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39 剣術大会当日がやってきたよ。ちょっとワクワク

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 ちょっとした運動会だ!
 制服姿に、クラスを現すリボンやタイと同じ色のハチマキやらスカーフやらをおそろいで身に着けているクラスもある。
 ……まじ、運動会みたい。
 4年生になるとSクラスは騎士が身に着けるようなおそろいのクラスカラーのマントを羽織っている。
「かっこいいなぁ」
 マージがうらやましそうに見てる。
「いいですわねぇ。騎士みたいで……」
 サーシャもうらやましそうに見ていた。
 2年生も3年生も4年生も、DクラスやEクラスやFクラスになるとクラスカラーを現すものを身につけたりはしていない。誇れるような色ではないということだろうか。
「こんなものしか用意できませんでしたが……あの、つけたくないならば、無理にとは……」
 ソフィア先生が、クラスカラーの細長い布を持っていた袋から出した。
 わざわざ、最下位クラスですと主張するような色を目立つように身に着ける。
「サンキュー先生」
 マージがソフィア先生から布を受け取った。
「ふふっ。これなら遠くにいる人にもFクラスの活躍が分かりやすいですわね」
 サーシャが続いて受け取る。
 それを見て、皆も手を伸ばし始めた。
「駄目だ、先生!」
 そして、一番初めに布を受け取ったマージが大声を出した。
 受け取ったり、駄目だと言い出したり、いったいなんなんだ、チミ。
「これ、とどかねぇ……」
 頭に巻こうとして布の端をもって頭の後ろに回している。
「マージ、頭でかいんじゃない?ほら、見せてみろよ」
 と、マージの後ろに回る。
 結べないというレベルじゃなくて、届くか届かないかレベル……。
「わ、私も頭がでかいのでしょうか……」
 二番目に受け取ったサーシャが涙目になっている。
 えーっと。
「あれ?そんな、おかしいですか?頭周りを測ってその長さでそろえて切ったんですけど……っ」
 ソフィア先生がワタワタし始めた。
 ……頭周りの長さに、結ぶ長さを足し忘れたんですか……。
 ふぅっと小さくため息をつく。
「ご、ごめんなさい、えっと……」
「ま、これでいいんじゃね?腕章みたいでかっこいいじゃん。なんかの役員みたいだ」
 マージの持つ布を受け取り、頭はあきらめて腕に巻いてやった。腕の動きを阻害しないために緩めに結び、落っこちないように腕にあるボタンに端を結びつける。
「おう、これもなかなかいいな」
 マージが嬉しそうな顔を見せた。それをみて、近くのクラスメイトどうし、腕に布を結び始めた。
「リザーク」
 私の腕には……。
 右側にマージ、左側にサーシャが巻こうとしてる。
 二人がそれに気が付いてにらみ合っている。いや、にらみ合ってるんじゃなくて、譲り合ってる?
「サーシャ、頼んでもいい?」
 と、左腕をサーシャに差し出した。
「わ、私でよろしいの?」
「なんだよ、リザーク、俺が巻いてやるって言うのにっ」
 と、マージが不満げだ。知るかよ。
「みんな左腕だし、それに……マージが結ぶと思いっきり結んで血管止まりそうで怖い」
「ぷっ。確かに」
 フレッドが笑った。
「なんだよっ、そんなことねぇよ。フレッド、結んでやるよっ」
「あははは、フレッド諦めて腕を差し出したら?」
「はははは」
 和気あいあいと布を巻きあっていると、隣から強い視線を感じる。
「Fは余裕だな。緊張感がまるでない」
「どうせ、すべてをあきらめているだけだろう」
「ああ、それもそうか。どう頑張ったってどうにもならないもんな」
 Eクラスからだ。
 緊張した顔が並んでいる。
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