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「どうして!」
「父上、考え直してください!」
「僕は悪くない、なんで廃嫡されないといけないんだ!」
「騙されているんです、聖女など何の力もない、そうでしょう?」
「偶然が重なっただけで……」
「連れ戻せばいいんですよね!捕まえて……そうだ、牢屋に入れて逃げられないようにしてずっと浄化させれば!」
「すぐに探して捕まえますよ、あんな馬鹿女どうせぐずぐず王都をうろついてるに違いない」
陛下が首を横に振る。
兵に拘束された息子だった者たちが騒ぎ立てるのを、遠い目をしてみている。
「なぜ、こんな愚か者になってしまったのか……」
王都の井戸水が飲めないと言うのがすでに王都にはいないという考え方はできないのか。
浄化魔法が本当にあるのだと気が付いたら、丁重に扱おうと思わないのか。
責任は擦り付け合い、反省もせず、気に入らなければすぐに処罰しようとする。
このような者たちが国を動かすなどあってはならない。
「聖女は何と言っていたか?」
「一番大きな浄化魔法を使うとか……なんとか……」
「そうだ、使うのを渋っていたけど、あれで魔力が切れたんじゃないのか?」
「陛下、今のこの状態は聖女が居なくなったからっではなく聖女が一番大きな浄化魔法を使って力を失ったからです!」
「だから、廃嫡は考え直してくださいっ!」
陛下が、大声を出した。
「馬鹿がっ!最大の浄化魔法というのは、腐った国を浄化する魔法だ、腐敗した政治を……つまり、腐った人間の排除……まずは、お前たち自身が排除される魔法だっ!すでに発動されてしまったというのなら、もうお前たちはおしまいだ!」
陛下が頭を抱えた。
「きっと、水が飲めなくなった民衆が、飲んでしまい苦しむ民衆が怒りを爆発させるだろう……」
宰相も頭を抱える。
「貴族が果実水や酒で難を逃れれば、貴族ばかりがと憎しみを募らせるでしょう。一部の人間のみならず、ほとんどの民衆が怒りを向ければ……」
陛下が拘束されたものを見る。
「聖女を追い出したバカ者たちのせいだと見せしめれば、多少は怒りの矛先を逸らすことができるか」
その言葉の意味を宰相子息だった者が悟った。
「見せしめに、私たちを処刑するつもりですか?」
宰相が首を横に振る。
「処刑など、生ぬるいだろう……。井戸のある場所に、檻にいれて置いておくことになる」
喉が渇けば、庶民と同じように井戸の水に手を伸ばし、蛙の毒で高熱に全身の痛みに苦しむこととなろう。
怒りくるった民衆は石を投げ、罵声を浴びせ、いっそ一思いに処刑された方が楽だと思うような目に合うかもしれない。
それを想像して青ざめた。
「なんで、聖女のせいでそんな目に合わなくちゃいけないんだっ!」
「聖女のせいじゃないだろうっ!お前たちが招いたことだ!相手が聖女であろうがなかろうが、していいこととしてはいけないことの区別もつかぬバカ者が!」
「お前たちのような選民意識の高い庶民をないがしろにしすぎる統治者こそが、腐った人間ということだ」
「……聖女が最大の浄化魔法を発動してしまったというのなら、もう、国自体の存続も危ぶまれるというのに、自分たちの保身だけか……」
「隣国の王子も加担していたとなれば隣国にも影響が及ぶでしょう」
「王子が廃嫡されるくらいで済めば御の字だろうな。我が国はそうはいかぬだろう。今まで少しでも悪事に手を染めていた貴族たちは次々に失脚し……」
殿下が笑った。
「そんな馬鹿な、流石に、魔法でそんなことができるわけがない!」
陛下が殿下を殴った。
「まだ分からぬか!実際にこうして水が飲めない事態になっているではないか!どのような経緯で浄化されていくのかは分からないが、巡り巡って浄化されるのは間違いない。真に心を入れ替え、自ら清き者となれば命までは失わずに済むかもしれぬが……」
殴られた殿下は、憎しみのこもった目で陛下を見睨みつけた。
くそっ、この俺を殴るなど、父上といえども許せぬ。
廃嫡だ?
