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騎士道精神とは

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「さ、殺人……そんなつもりは……」
「うるせー!」
 男が乱暴に手を振り払った制で、足元がふらついて危なくしりもちをつくところだったのを、2,3歩後ろによろけて体を支える。
「馬から落ちた位で死ぬような奴なら、それまでってことだよ。そんな力しかないくせに俺らに偉そうに指図するとか冗談じゃねぇんだよっ!騎士爵のくせによ!騎士団長だからって、俺らは騎士爵より偉い貴族だぞ」
 は?
「騎士爵が何だっていうんですか?指図ってどういうことですか?騎士も兵も、爵位は関係ありませんよね?上官の方が偉い、偉そうにっていうから、実力も無いくせに貴族だから偉そうにしてる人の話かと思ったら……騎士団長は騎士の中で一番偉い人じゃないですか!偉い人が偉い態度を取るのは当たり前でしょう?偉そうにじゃなくて、偉いんですから!」
 男がむっとした表情を浮かべる。
「爵位しかとりえのない弱虫が、騎士団長になって偉そうな態度を取りたいのに、実力のある騎士団長が邪魔だから殺してしまえって言う話で間違いないですか?」
 あまりにも理不尽なことを言うから、思わずこちらも挑発するようなことを言ってしまった。
 人の命を預かる騎士団なのに。実力がある者が騎士団長になるのは当たり前で。爵位なんてまるきり関係ないのに。
 むしろ、爵位があれば騎士団長になれるんなら、うちのリードルは希望すりゃ明日にでも騎士団長だよっ。あら?もしかしたら、私でも慣れちゃったりするんじゃ?
「そ、そんな、僕たちは別に殺そうだなんて……」
 後ろの男が青い顔をする。
「落馬して死ぬことがあるのを知らないわけじゃないでしょう?知っていてわざと落馬させるのは、殺そうとしているのと同じよ。知らなかった、そんなつもりはなかったなんて言い訳が通じるなら、殺人し放題よね?剣でちょっと切ったからって死ぬなんて思わなかった殺すつもりはなかったんだって、そう言えばいいんですものっ!」
 後ろの男は、がくがくと震えている。自分のしでかしたことの重大さに気が付いたようだ。
 だけど手前の男はどうだろう。怒りに顔を赤めている。
「弱虫だと?二度とその生意気な口をきけないようにしてやるっ小娘がっ!」
 男が拳を握って私に振り下ろした。
 うわぁ!
 慌てて避ける。
 まさか……騎士ともあろうものが女に手を上げるとは思っていなくて油断したわ。
 騎士道精神どこへ行ったの?
「話にならないようですね。大丈夫ですわ。もうあなたと話はしたくありません。すぐに騎士団長に知らせなければ」
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