下級巫女、行き遅れたら能力上がって聖女並みになりました

富士とまと

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番外編

番外編 ガルン隊長視点 1

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前書き 読み飛ばしても本編に影響はありません。数話続きます。
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「隊長~~見ましたよ、見ましたよぉ」
 ぐふぐふと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、エールがなみなみと注がれたカップを持って第二隊長がやってきた。
 どうやら、見張りの交代時間になり、第二隊が休憩時間に入ったようだ。
 各隊の隊長や副隊長が集まり、時には会議室として、また普段は食堂や、こうして酒を飲む場として使われるテントの中。
 今は俺と、俺の補佐を務める隊長補佐官がいるだけだ。
 そこに、新たに第二隊長が入ってきたというわけだ。
「見たって何をだ?」
 半分ほど減っているエールでごくりと喉を潤す。
「スベリアちゃんから、告白されてたでしょう?」
 むふふと、とっておきの秘密を暴露するかのように第二隊長が口を開く。
「何?スベリアちゃんが?ガルンに?」
 補佐官であり、悪友ともいえるシャルが大声をあげた。
「なんだガルン、聞いてないぞ」
「言ってないんだから、聞いてないだろうな」
 ぶっきらぼうな言葉にも、シャルはめげずに言葉を続ける。
「ついに、ガルン、お前も年貢の納め時か?」
 ったく、こいつもか。
 どいつもこいつも。
 なんで、そう、早くに俺を結婚させたがるんだろう。いや、もう早くないか。30になるんだから、十分遅い。遅いから結婚させたがるのか?……年齢なんて関係ないだろう?
 結婚はしたいときにすればいいと思うんだけどな。
 そうそう、今日巫女を辞したユーナという娘。彼女だって、結婚したいと思ったから、急にやめることになったんだよな。
 周りに迷惑をかけてしまおうが、結婚するなら仕方がない。
 運命の相手に出会ってしまえば、あらがえないと――。恋とはそういう物らしいからな。
 そうそう、ユーナのことはまだ伝えていなかったな。
「巫女が一人辞める。代わりの者の派遣要請を出しておいてくれ」
 補佐官のシャルにいつものように指示を出す。
「うっわー、マジか!本当に、お前、年貢を収めるんだな!」
「不落の隊長を、スベリアちゃんがついに落としたか!」
 は?何を言っている?
「辞めるのは、ユーナ巫女だ。すでに能力が消失したらしいから、早急に頼む」
 シャルがガクッと肩を落とした。
「は?別の巫女?能力消失って、まったく、最近の若い娘たちは……いや、我慢が足りないのは兵たちの方か……。急に巫女が減ると困るのですが」
「大丈夫だ。ハナが何とかしてくれるだろう?」
 シャルが巫女派遣要請の手紙を書きながら、不満げな顔でこちらをにらんだ。
「ガルン!ハナ巫女が優秀なのは分かりますが、ハナ巫女が何歳になるのかご存知ですか?」
 なんだ、いきなり?
「えーっと、ずいぶん長いこと務めてくれているから、そろそろ20歳か?」
 うかーっと言って、シャルが額に手を置いた。
「あのね、ガルン、ハナ巫女は23歳です」
「なんだ、ハナは、もう23なのか?」
 驚いた。
 まだ、若い娘だと……初めて会った15の子供から、そこまで成長しているとは思わなかった。

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と、いうわけで、最後まで明かす予定がありませんでしたが、ガルン隊長視点を急遽挟み込むことにしました。
……さて、どんな感想がいただけるか……。
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