いいだろう、そっちがその気なら力づくでその座を奪ってやる。
と、殿下は牢屋に入れられてからもその怒りを収めることはなかった。
「父上、考え直してください!」
「僕は悪くない、なんで廃嫡されないといけないんだ!」
「騙されているんです、聖女など何の力もない、そうでしょう?」
「偶然が重なっただけで……」
「連れ戻せばいいんですよね!捕まえて……そうだ、牢屋に入れて逃げられないようにしてずっと浄化させれば!」
「すぐに探して捕まえますよ、あんな馬鹿女どうせぐずぐず王都をうろついてるに違いない」
陛下が首を横に振る。
兵に拘束された息子だった者たちが騒ぎ立てるのを、遠い目をしてみている。
「なぜ、こんな愚か者になってしまったのか……」
王都の井戸水が飲めないと言うのがすでに王都にはいないという考え方はできないのか。
浄化魔法が本当にあるのだと気が付いたら、丁重に扱おうと思わないのか。
責任は擦り付け合い、反省もせず、気に入らなければすぐに処罰しようとする。
このような者たちが国を動かすなどあってはならない。
「聖女は何と言っていたか?」
「一番大きな浄化魔法を使うとか……なんとか……」
「そうだ、使うのを渋っていたけど、あれで魔力が切れたんじゃないのか?」
「陛下、今のこの状態は聖女が居なくなったからっではなく聖女が一番大きな浄化魔法を使って力を失ったからです!」
「だから、廃嫡は考え直してくださいっ!」
陛下が、大声を出した。
「馬鹿がっ!最大の浄化魔法というのは、腐った国を浄化する魔法だ、腐敗した政治を……つまり、腐った人間の排除……まずは、お前たち自身が排除される魔法だっ!すでに発動されてしまったというのなら、もうお前たちはおしまいだ!」
陛下が頭を抱えた。
「きっと、水が飲めなくなった民衆が、飲んでしまい苦しむ民衆が怒りを爆発させるだろう……」
宰相も頭を抱える。
「貴族が果実水や酒で難を逃れれば、貴族ばかりがと憎しみを募らせるでしょう。一部の人間のみならず、ほとんどの民衆が怒りを向ければ……」
陛下が拘束されたものを見る。
「聖女を追い出したバカ者たちのせいだと見せしめれば、多少は怒りの矛先を逸らすことができるか」
その言葉の意味を宰相子息だった者が悟った。
「見せしめに、私たちを処刑するつもりですか?」
宰相が首を横に振る。
「処刑など、生ぬるいだろう……。井戸のある場所に、檻にいれて置いておくことになる」
喉が渇けば、庶民と同じように井戸の水に手を伸ばし、蛙の毒で高熱に全身の痛みに苦しむこととなろう。
怒りくるった民衆は石を投げ、罵声を浴びせ、いっそ一思いに処刑された方が楽だと思うような目に合うかもしれない。
それを想像して青ざめた。
「なんで、聖女のせいでそんな目に合わなくちゃいけないんだっ!」
「聖女のせいじゃないだろうっ!お前たちが招いたことだ!相手が聖女であろうがなかろうが、していいこととしてはいけないことの区別もつかぬバカ者が!」
「お前たちのような選民意識の高い庶民をないがしろにしすぎる統治者こそが、腐った人間ということだ」
「……聖女が最大の浄化魔法を発動してしまったというのなら、もう、国自体の存続も危ぶまれるというのに、自分たちの保身だけか……」
「隣国の王子も加担していたとなれば隣国にも影響が及ぶでしょう」
「王子が廃嫡されるくらいで済めば御の字だろうな。我が国はそうはいかぬだろう。今まで少しでも悪事に手を染めていた貴族たちは次々に失脚し……」
殿下が笑った。
「そんな馬鹿な、流石に、魔法でそんなことができるわけがない!」
陛下が殿下を殴った。
「まだ分からぬか!実際にこうして水が飲めない事態になっているではないか!どのような経緯で浄化されていくのかは分からないが、巡り巡って浄化されるのは間違いない。真に心を入れ替え、自ら清き者となれば命までは失わずに済むかもしれぬが……」
殴られた殿下は、憎しみのこもった目で陛下を見睨みつけた。
くそっ、この俺を殴るなど、父上といえども許せぬ。
廃嫡だ?
いいだろう、そっちがその気なら力づくでその座を奪ってやる。
と、殿下は牢屋に入れられてからもその怒りを収めることはなかった。
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