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SS

その後のハナ 1

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 旅に出ようとしたら、ミナーシェ様に全力で止められました。
「お願い。国中の貴族を呼んで、大々的に婚約披露パーティーを催したのよ?すぐに王都を離れるなんて、一体どうなっているのかと不審がられてしまうわ……なんと噂されるか……」
 言われてみれば、確かにそうかもしれない。
 背中がひゅんっとなる。噂……。
 アルフさんは氷の将軍と呼ばれとても人気のある人だ。
 国中の貴族どころか、国中の人々がアルフさんが婚約をしたと話題にするだろう。
 そして、相手の女性はどういう人だと噂をするに違いない。
 それが下級巫女の行き遅れで残念な容姿だと噂が広がるとか。
「も、申し訳ありません。そうですよね。アルフさんの評判を落としてしまいますね。私のような下級巫女の行き遅れと婚約しただなんて!あの、すぐにでも、その、婚約は嘘だったと。戦争を回避するためにアルフさんが行った作戦だと、あの……」
 ミナーシェさんがちょっと怒ったような顔をする。
「下級巫女の何が悪いのですか?」
 ミナーシェ様の温かい手が、私の手を取った。
「たくさんの人を癒してきたということに、下級も上級も関係ありません、違いますか?」
 確かに……。いくら上級巫女だからといっても、屋敷の中にこもって誰も癒しもしない人より、命を落とすまで人々を癒し続けてきた中級巫女のシャナさんが劣っているとは思えない。
 私と一緒に、命を削って必死に街を救ってきたマリーゼや、まだ巫女ですらないのに頑張ってくれた巫女見習いのミミやユーナたちを、私は誇りに思う。
「下級巫女だからと馬鹿にするような人たちのほうが恥ずべき人達ですよ」
 うん。そうだ。ミナーシェ様の言う通り。
 もし、皆を馬鹿にするような人たちがいたら、私もそちらの人たちのほうが人として劣っていると思う。
「それに」
 ミナーシェ様の手に力が入り、私の手をきゅっと握りしめる。
「巫女の力を失いたくないと、一人でも多くの人を癒したいと……そうして婚期が遅れた巫女を行き遅れだとあざ笑うようなものは、二度と巫女の癒しを受けられなくてもいいという愚か者でしょうね」
 ミナーシェ様が、ふわりと私の体を包み込む。
 柔らかくて、そしていい香りだ。
「ハナさんのような素敵な女性を選んだアルフを、私は誇りに思いますよ」
 下級巫女として必死に生きてきた私を認めてもらえたようで、とてもうれしい。
 癒したいとあがいて、行き遅れと言われながらも、巫女でい続けた自分。
 結局大けがで力を失ってしまい、巫女として生きられなくなった。残ったのは、ただ行き遅れただけの私だ。
 そんな私だけど、ミナーシェ様は私のことを素敵だと言ってくれる。
「ありがとうござい……ま……す」
 うれしくて、目じりに涙が浮かぶ。
「あ、で、でも、アルフさんは私を選んだわけではなくて、えっと、その、私はただの偽物の婚約者なので、そう、そのことを発表しましょう、もうその、目的は達したわけですし」
 そうだった。
 慌ててミナーシェ様の顔を見て訴える。
「はぁー。まったくアルフは……」
 ミナーシェ様ががっかりしたように目をそらした。
「どうして、もう、こう、肝心な……逃げられちゃうわよ、もうっ」
 ん?
 逃げる? なんのことだろう?


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アンケート返答特典SSの長すぎるためカットした部分になります(*'ω'*)

12月28日に2巻が発売となります。どうぞよろしくお願いします。
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