上 下
93 / 159

92 フレッドの笑み

しおりを挟む
「なぜ、点数がよかったというそれだけで不正を疑われなければならないんですか?一生懸命勉強したと、なぜ、そう思わないんですか?」
 信じられない。教師が、点数がよかった生徒に対して、頑張ったなとほめるどころか、こんな点数取れるわけない、カンニングしたんだろうというなんて。
「そうです。主任。Fクラスですが、彼らはクラス分けテストで優秀だった者も」
 イリス先生が私たちをかばうような言葉を発する。
「だったら、その優秀だった者が他の屑に答えを教えたのでしょう。教えた者も同罪です。ですから、全員0点。分かったらもう出て行きなさい」
 主任が踵を返した。
「ほら、これ以上ここに居座るというのなら、全員にイエローカードですよっ!」
 セルシーオ先生がしっしと追い払うしぐさをする。
「証拠は!俺たちが不正をしたっていう証拠はあるのかよっ!」
 イエローカードという脅しにも屈せず、マージが先生セルシーオ先生に詰め寄る。
「これが、教室に落ちていました」
 セルシーオ先生の後ろに、1Fのテストの監視だったやる気のない教師が姿を現す。
 手には、トランプが一枚。
「テストには必要のないトランプが、教室に落ちているなんて不思議だと思いませんか?」
 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべトランプをひらひらとさせる。
「大方、監視だった私の目を盗んで、トランプを使って答えを後ろの席の人に教えていたんではないですか?サーシャさん」
 名指しされたサーシャがピクリと肩を震わせる。
「私が?そんなことしてませんっ!」
「君は、席は一番前だから、トランプを後ろの席の人たちに見せるのには都合がいいですよね。そして、確か、クラス分けテストで満点を取ったそうですから」
 監視の先生がサーシャに詰め寄る。
「だから、私は、そんなことしていません!」
「本当でしょうかねぇ?このトランプは、君の席の真下に落ちていましたよ?」
 くそっ。
 どうせ、違う違うっていったって、何も信じる気がないくせに。厭味ったらしく、責め立てて。
「分かりました。不正はあったとしましょう」
 フレッドが、サーシャの前に立った。
「おい、何を言うんだフレッド、いくらお前でも」
 マージがフレッドの腕を取る。
 フレッドがふっと小さく笑う。
「さすが殿下。クラスの不正は見逃せないということですか」
 だから、不正なんてしてないしっ。
「その不正に、このトランプが用いられたと、あなた方は主張されましたね?」
 く、黒い。黒い煙が。こ、これは……終わったな。
 数学教師たち、終わった。
 フレッドが監視役の教師の手からトランプを取り、くるくると回して、監視役の教師の目の前につきつけた。
「この印は、王家の印。王家の物を盗み出した犯人は捜さねばなりません。呪われし裁判官を召喚します」
 びしっと言い切ったフレッド。
「呪われし、裁判官?」
 マージが首を傾げる。
「呪いがかけられ、いかなる力にも屈することなく正しい判断を下す裁判官のことよ。横領だとか国家を揺るがす犯罪に出てくるようなすごい人……」
 マージにサーシャが小声で教える。
「な、わざわざ学校のテストの不正で、呪われし裁判官を召喚するなど……」
 フレッドが慌てるセルシーオ先生を見て笑った。
しおりを挟む
感想 229

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

婚約破棄された悪役令嬢は男装騎士になって推しを護ります!―女嫌いの王太子が溺愛してくるのは気のせいでしょうか―

イトカワジンカイ
恋愛
「私が王都までお守りいたします!殿下は私を男だと思ってますからバレなきゃ大丈夫ですよ」 スカーレットは唖然とする父と義弟にそう言い放った。 事の経緯としては、先日婚約者デニスに婚約破棄された際にテンプレながら乙女ゲー「マジらぶプリンセス」の悪役令嬢に転生したことをスカーレットは思い出す。 騎士の家系に生まれたスカーレットは並みの騎士よりも強いため 「もうお嫁に行けないし、こうなったら騎士にでもなろうかしらハハハハハ…」 と思いながら、実家の屋敷で過ごしていた。 そんなある日、偶然賊に襲われていた前世の推しキャラである王太子レインフォードを助ける。 ゲーム内でレインフォードの死亡イベントを知っているスカーレットは、それを回避するため護衛を引き受けようとするのだが、 レインフォードはゲームの設定とは違い大の女嫌いになっていた。 推しを守りたい。だが女であることがバレたら嫌われてしまう。 そこでスカーレットは女であることを隠し、男装して護衛をすることに…。 スカーレットは女であることを隠し、レインフォードの死亡イベントを回避することができるのか!? ※世界観はゆるゆる設定ですのでご了承ください ※たぶん不定期更新です ※小説家になろうでも掲載

処理中です...