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「これです。2か月ほど前に執事から届いた手紙です」
メイが手紙を広げる。
「お嬢様はショックを受けるだろうと思って黙っておりました。執事は『私も、そう長くはないだろう。すまない。ミリアお嬢様のことは頼んだよ』と……」
確かにそんなことが書いてある。
「病気にでもなって、死にそうになってこのような手紙を送ってきたのかと思っておりました。ですから、伝えあぐねておりましたが、王都に戻ってみればピンシャンと働いていて……」
確かに、元気そうだった。
「長くはないというのは、もしかしたら正気を保っていられなくなりそうという意味だったのではないかと……。よく考えれば”私も”と、表現しているのですから、他にも誰かが亡くなっていることが前提となる書き方です。でも特にミリアお嬢様に関係する人が亡くなったという話は聞いていないので……」
メイの言葉にハッとする。
「そうだね。みんな生きてた。元気そうだった。執事も庭師も……門番も侍女も、お母様も。へへへ、本当だ、良かった。元気な姿を見ることができたんだ」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「そうだよね、生きてたんだもん。お母様は元気だったよ。私には……笑いかけてくれなかったけど……でも、お母様……幸せそうだった」
「ミリヤお嬢様っ、いいえ、私には奥様は幸せそうに見えませんでしたよ。前はもっとふわりと周りの空気を包み込むような笑顔を見せていました。執事もあんなに無表情に仕事はしていませんでしたし、庭は整ってはいましたが生気が感じられなく、門番もつまらなそうな顔をしていました。ミリアお嬢様への態度がおかしくなっただけじゃなくて、皆不幸になってますよ」
そう、なのかな?
「幸せそうだったのは、あのどこの誰とも分からない子供だけです。ああ、子供の姿をしているけれど魔女かもしれません……カリアと名乗るあの子供……どうして公爵家の一員のような顔をして皆もそう接していたのか分かりませんが……何とかしなければ、皆が不幸になってしまいます……」
「不幸に?……お母様も?」
「もちろんです。大切なミリアお嬢様との思い出が消えてしまえば不幸です。ミリアお嬢様と過ごすはずの日々が失われれば不幸です」
……お母様が不幸になる。それは嫌だ。
「私、お母様を助けたい。どうなっちゃったのか考えて、一緒に助けてくれる?」
メイがハンカチを取り出して私の目元をぬぐう。
「はい、もちろんです」
「どうしたらいいかな?」
「そうですね、まずは王都の公爵家のタウンハウスの様子を誰かに報告してもらえるようになるといいのですが、何せ私もタウンハウスに入ったとたんにおかしくなってしまったので……。社交界からの噂話をまずは集めましょうか」
メイが手紙を広げる。
「お嬢様はショックを受けるだろうと思って黙っておりました。執事は『私も、そう長くはないだろう。すまない。ミリアお嬢様のことは頼んだよ』と……」
確かにそんなことが書いてある。
「病気にでもなって、死にそうになってこのような手紙を送ってきたのかと思っておりました。ですから、伝えあぐねておりましたが、王都に戻ってみればピンシャンと働いていて……」
確かに、元気そうだった。
「長くはないというのは、もしかしたら正気を保っていられなくなりそうという意味だったのではないかと……。よく考えれば”私も”と、表現しているのですから、他にも誰かが亡くなっていることが前提となる書き方です。でも特にミリアお嬢様に関係する人が亡くなったという話は聞いていないので……」
メイの言葉にハッとする。
「そうだね。みんな生きてた。元気そうだった。執事も庭師も……門番も侍女も、お母様も。へへへ、本当だ、良かった。元気な姿を見ることができたんだ」
ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「そうだよね、生きてたんだもん。お母様は元気だったよ。私には……笑いかけてくれなかったけど……でも、お母様……幸せそうだった」
「ミリヤお嬢様っ、いいえ、私には奥様は幸せそうに見えませんでしたよ。前はもっとふわりと周りの空気を包み込むような笑顔を見せていました。執事もあんなに無表情に仕事はしていませんでしたし、庭は整ってはいましたが生気が感じられなく、門番もつまらなそうな顔をしていました。ミリアお嬢様への態度がおかしくなっただけじゃなくて、皆不幸になってますよ」
そう、なのかな?
「幸せそうだったのは、あのどこの誰とも分からない子供だけです。ああ、子供の姿をしているけれど魔女かもしれません……カリアと名乗るあの子供……どうして公爵家の一員のような顔をして皆もそう接していたのか分かりませんが……何とかしなければ、皆が不幸になってしまいます……」
「不幸に?……お母様も?」
「もちろんです。大切なミリアお嬢様との思い出が消えてしまえば不幸です。ミリアお嬢様と過ごすはずの日々が失われれば不幸です」
……お母様が不幸になる。それは嫌だ。
「私、お母様を助けたい。どうなっちゃったのか考えて、一緒に助けてくれる?」
メイがハンカチを取り出して私の目元をぬぐう。
「はい、もちろんです」
「どうしたらいいかな?」
「そうですね、まずは王都の公爵家のタウンハウスの様子を誰かに報告してもらえるようになるといいのですが、何せ私もタウンハウスに入ったとたんにおかしくなってしまったので……。社交界からの噂話をまずは集めましょうか」
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