶会当日の話が、アンケート特典SSにございます。よろしければご覧いただけると嬉しいです。
そちらは、ガルン隊長、アルフさん、マーティーが出てきてガチャガチャしてます(*'ω'*)
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