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57 フレッドの忘れ物

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「俺も数学得意だぜ?俺が教えてやるよ!」
 マージがにかっと笑う。
 しかし、なんか、みんな無言。
「な、どうしてだよっ、俺、1問間違えただけだよ?名前をちょっと書き忘れて……0点だったけど……」
 いや、点数の問題じゃなくて、たぶん……。
 教え方、下手そうじゃね?理路整然とってより、感情直球型っぽいじゃん、マージって。
「そうだ、明日学校休みじゃん、俺んちでテスト勉強しないか?」
 マージがいいこと思いついたとばかり手を叩く。
「へー、テスト勉強のために集まるのですか」
 フレッドが面白そうだと声を上げる。
「マージ君の家って……伯爵家のお屋敷でしょう?」
 庶民の子がびっくりして声を上げる。
「いいの?その、私たちみたいな人間が行っても……」
「なんで?いいに決まってんじゃん。っていうか、おふくろびっくりするぞ。友達いっぱい家に来てくれたら……泣いて喜ぶんじゃないかな!」
 マージの言葉に、庶民の子たちが顔を見合わせる。
 もちろん、貴族と言えども、国内2番目の力を持つ伯爵家にそうそう足を運べるものではない。
「リザークとフレッドもくてくれるだろ?あ、でも、お前たちは何か家の用事とかある?」
 ニコニコと笑うマージ。……お母さんを喜ばせられるのが嬉しいのかなぁ……。
「んじゃ、俺んち集合っていいたいけど、いつも学校始まる時間に校門集合でいいか?馬車は用意するから!あ、お昼ご飯の心配もしなくていいぞ!」
 まて、マージ!
 学校始まる時間って、普通、友達との勉強会って、もうちょっとゆっくりした時間から始めないか?
 しかも、お昼ご飯の心配って、何時間勉強会する気だよっ!学校通うのと変わらないくらいじゃないのか?

 教室で帰り支度をしていると、突然フレッドが叫んだ。
「あああーーーっ」
「どうした、フレッド!」
 マージが心配そうにフレッドの顔を覗き込む。
「しまった、すっかり忘れていた……」
 ん?深刻そうな顔に、何を忘れていたのか心配になる。
「せっかく全校生徒の顔が一度に見られる機会だったのに……彼女を探すのを忘れた……」
「彼女って、例の?」
 マージの言葉にフレッドが頷く。
 まさか……。
「お詫びをしたかったのに……」
 やっぱり、私かよっ!女体化した……というか、呪いが解けた悪役令嬢の私を探そうというのかよっ!
「忘れろ!とにかく、フレッド忘れろ!」
 両肩をつかんでぶんぶん振り回す。
「忘れられない」
 フレッドが首を振り、マージが私の肩を叩いた。
「忘れたくないんだろ?そっとしておいてやれよ」
 いや、そうはいくか。
「そっとしておいてやれってのは、二人の方だろう?相手の気持ちを考えてみろよっ」
 ぎっと二人を睨みつける。
「相手の気持ち?」
 フレッドが首をかしげた。
「む、胸を触られたんだぞ?女の子にとったら、それって、忘れたいことじゃないのか?忘れたいのに、相手の顔も見たくないのに、探し出して、あの時はごめんとか……」
 あっとフレッドが口をふさぐ。
「あの時と言われれば、当然嫌なことを思い出すだろう?せっかく忘れかけていたのに、思い出さされて、恨みたくなるだろう?」
 フレッドの顔が青ざめる。

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