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解放奴隷

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 ドキリ。
 もしかして、私は言ってはいけないことを言ってしまいました?
 でも、だって、私……からすれば、人間に上下なんてなくて、奴隷だって子供だって、部下だって、誰だってしてもらったことには感謝しないといけないって……。そう、神様だと言われるお客様だって「ありがとう」って言ってくれますよ?
 ぎゅっと奥さんが、私を抱きしめました。
「ありがとう。あなたのような優しい子に出会えて私は幸せだわ……」
 今まで床に伏せていたとは思えない。ふわりと花の香がしました。
「バーヌさん、ありがとう。あなたの狩ってきたモモシシのレバーのおかげでこうして、また自分の足で立って動けるようになりました」
 奥さんは、私から離れるとすぐにバーヌにお礼を述べました。
「私は解放奴隷なの。主人が……お金をためて解放してくれた」
 え?
 奥さんがはにかんだ笑みを見せます。
「はは。まぁ、昔話はあとにして、準備を進めよう。下ごしらえをありがとう。うん、あと鍋にはリリラの実と、隠し味にはちみつを少し入れて、それから……」
「もう、あなた、隠し味をペラペラと人に教えないの!」
「ぷっ」
 思わず吹き出してしまいました。奥さんにしょっちゅう言われていたというのは、本当だったんですね。
「あは、そうだ、そうだったな」
 ダタズさんが嬉しそうに笑います。そうでしょう。また、同じように奥さんの小言が聞けるようになったんですものね。
「あら、これは何?」
 私が下ごしらえしていたものに首を傾げます。
「レバーを使った料理です。ちょっと待ってくださいね、すぐできますから、食べてみてください」
 揚げ焼きして奥さんとダタズさんに渡します。
「あら、美味しい!」
「本当だうまい!」
「よかったです。レバーは捨てるみたいなんで、嫌いな人が多いのかと思ったので……ほかにも何人か試食してもらったんですけど、売っても構いませんか?えーっと、材料はパンと小麦粉とニンニクと油と塩なんですけど、原価に問題なければ」
 ダタズさんが首を縦に振りました。
「問題ない、ない。っていうか、レバー、うまいな。内臓は捨てる発想しかなかったが……」
「病気も治してくれたし、捨てるのなんて本当に勿体ないわね」
「あー、でも、レバーはほかの肉に比べて足が速い……腐りやすいんで、流通させるのはちょっとむつかしいかもしれないです。こうしてすぐに使うなら問題ないんですけど……」
 冷蔵庫ないし、見た目では分かりにくいし。特に生で食べることを考えると本当に鮮度が命です。っていうか、生じゃないと効果がないのでしょうか?
「ユーキは物知りね。分かったわ。信用置ける人から、新鮮なものだけを仕入れて調理しないと駄目なのね。で、この美味しい料理、作り方教えてもらってもいいかしら?」
「ええ、もちろんです。一緒に下ごしらえしましょう」
 順調に下ごしらえをしつつ、販売方法などについても確認します。それから、メニューの修正。フライの値段設定とか、いろいろ。
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